湿原

【福島県天栄村】茅葺き屋根の温泉宿が2軒。ノスタルジックな風情あふれる「岩瀬湯本温泉」

『岩瀬湯本温泉』は、福島県中部、須賀川市や白河市、会津若松市にはさまれた天栄村にあります。天栄村の中央には、日本を東西に分ける分水嶺(ぶんすいれい)、鳳坂峠(ほうさかとうげ)が南北に走っています。人口は約5,400人で80%が森林地帯です。村内には福島県でもよく知られた高原リゾート羽鳥湖があり、ヨーロッパのリゾートと見間違えるほどのオシャレで洗練されたホテルやペンションが建ち並び、人気になっています。

茅葺き屋根の温泉宿が建ち並ぶ「岩瀬湯本温泉」 ©ふくしまの旅

『岩瀬湯本温泉』は、羽鳥湖とは対照的な純和風な温泉地で、福島県内でも会津東山温泉や土湯温泉、岳温泉、芦ノ牧温泉、いわき湯本温泉などに比べ、規模も小さく知名度もありませんが、他にはない大きな魅力があります。

ひなびた湯治場の雰囲気を色濃く残した2軒の宿

『岩瀬湯本温泉』は温泉宿が2軒だけ。そんな見過ごされそうな温泉が、温泉ファンを虜にするわけは昔ながらの湯治場の雰囲気を味わえるからです

源泉亭 湯口屋(左側) ©ふくしまの旅

温泉宿は「源泉亭 湯口屋」と「ひのき風呂の宿 分家」の2軒。小さな路地に寄り添うように営業しています。その2軒とも建物は140年以上前に建てられたという茅葺き屋根の古民家です。見た目は自炊式の湯治場という雰囲気ですが、泊まってみれば心づくしのもてなしで都会の喧噪を忘れさせてくれる温泉宿だと分かります。現在の建物は戊辰戦争(1868年~1869年)後に再建されたものです。少し前まではもう1軒“角屋”という温泉宿があったのですが、現在は残念ながら営業していません。

未だに自然湧出する効能豊かな塩化物泉をかけ流しで利用

ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、源泉かけ流しの温泉(ひのき風呂の宿 分家) ©ふくしまの旅

『岩瀬湯本温泉』の泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、弱アルカリ性の美人の湯です。源泉温度は約49℃で毎分69リットルほど自然湧出しています。2軒の宿とも源泉かけ流しです。効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、関節のこわばり、慢性消化器病、冷え症、病後回復期、疲労回復、切り傷、慢性皮膚病、慢性婦人病などに適応があります。特に切り傷には効果が高く、昔は農耕馬が怪我をしたときにはこの温泉で治したといわれています。

源泉亭 湯口屋の内湯。源泉かけ流し

話はちょっとそれますが、福島県いわき市にあるJRA(日本中央競馬会)のリハビリテーション施設「馬の温泉(競走馬リハビリテーションセンター常磐支所)」の温泉も泉質はナトリウム-塩化物泉(正式には含硫黄・ナトリウム-塩化物線)です。

平安時代に発見された温泉で、代々続く湯守ゆかりの宿

『岩瀬湯本温泉』は、日光から会津を結んだ下野街道(しもつけかいどう/会津西街道)から白河方面へ抜ける岩瀬街道沿いの宿場町でした。温泉の発見は古く、9世紀のはじめごろ(平安時代)です。当時の嵯峨(さが)天皇が病気になり、それを癒やすためには、薬となる湯の花が必要との神のお告げに従い、そのころ都ではほとんど知られていなかった陸奥(みちのく)の地を、天皇側近の星3兄弟が訪れ、病に効くという湯の花が含まれる温泉を探し当てたのです。湯の花を都へ持ち帰り、天皇に献上すると病がすっかり治ったと伝承されています。3兄弟は、温泉の湯守として当地に残り、その一族が長い間温泉を守ってきました。江戸時代には“湯口屋”“星野屋(現「ひのき風呂の宿 分家」”“角屋(廃業)”という3つの湯治宿を起こし、そのうちの2軒が今でも旅館業を営んでいるのです。

幕末から明治にかけて会津地方で勃発した戊辰戦争では、『岩瀬湯本温泉』も巻き込まれてしまいます。岩瀬街道は白河から会津若松へ最短で抜けられる街道だったため、会津藩は街道沿いの村を明治政府軍の拠点されることを恐れ、村の建物は神社仏閣を除いてすべて焼き払われてしまいます。「湯口屋」「ひのき風呂の宿 分家」も例外ではなく、現在の建物は戊辰戦争後に再建されたものです。

140年前の姿そのままの館内(源泉亭 湯口屋)
INFORMATION

岩瀬湯本温泉

  • 住所:福島県岩瀬郡天栄村湯本居平
  • 電話番号:0248-82-2117(天栄村観光協会)
  • 泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
  • 源泉温度:約49℃・自然湧出
  • URL:ふくしまの旅

国の登録有形文化財に指定されている「源泉亭 湯口屋」

源泉亭 湯口屋。左の建物は旧郵便局

「源泉亭 湯口屋」は、茅葺き屋根の2階建て古民家で、客室数は12室、すべて和室です。温泉浴場は男女別の内湯があります。白い木造建物が棟続きで建っていますが、かつての郵便局跡で、2階は「源泉亭 湯口屋」の客室として使用されています。

囲炉裏端でいただく山里料理

料理は地元の名産ヤーコンなど地産地消の食材を揃えた山里料理で、宿が会津と福島中通りの中間に位置しているため両方の郷土料理が味わえます。

電話二番がその歴史を物語る

 

INFORMATION
  • 施設名称:源泉亭 湯口屋
  • 住所福島県岩瀬郡天栄村大字湯本字居平14
  • 電話番号:.0248-84-2001
  • URL:http://www.gensen-yuguchiya.com/

 

部屋数を減らし和モダン風に改装した「ひのき風呂の宿 分家」

©ひのき風呂の宿 分家

「ひのき風呂の宿 分家」は、3兄弟の流れを受け継ぎ創業した“星野屋”から湯を分けてもらい1841年に“分家星野屋旅館”として開業しました。現在の「ひのき風呂の宿 分家」には1993年に改名しています。茅葺き屋根の2階建て古民家で、会津地方に僅かに残る“曲家”形式になっている大変貴重な建物です。

もともと2部屋だったものを1部屋に改装。ツインベッドがある和洋室に ©ひのき風呂の宿 分家

客室は4室。もともと8室あった客室を、昔の雰囲気を残したまま半分の4つに改装し、贅沢な空間が広がります。1室には畳の上にベッドが置かれ、ワークスペースが用意されています。風呂は2つの内湯をグループごとの貸し切りでの利用が可能です。

©ひのき風呂の宿 分家

料理は地産地消の里山料理。地酒や果実酒も豊富に用意されています。

INFORMATION
  • 施設名称:ひのき風呂の宿 分家
  • 住所:福島県岩瀬郡天栄村湯本居平7
  • 電話番号:0248-84-2314
  • URL:ひのき風呂の宿 分家

 

NORIJUN

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旅が好きが高じて一昔前は旅行誌、今はWEBの旅行ライターをしています。取材では東北地方を中心に全国47都道府県すべて訪れていますが、楽しみは温泉に入り、古い町並みや暮らし、芸能工芸など日本の伝統文化にふれることです。

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