【秋田県にかほ市】高原、湿原、渓谷、滝。鳥海山麓は大自然の宝庫。先人たちの知恵がもたらした自然との共生も-鳥海山・飛島ジオパーク【にかほエリア②】

鳥海山・飛島ジオパーク【にかほエリア①】では、「九十九島(象潟)」や「三崎海岸」など日本海沿岸のジオサイトをご紹介しましたが、【にかほエリア②】では、内陸部のジオサイトや地球環境と共生するための先人の知恵などをご紹介します。

ブナ・ミズナラの巨木群や希少なコケが生育する湿原。中島台・獅子ヶ鼻湿原

獅子ヶ鼻湿原
木道による遊歩道が整備されている中島台・獅子ヶ鼻湿原 ©にかほ市文化財保護課

中島台は、450mから830mほどの鳥海山麓に位置する森林・湿原地帯で、林野庁の中島台レクリエーションの森「鳥海自然休養林」に指定されています。約942ヘクタール(東京ドーム約200個)の広さがあり、ブナやミズナラの巨木や、溶岩流の末端から流れ出る湧水によってできた獅子ヶ鼻湿原(ししがはなしつげん)など、鳥海山がもたらした豊かな自然が広がっています。

中島台・獅子ヶ鼻湿原には一周約5kmの木道による散策コースが整備されています。散策コース沿いに「あがりこ」と呼ばれる異形のブナやミズナラの巨木が広がり、林野庁の[森の巨人たち]にも選ばれているブナの巨木“あがりこ大王”などとともに神秘的な景観をつくっています。

森の巨人、ブナの巨木「あがりこ大王」 ©秋田県

獅子ヶ鼻湿原は標高550mにあり、豊富な湧水に涵養され多様な水生湿生植物が生育しています。中でもハンデルソロイゴケやヒラウロコゴケは世界的にも希少なコケで、それらのコケが混生してボール状に成長したものを通称“鳥海マリモ”と呼んでいます。そのほか同湿原には「出つぼ」と呼ばれる湧水地や鳥海山の溶岩流末端崖なども見られ、国の天然記念物に指定されています。

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  • 施設名称:中島台・獅子ヶ鼻湿原
  • 所在地:秋田県にかほ市象潟町横岡字中島岱国有林
  • 電話番号:0184-43-6608(にかほ市観光協会)
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線象潟駅から車で約20分、徒歩で散策
    • 車/日本海東北自動車道象潟ICから約15分

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何回もの噴火で流れ出た溶岩がミルフィーユ状に重なる、垂直に立つ500mの壁「奈曽渓谷」

500mにもなる垂直の壁。奈曽渓谷は日本有数の川による浸食渓谷 ©鳥海山・飛島ジオパーク

奈曽渓谷(なそけいこく)は、鳥海山の6合目付近にある渓谷で、深さは約300m~500m。溶岩の層を川が長い年月をかけて削り、V字型の渓谷を創り出しました。切り立つ崖は、60万年前頃から噴火を繰り返した鳥海山の溶岩が重なって、まるでミルフィーユのようになっているのが分かります。渓谷の一番下の溶岩は40~45万年前のもので、一番上が10万年前頃だといわれています。

奈曽渓谷は下から見上げるだけでも大迫力ですが、鳥海山の5合目にある鉾立(ほこたて)展望台からは、奈曽渓谷を上から見渡せます。鉾立展望台眼下に望める渓谷は深さ337mで、東京タワー(333m)がすっぽり入ってしまいます。鉾立展望台には、鳥海山の中腹を走る“鳥海ブルーライン(11月上旬~4月下旬は冬季閉鎖)”で上れます。鉾立展望台からは飛島や男鹿半島までも眼下に広がり、にかほエリア1.2を争う絶景ポイントです。

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  • 施設名称:奈曽渓谷(鉾立展望台)
  • 所在地:秋田県にかほ市象潟町小滝(鉾立)
  • 電話番号:090-2021-0270(鉾立ビジターセンター)
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線象潟駅から完全予約制乗合登山バス・鳥海ブルーライナーで約35分または車で約30分
      • ※鳥海ブルーライナーは6月から10月上旬の土日祝運行
        • ※山岳ハイウェイ「鳥海ブルーライン」は11月上旬~4月下旬冬季閉鎖
  • 車/日本海東北自動車道象潟ICから約15分

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山伏が修行した名瀑、奈曽の白滝と金峰神社

奈曽渓谷の入口にある金峰神社奥の奈曽の白糸。山伏が修行した聖なる滝 ©鳥海山・飛島ジオパーク

奈曽の白滝は、鳥海ブルーラインの秋田県側の始点付近にある名瀑です。鳥海山を修行の場とする修験者(しゅげんじゃ/山伏)の拠点だった金峰神社(きんぽうじんじゃ/金峯神社)の境内を通り抜け、長い階段を上り下りした先に滝があります。高さ26m、横幅11mで、国の名勝に指定されています。滝壺にも下りられるほか展望台、境内、吊り橋などさまざまな角度で滝を楽しめます。

