東北の鉄道廃線跡を楽しむ!レールバイクやトロッコで線路を走ってブルートレインに泊まれる小坂鉄道(後編・あけぼの宿泊体験記)

小坂鉄道(正式名称:小坂製錬小坂線)は、今も小坂町にある小坂製錬株式会社が運営していた、大館市と小坂町を結ぶ路線距離22.3kmのローカル貨物鉄道路線です。

小坂鉱山の金・銀・銅・亜鉛などの鉱石の輸送が始まりで、鉱山が閉山してからは同社が製造する濃硫酸の輸送に利用され、同時に旅客営業も行われていました。

1994年10月に旅客営業が廃止された後も濃硫酸を輸送していましたが、2008年3月にはそれも休止となって、2009年4月1日に全線が廃止されました。


懐かしいさまざまな鉄道車両と出会える小坂レールパーク

小坂駅

廃止になった小坂鉄道の小坂駅の設備や線路、使われていた車両が当時のままの姿で大切に保存されていて、鉄道好きに人気のレールパークです。

小坂駅
引き込み線などがそのまま残されている小坂駅構内

駅構内の奥まで多くの線路が残されているほか、腕木式信号機や手動転轍機など、今では珍しい設備などもそのまま残されています。

また、駅構内の線路を走るレールバイクや観光トロッコなど、乗車体験を楽しめるアトラクションなどもあって、大人も子どもも1日中遊べるレールパークです。

小坂鉄道保存会
整備のためか構内を行ったり来たりしていた観光トロッコ

パークは、小坂町のレールパーク構想の実現と町の活性化を目指す地元ボランティア団体、「小坂鉄道保存会」によって運営されています。


懐かしのブルートレイン、寝台特急「あけぼの」

あけぼの
青森駅の「あけぼの」出典:Wikipedia(ファイル名:EF81 138 Akebono Aomori 20110611.jpg、撮影者:駅弁)

上野駅と青森駅の間を、東北本線・高崎線・上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線経由で、約12時間30分でつなぐ寝台特急でした。

21世紀になってブルートレイン廃止が相次ぐ逆風の中でも、プライバシーを守れる個室が多い「あけぼの」は根強い人気がありました。

あけぼの
A寝台に宿泊するともらえた「あけぼの」のヘッドマークシール付ポーチ(歯ブラシ、石鹸、くし、ヘアリキッドなど)

しかし、2014年3月15日のダイヤ改正の際に、車両の老朽化などを理由に定期運行が終了となり、臨時運行も2015年1月4日が最後となってしまったのでした。


レールパークで寝台列車として復活した「あけぼの」

あけぼの
4両編成の「あけぼの」と、手前はこの日はお休みだったレールバイクたち

「あけぼの」に使用されていた24系車両のうち、次にご紹介する4両が稼働状態のままで保存され、「列車ホテル」として生まれ変わり「寝台」として働いています。

あけぼの
陽が沈み、「出発」の時を待つかのような「あけぼの」

「列車ホテル」は新型コロナ禍と車両の老朽化による漏水のため、2021年から宿泊営業が休止されていましたが、2024年に宿泊営業が再開されました。

スロネ24-511:A寝台個室・シングルデラックス(宿泊定員1~2名)

あけぼの
A寝台はここの編成では3号車

1両に個室が11室あり、室内には枕木方向に配置された2段ベッドが設置され、上段が収納式になっていて、室内に折りたたみ式の洗面台が付いています。

下段のベッドは昼間ソファとして使用され、2名がゆったりくつろいで座ることができて快適です。

あけぼの
A個室シングルデラックスの室内、左側の壁に付いているのが暗証番号で開閉するデジタルロックキー

部屋にはデジタルロックキーが付いていて、外出時に4桁の暗証番号を入力して、入室する時にその番号を入力するシステムでキーやカードを使いません。

オハネ24-555:B寝台個室・ソロ(宿泊定員1名)

あけぼの
きれいに磨かれている2号車のB寝台個室、上段の窓が天に向かって屈曲しているのがわかる

ベッドが線路に並行になっている個室は1階と2階の2タイプがあり、それぞれ交互に配置されていて、扉はシリンダー錠なので宿泊時に鍵が渡されます。

あけぼの
B寝台個室の個室の下段は折りたたみ式のテーブルがあり、1人でゆったり過ごせる

2階の個室はやや狭い感じがありますが、天井部分まで開けた車窓は外部から覗かれる心配がなく、星空を眺めながら寝ることができるのでおすすめです。

オハネフ24-12:B寝台開放(宿泊者の共有スペースとして使用)

