【秋田県大館市】秋田犬だけじゃない。大館市の天然記念物「秋田三鶏」

秋田犬で知られる大館市ですが、「比内鶏(ひないどり)」「声良鶏(こえよしどり)」「金八鶏(きんぱどり)」秋田三鶏といわれる国や県の天然記念物に指定されている鶏がいます。

市では貴重な三鶏の保存・繁殖に努め、「大館郷土博物館・秋田三鶏記念館」では、元気な姿を見ることができます。


肉がおいしくて久保田藩への年貢にもなっていた比内鶏

比内鶏(ひないどり)は、もともと米代川中流域の比内地方(大館市、北秋田市、上小阿仁村)で育てられていた在来の鶏に、江戸時代になって闘鶏用に飼育されていたシャモ(軍鶏)をかけ合わせて誕生した鶏といわれています。

体型としては大型で、オスの体重が約3.75kg、メスが約2.6~3.0kg(現在食用として育てられている鶏は約2.3~2.7kg)との記録が残っています(1932年の調査記録)。

今は観賞用が主ですが、もともと食用として広く飼われていた鶏です。その肉は脂肪が比較的少なく、淡泊といわれており、江戸時代には最上級の鶏肉といわれていたキジやヤマドリといった野鳥に近く、殿様お気に入りの鶏肉として久保田藩(秋田藩)への年貢としても納められていました。


比内鶏は天然記念物なので食肉としては流通しない

純粋な比内鶏は、繁殖力が弱く、病気にかかりやすいため、明治時代以降は海外から輸入された鶏に押され、飼育数が激減してしまいます。そのため、貴重な在来種である比内鶏を絶滅から守るため“誕生以来品種改良されていない純粋な日本地鶏”ということで1942年(昭和17年)に国の天然記念物に指定されました。

比内鶏(ひないどり)は、天然記念物に指定されたため、飼育農家の自家用以外、商品として流通させることができなくなりました。しかし、比内鶏の肉質の良さを惜しむ声が多く、その肉質を生かすべく1973年(昭和48年)から秋田県畜産試験場で品種改良に着手されます。そしてさまざまな交配を試した結果、比内鶏のオスとアメリカ原産のロードアイランドレッド種のメスを掛け合わせて誕生したのが比内地鶏なのです。


20秒以上も一息で鳴き続ける「声良鶏」

国の天然記念物「声良鶏」 ©大館郷土博物館

声良鶏(こえよしどり)は、鳴き声が長い“長鳴鶏”の一種で、高知県の東天紅鶏(とうてんこう)と新潟県の唐丸(とうまる)とともに“日本三大長鳴鶏”といわれています。江戸時代に長く鳴くことが目的で品種改良が重ねられて作り出された鶏で、武家や豪農、豪商などの間で、鳴き声の長さを競っていました。

大館や鹿角(かづの)など秋田県の米代川流域が発祥といわれていて(鹿角説、大館説あり)、現在では秋田県のほか、青森県、岩手県で飼育されています。

長く鳴くのはオスで、観賞用として鳴き声の長さとともに姿も重要で、長鳴鶏ゆかりの各地でコンテストも開催されています。体重はオスで4~5kgもある大型の鶏で、青森県では主に声の長さが重要で、秋田県では声とともにその姿を改良しました。

声の長さだけをとってみると、青森県が全国一だそうで、鳴き声は12~17秒で20秒を超える鶏もいます。鳴き方は“国光郷王(コッコーゴーオー)”と低い声で鳴き始め、オーの部分を張り上げ、息が続く限り声を出し続けます。

人間でも20秒も声を出し続けるのは大変なのに、胸を張ってオーと鳴き続ける姿は感動的です。鳴き終わった時の“メスたちよ、俺の声を聴いたか!”というどや顔も見ものです。声良鶏は国の天然記念物です。


非常に短気で暴れん坊。闘鶏用品種「金八鶏」

秋田県の天然記念物「金八鶏」 ©大館郷土博物館

金八鶏(きんぱどり)は、江戸時代後期に大館在住の魚屋金八が、より強い闘鶏を作るため交配を繰り返していて、軍鶏と比内鶏のかけ合わせで偶然できた突然変異種です。

その後も改良が続けられ、明治時代に現在の体型に固定されたといわれています。体重はオスで約1.7kg、メスは1.2kgと比較的小柄な鶏ですが、黒を基調とした姿で、短気なことからいかにも闘鶏用の品種といった雰囲気です。大館地方では短気でけんかっ早い人のことを“キンパ”と呼んでいます。1959年(昭和34年)秋田県の天然記念物に指定されました。


