潟沼(かたぬま)

潟沼(かたぬま)とは?|鳴子温泉郷にある魚も住めない“超強酸性”の湖【宮城県】

宮城県大崎市の鳴子温泉郷に位置する「潟沼(かたぬま)」は、日本でも非常に珍しい強酸性の火口湖として知られています。訪れる人を魅了するエメラルドグリーンの湖面。その美しさの裏に、地球の内部から湧き出る驚異の自然現象が隠されています。


火山活動で生まれた潟沼の成り立ち

潟沼は、鳴子温泉駅から南東に約1キロほどの距離にある周囲約1.3kmの小さな湖です。形成されたのは約1200年前。鳴子火山の活動によってできた火口跡に水がたまってできた「カルデラ湖」もしくは「マール湖」と考えられています。

湖の水深は約16~21メートルで、外部から河川の流入がない閉鎖型の湖です。このため、地下から湧き出る火山性ガスや地下水の影響を強く受ける環境となっています。


世界でも珍しい強酸性の湖

潟沼(かたぬま)

潟沼の最大の特徴は、その非常に高い酸性度です。

かつて、1930年代の調査ではpH1.4という極端な数値が記録され、“日本一の強酸性湖”とも称されました。しかしその後、環境変化や水質の経年変化により、現在のpHはおおむね2.2~2.6程度で推移していると複数の最新調査が報告しています。

pH2台とはいえ、これは一般的な酸性雨(pH4.5~5)を大きく上回る強酸性。人間の皮膚にとっても刺激が強く、湖水に触れることは推奨されていません。

なぜそんなに酸性なの?

湖底からは現在も火山性ガス(主に硫化水素)が絶えず湧出しており、それが水中で酸化して硫酸イオン(SO₄²⁻)となり、水を強酸性に保っています。近年の調査では、潟沼の硫酸イオン濃度は240~250mg/Lとされ、これは温泉地に見られる酸性泉と同等かそれ以上の水準です。

また、鉄イオンや塩化物イオンの濃度も高く、湖水は見た目以上に重く、腐食性も強いため注意が必要です。


魚が棲めない?生態系も特殊な湖

このような極限環境では、当然ながら魚類は生息できません。酸性が強すぎて、ほとんどの生物にとっては致命的な環境です。

それでも潟沼には、「サンユスリカ」などの耐酸性昆虫や、酸性環境を好む特殊な細菌が生息していることがわかっています。これらの生物が独自の生態系を構成し、科学者たちの研究対象にもなっています。


色の変化と季節の表情

潟沼(かたぬま)

潟沼はその季節や天候によって湖水の色を変えることでも知られています。晴天時には鮮やかなエメラルドグリーンに輝きますが、曇天や紅葉期には濃い青緑や灰色がかった色にも見えます。

潟沼(かたぬま)

また、冬季は完全に凍結し、春には雪解け水が流入することで湖水の酸性度や濁度が若干変化することもあります。湖水は二層に分かれた「温度躍層」を持ち、年間を通じて複雑な水の循環を見せることも興味深い点です。


pH2という表現の正確さについて

インターネットや観光パンフレットでは「pH2の超強酸性湖」として紹介されることもありますが、これはあくまで概算的な表現です。実際の最新の観測では pH2.2~2.6 が主なレンジであり、「pH2」と固定するのは厳密にはやや不正確です。

それでもなお、潟沼の酸性度は日本国内では群を抜いており、世界的に見ても非常に珍しい存在であることに変わりありません。


注意とマナー

現在は湖畔まで車で行くことができ、遊歩道も整備されていますが、湖水に直接触れたり入ったりすることは避けましょう。また、付近は火山性ガスの影響があるため、長時間の滞在や悪天候時には注意が必要です。

潟沼は、美しさと過酷さを併せ持つ自然の神秘を体感できる貴重な場所です。その特殊な環境は、私たちに火山大国・日本の地質的なダイナミズムを教えてくれます。

潟沼<Information>

  • 名  称:潟沼(かたぬま)
  • 住  所:〒989-6823 宮城県大崎市鳴子温泉湯元
  • 電話番号:ー
  • 公式URL:大崎市公式HP – 潟沼

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