【岩手県遠野市】続石とは?柳田国男が遠野物語で描いたミステリアスな石を詳しくご紹介
岩手県遠野市綾織町には、2つ台のように並んだ石に巨大な笠石を載せて鳥居のように下をくぐることのできる【続石】という不思議な石が残っています。
民俗学者である柳田国男が「遠野物語」の中で描いた続石とはどのようなものなのか、詳しく解説します。
遠野物語に描かれた続石
遠野物語の第91話で描かれる続石の話は次の通りです。
昔遠野の町には山々のことを良く知り、元は南部男爵家の鷹匠だった鳥御前という人がいました。
ある日きのこ採りのために綾織村の続石という珍しい岩がある所の少し上の山に入ると、赤い顔をした男女が話をしているのに出会ったのです。
男女は鳥御前を見て手を広げ押し戻すような仕草を見せましたが、鳥御前はひょうきんな人だったためからかいの気持ちで刀を抜いた所、男に蹴り飛ばされて谷底で気を失ってしまいました。
鳥御前は発見されて家に戻り、事の一部始終を語りましたが家の人にはその内容を固く口留めし、三日間の間病みそのまま亡くなります。
家の人は不思議な亡くなり方なので山臥のケンコウ院に相談してみた所、山神の遊んでいる所を邪魔したため祟りを受けて亡くなったと言われました。
鳥御前は山に詳しいため、続石の奥に踏み込むことをあまり重要なことと捉えていなかったようですが、神様の領域に踏み込んでしまったため容赦なく罰が下ってしまったという、少しかわいそうな気持ちになるお話です。
遠野物語はふりがなや図表も含めてわかりやすく構成されている青空文庫でも読むことができるため、続石に興味がある人はぜひ一読してみてください。
参考:青空文庫「遠野物語」
遠野物語拾遺に描かれた続石
遠野物語拾遺は1935年に再販された遠野物語の増補という形で刊行されました。遠野物語拾遺第11話にも、続石とその側にある泣石のことが次のように書かれています。
綾織村山口の続石は、学者の言うところのドルメンというものによく似ていて、二つ並んだ六尺位の台石の上に、幅が一間半、長さ五間ほどの大石が横に乗せられており、その下を鳥居の様に人が通り抜けて行くことができます。
続石は武蔵坊弁慶の作ったものと言われており、次のような言い伝えが残されているのです。
昔弁慶が仕事をするために笠石を持って来て、とある大岩の上に乗せました。
するとその大岩が自分は位の高い石なのに、―生永代他の大石の下になるのは残念だといって、一晩中泣いて過ごしたのです。
弁慶は大岩があまりにも泣くのでそれなら他の石を台にしようと、再びその石に足を掛けて持ち運び、今の台石の上に置きました。
そのため続石の笠石には、今でも弁慶の足形のくぼみが残っています。
一方一晩中泣き明かした大岩には泣石と名前がつけられ、今でも涙のように雫を垂らして続石の脇に立っています。
泣石はプライドの高い石のようですが、このお話ではそんな泣石の気持ちを暖かく受け止め、別の石を台石にする武蔵坊弁慶の優しい気持ちが伝わってきます。
遠野物語拾遺は青空文庫に収録された柳田国男の作品の中ではまだ作業中となっているため、興味のある人は出来上がったら目を通してみるのもよいでしょう。
まとめ
続石は岩手県遠野市綾織町にあり、2つ台のように並んだ石に巨大な笠石を載せているため鳥居のように下をくぐることができますが、柳田国男の遠野物語、遠野物語拾遺にそれぞれ興味深い言い伝えが収録されていることがわかりました。
ぜひ遠野物語や遠野物語拾遺に目を通し、ミステリアスな続石に心を馳せてみてください。