【福島県喜多方市】4000軒も残る蔵。タイムスリップしたような蔵の街・喜多方

福島県喜多方市(きたかたし)といえばすぐ思い浮かぶのがラーメン。札幌ラーメン、博多ラーメンとともに日本三大ラーメンといわれています。

その歴史は古く、大正末期頃に中国から来た青年が屋台をひいて支那そばを売り歩いていたのが元祖だそうです。そして第二次世界大戦が終わると、喜多方に戻ってきた中国からの引き揚げ者たちによってラーメン店が増えたのです。

喜多方を代表する醤油ラーメン(源来軒) ©ふくしまの旅

1980年代になって、自治体によって古い街並みが整備されはじめ、昔の街並み散策ブームがやってきます。

喜多方市もそのひとつで、蔵が建ち並ぶ風景は“蔵の街喜多方”として写真集やTVに紹介され、多くの観光客が訪れるようになりました。その頃はちょうど全国的なラーメンブームで、地元の麺と山形県との県境にそびえる日中飯盛山(にっちゅういいもりやま/標高1595m)に端を発する名水で作った醤油ベースのスープを使った喜多方のラーメンが観光客に大ウケ。

「喜多方のラーメンがおいしかった」という口コミによって喜多方ラーメンの名は、東京を中心に徐々に広がっていったのです。


会津藩の米どころだった喜多方

喜多方は会津の中心地会津若松の北に位置していたことから“北方”と呼ばれ、いくつかの村が存在する農山村でした。

会津は、源頼朝が起こした奥州征伐(おうしゅうせいばつ/1189年。東北で強大な勢力を誇っていた奥州藤原氏を討伐するための戦い)で武運を挙げた佐原十郎義連(さわらじゅろうよしつら)に、頼朝から領地として与えられました。その後新宮氏(しんぐうし)を経て室町時代には芦名氏(あしなし)が会津全体を支配するようになります。芦名氏は北方にある村を整備し、いくつかの村には市を開いて発展させました。

江戸時代になり会津藩主、蒲生氏郷(がもううじさと)は城下町の整備とともに北方の新田開発を奨励します。米どころとなった北方では米の生産量が上がるとともに、良質な水があることから酒造も盛んになり、味噌、醤油造りも始まります。酒や味噌醤油醸造のために蔵が建てられはじめたのもこの頃です。

江戸時代は蒲生氏郷の後、上杉景勝(うえすぎかげかつ)、蒲生秀行(ひでゆき)、加藤嘉明(かとうよしあき)、加藤明成(あきなり)と藩主がめまぐるしく変わりますが、1643年保科正之(ほしなまさゆき)が藩主になり政情は安定します。しかし、幕末には江戸幕府側の会津藩と新政府軍による戊辰戦争(1868年~1869年)が勃発し、北方地方も多くの家や蔵が焼かれてしまいます。


明治の大火で蔵が焼け残り、その重要さを認識

明治の大火以降火に強い蔵が多く建てられた(イメージ)

1875年(明治8年)なって北方の村、小荒井村(こあらいむら)小田付村(おだづきむら)・塚原村などの5村が合併して喜多方町が発足しました。喜多方町は、醸造業や漆器業、養蚕などで少しずつ復活し、蔵も多く建てられるようになったのですが、1880年(明治13年)に町の中心部170戸あまりを焼く大火が起こります。その際に多くの家屋が焼失したのですが、蔵だけは焼け残り、その重要さが認識されるようになったのです。


加納銅山が喜多方を繁栄させた

明治時代後半になると近くに銅山(加納銅山)が発見され、本格的に稼働します。加納銅山は、当時全国第3位の産出量があったため、多くの労働者が集まり、また鉄道も開通し喜多方町は大いに賑わいました。この時期に蔵も多く建っています。

雪をかぶった蔵の街並み。蔵は雪にも強い ©ふくしまの旅

蔵は喜多方市の中心部にある古くから市が立っていた旧小荒井村エリアや旧小田付村エリアに見学可能な蔵が多く残りますが、喜多方市全体では非公開も含め今でも4,000超える蔵が残っているそうです。小田付エリアの街並みは国の伝統的建造物保存地区に指定されています。


建築様式や使い方がさまざまな喜多方の蔵

農家のレンガ造りの蔵。三津谷若菜家 ©ふくしまの旅

喜多方の蔵は、市街地の商家ばかりでなく、農村にも蔵があるという特徴があります。それは、大火で蔵の必要性を感じたことと、江戸時代、農家が蔵を建てるときは代官書にお伺いを立てなくてはいけなかったのが、明治時代以降誰でも自由に蔵を建てることができるようになったことで、競って蔵を建てたのです。

蔵の建築様式は白壁土蔵というのが一般的ですが、喜多方では黒漆喰の壁や、土壁、レンガ造りなどさまざまです。特に珍しいのが工場などに多いレンガ造りが一般農家にも普及していることでしょう。

