【山形県】天童市に伝わる犬と狸の激戦の地!「べんべこ太郎伝説」が残る妙見神社
山形県の天童市には、長野県と静岡県に伝わる有名な昔話「早太郎伝説(しっぺい太郎伝説)」の山形版とも言えるような「べんべこ太郎伝説」が伝わっています。
要約してしまうと「勇敢な犬が、生け贄を要求して村人を困らせる怪物をやっつける」という話ですが、天童市の妙見神社にはこのべんべこ太郎のお墓が実在します。
天童に伝わるべんべこ太郎伝説
昔々、旅の僧がこの地を訪れました。
村に宿はなく、僧は一人の村人の家に泊めてもらうことにします。
夕食の後、その家人が時折悲しそうな顔を見せるので僧が理由を尋ねると、村の神社の裏山には怪物がいて、三年に一度若い娘を人身御供にしなければならない決まりがあるという話を聞かされます。家人の娘も二年前に人身御供に選ばれたことから、たまに思い出しては悲しくなるということでした。
これを聞いた僧は、真夜中に神社に隠れ潜んで様子を探ってみました。しばらくするとふと暖かい風が吹いてきて、生臭い匂いがしたと思ったら、沢山の大狸たちが集まってきて酒盛りを始めました。
しばらくすると一匹の酔っぱらった大狸が
「信濃の国のべんべこ太郎にあのこと、このこと、聞かせるな」と歌い出します。
それを聞いた僧は村人に「世話になった礼に必ず娘さんの敵討ちをしてあげましょう」と約束をしてまた旅立ちました。
一年が経ったころ、僧は信濃の国でべんべこ太郎という大きな犬を連れて戻り、夜を待って件の神社に向かいます。
神社からは犬の吠える声に狸たちの唸り声、獣の争う音が聞こえ、それは一晩中続きました。
朝になって村人が神社に行ってみると、沢山の狸の死がいが転がっていて、勇敢に戦ったべんべこ太郎も傷つき弱り果て、しばらくすると力尽きて息絶えてしまいました。
村人はべんべこ太郎に感謝し、墓を造り弔いました。
早太郎伝説(しっぺい太郎伝説)と関わりがある?
全国的にも有名な信濃(長野県)の光前寺につたわる早太郎伝説(しっぺい太郎伝説)。こちらでは舞台は遠州府中(静岡県磐田市)で、神社に住み着き、生け贄を要求して悪さをするのは大猿です。
話の大枠は非常に似ていて、見事に大猿を退治した早太郎はその足で光前寺まで戻り、そこで息絶えます。
その功績から長野県の光前寺では早太郎伝説、静岡県の見附天神ではしっぺい太郎伝説として語り継がれています。
- リンク:光前寺・霊犬早太郎伝説
- リンク:見附天神・霊犬しっぺい太郎伝説
余談ですが、これとよく似たストーリーは同じ山形県の南部、東置賜郡高畠町にある「犬の宮」にも存在します。「悪さをするタヌキを遠方から連れてきた犬が退治する」という内容が酷似していますが、関連は謎です。
山寺・立石寺が関係している?
非常に似通った話ですが、これは天童のほど近くにある山寺・立石寺が関係しているのでは?という説があるようです。
立石寺は慈覚大師円仁によって開山された天台宗の古刹。そして前述の長野県の光前寺は、円仁の弟子である本聖上人が開いたもので、この関係から立石寺と光前寺には交流があったのではないか?ということです。
この交流から早太郎の話が立石寺へと伝わり、噂が知らぬ間に現地に定着したのか…はたまたこの噂を聞いた立石寺の僧が光前寺の霊犬に助力を願ったのか…真相はわかりませんが想像は膨らみますね!
べんべこ太郎の墓がある妙見神社
べんべこ太郎の墓があるのは天童市の妙見神社です。
べんべこ太郎の墓と一緒に神社が創建されたという説と、狸が酒盛りをしていたのが妙見神社の境内だったという二つの説が存在するようです。
妙見神社は小高い丘に存在します。丘全体が神社の敷地のようです。
鳥居をくぐったところに建つ「妙見神社」の石柱。
神社の敷地内には沢山の祠があります。
決して大きな神社ではないですが、綺麗に整備されていて、地元で大事にされていることが伝わってきます。
なかなか見つけることができず参道を引き返すと、奥の方に気になる祠が見えました。山の上から周辺を見下ろすような位置にあります。
発見しました。ちゃんとわかりやすいように名前が書いてあります。山から周りを見下ろす位置で、末長く村を見守ってほしいというような願いがあったのかもしれませんね。
妙見神社<Information>
- 名 称:妙見神社
- 住 所:〒994-0101 山形県天童市山口