【福島県猪苗代町】火山が造った迫力ある大地と大小の湖沼が織りなす美しい景観が魅力の裏磐梯

磐梯火山(ばんだいかざん/福島県猪苗代町[いなわしろまち]・磐梯町[ばんだいまち]・北塩原村[きたしおばらむら])は、磐梯山(大磐梯・標高1,816m)、櫛ヶ峰(くしがみね/1,636m)、赤埴山(あかはにやま/1,430m)の三つの峰から成る日本を代表する活火山のひとつです。

明治時代の噴火で表磐梯と裏磐梯ができた

真ん中がえぐられている裏磐梯。桧原湖より ©ふくしまの旅

「磐梯山」は、もともとは富士山のようなきれいな形をしていたのですが、1888年(明治21年)7月15日午前7時45分頃、大音響とともに爆発し、短時間のうちに20回近く噴火を繰り返し小磐梯山のほとんどを崩壊させました。磐梯山を北側から眺めるその時に崩れ去った部分が大きくえぐれて見え、地球活動の恐ろしい力をまざまざと見せつけてくれます。

崩落の跡が見えないのできれいな円錐形の表磐梯 ©ふくしまの旅

一方、反対の猪苗代湖(いなわしろこ)がある南側から見ると、崩壊した部分が見えないため、美しい稜線を持つコニーデ型の山です。この穏やかな眺めを表磐梯(おもてばんだい)、反対側の荒々しい姿は裏磐梯(うらばんだい)と呼ばれています。

磐梯山は姿とは違って比較的おとなしい火山

磐梯山は、大規模な山崩れを起こしているので活発な活動をしている火山と思われがちですが、有史以来本格的に噴火したのは806年と1888年の2回みで、それも噴火としては中規模(気象庁の資料による)なのです。1888年の場合は短時間に多発した水蒸気爆発のため山体崩壊を起こしてしまったのですが、富士山や浅間山のような大量の噴石や火山灰を広範囲にばらまくことはありませんでした。それでも1888年以降も火山性の地震は複数回起きています。直近では2022年11月から火山性地震の数がかなり増えていて、気象庁から細心の注意が必要との情報が出されました。

1888年の噴火を描いた「岩代国磐梯山噴火の圖」 所蔵:東京大学

磐梯山を地球の歴史からみると、3万年~5万年前に山体崩壊を伴った大きな噴火が起き、その際に猪苗代湖ができたと考えられています。最近の研究の結果、この噴火で富士山より高かったという山頂が崩壊し、その時の土石流が麓の川をせきとめ、猪苗代湖になったとの説が有力になりました。その後山頂にできたカルデラ(火口原)の中に新しい火山が誕生し、それが成長して現在の会津富士とも称される磐梯山(大磐梯)になったのです。

明治の山体崩壊は桧原湖や五色沼など大小多数の湖沼を創出

麓の里は大被害を受け、大小の湖沼ができた1888年の噴火。「磐梯山噴火の図」 画:豊国 所蔵:国立国会図書館

1888年の噴火では、崩壊した土砂が川をせき止め、裏磐梯に多くの湖沼群を創り出しました。その数は300以上あるといわれ、桧原湖(ひばらこ)、小野川湖(おのがわこ)といった大きな湖から五色沼(ごしきぬま)のような狭い地域に小さな沼が点在するエリアが生まれました。

山体崩壊の跡が生々しく残る「銅沼」

崩落の跡が生々しい元噴火口の「銅沼」。周辺からは未だに水蒸気が上がる ©ふくしまの旅

1888年の山体崩壊の跡が間近に見られるのが「銅沼(あかぬま)」です。噴火口に水がたまった火口湖で、標高1,120m地点にあります。「銅沼」は鉄やアルミニウム、マンガンなどの金属イオンを含む透明な強酸性水をたたえていますが、見た目には赤く変色した底にたまった鉄分を含んだ泥が透けて見えるので、「銅沼」と名付けられました。

沼のまわりは、赤茶けた岩から水蒸気があがり、崩落の跡が生々しく残る荒々しい崖が迫ってきます。磐梯山は活火山だということを実感させてくれる風景です。

「銅沼」へは片道1時間ほどの登山ルートです。しっかりした装備が必要となります。

裏磐梯最大の湖で観光拠点の「桧原湖」

観光の拠点として賑わいを見せる裏磐梯最大の湖「桧原湖」 ©ふくしまの旅

「桧原湖」は、1888年の噴火によって川がせき止められた湖です。標高約822m、湖岸一周約31km、水深最大約31mで裏磐梯最大の湖であるとともに、日本一の火山性堰止湖です。裏磐梯の中心に位置し、交通の便も良く裏磐梯観光の拠点となっています。

桧原はもともと旧米沢街道の宿場町として、戦国時代から江戸時代にかけて栄えていました。しかし、1888年の噴火によって町は湖底に沈んでしまいます。その痕跡は、渇水時に湖底から姿を現す大山祇(おおやまずみ)神社の参道と鳥居に見ることができます。

ワカサギやバスフィッシングで有名な「小野川湖」

小野川不動滝を源流とする「小野川湖」。釣りで人気の湖 ©ふくしまの旅

「小野川湖」は標高約797m、周囲約10㎞。源流は小野川不動滝と呼ばれる落差約25m、幅約15mの大瀑布です。「小野川湖」には桧原湖からあふれ出た水も流れ込んでいます。

