もちっ?じゃりっ?和菓子「うんぺい」とは?地域に根付く伝統の味【青森・秋田】

青森県津軽地方や秋田県のスーパーや和菓子店では、年末年始やお盆前、お彼岸になると「うんぺい」という名前のお菓子が並びます。真っピンクや蛍光グリーンなどの色味、もちっとジャリっとした独特の食感、一度見たら忘れられない見た目と味わい。この記事では、そんな「うんぺい」について、特徴や由来、食べるシーン、そして地域による違いまで詳しくご紹介します。


「うんぺい」とは?特徴や名前の由来を紹介

うんぺい

秋田や青森県津軽の伝統菓子

うんぺいは、秋田や青森県津軽地方で親しまれている伝統的な和菓子です。主な原料は「寒梅粉(かんばいこ)」と呼ばれるもち米を蒸して搗き、焼き色がつかないように焼いた後、粉末状にしたもの。ここに砂糖と水を加えて練り上げ、成形したら加熱せずそのまま乾燥させて完成させます。

焼いたり蒸したりしないこの製法により、自然乾燥でじっくりと固まる過程で、うんぺい独特の食感が生まれます。型に詰めて作るのではなく、巻きすで巻いたり丸めたり、薄くのばして型抜きしたりと、家庭や店によって作り方はさまざま。見た目は「すあま」に似ていると思われがちですが、すあまのようなふわもち食感とは違い、ぎゅっと密度のある締まった食感が特徴です。

名前の由来

うんぺい(雲平)」という名前の由来には、「雲のように形が定まらない」ことから名づけられたという説があります。実際、渦巻き型のほかにも、鯛や花の形をかたどった華やかなものまでさまざまで、決まった形があるわけではありません。

表記は「雲平」や「うんぺい」が一般的。仏事や祝い事に使われることもあり、縁起の良いお菓子として地域に根づいてきました。


うんぺいは秋田や津軽のハレの日に欠かせない!

うんぺい

正月・法事・結婚式などで活躍

うんぺいは、日常のおやつというよりも、特別な場面で登場する「ハレの日の和菓子」です。お正月の菓子折りとして親しまれているほか、お盆や彼岸の法事でのお供え物にもよく用いられます。津軽地方では、かつて結婚式の引き出物として配られていたこともあり、祝いの席にも登場する格式ある存在でした。

紅白の包みに包まれていたり、華やかな模様が入っていたりと、その装いからも「特別なお菓子」という印象を与えてくれます。家族で仏壇に供えたあと、お茶と一緒に少しずつ味わう。そんな風景が、今も秋田や津軽の家庭では大切にされ続けているのです。

日常ではなく“特別な日の菓子”として定着

現在でも、うんぺいは主に年末年始やお盆前など、行事に合わせてスーパーや和菓子店に並びます。通年で販売している店舗は少なく、まさに「行事菓子」。今回もどこに売っているかと探し求めましたが、ほとんどのスーパーでは売っておらず……お正月やお盆、お彼岸にはあんなに売っているのに、季節が違うだけでこんなにも売っていないものなのですね。


味と食感がクセになる!うんぺいの魅力

うんぺい

口の中でほどける、もちっとジャリっとした食感

うんぺいの最大の特徴は、その食感にあります。もち米由来の寒梅粉を使っているため、ひと口目にはわずかにもちっとした歯ごたえを感じますが、その中には砂糖の粒感が残っていて、ジャリっとした独特の舌ざわりがあります。

密度が高く、すあまのような“ふわもち”ではなく、どちらかというと締まった、崩れにくい印象。それでも口に含んでいるうちにほろほろと崩れていく軽やかさがあります。お餅より軽く、すあまより重いといった食感でしょうか。

甘さ控えめで、素朴な味わい

見た目の派手さに反して、味はとてもシンプル。甘さは控えめで、あっさりとした上品な印象があります。派手な装いながらも、味は落ち着いていて、緑茶やほうじ茶との相性もぴったり。

こってりした現代のスイーツとはまったく異なる、素朴で懐かしい味。ひと口食べると、不思議とほっとした気持ちになる、そんな魅力が詰まっています。


津軽と秋田で違いがくっきり?地域による違いとは

うんぺい

青森は蛍光色で秋田は控えめ?

うんぺいは、地域によってその色づかいに大きな違いがあります。秋田では、緑・灰色・黒といったやや落ち着いたトーンが多く使われる傾向があります。一方、青森県津軽地方では、ショッキングピンクや蛍光グリーンなど、まさに“目が覚めるような”鮮やかな色合いが特徴。

この派手さは、津軽地方全体の食文化にも通じており、赤飯が真っピンクだったり、いなり寿司に紅生姜が添えられて真っ赤になっていたりするように、「おめでたい色=派手な色」と考えられていることに関係しているのかもしれません。

様々な見た目が魅力

うんぺいの形もまた、家庭や店によって多種多様です。渦巻き模様のものが代表的ではありますが、鯛や花を模したもの、巻きすで巻いた棒状のもの、中心に模様があるものなど、その自由度の高さがうんぺいの魅力のひとつでもあります。

型に詰めるのではなく、手で成形する、巻いて形をつくる、型抜きで飾りのようなかたちにするなど、つくる人の個性が表れるのも面白いところです。


まとめ

うんぺいは、青森や秋田の風土の中で生まれ、季節の行事や家族の記憶とともに語り継がれてきた伝統のお菓子です。寒梅粉を使った独自の製法、ジャリっとした不思議な食感、見た目に反する控えめな甘さ。そして、色や形にも地域性が表れているという点も含めて、うんぺいはまさに“文化が染み込んだ和菓子”といえます。

もし秋田や津軽を訪れる機会があれば、店先に並ぶうんぺいをぜひ手に取ってみてください。派手な見た目に驚きつつ、やさしい甘さと不思議な口どけに、きっと心が和むはずです。


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