【宮城県栗原市】栗原歴史散歩~、肥沃な大地には古くから人々が暮らし、江戸時代は仙台藩の領地だった栗原市

栗原市を構成する栗原地域は、栗駒山の南東麓に広がっていて、栗駒山に端を発する一迫川(いちはさまがわ/迫川)、二迫川(にはさまがわ)、三迫川(さんはさまがわ)が流れています。川は下流域に大きな湿地を創り出し、伊豆沼(いずぬま)内沼(うちぬま)は、多くのガンや白鳥が飛来し、“日本一の野鳥の天国”と呼ばれています。


戦国時代の戦乱後、江戸時代には仙台藩の領地に

鶴丸城跡から眺める栗原市栗駒市街 ©栗原市

栗原地域には旧石器時代から人々が住んでいて、遺跡も多く発見されています。中世以降は多くの村が点在し、村々を支配する豪族が現れ、群雄割拠の時代が続きます。戦国時代には葛西氏の支配下となったのですが、葛西氏の流れをくむ富沢氏との内紛や、隣接する大崎氏との抗争も絶えませんでした。

栗原地域には鎌倉時代から室町時代にかけて、豪族によって多くの城(館/栗原市文化財参照)が建てられていますが、現在はほとんどが跡地だけになっていて、詳細は分かっていません。その中で岩ケ崎(いわがさき/栗駒岩ケ崎)の鶴丸城(つるまるじょう)は、戦国時代に富沢氏が築き、末期には伊達氏(仙台藩)の支城となって機能していました。

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URL:栗原市の文化財


奥州街道に多くの宿駅が整備された栗原。有壁には本陣が置かれる

江戸時代の栗原は、南北に奥羽街道が走り、街道沿いの高清水(たかしみず)築館(つきだて)宮野・沢辺・金成(かんなり)有壁(ありかべ)などには宿駅が置かれました。特に秋田藩方面へ向かう街道(現国道398号線)との合流点だった築館宿は大いに賑わい、有壁宿には本陣(国指定史跡)が置かれました。

秋田藩との境に設けられた関所「仙台藩花山村寒湯番所」 ©栗原市

秋田藩方面へは、栗駒山の西麓を北上し花山(はなやま)峠で秋田県に入りますが、峠の手前には旅人や荷物を検査するための関所「仙台藩花山村寒湯番所(せんだいはんはなやまむらぬるゆばんしょ)」が設けられました。


平成の大合併時に10町村が合併し栗原市が誕生

栗原は明治時代に入ると栗原県となり、1876年(明治9年)には宮城県に編入されました。その後現在の大崎市や登米市の一部を含んだエリアが栗原郡となり、2005年(平成17年)には当時の栗原郡に属していた 一迫町(いちはさまちょう)鶯沢町(うぐいすざわちょう)金成町・栗駒町・志波姫町(しわひめちょう)瀬峰町(せみねちょう)高清水町築館町若柳町花山村10町村が合併し現在の栗原市が誕生し、栗原郡は消滅しました。


仙台藩の支城(砦)として栗原地域を管理した鶴丸城

鶴丸城跡。周辺は栗駒館山公園として整備されている ©栗原市

鶴丸城は、正確な築城年代は不明ですが、栗原一帯を支配していた葛西氏一族の富沢氏によって戦国時代に築かれたと伝わっています。現在の栗駒岩ケ崎の小高い丘の上に建てられていて、東西約650m、南北約400mに及ぶ大きなものでした。

仙台藩の支配下になった鶴丸城には、伊達政宗の5男が、続いて6男が城主として入るなど、正宗はこの城を重要視していました。その後一国一城令が発布されると、名目上城から砦扱いに格落ちしますが、江戸時代が終了するまで仙台藩の重臣たちが城代となり、秋田藩などの外敵からの防御や仙台藩の出先機関としての重要な役割を果たしています。

桜の名所として親しまれている「栗駒館山公園」 ©栗原市

現在は鶴丸城跡を中心に栗駒館山公園として整備され、春の桜をはじめ四季折々に美しく、雄大な栗駒山を望める市民公園になっています。

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  • 施設名称:栗駒館山公園
  • 所在地:宮城県栗原市栗駒岩ケ崎裏山93-1 館山公園
  • 電話番号:0228-25-4166(栗原市観光物産協会)
  • 散策無料
  • アクセス:
    • 鉄道/JR東北本線石越駅から栗駒方面行き市内連携バスくりはら田園線で約37分、栗駒バス停下車徒歩約15分
    • 車/東北自動車道若柳金成ICから県道中田栗駒線経由約30分

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再び注目を集めるレトロな商店街「栗駒六日町通り商店街」

栗駒六日町通り商店街 ©栗原市

鶴ヶ城のあった岩ケ崎は、1922年(大正11年)には、栗原軌道(後のくりはら田園鉄道)が開通し、さらに1942年(昭和17年)には、細倉鉱山まで延長され、栗原北部の物流を担う町として大いに賑わいます。1955年(昭和30年)には、周辺の栗駒村などいくつかの村と合併し、栗駒町となりました。

