歴史

【秋田県】日本にもあった縄文時代のストーンサークル《大湯環状列石》

あまり知られていないが、日本にもストーンサークルが存在する。秋田県鹿角市十和田大湯にある大湯環状列石は、縄文時代後期に作られた日本最大級のストーンサークルである。同様の遺跡としてはイギリスのストーンヘンジなどが有名だが、日本にも縄文時代の人々が作り上げた立派なストーンサークルが残されているのだ。最近ではなぜか、パワースポットとしても取り上げられることも増えている遺跡である。

大湯環状列石とは?

大湯環状列石は、野中堂環状列石と万座環状列石の二つの環状列石を主体とする配石遺跡だ。国の特別史跡にも指定されている、約4000年前の縄文時代後期の重要な史跡である。石を二重の同心円状に並べた構造をしており、野中堂環状列石は直径44メートル、万座環状列石は直径52メートルと日本最大級だ。

環状列石には遺跡から東に約7キロメートルの安久谷川から運ばれた石英閃緑ひん石が使われている。石の重さは平均30キログラムほどで、最大で200キログラムほどの石も使われているという。完成までには多くの人間が何世代にもわたって関わったと見られている。

二重円の中間、円の中心から見て北西側には日時計状組石と呼ばれる、一本の立石を中心に細長い石を並べた構造がある。その名の通り日時計だったと考えられており、二つの環状列石の両方にある。二つの環状列石の中心と日時計状組石は一直線に並んでおり、夏至の日没方向を指している。

立石は古代において、それ自体が信仰の対象だったり神を示すシンボルであったとも考えられている。東北には巨石(岩石)信仰の形跡が多数残っていて、この遺跡もそのようなものの一つともいわれる。

縄文人たちの聖地

遺跡が発見されたのは1931年のことだった。本格的な学術調査が行われたのは1951年からで、現在も発掘調査は続いている。国の特別史跡に指定されたのは1956年で、最近では「北海道・北東北の縄文遺跡群」のひとつとして、世界遺産への登録を目指した活動も行われている。

これまでの発掘調査の結果、この遺跡は古代人たちの祭祀の場であり、集団墓地だったと見られている。列石とは墓石だったというのだ。ただし、この遺跡から人骨や副葬品は出土していない。この近くにあって構造も似ている一本木後ロ遺跡から甕棺や副葬品が出てきて、墓地だと判明したことからの推測である。環状列石に似た縄文後期の集団墓は、北海道などでも確認されている。中心に石を立て、周囲を丸く堤で囲ったり柱で囲んだりした遺跡だ。ストーンサークル信仰が縄文時代に広がっていた証拠であろう。

環状列石の周囲には建物や柱の跡なども見つかっており、土器や石器、土偶などが出土している。祭祀に関係があるとみられる道具も多く出土していることから、この場所が重要な祭祀の場であったことは確実と考えてよいだろう。その規模からして、近隣の集落の住民が数世代にわたって作り上げた、まさに聖地と言っても差し支えはないと思われる。

ストーンサークルとピラミッド

さて、大湯環状列石は近年パワースポットとして密かに人気を集めている。巨大なシャーマンや死者の霊が出るという噂まである。この近くには黒又山(クロマンタ)という綺麗な三角形をした、古くから神の山として信仰を集めている山があり、ストーンサークルと山を結んだラインは大地のエネルギーが流れる場所だという人々もいる。大湯に行くなら環状列石を見学した後、黒又山山頂の神社にお参りするといいという話もある。

なお、この黒又山には人工的に作られたピラミッドという噂もある。実際、過去に大規模な調査が行われたこともある。結果として、山そのものは自然にできた構造物であることが確認されたが、礫で覆われたテラス状の遺構なども発見されている。つまり、もともとあった山に人の手で装飾を加えていた形跡があるのだ。また、山頂の本宮神社では大湯環状列石で使われているのと同じ石が使われており、この山と環状列石の関係が強く示唆されている。大湯環状列石からもこの山は見えて、ピラミッドのようなシルエットが確認できる。

ちなみに、古代のストーンサークルやピラミッドにはつきもの噂ではあるのだが、この遺跡にもかつての超古代文明との関連や、宇宙人の存在が語られることがある。大湯環状列石や黒又山の周辺地域ではUFOがよく目撃されるという話もある。

興味がわいたら大湯ストーンサークル館へ

大湯環状列石は整備されて公開されており、無料で見学することができる(ただし2017年8月現在、遺跡内に熊が出て立ち入り禁止となっている)。すぐ側には大湯ストーンサークル館があり、発掘調査で見つかった土器や土偶などが展示されているほか、イベント会場や休憩スペースとなっている。予約して、史跡ボランティアガイド(無料)に案内してもらうのも良いだろう。歴史的な遺跡としても、はたまたパワースポットとしても、十和田湖や大湯温泉観光の際に足を延ばす価値は十分にあるはずだ。

INFORMATION

名称大湯ストーンサークル館
住所〒018-5421 秋田県鹿角市十和田大湯字万座45番地
電話番号0186-37-3822
URLhttp://www.ink.or.jp/~oyusc/
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NEFT(ネフト)編集部

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