【秋田県大館市】絶滅危機の日本固有種「ニホンザリガニ」大館市が繁殖活動中!

大館以北だけに生息するニホンザリガニ

ニホンザリガニは、日本固有のザリガニで、北海道と青森県、岩手県、秋田県の水温の低いきれいな川や湖に生息するザリガニです。

大館市はニホンザリガニの南限といわれていて、その生息エリアは“ザリガニ生息地”として国の天然記念物(地域)に指定されています(ニホンザリガニ自体は天然記念物ではありません)。そのため、市では生息地を広げて個体数を増やす「ザリガニ生息地」の再生事業に取り組んでおり、「大館郷土博物館」で展示公開中です。

大館市にはニホンザリガニの生息地がいくつか見つかっているのですが、どこかは公表されていません。

きれいな水でしか生きられないニホンザリガニ ©大館市
きれいな水でしか生きられないニホンザリガニ ©大館市

日本にいるザリガニは、もともとはこのニホンザリガニだけだったので、古来ニホンザリガニという呼称はなく、単にザリガニと呼ばれていました。漢字では砂利蟹と書きます。ザリガニとは“砂利の中に住んでいる蟹”だったんですね(Wikipediaなどには別説も載っています。参考にしてください)。


エサ用としてアメリカから輸入され、大繁殖したアメリカザリガニ

ウシガエルの養殖場から逃げ出し全国に広がったアメリカザリガニ
ウシガエルの養殖場から逃げ出し全国に広がったアメリカザリガニ

ニホンザリガニしかいなかった日本に、1927年頃アメリカザリガニが食用だったウシガエルの養殖用のエサとしてニューオーリンズから輸入されます。

ウシガエルもアメリカ原産で、大正から昭和初期の食用難を解消するため輸入されたのですが、食用としては定着せず、太平洋戦争前には養殖も終了してしまいます。

ウシガエルの養殖場は放置され、残されたウシガエルとともにアメリカザリガニもその生殖力の強さから大繁殖、遂には養殖場を逃げ出し、瞬く間にその生息域を広げていったのです。

劣悪な条件でも生息できるアメリカザリガニ
劣悪な条件でも生息できるアメリカザリガニ

アメリカザリガニは現在北海道から沖縄まで全国で確認されています。体長は15センチくらい、赤または赤褐色をしていて、淡水の田んぼや水路に多く生息し、どんな劣悪な水でも生きられます。

2023年に条件付特定外来生物に指定され、無断で池などに放したり、販売・頒布・購入、輸入したりすることは禁止されました(家庭で飼育したり、無償で譲渡することは禁止されていません)。


食用としてカナダから輸入され徐々に生息域を広げているウチダザリガニ

食用として輸入され、摩周湖で養殖が始まったウチダザリガニ ©環境省外来種写真集
食用として輸入され、摩周湖で養殖が始まったウチダザリガニ ©環境省外来種写真集

日本にはもう一種類外来種のザリガニが存在します。ウチダザリガニと呼ばれるザリガニで、主に北海道に生息しています。

ウチダザリガニはカナダやアメリカ北部に生息するザリガニで、体長は最大で15センチほど。緑がかった茶褐色をしています。1926年に食用として農水省により輸入され、北海道摩周湖で養殖に成功しました。しかし食用としては成功することはなく、その生殖力の強さと凶暴性により野生化し、北海道全体に広がりました。

頻繁に共食いをするという攻撃性はニホンザリガニはじめ日本在来の水生動物の脅威になっています。2000年代に入り千葉県で生息が確認されたほか、福島県、栃木県、長野県そして滋賀県でも確認されています。

共食いは日常茶飯事。凶暴極まりないウチダザリガニ ©環境省外来種写真集
共食いは日常茶飯事。凶暴極まりないウチダザリガニ ©環境省外来種写真集

ウチダザリガニは特定外来生物に指定されていて、飼育、保管、運搬、放棄、譲渡などは禁止です。アメリカザリガニ、ウチダザリガニは「日本の侵略的外来種ワースト100」に含まれています。


