【岩手県盛岡市】新しい盛岡名物、北上川舟運体験のアトラクション「もりおか丸」に乗ってみた!

北上川、雫石川、中津川の三つの河川が合流する「川の街」盛岡は、江戸時代には北上川舟運により年貢米を石巻経由で江戸まで運んでいましたが、やがて鉄道の誕生とともに舟運は衰退します。

その舟運文化の復活を願う「北上川に舟っこを運航する盛岡の会」が発足して、2年前から北上川舟運を期間限定の川開きイベントとして「もりおか丸」を運航しています。

盛岡駅に近い木伏(きっぷし)緑地から下流の明治橋たもとまで、約2kmの川下りを楽しめます。


「もりおか丸」とはどんな舟?

「もりおか丸」 北上川に舟っこを運航する盛岡の会 公式サイトより

「もりおか丸」は「ひらた舟」と呼ばれる木造船で、沿岸の陸前高田市の気仙大工によって造られました。

定員10人で、船外機を操る舟長さんと船首に乗る舟頭さんが、安全運航に気を配りながら要所ではガイドとしても活躍します。

そのほかにも木造舟やFRP製の舟もありますが、「もりおか丸」がこの航路の主役です。


出航は木伏緑地の「もりおか港」から

乗船の手続きはここ、後ろに舟が着きます

「もりおか丸」が出航する「もりおか港」は、盛岡駅から近い北上川河川敷の木伏緑地にあり、ここで乗舟手続きをして、貸与されるライフジャケットの着け方や乗舟時の注意などの説明があります。

もりおか港で乗船前のレクチャー

木伏緑地の土手上には2019年9月オープンの店舗群があり、ジェラートやカフェ、クラフトビールや居酒屋など飲食店が軒を連ねています。

木伏(きっぷし)MORIOKA KIPPUSHI WATER NEIGHBORHOOD

出発前のひと時を、川風に吹かれながらここで過ごすのがおすすめです。

間もなく乗船!ワクワクが止まりません

「もりおか港」から出航すると、まずは川を上って旭橋(あさひばし)をくぐります。 ふだん何も考えずに渡っている橋の下の構造を、この機会にじっくり観察してみましょう。


材木町河畔の石垣と光原社

旭橋をくぐって上流の夕顔瀬橋へ

旭橋から上流の右手の岸は材木町と呼ばれ、夏季の毎週土曜日に「よ市」が開かれ、旬の野菜・果物・花・海産物などのほか、手作りのパンや地ビールなどさまざまな出店があって賑わいます。

材木町の名前の由来は舟運が盛んなころに材木商が多かったためで、それら商店が造ったとされる石垣と、河岸に降りるための階段などが川から見られます。

歴史を感じる材木町裏の石垣(多数ある階段には塞がれているものもある)

この石垣は「材木町裏石組」として盛岡市の保存建造物に指定されていて、ふだんは橋の上や対岸からしか見えませんが、舟からはよく観察することができます。

材木町にある「光原社」は、宮沢賢治の唯一の童話「注文の多い料理店」を出版した出版社ですが、当時この童話への注文は少なくほとんど売れなかったということです。

北上川から見る光原社

今では民芸品店として岩手名産の漆器などを販売していますが、敷地内に賢治の資料館などがあって賢治との関わりを今も大切にしています。


旭橋~開運橋~不来方橋

夕顔瀬橋で折り返し(残念ながら岩手山は雲の中)

ここまで岩手山を正面に川を上っていた「もりおか丸」は、夕顔瀬橋(ゆうがおせばし)手前でUターンして川を下ります。

晴れの日の夕顔瀬橋と岩手山(北上川に舟っこを運航する盛岡の会 公式サイトより)

再び旭橋をくぐり「もりおか港」前を通過、スタッフさんらの見送りを受けると、「二度泣き橋」との別名をもつ開運橋(かいうんばし)が見えてきます。

上流側からみた開運橋はアーチが印象的

盛岡駅につながるこの橋は、転勤者が最初に渡る時「遠い地に来た」と一度泣き、次の転勤で盛岡を去るために渡る時には、人情が温かい盛岡から離れるのが悲しく二度泣くと言われています。

その次の不来方橋(こずかたばし)は2006年開通で、盛岡市内の北上川の橋の中では最も新しく、上下7車線と幅広いこの橋の完成により、下の橋方面と盛岡駅方面の往来がスムーズになりました。

