岩手の初夏の風物詩「チャグチャグ馬コ」は華やかな装具を纏った農用馬の大行進！

毎年6月、岩手県の初夏の風物詩ともいえるお祭りが滝沢市と盛岡市にて開催されます。

一部界隈では「日本一かわいいお祭り」といわれることもあるそのお祭りの名前は「チャグチャグ馬コ」。いったい何がかわいいのか？そんなお祭りの全容をご紹介します！

チャグチャグ馬コとは？

チャグチャグ馬コ（チャグチャグうまっコ）は、岩手県滝沢市と盛岡市で毎年6月の第2土曜日に実施される祭り。

滝沢市の鬼越蒼前神社（おにこしそうぜんじんじゃ）から盛岡市の盛岡八幡宮までの約14kmの道のりを、60～100頭ほどの煌びやかな装具を纏った農用馬の馬群が行進します。

祭りは1978年に「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選定され、さらにチャグチャグ馬コの鈴の音は、1996年に環境庁の「残したい日本の音風景100選」にも選出されています。

この馬の装束についている大小700個の鈴の音は、「チャグチャグ」と聞こえることから「チャグチャグ馬コ」の名称の起源になったとも。

古くから名馬の産地として馬とともにあった南部地方

古くから現在の青森県～岩手県付近に体格のいい馬が生息している事は有名で、甲斐国の南部郷（現在の山梨県南巨摩郡南部町）からこの地に入部した南部氏が、甲斐の馬とこの地の馬の交配を通じて改良を行い大型の「南部馬」を作り出し、現在でいう一種のブランド馬として広め、諸国に重用されるようになりました。

現在では異種交配により絶滅してしまったといわれる南部馬ですが、馬とともにあった南部地方の生活は、厩と一体となった「南部曲り家」などの建築様式や、青森県八戸市周辺に伝わる郷土玩具「八幡馬」などからも見て取れます。

東北ろっけん雑学メディア NEFT

「南部曲り家」は馬の重要性を熟知していた南部藩独自の住居【岩手県】

https://jp.neft.asia/archives/10445

「曲り家」は、家の中に厩を作り一緒に暮らすために作られた、独創的で、人間味あふれる住居です。関東以北、特に岩手県には江戸時代に『南部曲り家』と呼ばれる独特の曲り家が多く建てられました。『旧川前シメ家』　江戸末期築。「遠野ふるさと村」　画像提供：岩手県観光協会冬の寒さや雪でも一日中温かい母屋で馬を飼育東北地方の各地にはL字型をした藁葺き（茅葺き）屋根の古民家が残っています。「曲り家（まがりや）」といい、曲家、曲屋、曲り屋、曲がり屋、曲り家、曲がり家など地域によって微妙に呼称が変わる場合があります...

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八幡馬 - 日本三大駒の一つで南部の馬産地に伝わる縁起物の郷土玩具【青森県八戸市】

https://jp.neft.asia/archives/39105

農耕や戦、交通手段など、昔は人々の生活と切り離すことができなかった馬。東北地方には優秀な馬産地が多く、その面影はおのずと各地の伝統工芸品にも表れます。八幡馬（やわたうま）もその一つで、福島県郡山市の三春駒、宮城県仙台市の木下駒とともに「日本三大駒」の一つに数えられる郷土玩具です。八幡馬とは？古代から優秀な馬産地だった八戸市八戸市を含む南部地方はその昔、糠部郡（ぬかのぶぐん）と呼ばれ、奈良時代の初頭には既に優秀な馬の産地として朝廷に認知されていました。時代が進み鎌倉時代、鎌倉政権と奥州藤原氏の...

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チャグチャグ馬コの起源

このことから現在の滝沢市周辺地域では「馬」にちなんだ端午の節句（5月5日）を休息日として、愛馬の無病息災を祈願するために、馬の守り神である 「蒼前神社」や「駒形神社」へ参拝するようになりました。

これが「お蒼前参り」と呼ばれ定着し、年を重ねるにつれ徐々に参拝の際に馬を小荷駄装束（こにだしょうぞく）で着飾るようになっていったことが「チャグチャグ馬コ」の原型になったといわれています。

