【秋田県由利本荘市】日本がユーラシア大陸だった頃の地層が見られる地球の公園、鳥海山・飛島ジオパーク由利本荘エリア

由利本荘市は、出羽地方を南北に分ける鳥海山(2,236m)のすそ野に広がる由利地方の7割程を占める自治体です。面積は1,200平方キロメートルで、秋田県の約10%を占め、秋田県最大です。面積の75%が山林で、平野部は市の中央を流れる一級河川子吉川(こよしがわ)河口部分の日本海沿岸にわずかながら形成されています。

江戸時代には本荘藩、亀田藩、矢島(やしま)藩という3つの小さな藩が割拠し、明治維新後は本荘県、亀田県、矢島県が発足しますが、すぐに秋田県に編入されました。

由利本荘市の南にそびえる鳥海山は、日本海の海抜0mから立ち上がる珍しい独立峰で、古来より火を吹く山として崇められ、今は火山活動の跡や貴重な大自然が残る山として人々に親しまれています。


4つのエリアで構成される鳥海山・飛島ジオパーク。由利本荘エリアは地球の神秘がテーマ

「鳥海山・飛島ジオパーク」は、由利本荘エリアのほか鳥海山を中心として南は酒田エリア(酒田市/山形県)遊佐エリア(遊佐町/山形県)、飛島(酒田市)、北部はにかほエリア(にかほ市/秋田県)があり、おのおの個性的な顔を見せています。北東部に広がる由利本荘エリアでは、鳥海山ができるはるか前、日本列島がまだユーラシア大陸だった頃の地層が露出しているなど、地球の神秘に触れることができます。


日本列島がユーラシア大陸にあった時代の地層を流れ落ちる「石沢大滝」

石沢大滝
3,000万年前の安山岩の崖が迫る「屏風岩」。その奥には「石沢大滝」 ©鳥海山・飛島ジオパーク

「石沢大滝」は、由利本荘市の中央部に位置する笹森丘陵の山中にある3,000万年程前の地層が約8kmに渡って露出する石沢渓谷にあります。

3,000万年前の日本はまだユーラシア大陸の東の端にくっついていて、もちろん日本海もありませんでした。日本列島が大陸から離れるのが約2,000万年前なので、それより1,000万年も前の地層です。

当時の地球はあらゆるところから噴火していて、石沢渓谷の地層は周辺の噴火で流れ出た溶岩が冷えて固まった安山岩(あんざんがん)です。渓谷には安山岩でできた崖が続き、「石沢大滝」「屏風岩」などのビューポイントがあります。「屏風岩」の近くには、溶岩が固まる課程でできる垂直な割れ目のある崖、柱状節理(ちゅうじょうせつり)も見られます。冬季(12月~4月下旬まで)は通行止めのため見学不可です。

<石沢大滝と屏風岩>INFORMATON

  • 所在地:秋田県由利本荘市大簗西ノ角
  • 電話番号:0184-24-6376(由利本荘市観光文化スポーツ部観光振興課)
  • アクセス:
    • 鉄道/JR奥羽本線羽後本荘駅から車で約40分(12月~4月下旬まで通行止)
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約25分、JR羽後本荘駅より車で約40分(12月~4月下旬まで通行止)
  • トイレ:あり
  • 売店・休憩所:なし

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2つの流れが合流して断層の上から落ちる「赤田大滝」

赤田大滝
断層の上を流れ落ちる「赤田大滝」 ©鳥海山・飛島ジオパーク

赤田(あかた)大滝は由利本荘市北部に位置する落差23mの滝です。滝上部が二股になっており、大きな流れを“男滝”一方が“女滝”とも呼んでいます。このあたりの地質は複雑に入り組んでいて、上部の白い岩は約2,300年前から500万年前に、このあたりが海の底だった時代に、海底火山の溶岩が冷えて固まった流紋岩です。滝は南北に走る断層にできたといわれています。