南からアメリカザリガニ、北からはウチダザリガニに攻撃され、絶滅寸前のニホンザリガニ

日本にいるザリガニMAP ©環境省
日本にいるザリガニMAP ©環境省

ニホンザリガニの体長は約4~7センチで、最大で15センチにもなるアメリカザリガニやウチダザリガニと比べて小柄で、丸みのある殻とくびれの少ない体型をしています。色は茶色が基本なのですが、固体によって違いがあり、他のザリガニと見分けるのが難しい場合もあるようです。

ニホンザリガニは非常に優しい性格をしていて、他のザリガニを襲ったりはしません。しかも生息域が東北北部から北海道と狭く、繁殖力も弱いため、凶暴な外来種に生息域を侵略され、絶滅の危機にさらされてしまっています。もし散策中などにニホンザリガニを見つけた場合は「大館郷土博物館」に報告してください。


大館市の歴史的遺産や伝統工芸作品を展示し、天然記念物の保護活動を推進する「大館郷土博物館」

廃校となった秋田県立東高等学校の校舎を利用した大館郷土博物館 ©大館市
廃校となった秋田県立東高等学校の校舎を利用した大館郷土博物館 ©大館市

ニホンザリガニの保護、繁殖活動を続けている「大館郷土博物館」は、大館地方の太古からの歴史、農業、林業、鉱業、自然などの資料や歴史的遺産、伝統郷芸品を数多く収蔵し、その一部を展示、学習できる施設です。

「大館郷土博物館」に展示されている道目木(どめき)遺跡から出土した平安時代の曲げわっぱ ©大館郷土博物館
「大館郷土博物館」に展示されている道目木(どめき)遺跡から出土した平安時代の曲げわっぱ ©大館郷土博物館

なかでも大館地方が発祥といわれている“曲げわっぱ”の展示が充実していて、平安時代の遺跡から出土した曲げわっぱをはじめ、日用品、芸術作品まで多数常設展示されています。


曲げわっぱは、江戸時代に武士の副業として藩が製造を奨励

大館曲げわっぱの弁当箱 ©大館郷土博物館
大館曲げわっぱの弁当箱 ©大館郷土博物館

大館地方は世界遺産白神産地の南端に位置し、ブナ林とともに天然秋田杉の森が広がっていました。その秋田杉を使った曲げわっぱが盛んに作れるようになったのは、江戸時代に久保田藩(秋田藩)大館城の城代だった佐竹西家が下級武士の副業として奨励したからといわれています。

杉の皮を薄く剥いで熱湯につけ、柔らかくなったところで曲げ、最後に山桜の皮で縫ってしっかり止めます。今では弁当箱が代表的製品となっていますが、当時はお盆やひしゃくなどさまざまな日用品が作られていました。

山桜の皮で縫う大館の曲げわっぱ ©旅東北
山桜の皮で縫う大館の曲げわっぱ ©旅東北

秋田音頭にも歌われるようになった曲げわっぱは、1980年(昭和55年)に国の伝統工芸品としての指定を受けました。少し時間はかかりますが、市内には曲げわっぱ手作り体験のできる工房もあります。希望される方は「大館曲げわっぱ協同組合」に問い合わせてください。弁当箱で製作時間は約90分です。

大館郷土博物館<Information>

  • 施設名称:大館郷土博物館
  • 所在地:秋田県大館市釈迦内字獅子ヶ森1番地
  • 電話番号:0186-43-7133
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 入館料:おとな 330円、高校生大学生220円、小中学生110円、未就学児は無料
  • 休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)/12月29日~1月3日
  • URL:大館郷土博物館
  • アクセス
    • 鉄道/奥羽本線大館駅から路線バスで約10分、獅子ヶ森バス停より徒歩約3分
    • 車/秋田自動車道大館北ICから約4分

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大館曲げわっぱ協同組合<Information>


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