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  • 施設名称:奈曽の白滝/金峰神社
  • 所在地:秋田県にかほ市象潟町小滝字奈曽沢大ヒド
  • 電話番号:0184-43-6608(にかほ市観光協会)
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線象潟駅から車で約15分、徒歩で散策
    • 車/日本海東北自動車道象潟ICから約6分

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快適な山岳ハイウェイ「鳥海ブルーライン」

鳥海ブルーライン
快適爽快な山岳観光道路「鳥海ブルーライン」 冬季は閉鎖 ©にかほ市

鳥海ブルーラインは、にかほ市象潟町の奈曽の白滝から山形県遊佐町(ゆざまち)吹浦(十六羅漢)まで約34.9kmの山岳観光道路です。観光名所の「十六羅漢岩(じゅうろくらかんいわ)のある遊佐町吹浦は標高0mで、最高点は鉾立(奈曽渓谷鉾立展望台)の1,150m。標高差は1,000m以上、秋田県側は草原の中を、山形県側はブナ林の間を抜けて走ります。秋田県側からは海側に日本海が広がり、反対の山側には奈曽渓谷の雄大な景観が迫ってきます。

鳥海ブルーラインは豪雪地帯を抜けるため11月上旬から4月下旬は閉鎖になります。通行料は無料ですが、自転車ツーリングの名所となっていますので、運転には十分気をつけてください。

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  • 施設名称:鳥海ブルーライン
  • 区間:
    • 秋田県側/県道131号・鳥海公園小滝線小滝(県境)から小滝(奈曽白滝)まで 18.1km
    • 山形県側/県道210号・鳥海公園吹浦線吹浦(県境)から吹浦(十六羅漢岩)まで 16.8km
  • 通行料金:無料
  • 通行可能期間:4月下旬~11月上旬(冬季閉鎖)
    • ※毎年の気象状況により通行可能期間は変動
  • 閉鎖・規制等の情報:

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鳥海山の山体崩壊で流れ落ちてきた土砂が山麓に積もった標高500mの「仁賀保高原」

仁賀保高原
仁賀保高原の中心施設「ひばり荘」 ©にかほ市

仁賀保高原は鳥海山の山体崩壊でなだれのように落ちてきた岩(岩なだれ)でできた標高500mほどの丘陵地帯です。草原の中には大小の湖沼や湿原、大規模な風力発電施設などがあります。仁賀保高原の拠点施設の「ひばり荘」の展望台からは、雄大な鳥海山はもちろん、日本海も望め、360度の大パノラマは必見です。

牧場、キャンプ場なども点在していて、サイクリングロードが整備されています。「土田牧場」では、飼育しているジャージー牛の生乳を使った牛乳やヨーグルト、チーズなどが大人気。ソーセージ類も評判です。

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  • 施設名称:仁賀保高原
  • 所在地:秋田県にかほ市馬場字曲師小屋ほか
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線仁賀保駅から車で約20分、または乗り合いタクシー(完全予約制・2名から)利用
    • 車/日本海東北自動車道仁賀保ICから約20分
  • ※乗り合いタクシー
  • 電話番号:0184-43-2030(象潟合同交通)
  • 営業期間:7月1日~11月30日
  • 予約:完全予約制・2名から
  • URL:にかほ市乗り合いタクシー

  • 施設名称:ひばり荘/仁賀保高原展望台
  • 所在地:秋田県にかほ市馬場字曲師小屋4-5
  • 電話番号:0184-43-3230(にかほ市観光課)
  • 営業時間:9:00~17:00(キャンプ場は受付時間)
  • 営業期間:5月~11月末

  • 施設名称:土田牧場
  • 所在地:秋田県にかほ市馬場字冬師山4-6
  • 電話番号:0184-36-2348
  • 営業時間:
    • 3月~12月/9:00~17:00
    • 1月・2月/9:30~17:00
  • 定休日:不定休(事前に要問い合わせ)
  • URL:土田牧場

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日本最大級の風力発電所「新仁賀保高原風力発電所」

新仁賀保高原風力発電所
脱酸素の柱、リプレイス後の最新風力発電施設「新仁賀保高原風力発電所」 ©J-POWER[電源開発(株)]

仁賀保高原には2001年から稼働している「仁賀保高原風力発電所」と2020年に営業運転を開始した「にかほ第二風力発電所」(風車18基/出力4万1,400kW)がありますが、「仁賀保高原風力発電所」は2021年からリプレイス工事に入っていました。

2024年3月工事が完成し、全く新しい「新仁賀保高原風力発電所」として営業運転を始めました。「新仁賀保高原風力発電所」は、もともと5基の風車(単機出力1,650kW)だったのを、リニューアルで国内最大級の4,300kW風車6基へ更新されました。なお、出力はリプレイス前から変更なく(従前の出力24,750kW内で抑制運転を実施)、仁賀保高原での総発電量は6万6,150kWとなっています。