9棟の蔵を移築した「喜多方 蔵の里」

「喜多方 蔵の里」内にある旧冠木家店蔵 ©ふくしまの旅

「喜多方 蔵の里」は、道の駅 喜多の郷内にある、使われなくなった喜多方のさまざまなタイプの蔵を移築し展示する、蔵造りの文化を後世へ伝えることを目的に作られた蔵のテーマパークです。移築された蔵は「旧井上家穀物蔵」「旧唐橋家味噌醸造蔵」「座敷蔵」「勝手蔵」「猪俣家穀物蔵」「郷頭(ごうがしら)屋敷 旧外島(としま)家住宅(福島県指定重要文化財)」「旧冠木(かぶき)家店蔵」「旧東海林家酒造蔵」「肝煎(きもいり)屋敷 旧手代木(てしろぎ)家住宅(福島県指定重要文化財)」の9棟で、喜多方ではいかに蔵が重要だったかがよく分かります。

喜多方 蔵の里<Information>

  • 施設名称:喜多方 蔵の里
  • 住  所:〒966-0094 福島県喜多方市押切109
  • 電話番号:0241-22-6592
  • 開館時間:9:00~17:00
  • 入館料 :一般、大学生 400円、小中高校生 200円 小学生未満 無料
  • 休館日 :12月29日~1月1日
  • 公式URL:道の駅 喜多の郷

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観光案内所になっている「東町蔵屋敷 会陽館」

「東町蔵屋敷 会陽館」は、生糸生産や製糸業で喜多方の産業を牽引してきた旧五十嵐家の住居として使われていた蔵です。現在は喜多方市に寄付されて改装し、小田付観光案内所やフリースペースとして利用されています。建築年代は江戸時代後期です。

東町蔵屋敷 会陽館<Information>

  • 施設名称:東町蔵屋敷 会陽館(蔵屋敷小田付観光案内所)
  • 住  所:〒966-0051 福島県喜多方市東町4088−1
  • 電話番号:0241-22-6592
  • 開館時間:10:00~17:00
  • 入館料 :無料
  • 休館日 :3月下旬~11月
  • 公式URL:東町蔵屋敷 会陽館

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江戸、大正、昭和の3時代の蔵が建ち並ぶ「大和川酒蔵 北方風土館」

「大和川酒蔵 北方風土館」は、江戸時代中期創業の大和川酒造店の今は使われなくなった“江戸蔵”“大正蔵”“昭和蔵”の3代にわたる蔵を公開しています。

江戸蔵・大正蔵・昭和蔵がある大和川酒造 ©喜多方観光物産協会

“江戸蔵”は酒造りをしていた蔵で、江戸時代に建設されたものです。“大正蔵”にはもともとできあがった酒を貯蔵、熟成するタンクが並んでいました。“昭和蔵”は、1929年(昭和4年)に建てられた蔵で、現在はコンサートホールや各種イベントスペースとして使われています。

大和川酒蔵 北方風土館<Information>

  • 施設名称:大和川酒蔵 北方風土館
  • 住  所:〒966-0861 福島県喜多方市寺町4761
  • 電話番号:0241-22-2233
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 入館料 :無料
  • 休館日 :無休
  • 公式URL:大和川酒造

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生活空間も蔵造り火から守った「若喜商店 縞柿の蔵座敷」

若喜商店は、江戸時代創業の味噌醤油の製造販売店で、店舗、レンガ造りの蔵など明治時代から昭和初期に建てられた建造物が多く残されています。

今でいう鉄筋コンクリート造り! 室内は木造の和室 ©喜多方観光物産協会

「縞柿(しまがき)の蔵座敷」は、外観はレンガ造りで、室内は和室という座敷蔵の1室で、内部はすべて柿の木でしつらえてあります。室内には入れませんが、外からは見学が可能です。座敷蔵は、店舗、作業蔵、醸造場などともに国の登録有形文化財です。

若喜商店 縞柿の蔵座敷<Information>

  • 施設名称:若喜商店 縞柿の蔵座敷
  • 住  所:〒966-0817 福島県喜多方市字三丁目4786
  • 電話番号:0241-22-0010
  • 開館時間:9:00~17:00
  • 入館料 :無料
  • 休館日 :1月1日
  • 公式URL:若喜商店 縞柿の蔵座敷

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最後に

喜多方市には、ほかにも建築様式もさまざまな「笹正宗酒造」「松本屋」「井上合名会社」「矢部家住宅」「旧山時呉服店」「旧嶋新商店」「冠木商店」「若菜家住宅」「上野家住宅」「島慶園」などの国の登録有形文化財に指定された蔵が多数あります。

時代がタイムスリップしたような『蔵の町 喜多方』をのんびり散策してみませんか。喜多方ラーメンはおいしいし、酒蔵もいっぱいありますよ。

※喜多方を代表する蔵、国の登録有形文化財「旧甲斐家蔵住宅」は、2023年4月から大改修工事に入ります。工期は数年かかる見込みで、その間見学は不可です。

喜多方観光物産協会<Information>

  • 施設名称:喜多方観光物産協会
  • 住  所:〒966-0814 福島県喜多方市御清水東7244番地2
  • 電話番号:0241-24-5200
  • 公式URL:喜多方観光物産協会

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