あけぼの
上段に上る際は、窓の前にある折りたたみ式の階段を引き出して上る

車掌室がある「緩急車」で、1つの開放型のブロックに4名分の寝台がある2段式B寝台で、それぞれの寝台はカーテンでプライバシーが保たれます。

あけぼの
廊下の折りたたみ式の腰かけは、就寝時間後に車窓を眺めるのにちょうど良い

ここでは宿泊用としては使われておらず、「列車ホテル」の宿泊者が自由に食事や休憩ができる「共有スペース」として利用されています。

カニ24-511:電源車

あけぼの
電源車は普段は立ち入り禁止だが、イベントの時に中を見学できることがある

カニ24型の500番台は、青函トンネルを通るブルートレイン用に、青函対応・耐寒・耐雪改造などが施され、「北斗星」や「エルム」などで使われていた電源車です。

動態保されている511は緊急予備電源車とされ、「あけぼの」、「日本海」、「出雲」などに使用されていました。


A個室シングルデラックスに2人で泊まってみた!

小坂駅
駅舎内の切符売り場が事務室、上の黒板には当時の時刻表や運賃などが書き込まれ雰囲気十分

「小坂駅」駅舎の「切符売り場」で、予約名を告げて宿泊料金を支払うと11室のうちから泊まる部屋が伝えられ、A個室6番のシングルデラックスが割り当てられました。

小坂駅
上が現役だったころの「あけぼの」の切符で下は小坂駅で発行された切符、どちらも6番個室で車掌さんの検札入り

実は2008年(平成20年)、まだ定期運行していた「あけぼの」のA個室に青森駅から上野駅まで乗車したことがあり、その時も今回と同じ「6番」の部屋でした。

あけぼの
入口の向こうは走るホテル、ワクワクの瞬間!

支払いを終えると「待合室」に待機しているJR制服姿の保存会の方から、宿泊に際してのさまざまな説明があり、それが終わるといよいよ乗車です。

あけぼの
機能的な室内、ソファは固めで座り心地はよい、右側の奥は小さいテーブル、手前は洗面台

6番のドアを開けると、下段はソファの状態のままですが、上段のベッドは出された状態になっていました。

あけぼの
上段のベッドを収納すると広い空間が現れる

使用しない時には上段のベッドを収納すると、大きな車窓と相まって開放感があります。

あけぼの
重い荷物を収納棚に上げるのはひと苦労

天井が高く、ドアの上に広い収納棚がありますが、そこにのせられない大きな荷物は足元に置くことになります。

あけぼの
がっしりしたハシゴは、就寝時以外はじゃまになるのでここに収納

ドア横のカーテンはとなりの部屋との仕切りのドアがあり開放すると4人部屋として利用することができ、ドアに備え付けられたハシゴは上段ベッドに上るためのものです。

あけぼの
使用出来ない洗面台ながらきれいな状態、昔もらった「あけぼの」ポーチを置いてみた

車両は共有トイレや洗面台が使用できず、室内の洗面台も使用できませんがきれいに掃除されていて、往年の雰囲気がそのまま残されています。

あけぼの
車窓の下にあるコントロールパネルは部屋の照明スイッチのみ使用可

室内には就寝時間まで実際に録音された列車の走行音が流れ、たとえ揺れや振動がなくとも、しだいに本当に乗車しているかのように思えてくるから不思議です。

16時からは部屋の中に列車の走行音が流されていて(22時まで)、鉄橋を渡る音や列車すれ違いの時の音なども楽しめます。

小坂鉄道保存会のおもてなし!ブルトレ乗車気分を盛り上げてくれる「魅せ鉄」活動

小坂鉄道保存会の皆さんはどこから見ても鉄道員

駅員衣装の小坂鉄道保存会有志による「おもてなし」として、「乗車」時の改札や車内検札のほか、「あけぼの」の停車駅の到着時間案内などの車内放送が実施されます。

小坂鉄道保存会
乗車時に渡されたお知らせ

保存会有志の参加状況によっては実施されないことがありますが、筆者が宿泊した日は、上野駅13番線発車から翌日朝の青森駅到着まで楽しむことができました。

あけぼの
使用できない共有の洗面台は本棚として使われていて、鉄道関係の本が置かれている

放送は列車すれ違いのための待ち合わせ停車のお知らせや、到着駅の乗り換え案内など、「あけぼの」の現役時代を偲ぶには十分にエモいです。

そして翌朝7時には「八郎潟に到着7分前」と、おはよう放送が流れ、9時前に「青森に到着(実際には9時52分の到着でした)」との車内放送があり下車(チェックアウト)となります。

旧駅舎を利用した宿泊サポート設備

あけぼの
3室ある男性用シャワールーム(女性用も3室)

車両の中の洗面台やトイレは使用できませんが、列車を降りてすぐの駅舎の中に宿泊者用のトイレとシャワー室(男女それぞれ3室ずつ)に休憩室があります。

あけぼの
駅舎内の休憩室、奥にはシーツなどのリネンが置かれ毛布にカバーをかけるためのテーブルがある

休憩室には大型テレビ・電子レンジ・給湯ポット・小型ロッカーなどがあるほか、室内で使う毛布にカバーを取り付ける作業用のスペースがあります。


ブルートレインといえば駅弁!「あけぼの」といえば花善の鶏めし!

