
【第二回】菅江真澄の歩いた男鹿半島 – 海岸沿いの奇岩に興味津々【秋田県】
目次
江戸時代の菅江真澄(すがえますみ/1754年~1829年)が男鹿半島を旅の記した「男鹿五風」をもとに、江戸時代と現代を対比しながら紹介する<菅江真澄の歩いた男鹿半島>
第2回は、男鹿半島の旅を再開させ、北海岸を旅した「男鹿の春風」、西海岸を巡る「男鹿の鈴風」「男鹿の島風」です。

本稿は秋田県立博物館蔵写本や国立公文書館蔵写本、国立国会図書館蔵写本および2000年に出版された現代語訳本などを参照しながら書き進めます。江戸時代の日付は但し書きがない限り、真澄が記した日時(旧暦)です。
参照
- 秋田県立博物館 菅江真澄ライブラリー(写本)
- 国立国会図書館デジタルコレクション 秋田叢書 別集 第1 (菅江真澄集 第1/写本)
- 国立公文書館 真澄遊覧記(明治8年写本)
- URL:国立公文書館 真澄遊覧記
- 平凡社刊 菅江真澄遊覧記5 内田武志・宮本常一編訳2000年8月9日刊
※菅江真澄の著述の引用は『平凡社刊 菅江真澄遊覧記 内田武志・宮本常一編訳』に基づいています。
【男鹿の春風】再度の男鹿半島遊覧はナマハゲ伝説の残る光飯寺(真山神社)から
1810年の正月を男鹿半島に近い五城目(ごじょうめ)の谷地中(やちなか/五城目町大川谷地中)で過ごした真澄は3月20日に再度男鹿半島を目指します。
八郎潟の東岸を一旦能代まで北上し、日本海沿いを南下する形で3月27日には男鹿半島の入り口にあたる申川(さるかわ/男鹿市野石申川)に到着します。
しかしそこで体調を崩した真澄はようやく4月7日に申川を出発、その日のうちに真山(しんざん)の麓に到着します。

真山は隣にそびえる本山と同じく赤神伝説の残る聖山で、中腹には現在真山神社(しんざんじんじゃ/江戸時代までは光飯寺)が鎮座しています。
真山神社はナマハゲに深く関わることで知られていて、境内には[男鹿真山伝承館]や[なまはげ館]があり、毎年2月にはなまはげ柴灯(せど)祭が開催されている神社です。

真山神社/男鹿真山伝承館/なまはげ館<Information>
- 施設名称:真山神社/男鹿真山伝承館/なまはげ館
- 所在地:秋田県男鹿市北浦真山字水喰沢97
- 電話番号:0185-22-5050
- URL:真山神社/男鹿真山伝承館/なまはげ館
Google Map
八望台から男鹿半島西海岸の雄大な景色を眺める
体調を崩した真澄は4月11日まで真山の集落に滞在しました。
11日には一度光飯寺に参拝し、12日になってようやく真山を発ち、畠崎(入道埼/男鹿市北浦入道崎)方面に向かいます。

眼下に北の浦(北浦/男鹿市北浦北浦)や野村(男鹿市北浦野村)などの港町を眺めながら山道を歩き、途中、蓼沼の平(たでぬまのたい/八望台/男鹿市戸賀浜塩谷和山)では一ノ目潟(国指定天然記念物)、二ノ目潟、三ノ目潟、戸賀の浦(戸賀湾)などの雄大な景色を眺めています。

八望台<Information>
- 施設名称:八望台
- 所在地:秋田県男鹿市戸賀浜塩谷和山
- 電話番号:0185-24-4700(男鹿市観光協会)
Google Map
山を下りた真澄は、14日には眼下に見た北の浦に立ち寄り、16日になって海岸沿い集落に立ち寄りながら22日には温泉が湧く湯本(男鹿市北浦湯本)に到着。ここにしばらく滞在します。
湯本は、現在は近くの石山地区の温泉とあわせて男鹿温泉郷と呼ばれる人気の温泉地です。
明治時代に石灰岩採掘の際見つかった石山地区の温泉に対し、湯本の温泉は平安時代には発見されていました。江戸時代にはたいそう賑わっていたようで、真澄はその味を「からくて緑礬(りょくばん)の気がある」と書いています。“からくて”とはしょっぱいことで、緑礬は鉄分を含む温泉の1つで、緑がかった色をしているのが特徴です。
現在は明治創業の「温泉旅館ゆもと」1軒のみが営業していて、泉質名は含炭酸弱塩泉と表示されています。
5月上旬までに湯本に滞在し、湯本に近い湯の尻という集落で「男鹿の春風」は終わっています。
【男鹿の鈴風】江戸時代はとても寂しかった畠崎(入道崎)を散策

6月中旬まで北海岸の集落を歩き回り、その土地の日常や風習、行事などを見聞きします。6月下旬になり、ようやく西海岸へ向けて出発します。

最初の目的地の畠崎(入道崎/男鹿市北浦入道崎)に到着したのは6月20日過ぎです。
入道崎は、「そびえ立つ岩の上にかさなるように漁師の家が建てられている村があり、米が作れない貧しいところ」だったようで、現在の男鹿半島随一の観光地とは全く違う光景が広がっていました。
6月23日は入道崎の沖に浮かぶ水島に渡り、散策しました。水面すれすれの平らな磯が広がる島で、当時は風が吹くと水の下にかくれてしまったようです。
水島の帰り舟からは「鹿落とし」など入道崎の切り立った岩を眺めています。
入道崎<Information>
- 施設名称:入道崎
- 所在地:秋田県男鹿市北浦入道崎
- 電話番号:0185-24-4700(男鹿市観光協会)
Google Map
とても賑わっていた戸賀湾周辺をぶらぶら
6月24日になって入道崎を徒歩で発ち、24日には西海岸にある戸賀湾沿いの戸賀の浦(とがのうら/男鹿市戸賀)という港町に到着しました。

