三ツ石神社

【岩手県】「岩」に鬼の「手」形?岩手のルーツが詰まった三ツ石神社

岩手県中心部、中央通りの石割桜がある裁判所前交差点を北上すると道路沿いに見えてくる東顕寺(とうけんじ)。このお寺の裏手には「三ツ石神社(みついしじんじゃ)」という神社があります。

「三ツ石さま」の名前で古くから地元で親しまれていたこの神社の境内には、注連縄を張られた3つの巨大な花崗岩があるのですが、何を隠そうこの大岩が「岩手」の名前のルーツになったといわれているんです。


鬼を懲らしめた三ツ石さま伝説

昔々、まだこの地が岩手とも盛岡とも呼ばれていなかった頃、周辺で住民や旅人に悪事を働く「羅刹鬼」という鬼がいました。

鬼

その悪行にほとほと困り果てた人々は三ツ石神社の神様である三ツ石さまに「悪い鬼を懲らしめてください」と願いました。するとその願いを聞き入れた三ツ石さまは羅刹鬼を神社にある三つの大岩に縛り付けます。

仰天した羅刹鬼は観念して「二度と悪さをしないこと」と「二度とこの地に踏み入らないこと」を約束し、その証として大岩に手形を残し南昌山(岩手県の岩手郡雫石町と紫波郡矢巾町との境にある山)の方角へ逃げ去っていきました。

住民たちは大岩の周りで「さぁさぁ踊れ」と囃し、踊りを踊って鬼の退散を喜びました。


色々なもののルーツが詰まった三ツ石さま伝説

この伝説の中には岩手を代表する様々なもののルーツが詰まっていましたがわかりましたか?

以下でそれぞれ伝説を分解して解説します!

鬼の約束手形が「岩手」

伝説の中で三ツ石さまに懲らしめられた羅刹鬼は「二度と悪さをしないこと」と「二度とこの地に踏み入らないこと」を約束し、その証として大岩に手形を残したとあります。

三ツ石神社の大岩
三ツ石神社の大岩

この時「岩」に残した鬼の「手」形「岩手」という名前のルーツになったといわれています。この頃はまだ岩手県はないので岩手郡または磐手(いはて)郡の元になったということですね。

今でも鬼の手形らしきものが見えるらしいですが…真偽のほどはわかりません。

二度とこの地に踏み入らない約束が「不来方」

鬼が約束した内容の一つ「二度とこの地に踏み入らないこと」「不来方(こずかた)」の由来であるといわれています。

「もう来ません(不来)こっちの(方)には」ということですね。

日本の城

不来方(こずかた)というのは、現在の岩手県盛岡市周辺を指す言葉で、過去570年に渡って使われていました。もともとこの地にあった城は「不来方城」と呼ばれていて、南部氏がその「不来方城」を基礎にして築いたものが「盛岡城」であるとされています。

現在でも盛岡の雅称として「不来方(こずかた)」の名前がよく使われています。

さぁさぁ踊れが「さんさ踊り」

鬼が退散した後、それを喜んだ住民たちが「さぁさぁ踊れ」と踊りを踊って…という部分。

さんさ踊り

この「さぁさぁ踊れ」「さんさ踊れ」と変形してできたのが盛岡の夏の風物詩にして東北六大祭りの一つである「盛岡さんさ踊り(もりおかさんさおどり)」であるといわれています。

三ツ石神社<Information>

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ちなみに「盛岡」の名前の由来は?

1592年頃、もともと三戸城(現在の青森県三戸郡三戸町)を拠点としていた南部氏27代南部利直がこの地に移った際、「不来方」という名前を嫌い「森ヶ丘」と改名。その後「森ヶ丘」が訛って「森岡」と呼ばれるようになります。

そして南部利直の二代後、南部氏29代南部重信が、江戸の元禄期(1680~1709年頃)に真言密教寺院である永福寺(盛岡市下米内)第四十二世の清珊法印との連歌を以下のように詠みました。

幾春も 華の惠の露やこれ 宝の珠の 盛る岡山

この連歌の中の「盛る岡山」を「森岡」にあてて「盛岡」とした名前が定着、後に藩名そのものも「南部」から「盛岡」へ改められ「盛岡藩」が誕生しました。

そして明治期の廃藩置県により「盛岡藩」が「盛岡県」となり、1889年の市制施行により現在の「盛岡市」が誕生しました。

ちなみに「盛岡」誕生のきっかけとなった永福寺は「寶珠盛岡山」の山号で現在も存在します。

永福寺<Information>

  • 名  称:寶珠盛岡山 永福寺
  • 住  所:〒020-0003 岩手県盛岡市下米内2丁目1−1
  • 電話番号:019-662-4424
  • 公式URL:ー

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まとめ

普段気にも留めない地名の由来ですが、ちょっと気になって調べてみると結構面白いですね。

何事も、なにも理由がなく名前が付くことはないと思うので気になったときは調べてみると新たな発見があるかもしれません。

「岩手」「不来方」「さんさ踊り」のルーツである三ツ石神社は盛岡市中心部から近く、アクセスがいいので盛岡旅行を計画する際は候補の一つに入れてもいいかもしれませんね!


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