小野川不動滝は深い緑の中に流れ落ちる美しい滝ですが、特に厳冬期は雪景色の中に流れ落ちる姿は絶景です。「小野川湖」は、栄養分が豊富な湖で、ワカサギやバスフィッシングのメッカとして、釣り人が多く訪れます。

手つかずの自然が残る静かな湖「秋元湖」

手つかずの自然の中に美しい水をたたえる「秋元湖」。手前の道路は「磐梯吾妻レークライン」 ©ふくしまの旅

「秋元湖(あきもとこ)」は、標高約736m、周囲約20kmで小野川湖の東にあり裏磐梯で2番目に大きい湖です。1888年の噴火で小野川湖から流れ出る長瀬川がせき止められてできました。

「秋元湖」は、観光の中心地桧原湖からかなり奥まった位置にあり、観光客はあまり多くありませんが、湖面が凍った1月下旬から2月にかけての“氷上ワカサギの穴釣り”は釣りマニアに大人気です。

散策にちょうど良い一周3.5kmの小さな湖「曽原湖」

「曽原湖(そはらこ)」は、桧原湖の東150mほどのところにある周囲約3.5kmの小さな湖です。裏磐梯としては4番目の大きさがあり、標高は約830mで桧原湖よりちょっと高いところにあります。水は少し茶色に濁っていますが、周囲にある広葉樹の葉が落ち分解されたためです。プランクトンや水草が多く野鳥が多く飛来し、周囲は遊歩道が整備されています。

さまざまな色や表情を見せる神秘的な沼の競演が美しい「五色沼」

1888年の磐梯山噴火では、桧原湖や秋元湖のような大きなせき止め湖がいくつかできたのですが、このエリアには池のような数百個の小さな沼も形成されました。桧原湖西岸にはそのような沼が30あまり群をなしています。それらにたたえられている水は一つひとつが微妙に色合いを変えていて「五色沼(ごしきぬま)湖沼群」と呼ばれています。

「五色沼湖沼群」の水は、銅沼の硫化水素(硫酸イオン)が多く含まれる地下水とつながっていて、地下水が地表に現れる際にそれらが混ざり合って水質が微妙に変化し、色合いがおのおの違って見えるのです。

「五色沼湖沼群」は、標高が780m~815mのあまり起伏がないところにあり、散策路で結ばれています。この『五色沼自然探勝路』は全長約4kmでグリーンシーズンは家族連れでも安全に歩くことができます(冬季は雪のためスノーシューなどの装備が必要です)。

『五色沼自然探勝路』は、桧原湖側と毘沙門沼(びしゃもんぬま)側の2か所に出入り口があり、おのおのに案内所、バス停、駐車場があります。

「五色沼湖沼群」の中で特に有名なのが「青沼」「るり沼」「毘沙門沼」です。

青沼

「青沼」は、桧原湖畔の『五色沼自然探勝路』出入り口から約1kmにあり、15分ほどで到着します。水は透明ですが、晴天の日は透明感のある美しい青い色になる美しい沼です。©ふくしまの旅

るり沼

「るり沼」は、「青沼」のすぐ近くにあり、青く輝いています。青沼の色とは微妙に違い目に鮮やかです。 ©ふくしまの旅

毘沙門沼

「毘沙門沼」は、「五色沼湖沼群」の中で最も大きな沼です。毘沙門沼側の出入り口からは約400mで展望台に到着します。水の色は少し濁ったような青緑色で、正面に磐梯山が望める風光明媚な沼です。 ©ふくしまの旅
 

INFORMATION


  • 施設名称:五色沼自然探勝路
  • 全長:約4km
  • 所要時間:片道 1時間10分~1時間30分
  • 難易度:初級

裏磐梯高原入口(桧原湖側)

  • 案内所:裏磐梯物産館
  • 電話番号:0241-32-3751

五色沼入口(毘沙門沼側)

  • 案内所:裏磐梯ビジターセンター
  • 電話番号:0241-32-2850

天然記念物植物群落がある「雄国沼・雄国沼湿原」

国の天然記念物に指定されているニッコウキスゲの大群落と「雄国沼」 ©ふくしまの旅

「雄国沼(おぐにぬま)」は、磐梯山の西方にそびえる猫魔ヶ岳(ねこまがだけ/1,404m)の火口湖で、約50万年前の火山活動によって誕生したといわれています。

「雄国沼」は標高1000mを超え、周辺は「雄国沼湿原」と呼ばれている湿原です。初夏にはニッコウキスゲの大群落が咲き誇り、『雄国沼湿原植物群落』として国の天然記念物に指定されています。

INFORMATION


  • 施設名称:雄国沼・雄国沼湿原
  • 電話番号:0241-32-2349 (裏磐梯観光協会)/0241-24-5200(喜多方観光物産交流協会)

磐梯山は、磐梯朝日国立公園内にあり、地球の公園“磐梯山ジオパーク”は認定されています

INFORMATION


磐梯山ジオパーク

裏磐梯観光協会

磐梯朝日国立公園

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