歴史

【秋田県湯沢市】秋田藩の財政を支えた院内銀山。炭鉱町には1万5千人もの人があふれていた

秋田藩(久保田藩)は、佐竹氏がほぼ秋田県全域を領地とした藩で、当初の石高は約20万石でしたが、後に約39万石にまで増えました。同じ出羽国(山形県)の山形藩が当初約60万石だったのが初代藩主最上氏の失脚から領地を分割され、江戸時代末期には20万石に減らされたのと好対照です。

東北という極寒な地だけに、農産物の収穫には年ごとにばらつきがあり、財政的には苦しんだ時期もあったようですが、基盤を支えたのが銀や銅を産出する鉱山だったのです。

東北地方に有力な勢力をもっていた藩は鉱山開発に力を注ぎ、南部藩(岩手県)の小坂鉱山(秋田県小坂町)や伊達藩の玉山金山、鹿折金山、細倉鉱山などが有名です。このほか小さな鉱山は無数に開発され、山形県には120もの鉱山があったといわれています。

秋田藩にも数十か所の鉱山があったのですが、とりわけ院内銀山(いんないぎんざん)は日本屈指の産出量を誇り、藩の財政を支えました。

秋田藩が力を入れた院内銀山。地下約200mまで採掘

地中深くまで掘り進められた。院内銀山鋪岡略絵図 所蔵:ゆざわジオパーク

院内銀山は、1606年(1596年との説あり)に発見された鉱山で、1954年(昭和29年)に閉山するまで約350年間続いた有数の銀山です。発見から長い間民間の経営でしたが、1817年には秋田藩の直轄になり、産出量が飛躍的に増えました。天保年間(1830年~1843年)には1,000貫(約3,750kg)を超え、最盛期を迎えます。これにより藩の財政は大幅に潤い、銀山の町には久保田城下よりも多い1万5,000人もの人が住んでいたといわれています。 江戸時代の様子はいくつかの絵図に残されていて、その規模の大きさがよく分かります.

江戸時代の絵図に基づく抗口 ©ゆざわジオパーク

抗口は分かっているだけでも20か所以上あり、坑道は迷路のように複雑に造られ、第一山市という抗口からは地下205mまで採掘されていました。

明治以降政府直轄の鉱山に。いち早くドイツ人技師を招く

多くの家が建ち並ぶ院内の町(時代不明) ©ゆざわジオパーク

院内銀山は、明治時代になると藩の経営から一時的に民間に移りましたが、1875年(明治8年)から政府直轄の鉱山となります。その頃は、江戸時代の最盛期に比べるとかなり採掘量は落ちていました。その打開策としてドイツから鉱山技師を招き、近代的な技術を導入して坑道を地下410mまで掘り進めたことから、新鉱脈を開発することに成功し、明治20から30年年代には、生産量が年間1万~1万4,000㎏にも達しました。

しかし、それも長続きはせず、炭鉱事故や銀本位制から金本位制への移行などから衰退し、大正時代以降は休山と再開を繰り返しながらついに1954年(昭和29年)に全面的に閉山となってしまいます。

院内銀山の資料を展示。建物はドイツ人技師の住居を模した「院内銀山異人館」

明治時代に建てられた“異人館”を模した「院内銀山異人館」 ©ゆざわジオパーク

院内銀山異人館は、旧院内銀山巡りの起点となるJR院内駅に併設された資料館です。館内には、院内銀山で使われていた採鉱道具や賑わっていた銀山町の模型などが展示されています。レンガ風造りの建物は、明治初期にドイツから招かれた技師たちのために建てられた洋風建築の住居を模したものです。

ドイツ人技師たちの住居用に建てられた“異人館” ©ゆざわジオパーク

院内銀山異人館のもととなった建物は、院内銀山構内にあったもので、ドイツ人技師たち5人のために建てられたものです。この当時としては珍しい西洋建築の建物は、地元の人々は異人館と称して特別扱いしていました。銀山が衰退した大正時代末期には民間に払い下げられた後、老朽化のため取り壊され、現在跡地には石垣だけが残っています。

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  • 施設名称:院内銀山異人館
  • 所在地:秋田県湯沢市上院内字小沢115
  • 電話番号:0183-52-5143
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 入館料:おとな 320円、中学生以下 210円
  • 定休日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
  • URL:院内銀山異人館
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR奥羽本線院内駅からすぐ
    • 車/湯沢横手道路雄勝こまちICから約5分

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院内銀山の遺構

御幸抗

抗口前に役所が置かれていた「御幸抗」 ©ゆざわジオパーク

御幸坑(みゆきこう)は、かつては五番坑と呼ばれ、坑夫が出入りできる唯一の抗口でした。江戸時代には坑口前の広場に坑夫たちをチェックする役所(山方役所)が置かれていました。明治天皇が院内銀山を視察した際、この抗口から中へ入られたため、後に「御幸抗」と命名されています。