秋田三鶏の血統を守り、繁殖に力を入れる「秋田三鶏記念館」

秋田三鶏が見学できる「秋田三鶏記念館」 ©大館郷土博物館

「秋田三鶏記念館」は、「大館郷土博物館」に併設された施設で、国や県の天然記念物に指定されている比内鶏(国)、声良鶏(国)、金八鶏(県)の秋田三鶏を展示するとともに、その血統を守るために保護、増殖を目的に造られた記念館です。

記念館では、毎年秋田三鶏保存会会員より預かった卵をかえして育て、その後会員宅で飼育し展示会を開催します。展示会では持ち寄られた鶏から優秀な若鶏を選定し、番号付きの足環を付け、台帳に記録しています。

秋田三鶏記念館<Information>

  • 施設名称:秋田三鶏記念館
  • 所在地:秋田県大館市釈迦内字獅子ヶ森1
  • 電話番号:0186-43-7133(大館郷土博物館)
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 開館期間:4月~11月
  • 休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)/12月~3月
  • 入館料金:無料
  • URL:秋田三鶏記念館
  • アクセス
  • 鉄道/奥羽本線大館駅から路線バスで約10分、獅子ヶ森バス停より徒歩約3分
  • 車/秋田自動車道大館北ICから約4分

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秋田三鶏の現在が見られる「秋田県声良鶏 比内鶏 金八鶏展覧会」

比内鶏、声良鶏、金八鶏の秋田三鶏は、会員によって大切に飼育されています。1970年代初頭までは、三鶏各々の保存会が別々に活動していましたが、1972年(昭和47年)に「秋田県声良鶏比内鶏金八鶏保存会」として合併、以後ひとつの保存会として三鶏の保護、繁殖に当たっています。

秋田県声良鶏比内鶏金八鶏保存会は、活動の一環として春に展覧会、秋に展示会を開催し、一般市民も見学することができます。また、声良鶏は、春の大館桜祭り期間中に、声良鶏の鳴き声を競い合う秋田県声良鶏展覧会を開いており、会場中に声良鶏の美しい鳴き声が響き渡ります。展覧会、展示会の開催日および会場に関しては、「秋田三鶏記念館」または「秋田県声良鶏比内鶏金八鶏保存会」に問い合わせしてください。

秋田県声良鶏比内鶏金八鶏保存会<Information>

  • 開催:秋田県声良鶏比内鶏金八鶏保存会
  • 電話番号:090-9532-6262

非常に厳しい管理基準で品質を守る「比内地鶏」

比内地鶏メス ©norijun

本来は大型だった比内鶏ですが、1970年代には繁殖力の弱さや飼育条件の悪さなどからオスで約1.6~1.9kg、メスは約1.2~1.4kgと昭和初期の体重に比べ半減していました。

秋田県畜産試験場では、まず比内鶏の中から選抜した生育の優れている固体を掛け合わせ、強健な比内鶏を誕生させ、それを固定化する作業に取り組んだのです。この新しく生み出された比内鶏は“秋田比内鶏”と命名されました。

この、秋田比内鶏のオスを父親として、さまざまな品種のメスと掛け合わせた結果、アメリカ原産の赤毛種のロードアイランドレッドとの雑種が最も肉質が良く、しかも強健であることがわかり、“比内地鶏”と命名され、大量飼育が始まりました。

厳しい管理基準のもと放し飼いにされる比内地鶏 ©norijun

現在比内地鶏は本物の比内地鶏であることを秋田県が証明する「秋田県比内地鶏ブランド認証制度」による生産・管理基準のもとで飼育、生産されたものだけしか“比内地鶏”を名乗ることはできません。

比内地鶏生産管理基準

  • 素雛 秋田比内鶏(オス)とロード種(メス)の交配で作出された 一代交雑種であること
  • 飼育期間 メス:ふ化日から150日間以上飼育していること
  • オス:ふ化日から100日間以上飼育していること
  • 飼育方法 28日齢以降平飼いまたは放し飼いで飼育していること
  • 飼育密度 28日齢以降1平方メートル当たり5羽以下で飼育していること

つまり秋田比内鶏のオスと交配した、ロードアイランドレッド種のメスから生まれたヒナ(一代交雑種)だけが比内地鶏で、孫以降は比内地鶏とは名乗れないのです。この条件には書かれていませんが、飼育農場によっては、さらに厳しく無菌状態での飼育を行っているところもあります。

大館名物「きりたんぽ鍋」 ©norijun

これだけ丁寧に飼育されている比内地鶏。大館名物のきりたんぽ鍋はもちろん、焼き鳥、親子丼などさまざまな料理に使われ、最高の食材として絶賛されています。

親子丼も比内地鶏でワンランク上の味わいに ©norijun

大館市を訪れた際は、ホンモノの味を是非味わってください。

比内地鶏<Information>


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