秩父宮殿下の来県をきっかけに誕生した行進行事

1930年、当時馬好きとして有名だった秩父宮殿下が岩手県をご来訪された折に、滝沢市の鬼越蒼前神社参詣後に馬列を成して盛岡八幡宮まで行進し、神前馬場で馬ぞろいを披露したものが地元住民にも大変な評判を呼びました。

そこで翌年以降も鬼越蒼前神社～盛岡八幡宮までの行進行事を開催することになり、これが現在の鬼越蒼前神社参拝～行進～盛岡八幡宮参拝という「チャグチャグ馬コ」の形式の誕生とされています。

祭り前日に開催される「チャグチャグ馬コ撮影会」

お祭りの前日には出発地点である鬼越蒼前神社にて「チャグチャグ馬コ」の撮影会が開催されます。

神社の境内の至る所に当日の装いを身に纏った馬コたちがいて、自由に撮影することができます。

当日のお祭りの形式は、例えるならマラソンや駅伝を沿道に観戦しに行くようなスタイルなので、じっくりと馬コを見ながら撮影もしたいという場合は前日の撮影会に行くのがおすすめです。馬コの眼前まで近づいて記念撮影をすることができます。

ただし馬コに背後から近づくと後ろ足で蹴り上げられる危険があるので、馬に近づく場合は正面から近づくようにしましょう！

チャグチャグ馬コ撮影会のプログラム。年によって内容や時間に変更があるかもしれませんが、2025年は上写真の通りでした。

この日はおよそ10頭程度の馬コたちが撮影会に参加していました。

間近で見る馬コは大迫力！一般的に想像する競走馬よりも大きく、足がとんでもなく太いです…。

煌びやかな装具も間近でじっくり見ることができます。

中には一回り小さなポニー馬コも。

ミニパレードに出発する馬コたち。

前日のミニパレードは午前と午後の2回開催されます。

沢山の見物客で賑わう「チャグチャグ馬コ」当日

滝沢市の鬼越蒼前神社から盛岡市の盛岡八幡宮までは約14kmの道のり。決して歩けない距離ではないですが、筆者はちょっと自信がなかったので盛岡市内で馬コの到着を待ち構えることに。

予定の時間が近づくと沿道には徐々に見物客が増え始め、気が付くと両脇が見物客に埋め尽くされる状態に。以下の写真はそんな中、筆者が大通りから盛岡八幡宮までの約2kmの道のりを追いかけて撮影したものです。

盛岡市の大通り付近に到達したチャグチャグ馬コの行進行列。沿道には沢山の見物客が。

先頭を走るのは7頭の役員馬。騎乗しているのは滝沢市、盛岡市の市長さん達です。

大通りから岩手公園（盛岡城跡公園）に差し掛かった交差点。親馬のそばに寄り添う仔馬がかわいらしい。

櫻山神社前を通過する馬コたち。

中の橋に差し掛かる手前。沿道の見物客は一切途切れません。

肴町商店街を越えて盛岡八幡宮へと続く参道（八幡通り）。

盛岡八幡宮大鳥居付近に陣取ると正面からチャグチャグ馬コの行進を捉えることができます。

引きこ・付き添いの方々も、終始さわやかな笑顔で沿道に手を振っていました。14kmの道のりを歩いてきた疲れは一切見せません。

馬コもたくさんの見物客の声援にどこか得意げな顔。

最後は盛岡八幡宮の大鳥居はくぐらず脇に逸れ、笠森稲荷神社の参道正面辺りから神社の敷地内に入り行進は終了。ゴール地点にも人が溢れかえっていました。

行進行事ということもあり、マラソンや駅伝を沿道に観戦しに行くようなイメージに近い催しで、普通のお祭りを想像して見に行くとあっという間に終わってしまってあっけに取られてしまうかもしれませんが、かわいらしく煌びやかな装具に身をつつんだ馬コの雄姿は一見の価値あり！だと思います。

機会があればぜひ一度は生で見てみてほしいお祭りです。じっくり馬コを鑑賞したい方は前日のチャグチャグ馬コ撮影会のほうに行くのもおすすめです！

チャグチャグ馬コ＜Information＞

• 名　　称：チャグチャグ馬コ
• 日　　程：毎年6月の第2土曜日
• 行進経路：滝沢市の鬼越蒼前神社～盛岡市の盛岡八幡宮までの約14キロメートル
• 公式URL：https://chaguuma.com/