鶏めし弁当
昔と変わらない鶏めし弁当の包み紙

星空の下を走る列車の車窓を流れる街の灯りを眺めながら、駅弁をつまみにのんびり一杯、というのがブルートレインの醍醐味でした。

昭和の時代は、駅に列車が停まるとホームに駅弁の立ち売りがいて、急いで弁当やお茶を買い、発車ベルが鳴るなかを慌てて車内に戻る光景が見られたものです。

「あけぼの」が停車する大舘駅前の、鶏めし弁当で知られる花善さんは立ち売りもしていましたが、予約すると列車のデッキまで運んでくれるシステムがありました。

鶏めし弁当
甘しょっぱく煮付けられた鶏肉と、秘伝のスープで炊き込まれた「あきたこまち100%」のごはん

筆者が以前に青森発「あけぼの」に乗車した時は、そのシステムで大舘駅に停車している間にデッキで代金を払って鶏めし弁当を受け取りました。

今はもうこのシステムはなくなりましたが、デッキで受け取った鶏めし弁当がまだ温かかったことを覚えています。

鶏めし弁当
この組み合わせが最高!車内に流れる列車の走行音が調味料となって美味しさがさらにUP!

そういうわけで、今回宿泊時の晩ごはんは大舘駅前の花善で購入した鶏めし弁当をチョイスして、共有スペースの開放B寝台でビール片手に味わいました。

なお、宿泊車両内での飲食は禁止されていますが、車両をきれいに末永く利用するためのマナーとご理解ください。


「あけぼの」の予約方法と「乗車」時に自分ですること

小坂駅
小坂駅の駅舎の屋根にかかる虹

宿泊営業日は2025年(令和7年)の場合、5月から10月末までの間の土曜日がメインですが、金曜日や日曜日に泊まれる月もあります。

公式サイトで営業予定と予約状況をチェックして、電話で希望日時と宿泊人数、寝台の種類を告げて空いていれば予約完了です。

宿泊代金は当日に小坂駅の窓口で支払い、待合室で諸々の説明を受けて指定された部屋に入ると、室内には裸の毛布と枕が置かれています。

小坂駅
毛布にカバーを付ける時に使用するテーブル、付け方がていねいに書かれたマニュアルがある

ベッドメイキングはセルフで、駅舎の休憩室にあるシーツを自室に持ち帰ってかけるほか、毛布を部屋から持参して休憩室に用意されているカバーを取り付ける作業が必要です。

なお、夜間は待合室と事務室が閉まって無人になりますが、もし夜間にトラブルが発生しても、駅舎に警備管理スタッフが1名常駐しているので安心です。

小坂駅
使用済みのリネンはチェックアウトの際に青いワゴンの中に入れる。手前にあるのは共有の電子レンジと給湯ポット

翌朝は9時まで滞在することができ、使用したシーツなどのリネン類を駅舎内の指定場所に返すだけでとくに手続きは必要ありません。


まとめ

宿泊日によっては、「あけぼの」をホームから車両展示場まで移動する際に、有料でB寝台開放に乗車できる体験乗車プランがあります(公式サイトをご覧ください)

列車ホテル「あけぼの」の2025年の宿泊営業の最終日は10月25日ですが、すでに予約はいっぱいです。

かなり早い時期に満室になるので、来年の宿泊を希望されるなら早目の予約をおすすめします。

2026年(令和8年)の営業は、決まりしだい公式サイトに発表されるので、宿泊料金は公式サイトでご確認してください。


小坂鉄道レールパーク <Information>

  • 施設名称:小坂鉄道レールパーク
  • 所在地 :秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字古川20-9
  • 電話番号:0186-25-8890
  • 営業期間:4月1日~11月23日
  • 営業時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
  • 休園日:水曜日(水曜日が祝日の場合、翌木曜日)
  • 乗物休止日:レールバイク 平日(土日・祝日の運行)
  • 乗物休止日:観光トロッコ 火曜日
  • 入園料:乗物体験料金も含め公式サイトをご参照ください
  • 公式URL:小坂鉄道レールパーク 公式サイト

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