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  • 施設名称:新仁賀保高原風力発電所
  • 所在地:秋田県にかほ市
  • 事業会社:株式会社ジェイウインド(Jパワーグループ)
  • ※Jパワーは電源開発(株)のコミュニケーションネームです

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冷たい雪解け水を稲作に適した水温に上げる「上郷の温水路群」

温水路が造られたおかげで、冷たい水が温かくなり、作物が育つように ©鳥海山・飛島ジオパーク

上郷の温水路群は、鳥海山の冷たい雪解け水を稲作に利用していた農人たちが、冷たすぎる水をなんとか稲作に適した温度まで温めるため考え出した温水路です。鳥海山の雪解け水は夏でも10℃前後と、稲作には冷たすぎ、生育が良くありません。そこで、水路幅を広く、浅く、段差を設けるなどをして、雪解け水を日光によくあてて温める方法が考え出されました。そのおかげで2℃から8℃も水温が上がり、米の収穫量も飛躍的に伸びたのです。

温水路が作られたのは1927年(昭和2年)、長さ648mの長岡温水路で、日本で最初の温水路です。その後も大森温水路、水岡温水路など多くの温水路が完成し、総延長は6.28kmにもなっています。

上郷の温水路群」は農林水産省の「疏水百選」、秋田県指定有形文化財(建造物)です。

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  • 施設名称:上郷の温水路群
  • 所在地:秋田県にかほ市象潟町横岡ほか
  • 電話番号:0184-43-3230(にかほ市観光課)
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線象潟駅からタクシーで約5分など
    • 車/日本海東北自動車道象潟ICから約5分など

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大きな波や風から家や農地を守った「由利海岸波除石垣」

由利海岸波除石垣
家や農地を守った江戸時代に造られた堤防大きな波や風から家や農地を守った「由利海岸波除石垣」 ©鳥海山・飛島ジオパーク

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  • 施設名称:由利海岸波除石垣
  • 所在地:秋田県にかほ市飛、にかほ市芹田
  • 電話番号:0184-43-3230(にかほ市観光課)
  • アクセス:
    • 公共交通機関/(飛)JR羽越本線金浦駅からタクシーで4分、(芹田)JR羽越本線仁賀保駅からタクシーで約6分
    • 車/(飛)日本海東北自動車道この金浦ICから約5分(芹田)日本海東北自動車道仁賀保ICから約7分

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かつて日本有数の産出量を誇った「院内油田」

院内油田
産油量の豊富さを表すチャイコフスキー多数の井戸。全盛期の「院内油田」 鳥海山・飛島ジオパーク

院内油田(にかほ市院内)は、かつては国内有数の産出量を誇った油田で、その跡地は経済産業賞選定の[近代化産業遺産群33「新潟など関東甲信越地域で始まった我が国近代石油産業の歩みを物語る近代化産業遺産群」]として保存されています。

日本の石油産業は、16世紀後半に越後(新潟県)で採掘が始まりました。本格化したのは明治時代初期で、アメリカから技術者を招き、甲信越、北日本を中心に石油埋蔵調査しています。

明治以降初めて石油を産出したのは、静岡県の相良町(さがらちょう/牧之原市相良)で、1873年のことでした。その後新潟県の日本海側に埋蔵量の多い油田が見つかり、日本の石油産業は活況を呈します。

明治末期には石油開発の波は新潟県のみならず、秋田県にも及んできます。1914年(大正3年)に秋田市で掘り当てた油田からは大量の原油が自噴したのです。それに注目した石油会社が多く現れ、秋田県に石油開発ブームが到来します。

にかほ市院内に油田があることは明治後期には判明していたようですが、本格的に試掘が始まったのは1922年(大正11年)で、翌1923年には採油に成功しました。1932年(昭和7年)には旭石油(昭和石油[現出光興産]の前身会社)が日産8キロリットルの採油に成功しています。

院内油田の最盛期は1935年(昭和10年)で、総産出量は年間11万キロリットルと、国内有数の油田となったのです。その後徐々に資源の枯渇や国際競争力の低下などで産油量が減少し、1995年(平成7年)に閉山となりました。

近代化産業遺産群33「新潟など関東甲信越地域で始まった我が国近代石油産業の歩みを物語る近代化産業遺産群」には「院内油田関連遺産」のほか「豊川油関連遺産」(秋田県潟上市)、「金津油田関連遺産(石油の里公園)」(新潟県新潟市秋葉区)、「尼瀬油田関連遺産」(新潟県出雲崎町)、「相良油田関連遺産」(静岡県牧之原市)が選定されています。

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  • 施設名称:院内油田跡地
  • 所在地:秋田県にかほ市院内
  • 電話番号:0184-62-9777(鳥海山・飛島ジオパーク)
  • 見学:可能
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR羽越本線仁賀保駅からタクシーで約16分
    • 車/日本海東北自動車道仁賀保ICから約15分

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