
作並こけし – 仙台の「作並温泉」で発達し、150年以上の歴史を持つ伝統こけし【宮城県】
目次
東北地方を代表する伝統工芸品の一つ「こけし」。
東北全県に最低一つは独自の系統が存在する、かなり広域にわたって波及した工芸品です。
今回はそんなこけしの中から、宮城県仙台市の作並温泉周辺で発達した「作並こけし」を深掘りしてみました。
こけしとは?
こけしとは、主に山村に住み、轆轤(ろくろ)を使ってお椀やお盆などを作り生計を立てていた木地師(きじし)と呼ばれる職人が、自分の子供たちの遊び道具や、近くの温泉街の湯治客に土産物として売り歩くために作っていた木製の玩具の事です。

江戸時代の末期頃から発生したといわれ、一般的には産地や特徴から、以下の12系統に分けられます。
- 津軽系(青森県弘前市・黒石市周辺)
- 南部系(岩手県花巻市周辺)
- 木地山系(秋田県湯沢市周辺)
- 鳴子系(宮城県大崎市 鳴子温泉周辺)
- 作並系(宮城県仙台市 作並温泉周辺)
- 遠刈田系(宮城県刈田郡蔵王町 遠刈田温泉周辺)
- 弥治郎系(宮城県白石市 鎌先温泉周辺)
- 肘折系(山形県最上郡大蔵村 肘折温泉周辺)
- 山形系(山形県山形市周辺)
- 蔵王高湯系(山形県山形市 蔵王温泉周辺)
- 土湯系(福島県福島市 土湯温泉周辺)
- 中ノ沢系(福島県耶麻郡猪苗代町 中ノ沢温泉周辺)
様々な呼び名とその由来
こけしにはきでこ、でころこ、こげす、きぼこ、さらにはこげほうこ、きなきなぼっこ、おでこさま等、様々な別名が存在します。
そもそもの「こけし」という名前はどこからきたのか?というところも諸説あり、
- 疫病よけ玩具の除子(よけし)の転化
- こげ(木片)ほほこ(人形)の変化
- こげ(木削)し(子)の意
- 御芥子(おけし)という江戸時代に流行した小さな人形の訛り
など、複数の説が存在します。それぞれの説にある一定の説得力があり、前述した別名もそれぞれの由来をもとにした名前に、各地の訛りが加わって変化したものと考えられています。
このように各地で全く違う呼び名で呼ばれていたこけしでしたが、1940年(昭和15年)に東京こけし会が開催した「第1回現地の集り・鳴子大会」に、こけし工人や愛好家などの多くの関係者が集まり、「こけし」とひらがな3文字に統一することが決められ、以後どこの地域でも「こけし」と呼ばれるようになったそうです。
作並温泉を中心に発達した作並系こけし
12系統の一つで、宮城県仙台市の作並温泉周辺で発達したのが作並系こけしです。
作並系こけしの誕生は、江戸時代末期に小田原からこの地に移った南條徳右得門という人物が、子供たちの玩具として作り始めたのがきっかけといわれています。
南條徳右得門という人物は山形系こけし(山形作並系)の創始者とされる小林倉治の師匠としても記録が残っており、作並のこけし発祥は数あるこけし発祥地の中でも最古に近いのでは?ともいわれています。
伝統的に東北地方に自生する板屋楓(いたやかえで)や水木(みずき)の原木が主な素材に使われており、近年では桜(さくら)・椿(つばき)・槐(えんじゅ)も使用されます。

子供の玩具であったことから小さい頭と握りやすい細い胴体が特徴で、作並系の派生である山形系こけし(山形作並系)とともに「立たないこけし」として古くから有名でした。しかし時代が流れ、その用途が観賞用に移り変わるにつれ、現在では胴体も太くなってきています。
また伝統的な細身の胴体の特徴を残したまま、下部が台のように末広がりになっている「台付こけし」も、観賞用の用途に対応するために発展した作並系独自の形状とされています。

「カニ菊」と呼ばれる、一見するとカニの様にも見える胴模様も特徴の一つです。
作並温泉に店を構える平賀こけし店
平賀こけし店は100年以上の歴史を持つ作並系平賀系列8代目工人の平賀輝幸さんが営む工房兼店舗で、今現在、作並温泉で唯一作並系のこけしを購入できる店舗です。

作並の温泉旅館「ゆづくしSalon一の坊」の、広瀬川を挟んだ向かい側に位置していて、伝統的な作並こけしの他に、様々な仙台名物とコラボした創作こけしなども制作・販売されています。

事前予約が必要ですが、こけしの絵付け体験なども行われています。
平賀こけし店<Information>
- 名 称:平賀こけし店
- 住 所:〒989-3431 宮城県仙台市青葉区作並元木13
- 電話番号:022-395-2523
- 公式URL:http://www.h-kokeshi.net/