<赤田大滝>INFORMATON

  • 住所:秋田県由利本荘市赤田
  • 電話番号:0184-24-6376(観光文化スポーツ部観光振興課)
  • アクセス:
  • 鉄道/JR奥羽本線羽後本荘駅から車で約40分
  • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約25分
  • トイレ:あり
  • 売店・休憩所:なし
  • 駐車場:あり

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高さ約9メートル。日本三大長谷観音の1つ「赤田の大仏」

赤田の大仏
高さ約9m。黄金の輝きを放つ「赤田の大仏」 ©秋田県

「赤田の大仏」は、古くから修験者(山伏)の修行場だった赤田の中心になっていた寺院、長谷寺(ちょうこくじ)の大仏殿に鎮座する高さ約9m(台座を除くと約7.878m)の大きな観音像です。奈良県の長谷寺(はせでら/奈良県桜井市)鎌倉の長谷寺(はせでら/神奈川県鎌倉市)と並んで、日本三大長谷観音の1つに数えられていて“赤田の大仏様”として知られています。

長谷寺は曹洞宗(そうとうしゅう)の是山(ぜさん)禅師によって1775年に開山されたといわれ、江戸時代この地を領有していた亀田藩の祈願所でした。本尊の十一面観世音菩薩立像は、1888年(明治21年)の大火で大仏殿ともども焼失してしまいます。現在の観音像は1892年に篤志家の寄進により復元されたもので、1893年(明治26年)には大仏殿も再建されました。長谷寺は秋田県三十三観音霊場第8番札所、十一面観世音菩薩立像は由利本荘市指定文化財です。

長谷寺
亀田藩の祈願所だった長谷寺 ©秋田県

<赤田の大仏>INFORMATON

  • 施設名称:正法山 長谷寺
  • 所在地: 秋田県由利本荘市赤田上田表115
  • 電話番号:0184-22-1349(正法山 長谷寺)
  • 参拝自由
  • アクセス:
    • 鉄道/JR奥羽本線羽後本荘駅から本荘営業所乗り換え赤田大仏方面行きバスで約30分、またはJR奥羽本線羽後岩谷駅よりタクシーで約7分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約17分

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800万年前の新安山岩が隆起して丘陵になった新山公園

新山公園
新山公園(手前の丘陵)と鳥海山を望む由利本荘市街地 ©鳥海山・飛島ジオパーク

新山公園(しんざんこうえん)は、子吉川河口部の市街地を望む小高い丘にある公園です。このあたりの地層は約800万年前、まだ浅い海の底だった時代に海底火山によって噴出した火山灰や火山礫などが堆積したもので、10数万年前に隆起し姿を現しました。火山灰などの岩石層は約200mの厚さがあり、“新安山岩”と呼ばれています。公園内の椿森では新安山岩に触れることができます。

新山公園には「新山神社」が建立されていて、毎年1月には、この一帯が僧侶の修行場所だった頃の名残りである「裸まいり」が開催されます。また、新山公園は標高が100mから140mほどあり、春には100m地帯のソメイヨシノから140mエリアのヤマザクラまで、長い間お花見を楽しめる公園として人気です。

<新山公園>INFORMATON

  • 所在地:秋田県由利本荘市石脇上長老沼
  • 電話番号:0184-24-6376(由利本荘市観光文化スポーツ部観光振興課)
  • URL:新山公園
  • アクセス:
    • 鉄道/JR奥羽本線羽後本荘駅から車で約10分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約15分
  • トイレ:あり(冬季閉鎖)
  • 売店・休憩所:なし
  • 駐車場:普通車15台

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『日本の滝100選』に選ばれている「法体の滝」

法体の滝
一枚岩の溶岩の上を一気に下る「法体の滝」 ©旅東北

法体の滝(ほったいのたき)は、鳥海山の中腹、子吉川源流の玉田渓谷にある滝で、落差は約57m。「日本の滝100選」に選ばれている名瀑です。

法体の滝は、約10万年前に起きた鳥海山の噴火活動で流れ出た1枚の溶岩が川をせき止めてできたといわれています。滝を作っている溶岩は“法体溶岩”と呼ばれていて、その上を歩くことができます。秋田県の名勝及び天然記念物に指定されています。