不来方橋にかけられたスタッフ手作りの横断幕

なお、「もりおか丸」が下をくぐる橋の欄干に橋名が書かれた横断幕がかけられていますが、これは運営の皆さんがガムテープなどで手造りしたもので、運航する時だけ掲示されています。


柳の下の急流

柳のある右岸と違い左岸は浅瀬だらけで白波が立つ

「やわらかに 柳あおめる北上の 岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに」

岩手県出身の石川啄木(たくぼく)が東京にいるころに、北上川の岸辺の柳が青く芽吹く様子を思い浮かべ、望郷の念を抱いて詠んだ歌です。

不来方橋から先の岸辺には柳が枝垂れていて、この歌の景色と重なりますが、ここからは川幅が狭く急流となるため、しんみりした歌とは裏腹に川面には舟が揺れるほど大きな波が立ちます。

右岸の深い淵には渦ができて引きずりこまれそう

舟長さんの巧みな操船で「もりおか丸」は安全に下りますが、川面は渦巻き水しぶきが上がるなどして、少しの間スリリングな川下りを楽しめます。

この日は運よくちょうど「はやて」が通過!

柳の下の急流を無事に通過すると、左手の河川敷には広い北上川公園があり、右手に東北新幹線と東北本線の鉄橋が見え、運が良ければ「はやぶさ」や「こまち」と出会えます。


三川合流点

三川合流点を下流側から(右端が中津川の河口、左に雫石川の河口がある)

急流が穏やかな流れになり川幅が広くなると、北上川、雫石川中津川の三つの河川の合流点に到達します。

雫石川と北上川(左の鉄橋下が雫石川の河口)

三川の源流はそれぞれ、北上川が盛岡市の北にある岩手町の涌水、雫石川が秋田県境にある秋田駒ケ岳の岩手県側の山麓、中津川が盛岡の西にある北上山地で、すべてが広い岩手県内にあります。

ここで開明丸がお出迎え

このポイントに来ると、舟長さんが「もりおか丸」を何度か川上に向けてくれるので川下側から合流点を眺めることができ、北上川の水量が合流によってさらに増えて成長する様子を楽しめます。


新山河岸(しんざんかし)

明治橋が見えると間もなく終点の新山河岸

三川合流点を過ぎると川幅がさらに広くなって流れも緩やかになり、旧奥州街道にかかる明治橋が正面に見えて来ると、その左岸のたもとに終点の新山河岸があります。

「新山河岸」は、北上川舟運の起点で盛岡城下への入り口でもあり、明治初年まで舟橋だった明治橋と共に今の橋より少し下流にあり、橋跡の中州や舟運で使用した米蔵跡などが残されています。

ここから「もりおか港」に戻る便はなく片道運航となりますが、周辺は鉈屋町(なたやちょう)と呼ばれる古い街並みや寺院が多く、その落ち着いたたたずまいをのんびり散策してはいかがでしょうか。

なお、ほかに何かイベントがある場合は盛岡駅までシャトルバスが運行されることがあるので、公式サイトなどで確認しておくとよいでしょう。


「もりおか丸」の予約は公式サイトから

乗船手続き中(右側にあるパンフレットなどがもらえる)

乗舟予約は「北上川に舟っこを運航する盛岡の会」公式サイトでのみ受け付けています。

2023年7月1日時点の料金は、片道大人1,500円(4歳以上中学生以下750円、小学生以下は大人の随伴が必要)で、乗舟受付時に現金で支払います。

川開き期間内の土曜日に4~5便運航されますが、2023年前半の運航は終了しており現在は9月9日、9月23日、10月7日の予約を受け付けています。

なお、舟にはリュック程度の手荷物なら、持ったまま乗ることができます。

INFORMATION


  • イベント名:北上川舟運
  • 主催:盛岡地区かわまちづくり(舟運)実行委員会
  • 構成団体:国土交通省岩手河川国道事務所・北上川ダム統合管理事務所
         盛岡市、北上川に舟っこを運航する盛岡の会
  • URL:北上川に舟っこを運航する盛岡の会 公式サイト
  • Email:mulder@agate.plala.or.jp

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まとめ

これまで北上川の川下りと言えば、毎年夏に行われる「ゴムボート川下り大会」だけでしたが、それより距離が短く気軽に川下りを楽しめるアトラクションとして、認知され始めています。

川岸を散歩する人や、橋を渡る人が「もりおか丸」を見ると手を振ってくれ、それに手を振り返すことで「一期一会」の絆のようなものを感じられるのが嬉しくもあります。

ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか。

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