
青森ヒバ最強説の核心は、日本では青森ヒバにしか含まれない“ヒノキチオール”だ
目次
青森ヒバは、900以上年建て替えられることなく現存する平泉(岩手県平泉町)の中尊寺金色堂(ちゅうそんじこんじきどう)をはじめ、江戸時代初期に建立された弘前城や1907年(明治40年)築の太宰治(だざいおさむ)の生家「斜陽館」など、建材としての優位性は証明されていますが、もうひとつ私たちに素晴らしい恩恵を提供してくれています。それは[香り]です。
樹木が放つ香りは、自分自身を守るための最大の武器

樹木はおのおの爽やかな香りを持っていますが、その代表がヒノキ(檜)でしょう。日本人が大好きなその香りは、建物や建具、浴槽などに盛んに使われています。青森ヒバもそれに勝るとも劣らない癒やしの香りが漂います。それはとても健康にも良い香りです。
樹木は自然界では芽吹いたそのときから同じ場所で成長します。天候がどうあれ、害虫の攻撃にさらされてもその場を逃げることはできません。そのため根をしっかり張り、幹は丸く、葉や枝も風雨の力を逃がす構造に進化してきました。そして害虫やほかの植物の進入に対しては、香りを発する成分を自ら生成して敵を寄せ付けないように自己防衛しているのです。
樹木にはおのおの独自の香り
樹木の香りは、長い地球の歴史の中で育ってきた環境によって独自の進化をとげ、その香りの成分は種類によって千差万別です。香りの強い木もあれば、ほとんど香らないものもあります。香りの強い樹木の代表例としてクスノキ(楠)があります。その香りは“清涼感と鼻にスーッと抜けるような”と表現されるもので、殺虫力が極端に強く、衣類の防虫剤“樟脳(しょうのう)”として使われています。
青森ヒバも、香りが強い樹木です。しかしその成分はクスノキやヒノキ、スギなどとは同じではありません。おのおのにその樹木を特徴づける構成になっているのです。樹木の香り成分は、葉や木質部分に含まれていて、精油(せいゆ/エッセンシャルオイル/essential oil)と呼ばれています。
フィトンチッドは、“植物が攻撃してくる外敵をを殺そうしているもの”という意味

香りは揮発され空中に漂うことから人の臭覚に反応します。精油は液体で、成分ごとに揮発して気体になる温度(沸点/ふってん)が違ってきます。沸点の低いものから香りとして感じ、1日や季節、天候などによって気温が上下する森の中でも状態によって感じる香りは違います。温度の高い木造の浴室では、自然界では揮発しない成分も香るため、より複雑な香りになるのです。
もちろん香りは人の体にとっていいものと悪いもの(硫化水素など)もあるのですが、樹木から発せられる香りは“フィトンチッド/phytoncide”といって、森林浴や入浴ではその爽やかな香りで人々を癒やしてくれます。実は“フィトンチッド”の語源はギリシア語で<フィトン=植物>、<チッド=殺そうとするもの>なのです。
青森ヒバの香りは、癒やし効果のほかに、鎮静作用や健康効果も
青森ヒバの香りは、よく知られているヒノキの柔らかいよりも力強く、少し刺激的に感じます。それは癒やし効果だけでなく、鎮静作用とか血圧を下げるなどの健康効果もある、青森ヒバ特有の香りです。※参照:谷田貝東京大学大学院教授の講演概要メモ2003年
フィトンチッド降り注ぐ森林浴が楽しめる青森ヒバの森「眺望山」

眺望山は、津軽半島南側の付け根部分に位置する標高約143mの低山で、青森ヒバのうっそうとした林の中に、遊歩道も整備された森林浴におすすめのハイキングコースです。一帯は「眺望山自然休養林」に指定され、青森ヒバの自然林のほかにも、植栽後100年近くになる青森ヒバやヒノキ、スギなどの人工造林地、ブナをはじめとする広葉樹が混在する森などがあり、さまざまなフィトンチッドが楽しめます。

頂上までは急な坂道もなく、山頂の高さ19mほどの展望台からは、陸奥湾や八甲田山の大パノラマが楽しめます。
眺望山は11月中旬頃から4月下旬頃・5月上旬まで冬季閉鎖されます。閉鎖日および再開日は年度によって違いますので、確認が必要です。
- 青森森林管理署:電話番号 017-781-0131
- 眺望山・梵珠山自然休養林保護管理協議会事務局(青森市農地林務課内):電話番号 0172-62-1146

