第二座「奉幣舞」に登場する「太玉命(フトダマノミコト)」

青麻神社の榊流青麻神楽|京都で学び皆伝を受けた由緒ある神楽【宮城県仙台市】

榊流青麻神楽とは?

榊流青麻神楽(さかきりゅうあおそかぐら)の歴史は、1807年(文化4年)に青麻神社32代神主・鈴木対馬が京都に赴き神祇官総領・京都神祇伯白川家に学び、神楽の皆伝を受けたことに始まるとされています。

青麻神社の拝殿
青麻神社の拝殿

以降は青麻神社近隣の利府町入菅谷の社人十二家により代々受け継がれてきましたが、第二次大戦後に後継者問題が噴出。一時は廃絶の危機に瀕しますが、昭和の末に岩切青年団の有志が継承することで存続し、1991年に仙台市の無形民俗文化財に指定され現在に至ります。

また、宮城県富谷市大亀地区の鹿島天足別神社(かしまあまたらしわけじんじゃ)に継承されている榊流永代神楽(さかきりゅうえいだいかぐら)は1848年(弘化5年)に青麻神社から伝えられたものとされていて、宮城県内でさらに分流が発生していたことも伺えます。

榊流青麻神楽の特徴

榊流青麻神楽は「一座二節」を大きな特徴としていて、「濫觴(らんじょう)」「舞」と呼ばれる二つの舞曲が舞われます。つまり一幕(一座)が二曲の舞で構成されています。

発声や唄いはなく、太鼓・大拍子・神楽笛の囃子のみで舞われるのも特徴の一つです。

この特徴をはじめとした演目・芸態・装束などは、仙台市とその周辺より南の仙台藩領内に伝来してきた十二座神楽の一系派「木下白山神社丹波神楽」などの「丹波流」との相似性が指摘されることもあります。

青麻神社の公式HPや神楽殿前の解説板によると主に日本神話を題材にした14の演目が存在しますが、一部欠落しているものもあるとのこと。

神楽の奉納は主に毎年5月1・3日の青麻神社春季例祭毎年11月23日の新嘗祭の年二回となっていて、現在は演じ手の揃い具合によって、都度奉納される舞も変動するようです。

榊流青麻神楽の十四座

  • 第一座 :御子舞
  • 第二座 :奉幣舞
  • 第三座 :剱舞
  • 第四座 :鉾舞
  • 第五座 :神招舞
  • 第六座 :小弓舞
  • 第七座 :釣舞
  • 第八座 :千歳舞
  • 第九座 :追儺舞
  • 第十座 :種蒔舞
  • 第十一座:諏訪舞
  • 第十二座:肥川上舞
  • 第十三座:龍宮舞(海津宮舞)
  • 第十四座:岩戸開舞

2025年の新嘗祭で奉納された榊流青麻神楽

2025年11月23日、青麻神社の新嘗祭での榊流青麻神楽奉納。この日奉納されたのは合計4座で、順不同で奉納されていましたが時系列順で紹介します。

青麻神社の神楽殿
青麻神社の神楽殿

普段は閉ざされている神楽殿が大きく解き放たれ、青麻神社の神紋が染められた白と黒のシンプルな神楽幕が掛けられていました。

第二座「奉幣舞」

第二座「奉幣舞」に登場する「太玉命(フトダマノミコト)」
第二座「奉幣舞」に登場する「太玉命(フトダマノミコト)」

奉幣舞(ほうへいまい)は神前に幣帛(へいはく=布・紙・供物などの奉献物)を奉る儀式舞で、神に敬意を示し祭礼を正式に開始するための演目。

第二座「奉幣舞」に登場する「太玉命(フトダマノミコト)」
第二座「奉幣舞」に登場する「太玉命(フトダマノミコト)」

登場する太玉命(フトダマノミコト)は天児屋命(アメノコヤネ)という神様と共に天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀る神殿、つまりは伊勢神宮の守護を命じられた神様といわれています。

第五座「神招舞」

第五座「神招舞」に登場する「天宇受女命(アメノウズメ)」
第五座「神招舞」に登場する「天宇受女命(アメノウズメ)」

神招舞(かんまねきのまい)はその名の通り“神を招く”舞。

第五座「神招舞」に登場する「天宇受女命(アメノウズメ)」
第五座「神招舞」に登場する「天宇受女命(アメノウズメ)」

場を整え、神霊を降ろす招霊(しょうれい)の為の重要な儀式舞で、登場する天宇受女命(アメノウズメ)は神話「岩戸隠れ伝説」で岩戸の前で舞を舞って岩戸から天照大神(アマテラスオオミカミ)が顔を出すキッカケを作った神様です。

第十三座「龍宮舞(海津宮舞)」

龍宮舞/海津宮舞(りゅうぐうまい/わたつみやのまい)は龍宮(海津宮)をテーマにした海の祝祭舞。海の恵み・航海安全・豊漁を祈り、龍宮への往来が描かれる数少ない物語性が強い舞です。

第十三座「龍宮舞(海津宮舞)」に登場する「海幸彦」
第十三座「龍宮舞(海津宮舞)」に登場する「海幸彦」

登場するのは「海幸彦」こと「火須勢理命(ホスセリノミコト)」と「山幸彦」こと「彦火火出見命(ヒコホホデミノミコト)」。

瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)と木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)の子供である三兄弟のうちの二人とされる神様で、通説では長男の火照命(ホデリノミコト)が「海幸彦」とされていますが、この演目では次男のホスセリが海幸彦として釣竿を持って登場します。

釣り竿と弓を交換する「海幸彦」と「山幸彦」
釣り竿と弓を交換する「海幸彦」と「山幸彦」

「海幸彦」と「山幸彦」が自身の猟具である釣り竿と弓を交換し、それぞれ普段と逆の立場で獲物を探します。しかし山幸彦が誤って海で釣り針を失くしてしまい、大げんかの末二人は仲違いをします。

そこで山幸彦は釣り針を探すために龍宮(海津宮)へと向かう…というストーリーです。

唐獅子をあやす海幸彦(火須勢理命)
唐獅子をあやす海幸彦(火須勢理命)

途中、突如として唐獅子が登場しますが、これは「時に荒れ狂い、時に穏やかな海の波」を表現しているそうで、神楽では荒魂(あらみたま)=自然の荒々しい側面を表す存在としてしばしば唐獅子が登場することがあるようです。

第三座「剱舞」

第三座「剱舞」に登場する「大久米命(オオクメノミコト)」
第三座「剱舞」に登場する「大久米命(オオクメノミコト)」

剱舞(つるぎまい)は剣を用いて邪気を祓い、武の神徳を示す舞。

第三座「剱舞」に登場する「大久米命(オオクメノミコト)」
第三座「剱舞」に登場する「大久米命(オオクメノミコト)」

“護国・鎮護・悪霊退散”の意味が強く、神武天皇(初代天皇)の東征に従軍したとされる人物「大久米命(オオクメノミコト)」が登場します。


まとめ

都市化が進む場所では、土地の新陳代謝が進むたびに「地域の歴史」というものはどうしても薄まっていってしまいがちですが、そんな仙台市に今も残る貴重な民俗芸能「榊流青麻神楽」。

青麻神社の神楽殿
青麻神社の神楽殿

見ることができる機会は非常に限られますが、多くの人に興味を持ってもらい、今後も末永く継承されていってほしいですね。

【参考資料】

青麻神社<Information>

  • 名  称:青麻神社
  • 住  所:〒983-0821 宮城県仙台市宮城野区岩切青麻沢32
  • 電話番号:022-255-6670
  • 公式URL:青麻神社公式HP

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