旧亀田藩の歴史が集められたテーマパーク「天鷺城」  ©旅東北

【秋田県由利本荘市】江戸時代に3つの藩が割拠した由利本荘市の歴史的遺産

由利本荘市は、江戸時代には矢島藩(やしまはん)、亀田藩(かめだはん)、本荘藩(ほんじょうはん)という3つの藩が割拠していて、北前船(きたまえぶね)の寄港地として栄えていました。3藩は明治維新の際、久保田藩(秋田藩)とともに新政府軍として、旧江戸幕府支持派の庄内藩などとの内戦に巻き込まれ、大きな被害を受けています。


由利3藩の城跡跡を巡る

矢島藩-市史跡に指定されている矢島藩八森城址(八森陣屋跡)

矢島藩八森城址
由利本荘市の史跡に指定されている矢島藩八森城址(八森陣屋跡) ©由利本荘市

矢島藩は戊辰戦争の際、新政府軍の最前線として、隣接する旧幕府支持派の庄内藩と激戦を繰り返し、一時は自ら陣屋に火を放ち、城を明け渡してしまいます。その際、城下町はほぼ焼き尽くされてしまいました。その後新政府軍が盛り返して旧幕府軍を制圧したため矢島藩は復活し、廃藩置県で矢島県となり、すぐ秋田県に統合されています。

矢島藩1万石の居城は八森城と呼ばれていましたが、江戸時代末期には減石して8千石になったため、1万石未満の藩は居城を“城”と呼べず、八森陣屋と呼ばれるようになったのです。八森陣屋は、戊辰戦争での焼失後に矢島藩の藩庁として建て直されたのですが、残念ながら現在はもう見ることができません。しかし、戊辰戦争の際庄内藩により打ち込まれた銃弾の跡が松の木に残されていて、戊辰戦争の激闘をしのばせてくれます。八森城(八森陣屋)のあった場所は、「八森城址」として由利本庄市の史跡です。

八森城址<Information>

  • 施設名称:八森城址(八森陣屋跡)
  • 所在地:秋田県由利本荘市矢島町城内八森地内
  • 電話番号:0184-56-2203(由利本荘市教育委員会矢島教育学習課)
  • 散策自由
  • URL:八森城址
  • 公共交通機関/JR羽越本線羽後本荘駅から由利高原鉄道鳥海山ろく線で約39分、矢島駅下車、徒歩約5分
  • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約10分

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亀田藩-領地に残った建物や歴史資料を集めた「史跡保存伝承の里 天鷺村」

史跡保存伝承の里 天鷺村(あまさぎむら)」は、亀田城があった高台の麓に作られた、亀田藩2万石の歴史や文化を一堂に集めた観光スポットです。村内には、由利本荘市の文化財に指定されている武家屋敷や茅葺き屋根農家などが移築され、「岩城歴史民俗資料館」、「阿部米蔵美術館」、「野良仕事の館」など歴史資料や道具を展示する施設では、伝統工芸の実演が見学できます。

天守閣形式の天鷺城(一般的な天守閣を模して建てられた模擬天守)は、展望台になっていて、亀田城下の町並みを見渡せます。

天鷺村<Information>

  • 施設名称:史跡保存伝承の里 天鷺村
  • 所在地:由利本荘市岩城亀田亀田町字亀田町92-2
  • 電話番号:0184-73-2014
  • 開館時間
    • 3月~10月/9:00~17:00
    • 11月~2月/9:00~16:00
  • 休館日:月曜日、12月28日~1月3日
  • 入館料:無料
  • ※有料の施設もあり
  • URL:天鷺村
  • アクセス
    • 公共交通機関/JR羽越本線羽後亀田駅から市営コミュニティーバスで約10分、亀田出張所バス停下車または羽後亀田駅からタクシー
    • ※市営コミュニティーバスは土日祝・年末年始運休
    • 車/日本海東北自動車道松ヶ崎亀田ICから約3分

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亀田城跡に復元された「亀田城佐藤八十八美術館」

亀田城佐藤八十八美術館
城跡に亀田城を模して建てられた「亀田城佐藤八十八美術館」 ©旅東北

亀田城佐藤八十八美術館」は、「天鷺村」からほど近い丘の上にあり、旧亀田城の跡地内に建つ亀田初代藩主岩城吉隆(いわきよしたか/後に久保田藩初代藩主佐竹義宣=さたけよしのぶ=の養子になり佐竹家を継いで久保田藩2代目藩主として佐竹義隆=よしたか=を名乗った)の居館を復元したもの。館内は由利本荘市の名士故佐藤八十八(さとうやそはち)氏から市に寄贈された、佐藤家3代にわたって蒐集された美術品などを収蔵し、展示しています。

