旧若柳駅駅舎

【宮城県栗原市】実際にくりでんを走っていた列車を運転体験。自転車の要領で線路上を走るレールバイクも人気の「くりはら田園鉄道公園」

くりはら田園鉄道公園は、宮城県栗原市にある、旧くりはら田園鉄道で使用した客車や電気機関車を動態保存し、一般公開した鉄道のテーマパークです。公園は旧若柳駅や車両基地だった構内を整備したもので、運転体験やレールバイクなどのアトラクションを用意し、鉄道ファンのみならず、幅広い世代に人気です。

旧若柳駅に停車中の保存車両KD10形気動車 ©くりでんミュージアム

くりはら田園鉄道は、JR東北本線石越駅(いしこしえき/宮城県登米市)との接続駅である石越駅と細倉マインパーク前駅(宮城県栗原市)間25.7kmを結んでいた第3セクターの鉄道で、2007年(平成19年)に廃止になっています。

くりはら田園鉄道の歴史は古く、まず1921年(大正10年)に栗原軌道として石越駅から国道4号線沿いの沢辺(さわべ/栗原市金成[かんなり])までが開通しています。その後1922年(大正11年)に岩ケ崎(いわがさき/栗原市栗駒岩ケ崎)、1942年(昭和17年)には細倉鉱山(ほそくらこうざん/栗原市鶯沢[うぐいすざわ])まで延伸され全線が開通しました。

日本有数の鉛・亜鉛鉱山に成長した細倉鉱山

細倉鉱山は栗駒山の山麓部に位置し、9世紀ごろに発見されたとされる鉱山で、銀や鉛、亜鉛などを産出しました。江戸時代は仙台藩(伊達藩)が直轄で経営していました。明治時代以降はいくつかの経営者によって採掘が続けられ、1934(昭和9)年からは三菱金属鉱業(現・三菱マテリアル)が経営権を獲得し、第二次世界大戦などの特需により生産量を伸ばし、鉛の産出量は日本第2位、亜鉛は第3位になるなど、日本有数の鉛・亜鉛鉱山となりました。

栗原軌道は、細倉鉱山からの産出物を搬出するために路線を細倉鉱山まで延ばし、大きく発展し、1950年代には電化されて名称も栗原電鉄になっています。

細倉鉱山は1950~60年代に最盛期を迎えましたが、その後オイルショックなどの世界不況により、亜鉛等の価格暴落が鉱山経営を圧迫し、1987年(昭和62年)に閉山しました。

細倉鉱山の盛衰がくりでんの命運を左右

栗原電鉄も細倉鉱山閉山のあおりをまともに受け、貨物扱いが停止され、鉱山人口の減少も相まって経営状態は悪化し続け、路線廃止も検討されました。しかし、その時は沿線自治体(当時)やバス会社などが出資し、第3セクター鉄道として存続されることになったのです。

1995年(平成7年)には、電化設備等の老朽化などにより電車の運行を中止し、ディーゼル車による運行に変更されました。それにともなって社名が「くりはら田園鉄道」に改称されています。 くりはら田園鉄道は、その後も経営状態は改善できず、県からの補助金が打ち切られるなどしたため、ついに2007年(平成19年)4月に廃止になりました。

くりはら田園鉄道の面影を残そうと「くりはら田園鉄道公園」が誕生

くりはら田園鉄道公園のジオラマ ©くりでんミュージアム

市民の足となって親しまれてきたくりはら田園鉄道の面影を残そうと2017年(平成29年)に誕生したのがくりはら田園鉄道公園です。

旧若柳駅駅舎 ©くりでんミュージアム

くりはら田園鉄道の基地だった旧若柳駅およびその構内を利用したもので、旧若柳駅は昔のままに復元されました。旧若柳駅ホームや機関車庫には、くりはら田園鉄道鉄道で使われていた電車、気動車、電気機関車、ディーゼル機関車などが保存・公開され、その一部は動けるように整備されて、運転体験などに利用されています。

くりでん田園鉄道公園に保存されている車両(一部) ©くりでんミュージアム

公園は、旧若柳駅や車両のなどの保存施設のほか、営業当時の約100年にわたる貴重な社内資料や沿線の姿を再現したジオラマのある「くりでんミュージアム」(有料施設)、こども向け遊具などがある「くりでん芝生広場」で構成されています。

KD95形運転体験 ©くりでんミュージアム

特に大人気なのが気動車(ディーゼル客車)KD95形の運転体験で、18歳以上なら誰でも体験可能です(日時限定)。また、夏休みには11歳以上を対象にした親子構内気動車運転体験も実施されています。

ほかにも当時の線路上を自転車の要領で走るレールバイク(期間限定・往復1.8km)や実際に使用されていた車両に乗って走るKD試乗会(往復1.8km)など楽しいアトラクションがあり、多くの観光客で賑わっています。

