【福島県南会津郡】南会津の魅力。南会津に残る貴重な文化財を巡る

下郷町(しもごうまち)、南会津町(みなみあいづまち)、只見町(ただみまち)、檜枝岐村(ひのえまたむら)からなる南会津郡は福島県会津地方の南部、神奈川県に匹敵する面積の尾瀬や会津高原などがある大自然豊かなエリアです。

「奥会津博物館」に隣接する移築された古民家 ©奥会津博物館

NEFTでは、これまで「尾瀬」「塔のへつり」「大内宿」「前沢曲家集落」「檜枝岐歌舞伎」「会津田島祇園祭」「湯野上温泉」など南会津の比較的よく知られている名所や祭り、民俗芸能、温泉などをご紹介してきましたが、まだまだ見どころがいっぱい。ここでは、文化財に指定されている歴史遺産を中心にご紹介します。


5,000点以上の重要有形民俗文化財を収蔵「奥会津博物館」

国の重要有形民俗文化財に指定されている奥会津の山村生産用具 ©奥会津博物館

「奥会津博物館」は、有史来南会津の人々が使ってきた民具や道具などを約24,000点収蔵した博物館です。その中には農村で使用されていた道具や民具、山間部での木こりや会津塗の原料を作る木地師(きじし)の道具、太鼓の生産用具、川での魚をとる道具、街道の山道を運ぶ手段など、国の重要有形民俗文化財である「奥会津の山村生産用具及び民家(馬宿)」5,058点が含まれ、その中から3,000点あまりが常設展示されています。

国の重要有形民俗文化財の「馬宿」(旧大竹家住宅) ©奥会津博物館

隣接して馬宿(うまやど/旧大竹家住宅/江戸時代中期築/国の重要有形民俗文化財)、染屋(旧杉原家住宅/推定18世紀後半築/南会津町指定重要有形民俗文化財)、旧猪俣家住宅/推定18世紀前半築/福島県指定重要有形民俗文化財)、旧山王茶屋(築年不明/南会津町指定重要有形民俗文化財)、茅葺き屋根の古民家、木地小屋(再現・木地道具展示)が移築され、保存、公開されています。

奥会津博物館の外観 ©奥会津博物館

INFORMATION

  • 施設名称:奥会津博物館
  • 住所:福島県南会津郡南会津町糸沢字西沢山3692-20
  • 電話番号:0241-66-3077
  • 開館時間:9:00~16:00
  • 休館日:12月~3月の木曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
  • 入館料:おとな 300円、高校生 200円、小中学生 100円
  • URL:奥会津博物館

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戦国時代の典型的な山城。南会津領主の居城「鴫山城」

石垣や建物跡などが残る典型的な山城だった「鴫山城」 ©ふくしまの旅

南会津は、鎌倉時代源頼朝の信頼が厚かった長沼氏の所領となり、会津田島(南会津町)に鴫山城跡(しぎやまじょう)を建てています。江戸時代には蒲生氏(がもうし)、上杉氏などの支配下となり、1640年代からは幕府直轄の“天領御蔵入(てんりょうおくらいり)”として明治維新まで続きました。

「鴫山城」は、築城年代は不明ですが、現存する古文書によると1469年には山内氏により攻め落とされたとあるので、その頃には居城として存在していたようです。その後「鴫山城」は長沼氏が取り戻していたのですが、その長沼氏が1590年には伊達氏に従い仙台に移ってしまいます。その後は会津領主となった蒲生氏の一族が城主として入りますが、江戸時代になり会津領主の加藤嘉明の時代(1627年)に廃城となりました。

かなりの規模だった「鴫山城」。頂上の本丸跡にあった愛宕神社は落雷のため焼失 ©おいでよ南会津

鴫山城は、愛宕山山頂(標高749m)にあった戦国時代の旧本丸に向かって登る山城で、愛宕山一帯に遺跡が残されています。いくつか入り口がありますが、正面の大鳥居から入城するとすぐにあるのが侍屋敷跡です。その後、空堀跡、大門跡の石垣を通ると“上千畳(かみせんじょう)、下千畳(しもせんじょう)”という広場に出ます。ここには江戸時代の本丸、二の丸がありました。頂上旧本丸跡には愛宕神社が建っていましたが2015年に落雷で焼失していまい、会津田島市街地を見渡せる山頂には、今は神社跡だけが残っています。

INFORMATION

  • 施設名称:鴫山城跡
  • 住所:福島県南会津郡南会津町田島字根小屋
  • 電話番号:0241-62-3000(南会津町観光物産協会)
  • 散策自由
  • URL:鴫山城跡

