【秋田県】秋田犬は日本の宝。忠犬ハチ公のふるさと大館市の秋田犬保存会で血統を絶やさぬように厳密に管理

秋田県大館(おおだて)市は、秋田県北部を横断する米代川(よねしろがわ)の中流域にあり、青森県に接する、秋田県の最も北に位置する自治体です。

大館市は、3方向を山に囲まれた盆地(大館盆地)になっていて、北西部は世界自然遺産の白神山地に続く山林が連なり、森林部が約80%を占めています。米代川沿いの盆地中心部に市街地があり、周辺には農地が広がります。

気候は盆地特有のもので、夏は暑く、冬は寒い寒暖差の大きい気温で、また秋田県有数の豪雪地帯です。平均積雪深は約2.5mにも達します。


秋田犬は猟犬として育てられ、やがて闘犬として改良された

秋田犬は猟犬として育てられ、やがて闘犬として改良された ©大館市

大館地方は、山に入って狩猟を生業にするマタギが多く、相棒として犬を連れていました。いつの頃から生息していたのかは分かっていませんが、その相棒が大きく強い肉体をもち、しかも寒さに強い秋田犬(あきたいぬ)だったのです。

江戸時代になって強い犬は闘犬としてもてはやされ、さらに強く改良するために大型犬との交配が盛んに行われるようになったといいます。秋田犬も雑種化がすすみ、秋田犬の純血種は激減してしまいました。明治時代後半になり秋田犬を含めた日本在来種の血が途絶えてしまうことを危惧した愛犬家の世論が後押しし、1919年(大正8年)、現行の文化財保護法の前身である天然記念物指定保存の法律「史蹟名勝天然紀念物保存法」ができました。その結果秋田犬は1931年(昭和6年)に日本犬としては第1号となる天然記念物に指定されています。


秋田犬が全国的に知られた忠犬ハチ公の物語

東京渋谷駅ハチ公口に鎮座する「忠犬ハチ公像」。左耳は野犬に襲われてたれてしまった

日本で一番有名な犬といえば忠犬ハチ公。東京渋谷のJR山手線渋谷駅前で10年間もご主人の帰りを待っていた“ハチ”の姿に人々は感動し、亡くなったあとには渋谷駅前に銅像が造られました。現在待ち合わせ場所としても知られる渋谷駅前の忠犬ハチ公像は2代目で、初代は第二次大戦中に金属が不足しているということで溶かされてしまったのです。この忠犬ハチ公像は、左耳がたれていますが、ハチは本来耳が立っていたのですが、晩年に野犬に噛みつかれてたれてしまったとのことです。

ハチは、純血種の秋田犬で、1923年(大正12年)11月に、父・大子内山(おしないやま)号、母・胡麻(ごま)号の間に大館市で生まれました。飼い主の東京帝国大学農学部教授・上野英三郎博士のもとへ渡ったのが翌年で、それ以来博士とともに東京の渋谷駅近くに住むことになります。


勤め先での飼い主の急逝を知らずに、10年もの間帰りを待ち続けたハチ

上野博士はハチをかわいがり、なついていたハチは博士を毎日渋谷駅まで送り迎えをしていました。しかし、博士とハチの別れは突然やってきます。1925年(大正14年)5月、大学での講義中に博士は脳出血で急逝、それを知らないハチは渋谷駅でいつまでも待ったのです。博士と出合ってわずか1年4ヶ月後のことでした。その後渋谷駅近くの知人宅に預けられたハチですが、毎日渋谷駅へ通い10年にもわたって博士の帰宅を待っていました。

ハチの姿は全国紙に紹介され、全国的に知られるようになり、晩年は渋谷駅の職員なども世話をしてくれていたようです。ハチは1935年(昭和10年)3月病気により息を引き取ります。その後博士の眠る東京青山の青山墓地に埋葬されました。


ハチの姿は渋谷駅以外にも大館市に銅像が、国立科学博物館には剥製を展示

東京国立博物館のハチ(剥製) ©東京国立博物館

ハチの姿は、剥製(はくせい)にされ、東京国立博物館日本館2階に展示されています。純粋な秋田犬として貴重な剥製なのです。

ハチのこどもの頃の家族を像にした「“秋田犬群像」 ©大館市

また生地大館市の大館駅前にはハチの若い頃の姿を中心とした“秋田犬群像”、駅前にある「秋田犬の里」玄関前に“ハチ公銅像”、秋田犬会館前に“望郷のハチ公像”、ハチ公生家や東大館駅にもハチ公像が飾られています。


秋田犬をはじめ、6犬種が日本の在来犬として天念記念物に指定

「秋田犬の里」に飾られているハチ。まだ野犬に襲われる前の元気だった頃 ©大館市

秋田犬をはじめ、柴犬(しばいぬ)、紀州犬(きしゅういぬ/きしゅうけん)、四国犬(しこくいぬ/しこくけん)、北海道犬(ほっかいどういぬ/ほっかいどうけん)、甲斐犬(かいけん)の6種が日本犬といわれる日本在来犬です。いずれの犬たちも大正時代初め頃には絶滅が危惧される状況に陥り、天然記念物に指定され、なんとかその血が守られてきました。 秋田犬は、日本犬の中で唯一の大型犬で、1927年(昭和2年)には、大館市に秋田犬保存会が設立され、1938年(昭和13年)には、秋田犬の憲法ともいうべき秋田犬標準が定められました。


