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【青森県下北半島】ジオパーク下北半島の不思議な世界”死者の魂が戻り、世界で最も北に暮らすサルがいる下北半島”

下北半島は本州の最北端、青森県の太平洋側に突き出た半島です。よく“金太郎のまさかり”とか斧(おの)に似た形と例えられます。下北半島最北端の大間崎(おおまざき/青森県大間町)は、津軽海峡を越えた先にある北海道の最南端、白神岬(しらかみみさき/北海道松前町)より緯度で8分ほど、距離でいうと15kmほど北にあります(緯度1分は1,852m=1海里)。

※大間岬北緯41度32分/白神岬北緯41度24分

世界で最も北で生活する霊長類「北限のニホンザル」 ©下北ジオパーク協議会


下北半島を代表する活火山「恐山」は、死者の魂が集まる霊場

下北半島は、北海道の利尻島(りしりとう)から南へ延びて長野県の浅間山(あさまやま)あたりまで、南北に続く“那須火山帯(なすかざんたい)”に属する火山によってできた半島です。

地獄から見る極楽(宇曽利湖)

下北半島を代表する火山は恐山(おそれざん)で、直径3kmのカルデラ湖(宇曽利湖/うそりこ/正式名称は宇曾利山湖)を中心に、いくつかの溶岩ドームからなる外輪山があります。外輪山の最高峰は釜臥山/かまふせやま/標高878m)です。

温泉が湧き出て褐色に濁る宇曽利湖

旧火山の噴火口周辺に広がる岩だらけで亜硫酸ガスの香り漂う荒涼とした大地は“地獄”、宇曽利湖岸の白い砂浜は“極楽”と例えられ、約1,200年も前から“死者の魂が集まる”霊場として信仰されてきました。死者の魂を呼び寄せることができるという“イタコ”の存在も、霊場としてのすごみを感じさせてくれます。

地獄の象徴「血の池地獄」

INFORMATION


  • 施設名称:恐山菩提寺
  • 住所:青森県むつ市田名部宇曽利山3-2
  • 電話番号:恐山寺務所 0175-22-3825)・宿坊 0175-22-3826
  • 開山期間:毎年5月1日~10月末日
  • 入山料:おとな 500円、小中学生 100円
  • URL:恐山菩提寺

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火山が創り出した天然記念物の絶景「仏ヶ浦」

下北半島の西側の海岸に多く見受けられる巨岩や奇岩がそそり立つ景観は、火山によって造られたものです。特に「仏ヶ浦」(佐井村)は国の名勝で天然記念物に指定されている絶景です。

溶岩と波が創り出した造形。魂が戻ってくる入り口といわれる「仏ヶ浦」 ©青森県

「仏ヶ浦」には、“五百羅漢(ごひゃくらかん)”“如来の首(にょらいのくび)”“屏風岩(びょうぶいわ)”などと名付けられた不思議な形をした奇岩が連なっています。

おすすめは壮大な絶景を海から眺められる遊覧船 

聖地「恐山」から真西にある「仏ヶ浦」は、死者があの世に旅立つ場所であり、イタコによって呼び戻される魂が帰ってくる入り口だと信じられていて、岩や浜には仏教的な名称が付けられました。グリーンシーズンには観光船が運航され、海側からその風景が眺められます。

INFORMATION


  • 施設名称:仏ヶ浦
  • 電話番号:0175-38-2244(仏ヶ浦海上観光)
  • ※観光船の運航は例年4月下旬~10月いっぱい
  • URL:仏ヶ浦海上観光

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天然記念物「下北半島のサルおよびサル生息北限地」

下北半島は本州の北限ですが、本州に住む動物の北限でもあります。ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ホンドシカ、イノシシそしてホンドキツネ、ニホンザルなどですが、逆に北海道にいるヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、エゾリスなどは下北半島以南には生息していません