<法体の滝>INFORMATON

  • 所在地:秋田県由利本荘市鳥海町百宅
  • 電話番号:0184-57-2205(由利本荘市観光協会鳥海支部)
  • アクセス:
    • 鉄道/由利高原鉄道矢島駅から車で約50分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約70分
  • トイレ:あり
  • 駐車場:あり

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“由利”のもとになったユリの花が咲く「桑ノ木台湿原」

桑ノ木台湿原
初夏にはレンゲツツジやニッコウキスゲ、ワタスゲなどが咲き誇る桑ノ木台湿原 ©鳥海山・飛島ジオパーク

桑ノ木台湿原は、鳥海山の標高約700m地帯に広がり、有史以前の古い時代に起きた岩なだれが堆積してできた湿原です。面積は8ヘクタール(東京ドーム約2個分)で、湿原内は木道が整備され、鳥海山を望みながらのトレッキングを満喫できます。

湿原にはミズバショウ、ワタスゲをはじめとする湿原の花々が咲き誇り、四季折々に美しい姿を見せてくれます。特に初夏には白いワタスゲと、“ゆり”という名前の始まりともいわれるユリ科の植物ニッコウキスゲ、レンゲツツジの群生が見られ、白とオレンジのコントラストが湿原を彩ります。

<桑ノ木台湿原>INFORMATON

  • 所在地:秋田県由利本荘市矢島町荒沢
  • 電話番号:0184-24-6376(由利本荘市観光文化スポーツ部観光振興課)
  • アクセス:
    • 鉄道/由利高原鉄道矢島駅から車で約40分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約60 分
  • トイレ:あり(冬季閉鎖)
  • 駐車場:普通車15台

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超軟水。地域の水道や地ビールにも使われる名水「ボツメキ湧水」

ボツメキ湧水
超軟水。日量900トンにもなる「ボツメキ湧水」 ©鳥海山・飛島ジオパーク

ボツメキ湧水は、鳥海山のすそ野を流れる子吉川の対岸にそびえる標高713mmの八塩山(やしおさん)の中腹に湧き出ています。湧水量は1日に約900トンにも及び、水温は1年を通して約9℃、中性(pH6.9)で硬度19の超軟水です。その口当たりの柔らかさから地域の水道水のほか、地ビールにも使用されています。“ボツメキ”とは、アイヌ語の“泡が立つ”が変化したものとか、秋田弁で水が湧き出るという意味の“ぼつめぐ”がもとになっているなどの説がありますが、はっきりしたことは分かりません。湧水周辺は公園になっていて、多くの人たちが水汲みに訪れています。

<ボツメキ湧水>INFORMATON

  • 所在地:秋田県由利本荘市東由利黒渕
  • 電話番号:0184-24-6376(由利本荘市観光文化スポーツ部観光振興課)
  • アクセス:
    • 鉄道/由利高原鉄道矢島駅から車で約35分
    • 車/日本海東北自動車道本荘ICから約60 分
  • トイレ:あり
  • 駐車場:あり
  • その他:冬期間通行止め

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加田喜沼湿原
標高30m。珍しい低地湿原「加田喜沼湿原」 ©鳥海山・飛島ジオパーク

『鳥海山・飛島ジオパーク』由利本荘エリアには、落差約25m、幅約10mの「亀田不動滝」、標高30mと低地にある珍しい「加田喜沼(かたきぬま)湿原」、油田や天然ガス田がある「由利原高原(東由利原)」など、紹介した以外にも鳥海山の自然が楽しめるジオサイトが多数あります。長い年月をかけて変化してきた地球の“今”を感じに由利本荘市訪れてはいかがでしょうか。

<鳥海山・飛島ジオパーク>INFORMATON


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