歴史

【福島県南会津郡】那須火山帯の豊富な温泉が魅力。「大内宿」や「塔のへつり」観光の拠点『湯野上温泉』

阿賀川の崖の上に建つ『湯野上温泉』 ©ふくしまの旅 

『湯野上温泉(ゆのがみおんせん)』は、福島県会津地方の最南端、栃木県那須塩原市と接する下郷町(しもごうまち)にあります。町の中央を流れる阿賀川(あががわ/大川/新潟県側の下流部は阿賀野川[あがのがわ])沿いにあり、栃木県日光市と会津若松市を結ぶ国道121号線と須賀川市方面へ抜ける国道118号線の合流地点に位置しています。那須火山帯に湧く豊富な湯量が魅力で、茅葺き屋根の民家が並ぶ大内宿や阿賀川一の景勝地「塔のへつり」などの観光拠点として人気の温泉です。

明治時代以降忘れられた「大内宿」、脚光を浴びた「湯野上温泉」

湯野上に温泉が発見されたのは、伝承によると奈良時代に1匹の猿が河原に湧く温泉で傷を癒やしたのが始まりとされています。しかし、その後は長い間歴史に登場することはありません。脚光を浴びたのは明治時代になってからで、それまで山間部を縫うように造られていた下野街道(しもつけかいどう/関東側からは会津西街道と呼ばれていました)が廃止され、その代わりとして阿賀川沿いに新たに新日光街道(国道121号線/1884年)が開通してからです。湯野上に温泉宿がはじめて開設されたのは1887年(明治20年)といわれています。

下野街道(会津西街道)の宿場だった大内宿 ©ふくしまの旅

江戸時代に江戸や日光から会津若松を最短距離で結ぶ下野街道は、会津藩はじめ山形、秋田方面の大名が参勤交代で利用し、関東と会津地方との物資流通の主要ルートとして、「大内宿」はじめ街道沿いの宿場は大いに賑わっていました。

明治時代にできた新道が「湯野上温泉」を大きく発展

『湯野上温泉』全景 ©下郷町

明治時代になり、山間部の下野街道はあまりに効率が悪いため、新たに阿賀川沿いに新しい平坦な国道121号線が造られたのです。新道ができたことにより『湯野上温泉』や「塔のへつり」など新たに脚光を浴びる場所ができた代わりに、旧下野街道の宿場町は人の出入りが止まり、時代から取り残されてしまいます。それが、「大内宿」が昔のままの姿で残っていたという奇跡を生んだのです。

旧下野街道。起伏の多い山間部を縫うように造られている。国の史跡 ©下郷町

旧下野街道の下郷町の一部には、昔のままの道や道標などが残っていて国の史跡になっています。

湯量豊富、源泉かけ流しの美肌の湯

『湯野上温泉』は、無色透明なアルカリ性単純温泉 ©ふくしまの旅

『湯野上温泉』の源泉は8本あります。泉質は8本ともほぼ同じでアルカリ性単純温泉です。8本の源泉は集約され、25軒ほどある温泉施設だけでなく個人宅にも配湯されています。温泉使用量は毎分約2,000リットルで、各施設ともかけ流しで使用できるほど豊富です。源泉温度は60℃ほどあります。効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、うちみ、くじき、慢性消化器病、冷え性、疲労回復などに効果があります。アルカリ性の柔らかい温泉は、美肌の湯として特に女性に人気です。

 

INFORMATION

 

浅草、鬼怒川温泉、会津高原、湯野上温泉、会津若松が鉄路で結ばれる

『湯野上温泉』には1932年(昭和7年)に旧国鉄只見線(現JR只見線)の西若松駅(会津若松市)と会津田島駅(南会津町)を結ぶ国鉄会津線(現会津鉄道)が開通した際に湯野上駅ができ、交通の便が格段と良くなりました。

