【宮城県】大規模な地すべり災害から学ぶ栗駒山麓ジオパーク
目次
栗駒山(くりこまやま)は、宮城、岩手、秋田の県境に位置する標高1,626mの火山です。岩手県では須川岳(すかわだけ)とも呼ばれています。那須火山帯に属していて、有史以来2回の噴火(1744年、1944年)があり、今でも地震活動が活発な活動中の火山です。1944年の小規模な水蒸気噴火では、中腹の火口跡に「昭和湖」が形成されています。
岩手・宮城内陸地震で大規模な地すべりが発生
最も大きな被害をもたらしたのが、2008年(平成20年)の「岩手・宮城内陸地震」です。6月14日に発生した栗駒山の北東約10kmを震源とする深さ8km・M7.2の地震は、最大震度6強を観測しました。この地震によって宮城県側の栗駒山麓で大規模な地すべりが発生し、大きな人的被害をもたらす災害となったのです。
岩手・宮城内陸地震では、地震を起こした断層上に大小3,500か所を超える斜面の変動が確認されました。特に荒砥沢ダム上流部で起きた地すべりは、延長1,300m、最大幅900m、崖の高さ150mという大規模なもので、滑り落ちた土砂の量(不安定土砂発生量)は6,700万m3、その量は東京ドーム54杯分にあたります。
栗駒山のある奥羽山脈は、地球の歴史上最も新しくできた山脈
荒砥沢地すべりをはじめとする数多くの斜面変動は、奥羽山脈の成り立ちに要因があるといわれています。奥羽山脈は、東北地方の分水嶺が連なる山脈(脊梁山脈/せきりょうさんみゃく)で、世界で最も新しい時代にできた山脈です。海底にあった地盤が隆起し、その古い地盤の上にその後の火山活動などで積もったさまざまな堆積物が重なって、ミルフィーユのような地層を形成しています。しっかり固まった古い地盤とその上に乗るまだ新しい固まりきっていない地層。まさに、栗駒山の稜線はそのような条件が揃った地層になっていて、巨大でしかも短時間で細かく揺れる周期の短い地震で雪崩のように地すべりが起きたのです。
地すべりは、荒砥沢で起きた大規模なものから小さなものまで、多くが人々の生活圏で起きていて、15年以上たった現在もその復旧活動が続けられています。
栗駒山麓は、地球の活動を学ぶ貴重なジオパーク
地すべりが起きたエリアを含む、宮城県栗原市が栗駒山麓ジオパークに認定されています。ジオパークは地球が造り出した公園です。ダイナミックな自然の遊び場を提供してくれるだけでなく、時に栗駒山のように、人々が平穏な生活をしていた場所に、前触れもなく挑戦的な戦いを挑んできます。それを克服するために研究し、学習するのがジオパークのひとつの役割です。この地すべりも、地球を学ぶ大切な教材として活用する活動も始まっています。荒砥沢地すべり一帯は[荒砥沢ダムの上流崩壊地]として「日本の地質百選」に選定されました。
頂上からの眺めは絶景。比較的楽に登れる栗駒山
栗駒山頂へは9つの登山道があり、登山初心者から上級者まで楽しめます。登山道は整備されていて、登山口には駐車場や洗面所、日帰り温泉、宿泊施設などもあり安心です。日帰り登山も可能ですが、国定公園内ですのでキャンプは禁止されています。また、登山道中には宿泊できる山小屋はないので注意してください。
栗駒山は現在も活動中の火山で、山頂付近は噴気活動が活発なところがあり、気象庁の常時観測火山になっているので、注意が必要です。
有毒ガスが多く噴出している「昭和湖」付近は登山規制中
北側の須川登山道は、途中の「昭和湖」付近に硫化水素ガスなどの火山ガスが噴出しているため、2023年7月現在一部通行止めになっています。麓から「昭和湖」までの登山道は、秋の一定期間通行規制解除になります。(要問い合わせ)
「昭和湖」は1944年の小規模噴火の際形成された小さな湖で、火口があったところに水がたまってできた火口湖です。水質は強酸性で、乳白色をしています。
全山を鮮やかに染める紅葉は栗駒山最大のハイライト
栗駒山腹は、紅葉の名所として多くの観光客が訪れます。栗駒山麓ジオパーク側から山頂へ向かう登山口「いわかがみ平」周辺は、山頂まで染まる紅葉を見るために、秋限定の路線バスが運行されるほどです。自家用車では紅葉期間中途中の[いこいの村栗駒跡地駐車場]までしか行けません。[いこいの村栗駒跡地駐車場]から[いわかがみ平駐車場]まではシャトルバスでの送迎になります。
登山口[いわかかみ平]からは標高1,113m地点にあり、そこから頂上へは、2つのルートがあります。中央ルートは山頂まで2.9kmと登山道の中では一番短く、しかも勾配もゆるい整備された道で、初心者にぴったりなコースです。危険箇所はほとんどなく、3時間みればゆっくりと往復できます。いわかがみ平にある「栗駒レストハウス」があり、売店、食事処、トイレなどがあり、しっかりとした鉄筋コンクリート造りの建物は避難小屋として利用可能です。