亀田城佐藤八十八美術館<Information>

  • 施設名称:亀田城佐藤八十八美術館
  • 所在地:秋田県由利本荘市岩城下蛇田字高城4
  • 電話番号:0184-74-2500
  • 開館時間
    • 3月~10月/9:00~17:00
    • 11月~2月/9:00~16:00
  • 入館料:一般 210円、学生・生徒・未就学児 無料
  • 休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)
  • URL:亀田城佐藤八十八美術館
  • アクセス
    • 公共交通機関/JR羽越本線羽後亀田駅から市営コミュニティーバスで約10分、亀田出張所バス停下車または羽後亀田駅からタクシー
    • ※市営コミュニティーバスは土日祝・年末年始運休
    • 車/日本海東北自動車道松ヶ崎亀田ICから約4分

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本荘藩-発掘調査で遺構や居城の遺品が多数見つかった本荘城址「本荘公園」

本荘公園
本荘城の跡地に整備された「本荘公園」 ©由利本荘市

本荘藩の居城、本荘城(尾崎城、鶴舞城)は、戊辰戦争の際に藩主自らが火を放ち、焼け落ちてしまいました。明治時代中頃には跡地の公園化(本荘公園)が実現しましたが、跡地には残念ながら城関係の建物は残っていません。敷地内からはその後の遺跡発掘調査で建物跡や皿や椀などなどが見つかっています。

本荘公園
桜満開時期の「本荘公園」  ©由利本荘市

本荘公園」は、緑や花があふれ、特に桜の季節には多くの市民が訪れる憩いの公園として人気です。

本荘公園<Information>

  • 施設名称:本荘城址・本荘公園
  • 所在地:秋田県由利本荘市尾崎
  • 電話番号:0184-24-6376
  • 散策自由
  • URL:本荘公園
  • アクセス
    • 公共交通機関/羽越本線羽後本荘駅から徒歩約18分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約7分

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北前船で栄えた石脇・古雪は昔の町並みが残る人気の散策コース

石脇湊
石脇湊の町並み。中央の斎藤酒造店は、明治35年創業時の建物が現在も使われている ©由利本荘市

由利本荘市に拠点を置いた各藩は、由利地方の中央部を流れ、日本海に流れ出る子吉川(こよしがわ)の水運で栄えました。子吉川河口部の湊には日本海を往復して大きな商売をしていた北前船が頻繁に訪れ、北岸の石脇湊(いしわきみなと)や南岸にある古雪湊(ふるゆきみなと)は大いに賑わっていました。石脇湊が亀田藩、古雪湊は本荘藩の管轄で、本荘藩の南に位置する矢島藩も石脇湊を利用していたといわれています。

古雪湊
北前船で賑わう明治時代の古雪湊。日本写真帖(明治45年) 所蔵:国立国会図書館

明治時代になり、石脇湊や古雪湊は日本の近代化とともにますます繁栄し、北前船との交易も明治時代中期にピークを迎えます。その後は街道が整備されたことによる陸上交通の進歩により、舟運は急速に衰退してしまいます。1922年(大正11年)には羽越本線由利本荘駅が開通し、石脇湊や古雪湊は流通の拠点としての役割を終えました。

石脇古地図
多くの家が建ち並ぶ石脇古地図 ©由利本荘市

石脇湊(石脇)や古雪湊(古雪町)には、北前船で繁栄した当時の遺跡や古い建物が残り、落ち着いたその町並みは散策に最適です。

石脇湊・古雪湊<Information>

  • 施設名称:石脇湊・古雪湊
  • 所在地:秋田県由利本荘市石脇、古雪
  • 電話番号:0184-24-6376(由利本荘市観光文化スポーツ部観光振興課)
  • アクセス:
  • 公共交通機関/JR羽越本線由利本荘駅から徒歩で25~30分
  • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約12分

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国の重要文化財に指定されている江戸時代初期に建てられた土田家住宅

土田家住宅
土田家住宅。江戸初期の貴重な上級農家の建物 ©由利本荘市

戊辰戦争で荒らされてしまった由利本荘市には江戸時代から残る建物はそう多くありませんが、17世紀に建てられた「土田家住宅」は、由利地方の古い農家建築様式が残る建物として、国の重要文化財になっています。

