一から九まで「戸の付く地名」【七戸編】馬産地としての面影が色濃く残る最北の戸

九つある「戸」のなかで最も北に位置しているのが七戸(しちのへ)で、この地域では現代でも馬牧場が点在しています。

現在は軍馬や農耕馬でなく競走馬のサラブレッドが飼育されていて、馬産地としての面影が最も色濃く残されている戸の付く町です。

平成の大合併によって七戸城跡などがある旧七戸町と縄文遺跡がある旧天間林村とが合併して今の七戸町となり、役場本庁舎は天間林村に置かれています。

その2つののちょうど中間に東北新幹線の七戸十和田(しちのへとわだ)駅があり、駅前には「イオン七戸十和田駅前店」や道の駅などががあるため、観光客だけでなく地元の人々も集まっていつもにぎやかです。


歴史が長く多くの系譜が存在する七戸氏

南部光行
南部光行(盛岡市中央公民館所蔵) 出典:Wikipedia

それを治める七戸氏は、南部氏初代・南部光行(なんぶみつゆき)の四男、朝清(ともきよ)が始祖であると伝えられていますが、その後は時代によって血筋が異なる系譜が登場しています。

七戸城跡(柏葉城:かしわばじょう)

七ノ城跡
七ノ城跡

城跡は七戸町役場七戸庁舎の裏手の高台にあって、現在は柏葉公園として整備され、1941年(昭和16年)12月に国の史跡に指定されました。

城郭は八戸の根城(ねじょう)南部氏の南部政長(なんぶまさなが)が築城したとする説と、三戸南部氏から根城南部氏の当主となった南部政光(なんぶまさみつ)が築いたとする説があります。

七戸神明宮
七戸神明宮 ご祭神の大日要貴尊(オオヒルメノムチノミコト)別名は天照大御神(アマテラスオオミカミ)

広い敷地内には七戸地方の総氏神様である七戸神明宮があり、そのほかにかつては小学校や中学校がありましたが現在は移転していて敷地の全てが公園です。

七戸城東門
再建された東門

明治6年(1873年)には本丸城門が町内の青岩寺に移築されましたが、城跡の東側に七戸城東門が再建されていて、堅牢な造りで堂々と建つ姿が往年の威容を物語っています。

七戸城跡<Information>

  • 施設名称:史跡 七戸城跡(柏葉城跡)
  • 所在地:青森県上北郡七戸町七戸30(柏葉公園内)

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道の駅しちのへ

道の駅しちのへ
ダービー馬のお出迎え 左がコマツヒカリで右がヒカルメイジ

七戸十和田駅近くの国道4号線沿いにあり、かつて日本ダービーを制覇した「コマツヒカリ」と「ヒカルメイジ」という、七戸生まれサラブレッドの等身大オブジェが設置され、七戸出身美術家たちの作品を集めた「鷹山宇一記念美術館」もあります。

物産館では特産の「駒饅頭(こままんじゅう)」や、地酒の「駒泉」などが販売され、珍しい発酵熟成された黒にんにく、馬肉のくんせいや長いものつけものなどは、お土産としておすすめです。

レストラン絵馬では馬肉ラーメンや青森シャムロックの親子丼など、ここならではの郷土料理を楽しめます。

産直七彩館
産直七彩館には地元の新鮮な野菜が種類豊富に並べられ、価格が安く地元の買い物客でいっぱい

また、地元JAによる「産直七彩館」ではお弁当や総菜などのほか、七戸町の新鮮で美味しい農産物が豊富に用意され、地元の個人客が多いだけでなく飲食店の仕入れにも利用されています

つがるロマン
シンプルな塩おにぎりのお米は七戸産つがるロマン 1個100円(2024年6月25日時点)

JA女性部が経営する「そば処」が併設されていて、そばはもちろん地元の美味しいお米で握られたおにぎりが人気です。

道の駅しちのへ<Information>

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七戸はサラブレッドが余生を暮らす街

七戸種馬場
道の駅近くにある七戸種馬場 放牧されている種馬を見かけることもある

道の駅しちのへの近くには「日本軽種馬協会七戸種馬場」があって、そこでは種馬が飼育されています。

事前に連絡して申し込めば、平日のみ見学を受け付けてもらえます。

七戸で優秀なサラブレッドを産み出す種馬たちに会いに行ってみてはいかがでしょうか。

七戸種馬場<Information>

  • 施設名称:社団法人 日本軽種馬協会 七戸種馬場
  • 所在地:青森県上北郡七戸町荒熊内153
  • 電話番号:0176-62-2619
  • 見学時間:平日10:00~11:00(年末年始と種付けシーズン2/10~7/10は見学不可)
  • URL:競走馬のふるさと案内所