国鉄会津線は1953年(昭和28年)には会津滝ノ原駅(現会津高原尾瀬口駅)まで延長され、さらに1986年(昭和61年)には東武鉄道鬼怒川線の新藤原駅と会津滝ノ原駅を結ぶ野岩鉄道(やがんてつどう)会津鬼怒川線が開通し、東京の浅草から鬼怒川温泉を経て、湯野上温泉まで鉄道路線がつながりました。野岩鉄道の開通時に会津滝ノ原駅は会津高原駅と改名され、現在は会津高原尾瀬口駅と再改名されています。国鉄会津線は1987年(昭和62年)に第三セクターに移管され会津鉄道と名称変更されました。

“お座トロ展望列車”が人気の会津鉄道

左側がトロッコ車両、右側がお座敷・展望列車の“お座トロ展望列車” ©会津鉄道

2022年現在、会津鉄道の各列車はすべてJR只見線・磐越西線の会津若松駅発着になっています。また、東武鬼怒川線の一部特急が会津田島駅まで乗り入れ、その列車と乗り継ぎができるリレー号が運転されています。また会津若松駅と会津田島駅間には1輌がトロッコ席、1輌はお座敷と展望席になっている“お座トロ展望列車”が運行され、人気となっています(お座トロ展望列車は運転日要確認)。

湯野上温泉駅には、会津鉄道の各列車の各列車がすべて停車するので、会津若松方面や会津高原・尾瀬方面への観光拠点としても便利です。

茅葺き屋根の駅舎が出迎えてくれる「湯野上温泉」

全国的にも珍しい茅葺き屋根の駅舎 ©ふくしまの旅

湯野上温泉駅は、駅舎が茅葺き屋根になっていて観光客や鉄道ファンに撮影スポットとして人気です。茅葺き駅舎は旧国鉄から移管され会津鉄道となった1987年に建てられたもので、駅舎内には囲炉裏もあり、駅に併設された足湯は、無料で利用できます。

桜満開の湯野上温泉駅 ©ふくしまの旅

 

INFORMATION
  • 施設名称:湯野上温泉駅
  • 電話番号:0241-68-2533
  • 時刻表等の問い合わせ:会津鉄道
  • 電話番号:0242-28-5886
  • URL:会津鉄道

 

天然記念物に指定されている「塔のへつり」

200mほど続く奇岩には屏風岩、烏帽子岩、護摩塔岩などおのおのに名前が付けられている ©下郷町

「塔のへつり」は、湯野上温泉から5kmほど阿賀川上流にある景勝地です。“へつり”とは、会津弁で険しい断崖を意味し、川沿いにいくつもある断崖が塔のようにそそり立っていることから名付けられました。

この一体の地層は、凝灰角礫岩(ぎょうかいかくれきがん)のような硬い岩石や、比較的柔らかい凝灰岩などの地層が何段も重なっています。それが川の浸食によって柔らかい凝灰岩だけが削られて、100万年以上かけて見事な景観が創り出されたのです。この景観は国の天然記念物に指定されています。

岩が削られた跡が遊歩道になっている ©ふくしまの旅

吊り橋を渡り、浸食された部分に造られた遊歩道は、見事な自然の造形を目の当たりにすることができます。奥にあるお堂は807年に蝦夷(えみし/東北地方)征伐の大将(征夷大将軍/せいいたいしょうぐん)だった坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)の創建と伝わっています。

 

INFORMATION
  • 施設名称:塔のへつり
  • 所在地: 福島県南会津郡下郷町弥五島下タ林
  • 電話番号:0241-69-1144(下郷町観光協会)
  • 見学自由 ※吊り橋は冬季通行

 

NORIJUN

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旅が好きが高じて一昔前は旅行誌、今はWEBの旅行ライターをしています。取材では東北地方を中心に全国47都道府県すべて訪れていますが、楽しみは温泉に入り、古い町並みや暮らし、芸能工芸など日本の伝統文化にふれることです。

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