1906年(明治39年)には、銀山衰退の要因にもなったといわれる、死者が100名以上出た坑内火災が発生しています。原因は、たき火の不始末で起きた坑内火災の際、坑内に人がいるにもかかわらず、空気遮断のため鉱山当局が入り口の鉄扉を閉めてしまったためでした。

早房抗

院内銀山で現存する最も古い坑道「早房坑」 ©ゆざわジオパーク

早房坑(はやぶさこう)は、寛永年間(1624~1643)に開発された坑道で、現存する坑道では最も古いものです。非常に固い岩盤を掘るために行われていた江戸時代の掘削形態を、今に伝える貴重な坑道です。

金山神社

院内銀山の守り神「金山神社」 ©ゆざわジオパーク

金山神社は、院内銀山が発見された当初から銀山の鎮守社です。秋田藩から非常に厚く庇護されていて、歴代藩主からは金灯篭(かなどうろう)、書画などが奉納されています。現在の社殿は1830年に造営されたものです。毎年9月21日の「鉱山記念日」には金山神社例大祭が行われています。秋田県の指定史跡です

御膳水

私有地なので立ち入りはできない「御膳水」 ©ゆざわジオパーク

院内銀山史跡の入口(国道108号)から南西に1.3km行くと金山神社門前に着きます。そこからくの字に曲がり、約400m上流に上った道路脇に御膳水があります

1881年(明治14年)に明治天皇が院内銀山を視察した際、天皇にお茶を献上するのに使用されたことから「御膳水」と呼ばれています。現在は杉林に囲まれた場所にあり、冷たい清水が湧き出ています。

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  • 施設名称:院内銀山史跡 御幸抗/早房坑/金山神社/御膳水
  • 所在地:秋田県湯沢市院内銀山町字下夕町、同字上本町
  • 電話番号:0183-55-8195(湯沢市観光・ジオパーク推進課)
  • 見学自由
  • アクセス:
    • 鉄道/JR院内駅から車で約13分
    • 車/湯沢横手道路雄勝こまちICから約15分

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院内銀山の警備と通行税を徴収した「院内番所跡」

院内関所跡 ©ゆざわジオパーク

院内番所跡は、羽州街道に秋田藩が設けた関所(番所)の跡地で、番所では浪人の取り締まりと院内銀山の警備を行っていました。さらに番所を通る人からは通行税を取り、院内銀山の鉱石取引価格に対してはその1割ほどを徴収し、藩に納めていたといわれています。

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  • 施設名称:院内関所/院内番所跡
  • 所在地:秋田県湯沢市上院内字荒町
  • 電話番号:0183-55-8193(湯沢市生涯学習課 文化財保護室)
  • 見学自由
  • アクセス:
    • 鉄道/JR院内駅から徒歩で約15分
    • 車/湯沢横手道路雄勝こまちICから約15分

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明治時代建築の建物「旧院内尋常高等小学校」

院内地区センターになっている旧院内高等尋常小学校(旧院内小学校校舎) ©ゆざわジオパーク

旧院内高等尋常小学校(旧院内小学校校舎)は、1874年(明治7年)創立の学校で、現在残っている建物は1906年(明治39年)に再建されたものです。明治、大正、昭和にわたって小学校として使われ、1979年(昭和54年)に廃校となりましたが、現在は院内地区センターとして市民に公開されています。

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  • 施設名称:旧院内尋常高等小学校
  • 所在地:秋田県湯沢市下院内字田用橋60-1
  • 電話番号:0183-55-8193(湯沢市生涯学習課 文化財保護室)
  • 文化財:湯沢市指定文化財
  • アクセス
    • 鉄道/JR院内駅から徒歩で約5分
    • 車/湯沢横手道路雄勝こまちICから約15分

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現在でも発電。院内銀山用に造られた「樺山水力発電所」

現役の水力発電所、明治時代に稼働した「樺山水力発電所」 ©ゆざわジオパーク

樺山水力発電所は、1900年(明治33年)、院内銀山に電気を供給するために建設された発電所です。建物は石造りで、院内鉱山から切り出された石材を使用して建てられました。現在も東北電力樺山発電所として稼働する発電所で、建物も一部改装されてはいますが、建築当初のまま使用されています。秋田県内では石造りの建物は極めて少なく、貴重な建物です

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  • 施設名称:樺山水力発電所
  • 所在地:秋田県湯沢市秋ノ宮椛山154
  • 電話番号:ナビダイヤル0570-550-220
  • 所有:東北電力
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR奥羽本線院内駅から車で約9分
    • 車/湯沢横手道路雄勝こまちICから国道108号線経由約9分
  • URL:樺山水力発電所

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旅が好きが高じて一昔前は旅行誌、今はWEBの旅行ライターをしています。取材では東北地方を中心に全国47都道府県すべて訪れていますが、楽しみは温泉に入り、古い町並みや暮らし、芸能工芸など日本の伝統文化にふれることです。

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