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「七戸立ち」の駿馬を産出する伝統を引き継ぐ牧場群

盛田牧場
盛田牧場で放牧されている馬やポニーたち

平安時代から駿馬の産地として知られた糠部(ぬかのぶ)郡の中でも、青森県内は近代になっても200以上の牧場があったとされ、北海道とともに国内有数の馬産地でした。

しかし昭和40年代になってからは牧場が減り、現在では30ほどの牧場でサラブレッドが飼育されているということです。

盛田牧場

盛田牧場
盛田牧場の人懐っこいポニー

かつては優秀なサラブレッドを多数産出していましたが、青森県の競走馬生産の衰退とともにこちらの牧場も生産馬が減って、2006年に生産した馬を最後に観光牧場として公開されています。

旧南部藩領に多数残る馬と人がともに暮らす建物が曲屋(まがりや)ですが、こちらの牧場では良い状態で保存されていて、牧場にある8つの曲屋は国の登録有形文化財です。

現在は肉牛を飼育する金子ファームが運営していて、曲屋を多目的スペースとして食事会ができるほか、敷地内にはレストランやジェラート店もあります。

盛田牧場一号厩舎(南部曲屋育成厩舎)と二号厩舎

盛田牧場一号厩舎
南部曲屋育成厩舎(一号厩舎)

1912年(明治45年)5月の建築で、大きな茅葺屋根の建物がその歴史を感じさせます。

通路をはさんで2号厩舎とつながっていて、最盛期にはたくさんの馬が暮らしていたであろうことを思い起こさせてくれる厩舎です。

こちらは二号厩舎左側に一合厩舎がありつながっている

駐車場と厩舎の間に柵で囲まれた放牧地があり、馬やポニーなどがそこに放されて飼育されていて、それらの馬たちと一緒に厩舎の写真を撮ることができます。

盛田牧場一号厩舎<Information>

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レストラン&ジェラート

牧場ごはんNARABI
牧場ごはんNARABI

敷地内のレストラン「牧場ごはんNARABI」では、金子ファーム自慢の牛肉料理が提供されています。

カレーやハンバーグやコロ肉ステーキなどのリーズナブルな料理から、赤身が美味しい黒毛和牛サーロインステーキや芳醇な旨味の熟成肉ステーキなど、豊富なメニューが用意されているランチ専門のレストランです。

手作りジェラートNAMIKI
手作りジェラートNAMIKI

レストランのとなりには「手作りジェラートNAMIKI」があって、ジャージー牛の搾りたて(低温殺菌)ミルクで作られた濃厚なジェラートがさまざまなフレーバーで味わえます。

ジャージーミルク
シンプルだけど濃厚なミルクの味を感じる「ジャージーミルク」

2軒の向い側にある広い牧草地には遊具などが置かれていて、ランチやジェラートを楽しみながらのんびり過ごせます。

牧場ごはんNARABI・手作りジェラートNAMIKI<Information>

  • 施設名称:牧場ごはんNARABI・手作りジェラートNAMIKI
  • 所在地:青森県上北郡七戸町立野頭69
  • 電話番号:0176-62-2866(牧場ごはんNARABI)、0176-62-2646(手作りジェラートNAMIKI)
  • 営業時間(牧場ごはんNARABI):11:00~14:00、水曜定休
  • 営業時間(手作りジェラートNAMIKI):10:30~17:00、年中無休
  • URL:有限会社 金子ファーム 公式サイト

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旧南部縦貫鉄道

南部縦貫鉄道
七戸駅とその構内跡 出典:青森観光情報サイト

かつて七戸から野辺地(のへじ)を結んでいた、南部縦貫鉄道の駅舎や線路跡が残されています。
2002年に惜しまれながら廃止となったものの親会社は別業態に転換して存続され、七戸町内に七戸駅とその構内がそのまま残されました。

動態保存されているレールバス 出典:青森観光情報サイト

運用されていたレールバス2両と気動車(キハ104)が動態保存されていて、それらの写真を撮影できるほか、車両内を見学することもできて鉄道マニアにおすすめです。

旧南部縦貫鉄道<Information>

  • 施設名称:旧南部縦貫鉄道 七戸駅跡
  • 所在地:青森県上北郡七戸町笊田54-2
  • 電話番号:0176-58-7109
  • 営業時間:土・日・連休(2月を除く)10:00~16:00(平日・祝日は7日前までに事前予約)
  • URL:七戸町観光物産推進協議会「たびくら」

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まとめ

古くから馬産地として有名な七戸は糠部郡の北端にあたり、この先は下北半島です。

それゆえか次の八戸は、これまで北に向けて順番に並んでいた「戸の付く地名」の規則性を引き継がず、南東の方向に存在しています。

そして九戸(くのへ)はさらに八戸の南の岩手県内にあり、このこともまた「戸の付く地名」のミステリーとされています。


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