土田家住宅は矢島藩領地内にあるのですが、矢島城(八森城)からは少し離れていたため、戦禍を免れました。建物の建築年代は確定できていませんが、その構造や工法から初代の清左エ門(1678年没)が建てたものだということが確実視されています。

建物の構造は東北地方に多い曲家形式の茅葺き屋根民家で、中門造(ちゅもんづくり)といって南向きの曲家部分に玄関があります。曲家農家の多くは、曲家部分を馬(家畜)小屋として使用していますが、土田家は客間となっていて、間取りなど中世の武家屋敷の名残りもあり、農家の中でも格上の、その地区の小領主的な存在だったといわれています。「土田家住宅」は、秋田県に遺る農家建築として最も古いとみられていて、大変貴重な建物です。見学可能。

土田家住宅<Information>

  • 施設名称:土田家住宅
  • 所在地:秋田県由利本荘市矢島町元町字相庭舘9
  • 電話番号:0184-56-2364
  • 開館時間:9:00~16:00
  • 入館料:高校生以上 200円(抹茶・菓子付きは500円)
  • 休館日:不定休
  • ※見学の際は事前に確かめてください
  • URL:土田家住宅
  • アクセス
    • 公共交通機関/JR羽越本線羽後本荘駅から由利高原鉄道鳥海山ろく線で約39分、矢島駅下車徒歩で約20分またはタクシーで約5分
      • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約10分

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旧鮎川小学校の木造校舎を利用した「鳥海山 木のおもちゃ館」

鳥海山 木のおもちゃ館
旧鮎川小学校の木造校舎。「鳥海山 木のおもちゃ館」として再び活躍の場を得た ©旅東北

昭和の半ばに建てられた旧小学校の校舎が新しい使命を受けて復活しました。3棟ある木造校舎と屋内運動場(体育館)は建築された当時の姿を今にとどめ、教室に再びこどもたちの声が戻ってきました。

旧鮎川小学校」は、1954年(昭和29年)に鮎川中学校として開設された学校で、1970年(昭和45年)に鮎川中学校が由利中学校に統合されたため転出しました。そこに鮎川小学校が移ってきて小学校となり、鮎川中学校創立当初のままの校舎を約50年間使用していたのですが、鮎川小学校も2004年(平成16年)に由利小学校に統合され移転したため、閉校という形になってしまったのです。

主のいなくなった旧鮎川小学校ですが、明治時代末期から大正期の建築形式を引き継いだ木造校舎は、その後も地元民にとって大切な宝物として大切に保存されてきました。そして2012年(平成24年)に、屋内運動場、北校舎棟、中央校舎棟、南校舎棟が国登録有形文化財に登録され、国の文化財となって、新たな活躍の場を与えられたのです。

「鳥海山 木のおもちゃ館」の館内。旧鮎川小学校の教室がそのまま使われ、楽しそうに木のおもちゃで遊ぶこどもたちでいっぱい ©旅東北

鳥海山 木のおもちゃ館」は3棟の校舎と屋内運動場(体育館)をそのまま使用して2019年(令和元年)にオープンしました。校舎1棟と体育館には、地元産の木を使った安全を考慮したおもちゃや大型遊具が設置され、子どもたちが安全に遊べる空間になっています(有料施設)。ほか2棟は、レストラン・カフェ(キッチンカフェkino)や休憩室、由利地方の民具などを集めた展示室です。(無料施設)。

鳥海山 木のおもちゃ館<Information>

  • 施設名称:鳥海山 木のおもちゃ館
  • 所在地:秋田県由利本荘市町村字鳴瀬台65-1
  • 電話番号:0184-74-9070
  • 開館時間:9:00~16:00(※最終入館は15:30)
  • ※冬期間(12月~2月)は10:00~16:00
  • 休館日
    • 3月~11月/木曜日 (木曜日が休日の場合は前日)
    • 12月~2月/水・木曜日、年末年始(12/31~1/2)
  • 入館料(有料施設):おとな 800円、こども(小学生以下) 600円
  • URL:鳥海山 木のおもちゃ館
  • アクセス
    • 公共交通機関/JR羽越本線羽後本荘駅から由利高原鉄道鳥海山ろく線で約12分、鮎川駅下車専用シャトルバスで約5分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約10分

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