【山形】絵姿女房とは?あらすじから山形県に伝わる絵姿女房の特徴まで詳しく解説
絵姿女房は日本各地に伝わる昔話の1つですが、伝わる地域によってあらすじや結末が少しずつ異なるのをご存知でしょうか。
この記事では山形に伝わる絵姿女房のあらすじから他の地域に伝わる話との違いまで詳しく解説します。
山形に伝わる絵姿女房のあらすじ
山形に伝わる絵姿女房のあらすじは次の通りです。
昔黒川(現山形県鶴岡市)に孫三郎という名前のなまけもの息子がいました。
結婚後はまじめに働くようになりましたが、嫁に惚れすぎてまた働かなくなってしまったのです。
すると嫁が「いい考えがある」と言って町で自分の大きな絵姿を描いてもらい、孫三郎に絵姿を見て仕事をするよう伝えました。
ある日孫三郎の持っていた絵姿が風で飛ばされてしまい、お城の松の枝に引っかかったためお殿様が嫁を探すよう命じました。
嫁はお城に召されましたが、笑わなくなってしまったのです。
秋になり孫三郎が栗を売りにお城の近くへ行くとその声を聴いて嫁が笑ったため、お殿様は栗をみんな買って嫁に食べさせました。
再度孫三郎が栗を売りにいくと今度は孫三郎もお城へと召され、自分の着物と孫三郎の着物を取り換えて自分は栗を売りに出かけてしまったのです。
孫三郎が門を閉めるように命じたため、殿様は日が暮れてもお城へ戻ることができず、その後孫三郎は女房とお城で仲良く暮らしました。
しかし村の暮らしが良いと黒川に帰る時、能の面をもらって村へ帰ったためそれが黒川能の始まりとなったのです。
山形に伝わる絵姿女房の特徴
山形に伝わる絵姿女房は、「日本昔話通観」の話型による分類では「物売り型」に分類されます。
絵姿女房における「物売り型」のストーリーの大枠は次の通りです。
- 美しい女が嫁にきて夫がそばを離れたがらないので、嫁は夫に自分の絵姿を持たせて畑へと行かせる
- 殿様が風に飛ばされてきた絵姿の女に恋をし、女を探して呼び寄せるが女はまったく笑わない
- 物売りになった夫が城周辺を売り声をあげて歩くと、女はその声を聴いて初めて笑う
- 殿様が、女を笑わせようと夫と衣装を取り替えて外出すると、門番が殿様を城外へ追い出す
- 夫が殿様となり、夫婦はお城で幸せに暮らす
他の地域に伝わる絵姿女房では売り物は「ほうろく」や「桃」が多いのですが、山形では栗となっています。
これは山形は栗蒸し羊羹や栗もなかなど、栗を使ったお菓子が今でも名産品として人気が高いことから、地元で親しみのある食材が昔話に取り入れられたのでしょう。
そして最後の部分において、山形県庄内地方の伝統芸能で国の重要文化財でもある「黒川能」の始まりを示唆しているのも特徴的だと言えます。
黒川能は世阿弥が大成した猿楽の流れを汲みますが、観世、宝生(ほうしょう)、金春(こんぱる)、金剛、喜多の主役方であるシテ五流と、宝生、福王(ふくおう)、高安(たかやす)の相手方であるワキ三流のいずれにも属しません。
そのため黒川能で使用する能面はそれらの流派で使用しているものとは異なり、独特の面が多いとされています。
黒川能で現在所蔵している能面は230点あるとされており、それらは黒川能保存会が2014年に出版した「黒川能面装束図譜」で見ることができます。
絵姿女房の最後で夫婦がもらった面がどのようなものなのかを想像しながら黒川能を見たり、「黒川能面装束図譜」を読んだりするのもまた趣のある楽しみ方と言えるのではないでしょうか。
まとめ
絵姿女房は日本各地に伝わる昔話の1つですが、山形に伝わるお話は「日本昔話通観」の話型による分類では「物売り型」に分類され、最後に黒川能の始まりが示唆されているのが特徴的だとわかりました。
ぜひこの記事も参考にして、山形に伝わる絵姿女房のお話をさらに楽しんでみてください。