【秋田県】鹿島様とは?秋田県に伝わる人形道祖神信仰を詳しく解説
集落の境目や峠などの路傍にあり外来の疫病や悪霊が来るのを防ぐとされた道祖神(どうそしん)は、日本各地にさまざまな種類や形状のものが存在するのが特徴的だと言えるでしょう。
この記事では秋田県中部、秋田県南部に見られる道祖神の鹿島様について詳しく解説します。
道祖神とは?
道祖神(どうそしん)は、路傍の神、村の守り神として、民間信仰で最も人の身近にいた神であると考えられています。集落の境や村の中心、村内と村外の境界や道の辻、三叉路などに主に石碑や石像の形態で祀られています。
中国で古来から祀られていた道の神「道祖」と、日本古来の「みちの神」が融合したものと考えられており、村の境界や道の辻、いわゆる「境目」と捉えられる場所に祀られ、外部から侵入するあらゆる災いを退けてくれる守り神として信仰されていたようです。
近世では信仰の形が変わり、縁結びの神、旅行安全の神、子どもと親しい神として信仰されているそうです。
鹿島様とは?
鹿島様とは稲魂(うかみのたま)が宿り人々の生命力を高める霊力の備わる稲藁で作られた人型の道祖神で、秋田県内では湯沢市に6体、横手市に7体、美郷町に3体、仙北市に3体、大仙市に1体がそれぞれ設置されています。
背の高さは3m~4mと巨大で、道祖神の意味合いからすると集落につながる道全ての入り口に設置すればよいように思いますが、鹿島様は1体のみ設置されているのが特徴的だと言えるでしょう。
顔が稲藁で作られているものは秋田県南部に多く、顔が木で作られているものは秋田県中部、秋田県南部両方に見られます。
また大きな草鞋を吊るしたもの、絵馬のように仁王面だけものなど鹿島様はさまざまな姿で作られているのです。
道祖神として秋田では長く信仰されている鹿島様ですが、いったいどのような神様なのでしょうか。
鹿島様は紀元前660年(神武天皇元年)創建の鹿島神宮における祭神で、日本建国・武道の神様である「武甕槌大神(タケミカヅチノオオカミ)」のことだと言われています。
鹿島神宮には全長2.7mを超える長さの「直刀」という宝物があり、これは武甕槌大神の剣として、また日本最古・最大の剣として大切に保管されているのです。
参考:鹿島神宮公式ホームページ
鹿島祭りについて
鹿島祭りとは春から夏にかけて、生活に害をなすものを追い出す伝統行事の1つです。
伝統行事としては害虫を駆除し豊作を祈願する虫送りに分類され、秋田県内では6月第4週~9月第2週くらいの期間に男鹿市、秋田市、大仙市、横手市、由利本荘市などで行われます。
一般的に稲藁でできた鹿島人形を鹿島舟に乗せ、町内を回ってお祓いをしてから川に流すという流れで行われることが多いでしょう。
鹿島流しの思い出
筆者は大仙市立大曲小学校に在籍していたため、鹿島流しに参加した経験があります。
鹿島舟に乗せる鹿島人形は、各学年の児童が顔、飾りなどに分けた一部分の作成を担当し、完成したものを3年生が鹿島人形へと組み上げます。
出来の良い鹿島人形は少しの間廊下などに展示された後、PTAの方々と先生が鹿島舟に鹿島人形を乗せて仕上げてくださるという形でした。
筆者自身も入学してから鹿島流しのたびに廊下に飾られる鹿島人形に憧れの気持ちを抱いていたため、自分が3年生になって鹿島人形を作る際は艶のある色紙を何色か用いて鎧を作るといったアイデアを早くから想像していたのです。
実際に3年生になった時、工業高校の建築科の教員をしていた父親が、私が不器用な手つきで鹿島人形を組み立てようとしているのを見て、鎧を竹ひごで作ってみないかと声をかけてくれました。
手先の器用な父が試作してくれたのを見ようみまねでやってみますが、3年生には竹ひごをきれいに並べて接着するのはなかなか難しかったのを覚えています。
その後きれいに色をつけ、他の部分も組み立ててみるとなかなか立派な武将に仕上がりました。
とても気に入ったので鹿島舟の一番前に乗せる大将に選ばれないかと心密かに期待していましたが、鹿島流しの前日に確認すると3番目に乗せられていて、少し残念に思ったのを覚えています。
しかし次の日登校すると、筆者の鹿島人形は大将へと変わっていました。
PTAの役員の方が私の人形の出来を見て、場所を変更してくださったのだそうです。
鹿島舟を見てとてもうれしい気持ちでしたが、いざ雄物川に流すという時とても名残惜しく、誰かが筆者の人形を助けてくれないかとすら思ったのが印象的です。
これからも大曲小学校での鹿島流しをずっと続けていってほしいと、心から願っています。
まとめ
鹿島様とは稲魂(うかみのたま)が宿り人々の生命力を高める霊力の備わる稲藁で作られた人型の道祖神で、道端で祭られたり、鹿島流しの行事で人形として生活に害をなすものを引き受ける役割を果たしたりと秋田県ではさまざまな形で親しまれていることがわかりました。
ぜひ鹿島様を見かけたら、感謝の気持ちで手を合わせてみてください。