戸賀湾はもと噴火口だった場所で、きれいな円形をしています。そのため波が静かで「大船・小舟が集まって停泊する港なので、遊女が一人、二人いる」ようなかなり賑わっている港でした。
真澄は戸賀の浦に1泊し、翌日戸賀湾沿いを南下し塩戸の浜(男鹿市戸賀塩浜)で雨に遭い宿泊しています。塩戸の浜は現在男鹿水族館があるあたりです。「男鹿の鈴風」はここで終わり、続いて「男鹿の島風」を記しています。
【男鹿の島風】南西部の複雑な海岸線や奇岩を丸木舟で眺望
7月13日に塩戸の浦を出発するところから旅が始まります。塩戸の浦から丸木舟に乗って男鹿半島西岸を南下し、奇岩群を眺め、多くの図絵を残しています。
塩戸から先は入り組んだ地形が続き、岬にはさまざまな形をした岩が並び、小さな湾にはいくつもの漁港を見かけます。舟は宿泊地、西海岸中央部にある加茂の浦(かもあおさ/男鹿市加茂青砂)という漁港に到着しました。
加茂青砂で盆踊りを体験
加茂の浦は、真澄が「加茂・青砂と集落が軒をならべている」と書いているように、中央の加茂漁港をはさんで北側は加茂地区(旧加茂村)と南は青砂地区(旧青砂村)とに分かれていて、現在も南北800mほどの磯づたいに民家が並んでいます。

江戸時代この浜では夏の間、住民が「日が暮れると、蚊の集まるのを避けて、男女ともこどもも連れて皆浜辺の砂の上に布をかぶって」寝ていたそうです。

7月14日はお盆(7月13日~16日/太陽暦の8月13日~16日)で、集落の人々は朝から小豆のおこわ(小豆飯)に魚や野菜を煮て仏壇に供えます。夜には盆踊り<だだだこ>が加茂と青砂合同で盛大に行われ、真澄も見学し男鹿の夜を楽しみました。

<だだだこ>は、加茂青砂の盆踊り独特の呼び名で、古くから続いていた盆踊りですが、平成10年頃に途絶えてしまいました。しかし、平成22年に大学生の提案で復活し、現在に至っています。
カンカネ洞や大桟橋などの奇岩に感動

15日は近くの白糸の滝を巡ったり、海岸の雁金の窟(かんかねのいわや/カンカネ洞)の中に入ったりしています。[カンカネ洞]は、海岸の岩石が波の浸食によって洞窟になったもので、天井部分の穴から日射しが差し込むととても幻想的です。


17日になって加茂の港を漕ぎ出し、最南端の門前(男鹿市船川港本山門前)まで、海岸沿いの奇岩や滝を舟の上から楽しみます。奇岩には当時からその形に合わせていろいろ名前がついていて、<大産橋(だいさんきょう/大桟橋>や<舞台島><紅雀が窟(こうじゃくのいわや/孔雀の窟)など現代でも馴染みのある名前が見受けられます。舟は多くの小島の間を抜け、門前に到着です。


門前へは2回目の訪問になる真澄ですが、前回(1804年8月27日)も訪れた日積寺(にっしゃくじ/赤神神社)に参拝します。
日積寺は、現在は<赤神神社>としてその伝統が守られていて、境内には鬼が一夜にして造ったといわれる[九百九十九段の石段]や[五社堂](国重要文化財)があり、男鹿半島屈指の人気観光地です。
男鹿半島西海岸の観光は[男鹿半島観光遊覧船]がおすすめで、菅江真澄と同じように海から奇岩や男鹿の山々を眺めることができます。
大桟橋・舞台島 の観光船乗り場<Information>
- 施設名称:大桟橋・舞台島の観光船乗り場
- 所在地:秋田県男鹿市船川港本山門前祓川
- 電話番号:0185-38-2050
- 運航期間:要問い合わせ(冬季休業)
- URL:男鹿半島観光遊覧船
Google Map
日積寺(赤神神社)の参拝を終えた真澄は、門前の町に戻りここで『男鹿の島風』は終わっています。
その後7月18日に門前を発って南海岸を歩く「男鹿の寒風」の旅では男鹿大地震に遭遇しました。
菅江真澄が歩いた男鹿半島には散策できるよう90か所にも及ぶ標柱や説明板が設置
菅江真澄が男鹿半島を歩いた道は[菅江真澄の道]として整備され、何らかの関わりのある場所83か所に標柱が、8か所には詳しい説明板が設置されています。
男鹿半島散策の一助として活用してください。















![【かまくらの謎】秋田県の冬の風物詩[かまくら]は鎌倉幕府に関係がある? 横手4_旅東北1000](https://jp.neft.asia/wp-content/uploads/2025/08/a2674c8c7497fa159899e9b2a761c38f-150x150.jpg)