しかし、栗駒町は1987年(昭和62年)の細倉鉱山閉山とともに急速に衰退し、賑わっていた商店街も閑散としてしまいます。

賑わいを取り戻した栗駒六日町通り商店街の夜市 ©栗原市

それから30数年、忘れられた六日町通り商店街に1軒のカフェが開業すると、当時全国的に流行っていたレトロブームと相まって、観光客がボツボツ訪れるようになりました。するとこの町で起業する人たちも現れ、町おこし協力隊の活動もあいまって、何か面白いことが起こりそうな商店街として注目を浴びるようになったのです。

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  • 施設名称:六日町通り商店街
  • 所在地:宮城県栗原市栗駒岩ケ崎六日町
  • 電話番号:0228-45-2191(栗駒鶯沢商工会)、0228-24-7871(六日町地域おこし協力隊事務所)
  • 散策無料
  • URL:六日町通り商店街
  • アクセス:
    • 鉄道/JR東北本線石越駅から栗駒方面行き市内連携バスくりはら田園線で約37分、栗駒バス停下車
    • 車/東北自動車道若柳金成ICから県道中田栗駒線経由約20分

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江戸時代中期の建物が残り、当時のままのたたずまいをみせる旧有壁宿本陣

手前の御成門は明治14年以来開かれていない ©栗原市

有壁宿は奥州街道の宿駅として1619年に創設され、代々佐藤家が町役人と本陣の経営をしていました。本陣は、参勤交代では松前藩や南部藩などの藩主や重臣たちの宿泊所になっています。

現存する本陣の建物は1744年に改築されたもので、当時のたたずまいを残した貴重なものとなっています。藩主が使用した御成門は、1881年(明治14年)に明治天皇が出入りして以来、現在まで開けられることがなく、今も通行禁止になっています。旧有壁宿本陣は、国の史跡および宮城県の有形文化財に指定されています。

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  • 施設名称:有壁本陣(宮城県無形文化財)
  • 所在地:宮城県栗原市金成有壁本町31
  • 見学:外観のみ見学自由
  • アクセス:
    • 鉄道/東北本線有壁駅から徒歩約5分
    • 車/東北自動車道若柳金成ICから約15分 

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数少ない現存口留番所「仙台藩花山村寒湯番所跡」

大変立派な仙台藩花山村寒湯番所の建物 ©栗原市

仙台藩花山村寒湯番所跡は、仙台藩が秋田藩との境に設置した番所(関所)です。仙台藩から秋田藩に抜けるのには、“花山越え”といわれた標高741mの花山峠を越えなくてはいけません。仙台藩は峠の手前に番所を設け、出入りを厳しく管理しました。藩境に設けた番所は「口留番所(くちどめばんしょ)」や「境目番所(さかいめばんしょ)」と呼ばれていますが、その姿を残しているものとして貴重な存在で「国指定史跡」になります。

“寒湯”とは番所付近にあった温泉のことで、現在は温湯(ぬるゆ)温泉となっています。

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  • 施設名称:仙台藩花山村寒湯番所跡
  • 所在地:栗原市花山本沢温湯
  • 電話番号:0228-56-2040(花山温泉温湯山荘)
  • 開館日:4月1日~11月末まで 
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 入館料:一般 210円、小中高生110円
  • アクセス:
    • 鉄道/東北新幹線くりこま高原駅から車で約50分
    • 車/東北自動車道築館ICから約40分

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数万羽のガンが越冬する渡り鳥の天国、ラムサール条約登録湿地「伊豆沼・内沼」

夏はハスの花が咲き競う伊豆沼 ©栗原市

栗原市を訪れたら是非立ち寄りたいのが「伊豆沼・内沼」です。

伊豆沼・内沼は、栗原市と登米市にまたがっていて、面積はあわせて491ha(伊豆沼369ha、内沼122ha)の宮城県最大の湖沼です。その特徴としては水深が平均80cm、最大1.6mと浅いことで、沼の中央部まで水生植物が繁って、多くの昆虫や鳥類が生息しています。

特に、秋から冬にロシア方面から渡ってくるガンやカモ、ハクチョウ類の越冬場所になっています。マガンは数万羽、オオハクチョウも2,000羽以上が渡ってきて、その数は日本一です。伊豆沼・内沼とその周辺の水田地域は、ラムサール条約の登録湿地として指定され、環境保護に努めています。

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  • 施設名称:伊豆沼・内沼
  • 所在地:宮城県栗原市若柳字上畑岡敷味17-2ほか
  • 電話番号:0228-25-4166 (栗原市観光物産協会)
  • アクセス:
    • 鉄道/東北新幹線くりこま高原駅から車で約10分
    • 車/東北自動車道築館ICから車で約10分、または若柳金成ICから車で約20分

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