【青森県・岩手県】一から九まで「戸の付く地名」八戸・九戸編 八と九の位置だけパターンが異なる配列のミステリー
目次
青森県から岩手県にかけての旧南部領・糠部(ぬかのぶ)郡と呼ばれた地域にある「戸の付く地名」は、七戸(しちのへ)までは奥州街道に沿いに南から北に並んでいたと考えられています。
しかし、八戸(はちのへ)と九戸(くのへ)は、この法則とは逆に七戸から南へと並んでいて、九戸は岩手県内にあって一戸(いちのへ)、二戸(にのへ)と山一つ隔てたとなりです。
なぜこのような配置となったのかについて記された史料がなく、今でもミステリーとされています。
縄文時代から続く八戸(はちのへ)
八戸市は太平洋に面し、現在の青森県で2番目に人口(約26万人)が多い中核市です。
市内には縄文時代の遺跡が数多く残されていて、平安時代の中央勢力が及ぶ以前から蝦夷(えみし)の集落として栄えていたと考えられています。
史料にその名が登場するのは、源頼朝(みなもとよりとも)が奥州藤原氏を滅ぼした奥州合戦の戦功で糠部郡を与えられた南部光行(なんぶみつゆき)が八戸に上陸したとあるのが最初です。
その三男・実長(さねなが)が根城南部氏(ねじょうなんぶし:または八戸南部氏、八戸氏)の始祖とされていますが、八戸根城に城を築いて定着したのは4代当主の師行(もろゆき)でした。
国の史跡となっている根城(ねじょう)跡
南北朝時代に甲斐から八戸入りした南部師行は居城をかまえ、「南朝方の根本となる城」という願いを込めて「根城」と名付けたとされています。
江戸時代に根城南部氏が岩手県遠野市に国替えとなるまでの約300年間、八戸地方の中心の城としてその威容をほこっていました。
現在の城跡は本丸の主殿など多くの構造物が史実に忠実に復元されていて、八戸市博物館が併設されているほか無料のボランティアガイドが常駐していて案内してもらえます。
なお、本丸は有料で、入場できる時間が決まっています。
根城跡<Information>
- 施設名称:根城跡(根城の広場)
- 所在地:青森県八戸市根城根城
- 本丸(有料)入場時間:9:00~17:00(入場は16:45まで)
- 休館日:月曜(第一月曜・祝日は除く)、祝日の翌日、12月27日~1月4日
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三八城公園(みやぎこうえん:八戸城跡)
1664年(寛文4年)2代藩主・南部重直(なんぶしげなお)が病没し、後継ぎがいなかった盛岡藩は江戸幕府によって分割され、2万石の独立藩として誕生したのが八戸藩です。
初代藩主・南部直房(なんぶなおふさ)は根城ではなく、それまで盛岡藩が使用していた建物を八戸城と名付けて居城としましたが、天守のない御殿と門だけの城でした。
三八城とは「三戸郡八戸城」からとったと紹介され、青森県東部地方を「三八上北」と呼ぶことにもかけていると言われています。
八戸市内の中心部にあって、市内展望デッキや芝生広場などがあり桜の名所としても有名です。
三ハ城公園<Information>
- 施設名称:三八城公園(八戸城跡)
- 所在地:青森県八戸市内丸1丁目14-49
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八戸城角御殿表門(はちのへじょうすみごてんおもてもん)
三八城公園の近くにある「八戸市文化教養センター南部会館」の表門は藩政時代の「角御殿」の表門で、藩の格に相応しい城門として建てられ国内でも最大級の大きさです。
「棟門(むなもん)」と呼ばれる造りで、冠木でつなぐ棟木を支える太い4本の柱の上に切妻造のとち葺型銅板葺の屋根が乗せられ、その威容は城跡にあって唯一八戸城の面影を残しています。
八戸城角御殿表門<Information>
- 施設名称:八戸城角御殿表門
- 所在地:青森県八戸市内丸3丁目3-6
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南部藩総鎮守「櫛引八幡宮(くしびきはちまんぐう)」
八幡宮草創の由来は「南部光行が甲斐南部郷の八幡宮御神体を奉持して櫛引の地に造営し、武運長久を祈った」とされ、建久年間(1190~99年)に造営されたと伝えられています。
広大な境内には樹齢数百年の杉の御神木と重要文化財の本殿などが立ち並び、国宝の赤糸威鎧(あかいとおどしよろい)と白糸威褄取鎧(しろいとおどしつまどり)などの宝物を所有しています。
八幡宮がある櫛引は四戸氏の流れである櫛引氏が治めていたことから「四戸八幡宮」とも呼ばれ、「ここが幻の四戸だ」とする説がありますが、定かではないようです。
櫛引八幡宮<Information>
- 施設名称:櫛引八幡宮
- 所在地:青森県八戸市八幡八幡丁3
- 電湾番号:0178-27-3053
- URL:櫛引八幡宮公式サイト
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「戸の付く地名」の最後は九戸
八戸からさらに南の岩手県北部にあり、南北に流れる瀬月内川(せつきないがわ)に沿う形で人家が連なっている平野の少ない山間の村です。
南部光行の六男・行連(ゆきつら)が、九戸郡伊保内(いぼない)を所領として九戸氏を名乗ったと伝わっていますが、小笠原氏や二階堂氏が始祖であるとする説もあって定かではありません。
九戸氏といえば九戸政実(くのへまさざね)が有名ですが、戦功によって福岡(現在の二戸市)が与えられて現在の九戸村から二戸市の九戸城に移ったとする説があります。
九戸を楽しめる道の駅とまちの駅
九戸の特産品や地域のフレーバージェラートなどのグルメを楽しむなら、折爪岳のふもとにある道の駅おりつめ「オドデ館」がおすすめです。
村特産の甘茶や、県内生産1位のブロイラーから生まれたご当地ゆるキャラ「キングオブチキン」グッズなどが売られていて、レストラン「おりつめ」では郷土料理の「ひっつみ」を味わえます。
また、村のメインストリートにある街の駅「まさざね館」でも甘茶・ぶどうジュース・雑穀・かっけ・南部せんべいなどのお土産品を購入できるので、休憩がてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
道の駅おりつめ「オドデ館」<Information>
- 施設名称:道の駅おりつめ「オドデ館」
- 所在地:岩手県九戸郡九戸村山屋第2地割28-1
- 電話番号:0195-42-4400
- 営業時間:8:00~19:00
- URL:九戸村公式サイト
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まちの駅「まさざね館」<Information>
- 施設名称:まちの駅「まさざね館」
- 所在地:岩手県九戸郡九戸村大字 伊保内第11地割47-1
- 電湾番号:0195-42-2226
- 営業時間:9:00~18:00
- URL:九戸村公式サイト
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まとめ
ここまで全国でも珍しい一から九まである「戸の付く地名」について、シリーズでご紹介しました。
この「戸が付く地名」をめぐっては、一戸から始まって九戸まで所在がハッキリしていない四戸も含めて、「お遍路」のように順番に巡る旅がブログなどで紹介されています。
ぜひ一度アニメなどの聖地巡礼のような感覚で、一戸から九戸までをパワースポットに見立てて順番に訪問しながら古来の糠部郡を巡って、東北の馬事文化に触れてみてはいかがでしょうか?
なお、「戸の付く地名」巡りの「聖地」は公共交通機関では不便な場所にあることが多いため、自家用車やレンタカーなど車での巡礼がおすすめです。