秋田犬と認定されるためには、憲法のような審査基準が存在

秋田犬標準では、前肢・後肢・尾・被毛・毛色など厳しく規定されています。しかも、減点基準や失格基準もあり、審査基準は200か所以上あるといわれています。これは現在の秋田犬審査会(本部展)でも、この“秋田犬標準”はほとんど変わらずに守られています。

ピンと立った三角の耳、くるりと巻いた尻尾、そしてモフモフな毛並み。それ以外にも純粋な秋田犬にはたくさんの決まりがあるのです。興味ある方は下記のホームページをご覧ください。

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日本より海外で人気の秋田犬。日本での登録数は毎年450頭前後

秋田犬は天然記念物に指定され、しかも保護活動も活発に行われているにもかかわらず、近年飼育頭数は大幅に減少しています。秋田犬ステーション(秋田市)によると、ピークだった1972年には46,225頭まで増加したのですが、2011年には2,038頭まで減少してしまったのです。これにはさまざまな理由があるのでしょうが、日本人のペット嗜好が小型犬に向いてしまったことが大きな原因ともいわれています。ちなみに2022年の登録頭数は474頭(ジャパンケンネルクラブ/1位のプードルは83,916頭)で、秋田犬は全体の33位です。世界でみると昨今の日本犬ブームも相まって、2016年には全世界で6,550頭(そのうち日本は2,628頭)が登録されていました。


大館市の秋田犬と出会える施設

「秋田犬の里」

ガラス越しだけど秋田犬とふれあえる『秋田犬の里』内の「秋田犬展示室」 ©大館市

秋田犬の里は、JR大館駅前に建つ大館市観光交流施設です。建物は忠犬ハチ公がご主人を待ち続けた大正時代当時の東京渋谷駅を模したもので、館内には秋田犬を見学できる秋田犬展示室や秋田犬に関する資料が展示されている秋田犬ミュージアムがあります。大館市の観光案内所にもなっています。

大正時代の渋谷駅を模した「秋田犬の里」©大館市

広場にはグリーン一色に塗られた電車車両が保存されています。この車両は渋谷駅から横浜(神奈川県)方面に走る東急東横線などで走っていた青ガエルと呼ばれていた車両(東急5000形/先頭車両デハ5001は1954年製)で、忠犬ハチ公にちなんで最終所有者渋谷区から大館市に譲渡されたものです。

忠犬ハチ公像が鎮座してる渋谷駅を走っていた名物電車“青ガエル” ©大館市

秋田犬の里の建つ敷地はかつて大館市と小坂町を結んでいた旧小坂鉄道大館駅跡地で、構内は鉄道パークになっています。鉄道パークには全長300mの旧線路上を走れる手こぎトロッコがあり人気です。

手こぎトロッコで廃線跡を走れる鉄道パーク ©大館市

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  • 施設名称:秋田犬の里
  • 所在地:秋田県大館市御成町1-13-1号
  • 電話番号:0186-59-4649
  • 開館時間:9:00~17:00
  • 休館日:12月31日、1月1日
  • 入館料:無料
  • 「秋田犬展示室」のみ
  • 見学時間:9:30~16:45
  • 休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)、12月1日、1月1日
  • 入館料:無料
  • 「青ガエル」展示
  • 見学時間:9:15~16:45
  • 見学期間:4月上旬~11月下旬
  • 見学料:無料
  • 施設名称:鉄道パーク
  • 入場:無料
  • 手こぎトロッコ
  • 営業期間:4月下旬~11月上旬
  • 営業時間:10:00~16:00
  • 料金:100円(未就学児無料)
  • 乗車:4人まで
  • アクセス:
  • 鉄道/JR奥羽本線・花輪線大館駅から徒歩で約3分
  • 車/秋田自動車道大館北ICから約5分
  • URL:秋田犬の里

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秋田犬博物館

「秋田犬博物館」のある『秋田犬会館』。秋田犬の銅像は“望郷のハチ公像”

秋田犬博物館は、秋田犬保存会の本部がある秋田犬会館の3階にある秋田犬に関する資料館で、純血種の秋田犬も飼育され、見学ができます。

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  • 施設名称:秋田犬会館
  • 所在地:秋田犬大館市三の丸13-1
  • 電話番号:0186-42-2502
  • 開館時間:9:00~16:00
  • 入館料:おとな 200円、こども 100円
  • 休館日:
    • 11月中旬~4月下旬の土曜日の午後と日曜祝日
    • 8月13日の午後
    • 12月28日~1月3日
  • アクセス:
    • 鉄道/JR奥羽本線・花輪線大館駅から路線バスで15分
    • 車/秋田自動車道大館北ICから約8分
  • URL:秋田犬会館

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