眺望山自然休養林 Information
- 施設名称:眺望山自然休養林(リクリエーションの森)
- 所在地:青森県青森市大字内真部内真部国有林
- 問い合わせ先:
- 青森森林管理署:電話番号017-781-0131
- 眺望山・梵珠山自然休養林保護管理協議会事務局(青森市農地林務課内):電話番号0172-62-1146
- ※11月中旬頃から4月下旬頃・5月上旬まで冬季閉鎖
- ※クマの出没が多くなっています。鈴やホイッスル、クマ撃退スプレーなどを所持し、単独行動を下げるなど十分に気をつけて行動してください。またスズメバチにも注意してください
- 眺望山自然休養林
- アクセス:
- 公共交通機関/東北・北海道新幹線・奥羽本線新青森駅から約20km、JR奥羽本線・青い森鉄道青森駅から約20km、津軽鉄道金木駅から約15km(路線バス等の連絡はありません)
- 車/東北自動車道青森ICから約20km
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青森ヒバの強さは、実験でも証明
青森ヒバの香りは多くの精油成分が合わさって漂ってくるのですが、精油には一つひとつに自分を守る大切な役割があります。それが青森ヒバを丈夫で長持ちさせる要因となっているのです。
青森ヒバがどのくらい丈夫なのかを青森県森林組合連合会の資料をもとに紹介しましょう。
■シロアリに強い
食害がひどいイエシロアリを使った実験で、比較的シロアリに強いとされているクロマツやヒノキはかなり食害があったのですが、青森ヒバは全く被害がありませんでした。(1996年宮崎大学の実験による)。その秘密は、シロアリを寄せ付けないだけでなく、殺してしまう精油が存在していたのです。
■腐りにくい
木材はキノコ類やさまざまな木材腐朽菌類により徐々に腐っていきますが、10種類以上の木材を比較した結果、青森ヒバが最も強いという実験結果が得られています。(1962年青森営林局の実験による)
■カビを寄せ付けない
青森ヒバをはじめ、ヒノキ、スギ、ブナなど7種類の一般的に建材として使われている木材の木口面(切ったときの表面)にカビ菌を塗り室温で10日間放置したところ、青森ヒバの周囲にはカビが全く生えない抗菌力を示しました。(青森県工業試験場の実験による)
青森ヒバを守るヒノキチオール

この日本で最強級といわれる材質は、青森ヒバに含まれる“ヒノキチオール”という成分が大きく影響しています。“ヒノキチオール”は、名称に[ヒノキ]と付いているので、ヒノキ(檜/ニホンヒノキ)に含まれているように思われがちなのですが、実は日本の樹木ではほとんど青森ヒバにしか含まれていません。
それなのにどうして“ヒノキ”チオールとなったのか。1930年代にヒノキ科の植物“タイワンヒノキ”から発見された成分で、当時台湾帝国大学の教授だった野副鐵男(のぞえてつお)により抽出されました。タイワンヒノキから発見されたので“ヒノキチオール”と名付けられたのですが、のちに日本のヒノキには含まれていないことが分かり、日本人にとってわかりにくい名称になってしまったのです。
ヒノキチオールは、強い抗菌・防腐作用をもつ天然成分として抽出され、消臭、除菌、防虫などの用途に使われています。代表的なものに化粧品、歯磨き粉、頭皮ケア商品などがあり、その香り成分はアロマテラピーとしても高い人気を誇ります。
青森ヒバの強さは、水害を防ぐ「坪毛沢木製えん堤群」に採用

この青森ヒバの防蟻性(ぼうぎせい)、防腐性、抗菌性を端的に示している歴史的建造物があります。それが「坪毛沢木製えん堤群(つぼけさわもくせいえんていぐん)」です。
「坪毛沢木製えん堤群」は、大正時代から昭和に造られたえん堤(堰堤)です。えん堤は、勢いよく流れ落ちる水流の勢いをせき止めて、水害を防ぐために設置される小さいダム上の構造物で、現代では基本的に水や圧力に強い鉄筋コンクリートで造られています。
坪毛沢は、五所川原市の国有林内にある渓流で、津軽半島の付け根のほぼ中央に位置しています。この一帯は非常に水に弱い土質で、地元住民からは、暴れ沢として昔から恐れられていました。

1916年(大正5年)に水害対策としてこの坪下沢に堰堤が造られることになったのですが、場所的に山麓からの運搬経路がなく、また地質的にもコンクリートを支える強度がないということから、木で造ることになり、その資材として水に強くしかも付近に多く生育していた青森ヒバが選ばれたのです。当時えん堤は6基設置されました。
えん堤はその後、昭和28年から33年にかけて6基が追加され、合計12基となっています。 えん堤の現在の状況は、2020年(令和2年)年に津軽森林管理署により行われた調査、経過観察の報告書に詳しく書かれています
それによると「大正5年製の6基のうち、1基のみ流出し5基は現存。状態は「水衝部の部材が摩耗により細くなり結束状態が緩んで、一部が抜け落ちたり袖部の破損がみられるが、本来の目を今も果たしている」ということです。(「坪毛沢ヒバ木製えん堤~令和 2 年現況と経過観察から分かったこと~」 津軽森林管理署金木支署 一般職員 茂木祐太)

昭和時代の6基は袖部などで欠損がみられますが、部材の摩耗は進行しておらず、施工当時の状態を維持しています。 大正5年から100有余年、その間には何回もの大水や土石流にあったにもかかわらず、大正時代の1基だけが失われはしたものの、あとは完璧ではないとしてもその役割を果たしている青森ヒバ製のえん堤。その高度な設置技術とともに、青森ヒバの強靱な耐水性が改めて確認された事例となりました
坪毛沢木製えん堤群Information
- 施設名称:坪毛沢木製えん堤群
- 所在地:五所川原市飯詰山国有林内・坪毛沢流域
- 問い合わせ先:津軽森林管理署金木支署
- 電話番号:0173-53-3115
- URL:坪毛沢木製えん堤群
- ※観光地ではないのでアクセス方法は省略します





