くりはら田園鉄道公園 保存車両

M15形電車。栗原電鉄時代に使用されていた電車です。栗原電鉄オリジナル。静態保存。

KD95形。くりはら田園鉄道になってからの気動車で、くりはら田園鉄道オリジナルで、細倉鉱山のカンテラを模したヘッドライトが特徴的な車両です。保存車両は3両で、そのうち2両は整備され動態保存され、乗車会や運転体験に使用されています。

ED20形。細倉鉱山の貨物輸送に使用された電気機関車(203号車)です。「細倉マインパーク前」駅にも1両保存されています(車両画像提供くりでんミュージアム)。

ほかに、車輪が前後に1軸(全部で4個、通常は2軸=8個)の珍しいKD10形気動車や構内作業用のモーターカー、ディーゼル機関車、貨車などが保存されています。

くりでんミュージアム ©くりでんミュージアム

INFORMATON

  • 施設名称:くりはら田園鉄道公園 くりでんミュージアム
  • 所在地:宮城県栗原市若柳字川北塚ノ根17-1
  • 電話番号:0228-24-7961 
  • https://kuridenrailpark.wixsite.com/kuriden
  • 開館時間:10:00-17:00(最終入館16:00)
  • 休館日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日)、年末年始
  • [各種料金] 
  • 入館料:一般 500円、小中学生 300円、未就学児 無料

◆運転シミュレーター

  • 1回 300円

◆旧若柳駅舎開放日  

  • ミュージアム開館日
  • ※冬季(12月~3月)は凍結のため閉鎖。
  • 開放時間:10:00-16:00

◆構内見学

  • 無料

◆レールバイク乗車会

  • 1台(4人乗り) 500円

◆KD乗車会

  • 1回 300円(未就学児無料)

◆こども構内運転体験(夏休み限定)

  • 1回 5,000円

◆気動車運転体験

  • 初回 30,000円、2回目以降 25,000円、6回目以降(重連) 40,000円
  • アクセス:
  • 鉄道/JR東北本線石越駅から栗原市民バス(くりはら田園線または若柳線)で約10分、「若柳中町」または「銀行前」バス停下車、徒歩で約5分、または東北新幹線くりこま高原駅から栗原市民バス若柳線「石越駅前」行で約15分、「若柳中町」バス停下車徒歩で約5分
  • 車/東北自動車道若柳金成ICから県道中田栗駒線を若柳駅方面に約5分

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くりでんの鉄道車両も保存されている「細倉マインパーク」

くりはら田園鉄道の終点にもなっていた「細倉マインパーク」 ©栗原市

細倉マインパークは、細倉鉱山の閉山後、1990(平成2)年にオープンした、旧坑道の一部を活用した細倉鉱山の歴史を学ぶことができる施設です。オープン当初はくりはら田園鉄道も営業中で、「細倉マインパーク前駅」が終点駅になっていました。

廃線後は駅舎とホームが保存され、構内には栗原電鉄時代に使用された電気機関車ED20形202号車と貨車が静態保存されています。

細倉マインパークは、約2000万年前からの地質に触れることができ、細倉鉱山や近代産業の歴史を知ることができる長さ777mの観光坑道です。2016(平成28)年にリニューアルオープンしました。なぜ細倉に鉱山ができたのか、実際に採掘していた鉱物の特徴や当時の細倉周辺の生活の様子などを知る学びの場としても活用されています。坑道内は、1年を通して14℃前後と一定の温度が保たれているので、古酒蔵としても利用されており、坑道の環境的な特徴も知る事ができます。4月から10月は、ジオパークガイドによるガイドウォークも実施しています。

[スライダーパーク]は、上りはペアリフトでの333mの空中散歩、下りは全長555mのスリル満点のスライダー(滑り台)。展望台からは栗駒山麓の大パノラマが楽しめます。 くりはら田園鉄道公園に来訪した際には、是非細倉マインパークにも立ち寄ってください。

INFORMATON

  • 施設名称:細倉マインパーク
  • 所在地:宮城県栗原市鶯沢南郷柳沢2-3
  • 電話番号:0228-55-3215
  • 営業時間:
    • 3月~11月/9:30~17:00・12月~2月/9:30~16:00
  • 休業日:火曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始
    • ※ゴールデンウイークと夏休み期間中は休まず営業
  • 入館料:
    • 観光坑道観覧/おとな 500円、中高生 400円、小学生 300円
    • スライダーパーク/1回300円・2回500円
    • 砂金採り体験/おとな、中高生 500円、小学生 400円
  • URL:細倉マインパーク
  • アクセス:
    • 鉄道/東北新幹線くりこま高原駅から車で約40分
    • 車/東北自動車道築館ICから約35分、若柳金成ICから約30分

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