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越後との街道に設けられた関所跡「叶津番所」

叶津番所。番所の業務は長谷部家に委託されていた ©おいでよ南会津

「叶津番所(かのうづばんしょ)」(只見町)は、南会津と越後(新潟県)を結ぶ八十里越街道(はちじゅうりごえかいどう/現国道289号線)にあった関所です。戦国時代に南会津地方では塩や魚、生活用品などをこの八十里越街道を使って持ち込んでいました。しかし、街道とはいえ奥只見の山岳地帯を通る細い道で、途中鞍掛峠(くらかけとうげ/標高965m)、木の根峠(きのねとうげ/標高845m)を越えなくてはならず、「八十里越(はちじゅうりごえ)」と呼ばれていたのです。

「叶津番所」は、当地の名主長谷部家に業務委託され、街道を通る人たちや物資の監視をしていました。叶津番所跡に建つ「旧長谷部家住宅」は、江戸時代後期に建てられたもので、正面右側にL字型に突き出した厩(うまや)を持つ曲家(まがりや))です。その大きさ、保存状態の良さから福島県の重要文化財に指定されています。

南会津の一般的農家「旧五十嵐家住宅」©ふくしまの旅

「叶津番所」からすぐのところにある国の重要文化財「旧五十嵐家住宅」は、南会津の一般的な農家の建物で、江戸中期(1743年)に建てられました。建物の形は直家(すごや/長方形の家/後に少し改築)で正面に入り口がある中門造りです。

INFORMATION

  • 施設名称:叶津番所・旧長谷部家住宅
  • 住所:福島県南会津郡只見町大字叶津字居平456
  • 電話番号:0241-82-5320(只見町教育委員会生涯学習係)
  • 開館時間:10:00~16:00
  • 休館日:月曜日
  • 施設名称:旧五十嵐家住宅
  • 住所:福島県南会津郡只見町大字叶津字居平437
  • 電話番号:0241-82-5320(只見町教育委員会生涯学習係)

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明治時代に建てられた洋風建築「旧南会津郡役所」

なんとなく和を感じさせる明治時代の洋風建築「南会津郡役所」 ©おいでよ南会津

南会津地方は江戸時代まで会津郡に含まれていましたが、明治時代になって北会津郡と南会津郡に分割され、1885年(明治18年)に会津田島に役所が建てられました。

「旧南会津郡役所」は、1885年建立ののち、1970年(昭和45年)の新しい福島県田島合同庁舎が建てられるまで福島県の施設として使われていました。建物は当時としては珍しい洋風2階建てで、役所として使われなくなったため現在地に移転され、一時「奥会津地方歴史民俗資料館(元奥会津博物館)」として利用されていました。「奥会津博物館」が新築されたのを機に保存されることになり、「旧南会津郡役所」として一般公開されています。福島県指定重要文化財。

INFORMATION

  • 施設名称:旧南会津郡役所
  • 住所:福島県南会津郡南会津町田島字丸山甲4681-1
  • 電話番号:0241-62-3848
  • 開館時間9:00~16:00
  • 入館料:おとな 200円、高校生 150円、小学生 100円
  • 休館日:火曜日(祝休日の場合は翌日)、年末年始
  • URL:南会津郡役所

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南会津の歌舞伎舞台、国の重要有形民俗文化財「大桃の舞台」

昔は歌舞伎が演じられていた「大桃の舞台」 ©おいでよ南会津

南会津地方には江戸歌舞伎がもとになった民俗芸能が伝承されています。お伊勢参りの帰路、江戸で見た歌舞伎を、見よう見まねではじめたというこの歌舞伎芸能は、江戸時代後期には南会津全体に流行し、地区ごとに歌舞伎一座があったといわれています。現在では、実際に上演されているのは『檜枝岐歌舞伎』のみですが、ほかの地区にもその痕跡が残っています。

「大桃の舞台」では今でも郷土芸能が上演されている ©おいでよ南会津

「大桃の舞台(おおもものぶたい)」(南会津大桃地区)は、檜枝岐以外唯一残っている歌舞伎を上演した舞台です。駒嶽神社(こまたけじんじゃ)の境内に建つこの舞台は、間口7.6m、奥行5.58m。屋根は茅葺きになっていて、現在は8月上旬に町内の郷土芸能が上演されています。国の重要有形民俗文化財。

INFORMATION

  • 施設名称:大桃の舞台
  • 住所:福島県南会津町大桃字居平164
  • 電話番号:0241-64-5711(伊南観光センター)

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魅力いっぱいの南会津

南会津地方にはこのほか、成法寺観音堂(じょうほうじかんのんどう/只見町)、旭田寺観音堂(きょくでんじかんのんどう)という国の重要文化財に指定されている古刹がありますが、いずれも『会津三十三観音』に含まれる仏閣なので、別項でご紹介します。

尾瀬に代表される大自然とアウトドアスポーツも南会津の魅力です。さらに湯野上温泉、木賊温泉(とくさおんせん)、小豆温泉(あずきおんせん)などの小さいながらも個性あふれる温泉もいっぱい。グルメだって山の幸満載です。大自然いっぱい、見どころ十分、しかも首都圏からも近い南会津に是非お越しください。


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