INFORMATON
- 施設名称:いわかがみ平登山口・栗駒レストハウス
- 所在地:宮城県栗原市栗駒沼倉耕英東
- 電話番号:0228-43-4100
- 営業時間:9:00~17:00
- アクセス:
- 鉄道/東北新幹線くりこま高原駅から車で約1時間
- 車/東北自動車道金成若柳ICから50分
- ※秋季期間(10月初旬~下旬)の土日祝休日のみくりこま高原駅から路線バス「栗駒山 紅葉号」が1日1往復運転(運行期間・時刻はミヤコーバスホームページ
- URL:ミヤコーバス(宮城交通)
- URL:栗駒レストハウス
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ニッコウキスゲが黄色く染める世界谷地原生花園
世界谷地原生花園は、標高700m前後の高原地帯に広がる細長い湿原で、面積は約14ヘクタール、東京ドームだと約3個分の広さがあります。世界谷地とは“広い湿地”という意味で、上・中・下の3段に分かれて広がる4つのグループ、大小8つの湿原からなっています。
世界谷地原生花園では、5月のミズバショウから9月のエゾオヤマリンドウまで、さまざまな湿原の花々が咲き競います。特に、6月下旬に咲くニッコウキスゲの大群生は見事で、湿原一帯がオレンジ色に染まります。
湿原には専用駐車場から15分程度歩けば到着でき、誰でも訪れることができる湿原として人気になっています。
INFORMATON
- 施設名称:世界谷地原生花園
- 所在地:宮城県栗原市宮城県栗原市栗駒沼倉耕英南
- 散策自由
- アクセス:
- 鉄道:東北新幹線くりこま高原駅から車で約1時間10分
- 車:東北自動車道若柳金成ICから約1時間
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栗駒山の火山活動が鉱物を生成した細倉鉱山
細倉鉱山は、栗駒山麓に約1,100年前に発見され、1987年(昭和62年)まで採掘が続けられた銀や鉛を産出した鉱山です。江戸時代には伊達藩が力を入れ、その後は1987年(昭和62年)まで盛衰を繰り返しながら採掘が続けられました。細倉鉱山を日本有数の鉱山へと変身させたのは戦争です。特に、1915年(大正4年)に勃発した第一次世界大戦は、鉛や亜鉛の軍事需要を高めました。それも第二次世界大戦までで、その後は鉛などの需要減により閉山に追い込まれたのです。
細倉鉱山の鉱床は、”熱水鉱床”といって、栗駒山の火山活動が重要な役割をしています。マグマに温められた地下深くにある熱水は、熱水の通り道にある岩石からさまざまな金属イオンを取り込みながら地表へと上昇して行きます。それが圧力や化学反応など途中の環境変化でそのイオンが結晶化し、岩石の割れ目などに沈殿するのです。割れ目にたまった鉱物が鉱脈であり、その中には金、銀、銅、鉛、亜鉛、錫などの有用金属鉱物が多く含まれています。この鉱脈のことを“熱水鉱床”といい、細倉鉱山の鉱床はまさしくこの“熱水鉱床”なのです。
細倉鉱山は閉山後、1990年(平成2年)に細倉鉱山の歴史を学び、旧坑道を活用した地底の探検旅行体験ができる「細倉マインパーク」として生まれ変わりました。[アドベンチャーソーン]では、細倉鉱山の歴史展示や作業風景のほか、砂金取り体験や坑道を宇宙の創生空間と想定した展示など、学びの場としても活用されています。[スライダーパーク]は、上りはゴンドラでの空中散歩、下りは全長555mのスリル満点のスライダー(滑り台)。展望台からは栗駒山麓の大パノラマが楽しめます。
INFORMATON
- 施設名称:細倉マインパーク
- 所在地:宮城県栗原市鶯沢南郷柳沢2-3
- 電話番号:0228-55-3215
- 営業時間:
- 3月~11月/9:30~17:00
- 12月~2月/9:30~16:00
- 休業日:火曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始
- ※ゴールデンウイークと夏休み期間中は休まず営業
- 入館料:
- 観光坑道観覧/おとな 500円、中高生 400円、小学生 300円
- 砂金採り体験/おとな、中高生 500円、小学生 400円
- アクセス:
- 鉄道/東北新幹線くりこま高原駅から車で約40分
- 車/東北自動車道築館ICから約35分、若柳金成ICから約30分
- URL:細倉マインパーク