雪の中体を寄せ合って寒さに絶える ©下北ジオパーク協議会

これは津軽海峡が最深部で約450m、浅いところでも約130mあり、本州と北海道が陸続きになったことがなく、海流の流れも速いことなどで、本州と北海道では生息する動物が全く違うと考えられています。この違いに日本に滞在していたイギリス人の動物学者トーマス・ブレーキストンが気づき、1883年(明治16年)に学会発表されました。そのため津軽海峡による生息動物の分かれ目のことを“ブレーキストン線(ライン)”と呼んでいます。


下北半島・生息域を広げる世界最北端のニホンザル

下北半島が北限の動物で、北海道にいないのはサル類、イノシシ類などですが、下北半島で生活しているニホンザルは、日本ばかりでなく人間以外“世界で最も北に住む”霊長類”なのです。

下北半島のニホンザルは、1960年代に南西部の脇野沢(わきのさわ)地区の海岸部で目撃され全国的に知られるようになりました。1970年には当時4群あった下北半島全域のサルを捕獲禁止とし、そのうちの脇野沢地区に生息する3群を野生状態の保護を目的で国の天然記念物として指定されています。1970年代に行われた調査では6群約230頭が確認されていますが、生息地域は脇野沢を含む西海岸エリアに限られていました。

保護活動や地球温暖化などによって年々生息数が増えている下北半島のニホンザル ©青森県

ところが2000年3月に行われた実態調査では、20群約800頭に増えていて、下北半島全域で目撃されるようになったのです。それから20年ほどたった現在はなんと約2,500頭にも増えています。

ニホンザルは本来南に生息する動物ですが、徐々に日本の気候に順応し極寒の下北半島でも生活できるように対応して来ました。下北半島のニホンザルがこれほどまでに短期間で増殖したのにはもちろん保護政策が関係していますが、地球温暖化で平均気温が上がり住みやすくなったことも大きな要因になっていることは確かです。

世界最北端のサルとして貴重な存在の「下北半島のニホンザル」ですが、これほど増えると人間との関わりで大きな問題を抱えることになっています。そのひとつが農作物被害です。下北の人々にとってニホンザルは大切な存在であることには変わりはないのですが、ある意味敵対動物にもなっています。保護政策を含め、どうしたら人とうまく棲み分けができるかを考え直さなくてはならない時期に来ているのかもしれません。



“北限のニホンザル”を見学できる「脇野沢野猿公苑」

安全に「北限のニホンザル」を見学できる脇野沢野猿公苑 ©青森県

脇野沢野猿公苑(わきのさわやえんこうえん)」(むつ市脇野沢)は、50匹ほどのニホンザルを飼育して見学することができる施設です。「道の駅わきのさわ」の敷地内にあり、野生に近い形で飼育されている“北限のニホンザル”を見学できます。

INFORMATION


  • 施設名称:脇野沢野猿公苑
  • 住所:青森県むつ市脇野沢7引201-211
  • 電話番号:0175-44-3252(道の駅わきのさわ「リフレッシュセンター鱈の里」)
  • 開園時間:10:00~15:00
  • 入園料:おとな 200円、小中高校生 100円
  • 休園日:年中無休

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自然、動物、グルメ、温泉。魅力いっぱいの下北半島

下北半島は、半島全体が「下北ジオパーク」でありまた、国定公園(下北半島国定公園)に指定されています。火山が創り出した自然の造形「恐山」「仏ヶ浦」やニホンザルはじめとする北限に生きる動物たちなどにも出会える地球の公園(ジオパーク)です。

津軽海峡で獲れる最上級クロマグロ「大間のマグロ」 ©青森県

また、半島をとり囲む複雑な海流がもたらす大間のマグロや陸奥湾のホタテをはじめとする絶品の魚介類、火山がもたらしてくれる温泉などもおすすめのポイントです。そんな魅力あふれる下北半島へ出かけてみてはいかがですか。

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旅が好きが高じて一昔前は旅行誌、今はWEBの旅行ライターをしています。取材では東北地方を中心に全国47都道府県すべて訪れていますが、楽しみは温泉に入り、古い町並みや暮らし、芸能工芸など日本の伝統文化にふれることです。

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