
金太郎?主に東北本線で活躍するEH500形電気機関車とは?
東北地方を通っているJR東北本線やいわて銀河鉄道線・青い森鉄道線では、旅客が乗る列車以外にも、多数の貨物列車が運行されています。
そして、その貨物列車の先頭に立つ機関車は、側面に「金太郎」と書かれている機関車であることがほとんどだと思います。
鉄道に詳しい方はよくご存じでしょうが「金太郎」こと「EH500形電気機関車」とは、どのような機関車なのかを今回は改めて記してみます。
首都圏~東北地方~北海道を通してけん引するために誕生したEH500「金太郎」
1988年に青函トンネルが開通する以前は、本州と北海道を結ぶ貨物列車は、貨車(貨物を積載する車両)を青函連絡船という船に載せる形で運行されていました。

青函トンネルの開通によって青森県と北海道がレールで結ばれると、貨車を青函連絡船に載せる必要がなくなり、直接走って津軽海峡を越えられるようになったのです。
しかし、首都間と北海道を結んで走る貨物列車は、ある問題を抱えていました。
途中で貨物列車を引っ張る機関車を、2回は付け替える必要があったのです。
首都圏は列車が走るための電気が直流なので、直流専用の機関車(主にEF65形電気機関車)が使われていました。
一方、東北本線の栃木県にある黒磯駅から北の区間は、電気が交流なので、交流専用の機関車(ED75形電気機関車)が使われました。
さらに、青森県と北海道を結ぶ青函トンネルでは、青函トンネルに特化した仕様の機関車(ED79形電気機関車)を使用していました
(北海道に入った後、札幌方面へ向かう列車は、さらに軽油を燃料として走るディーゼル機関車に付け替える必要もありました)。
また、ED75形やED79形は重連(2両連結)でけん引していました。

著者:Kuha455405 – 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10673244による
なお、ED75形電気機関車は、主に東北地方の路線で幅広く活躍した機関車です。
別の記事でも、この機関車の活躍の一端を紹介しています。
途中で機関車を2回も付け替えると、それだけで時間をロスしてしまいます。
その一方で、直流でも交流でも走れて、青函トンネルに対応した装置も備えた機関車があれば、途中で機関車を付け替える手間は不要になります。
そればかりか、貨物列車を運行するJR貨物が保有する機関車の種類を、将来的に減らしていくこともでき、機関車の運用の単純化やメンテナンスの削減といったメリットもあるのです。
このような仕様を目指した機関車は3種類ほど試作されましたが、EH500形電気機関車が選ばれ、量産されることになったのです。
従来の機関車2両分程度のけん引性能を確保するために、2両分の車体が連結されているスタイルになったことが、当時としては特徴的でした。
当初は交流電化区間中心の運行

EH500形電気機関車の試作機は1997年に落成し、2000年には量産車の製造が始まります。
量産を開始した頃に愛称の公募が行われ「ECO-POWER 金太郎」と名づけられました。
予定通り、首都圏と北海道を結ぶ貨物列車に投入された金太郎でしたが、走行区間が長いことに伴う点検頻度の増加や、故障による稼働率の低下がネックとなり、一時期は黒磯駅から北の交流電化区間のみでの運用がメインとなっていました。
せっかく直流でも走れる機関車を開発したのに、宝の持ち腐れとなっていた時期があったのです。
また、金太郎の稼働率が低下して機関車が不足したために、金太郎が淘汰するはずだったED75形をわざわざ現役復帰させてしのぐといったことも行われたようです。
2010年代に入ると、稼働率が安定してきたのか、首都圏の直流電化への乗り入れが再拡大していきます。
2012年にはついにED75形の運用が終了し、東北本線(黒磯駅以北)を走る貨物列車は、基本的に金太郎がけん引することとなったのです。
その一方で、2016年の北海道新幹線開業に伴い、新幹線の列車も通ることになる青函トンネルの、電化方式の変更(電圧が20,000ボルトから25,000ボルトに昇圧)などが行われました。
青函トンネル区間の貨物列車のけん引は、青函トンネル区間専用機関車のEH800形が受け持つことになり、金太郎は青函トンネルへの乗り入れを終了しました。

金太郎の開発当初のミッションの1つであった青函トンネルへの乗り入れが終了してしまった一方で、金太郎の運用にはさらに余裕ができたので、従来は乗り入れていなかった奥羽本線の秋田貨物駅や、東海道本線の相模貨物駅への乗り入れも行われています。
関門トンネルにも投入
2007年からは山口県と福岡県を結ぶ関門トンネルにも金太郎の投入が始まりました。
国鉄時代に製造された従来の機関車:EF81形の取り換えと、コンテナ貨車26両の長い貨物列車(1,300トン貨物列車)の九州内での運行を開始することが、投入の目的でした。
関門トンネル向けの金太郎の運行区間は、山口県の幡生(はたぶ)操車場から、福岡県の福岡貨物ターミナル駅までの区間にほぼ限定されているので、この区間を越えて運行される貨物列車は、基本的に両駅で別の機関車との付け替えが行われます。
広範な範囲を通してけん引する東北地方の金太郎とは、異なる運用方針がとられているといえます。

金太郎は東北地方のエース機関車に

EH500形:金太郎:金太郎は全部で82両が製造され、67両が主に東北本線で、15両が関門トンネル区間で活躍しています。
関門トンネルでも走っているものの、元々東北本線向けに開発された機関車であることや、東北本線で運用されている車両数の多さからは、やはり東北地方の機関車だという印象を筆者は受けます。
JR貨物の機関車なので基本的に旅客列車はけん引しませんが、2017年には「JR各社発足30周年記念ツアー」の一環として、JR東日本が所有する豪華寝台特急「カシオペア」用の客車を、EH500形が、もちろん乗客を乗せてけん引するという珍しい光景が見られました。

かつてのED75形がそうであったように、EH500形:金太郎も、もはや東北地方の不動のエース機関車と言ってよいのではないでしょうか。