松島

アニメ『ざつ旅-That’s Journey-』第2話に登場!日本三景の松島への行き方は?【宮城県】

2025年4月から6月まで『ざつ旅-That’s Journey-』というテレビアニメが放送されていました。
漫画家志望の主人公・鈴ヶ森ちかが、行き当たりばったりの旅(雑な旅)をしながら見聞を深めていく物語です。

第2話『伊達じゃない! きときとふたり旅』の前半の旅先は、宮城県の松島となっています。
本記事では、松島への行き方を、作中での描写に触れつつ紹介します。

なお、作中で説明されているように「松島や ああ松島や 松島や」の俳句は、松尾芭蕉が詠んだものではありません。
松島を見て絶句した芭蕉の様子を、後世の人が創作して作られた俳句だと考えられています。

前回の、第1話『はじめの1225段』(福島県会津若松市が舞台)に関する記事はこちらです。

アニメの公式サイトはこちら。


松島とは?

松島」とは、宮城県北東部の松島湾内外にある約260の島々の総称です。
日本三景の1つとして知られています。
残りの2つは、京都府の「天橋立」と、広島県の「宮島」です。
主人公のちかは、第4話で天橋立を訪れ、第8話で宮島を訪れることで、日本三景を制覇しています
(東北地方ではないので当メディアの記事では扱いません)。

松島湾は、東松島市から宮城郡七ヶ浜町にまでまたがるそこそこ大きな湾ですが、作中でちかが訪れる松島海岸駅やその他のスポットは、全て宮城郡の松島町(まつしままち)に位置しています。

松島町の人口は12,000人程。
宮城県の県庁所在地である仙台市の中心部からは、北東に20kmほどの場所にあります。

松島町内を通っている鉄道路線には、JR東日本の東北本線と仙石線(せんせき)線があります。
仙台駅から塩釜駅までは東北本線を経由し、松島町内で仙石線の線路に入って高城町駅から石巻駅方面へ向かう「仙石東北ライン」と呼ばれるルートで運行される列車もあります。

道路については、仙台市と青森県八戸市を結ぶ三陸自動車道や、仙台市と青森市を結ぶ国道45号、仙台市と岩手県一関市を結ぶ国道346号といった道が通っており、仙台や三陸地方各地から松島へのアクセスは比較的容易といえます。


まずは東北新幹線

松島に行くことを決めたちかは、まずは仙台駅に行くために、東北新幹線に乗車します。
首都圏から仙台駅まで乗車するときには、東北新幹線の列車の中では最も停車駅の少ない「はやぶさ」を利用することが一般的です。

東北新幹線の列車に使用されるE5系電車

「はやぶさ」は、東京駅から盛岡駅や新青森駅を経て新函館北斗駅までの区間で運行されているので、これらの駅からも仙台駅へ新幹線1本で行けます。
また、秋田駅などからは秋田新幹線の「こまち」が運行されており、やはり仙台駅に停車します。
仙台へは首都圏からのみならず、北東北地方や道南地方からも、新幹線で容易にアクセスできるのです。

新幹線に乗車するために必要なきっぷの購入方法については第1話の記事で簡単に紹介しているので、参考にしてみてください。
なお「はやぶさ」や「こまち」は全車指定席で、自由席がないのでご注意ください。

仙台駅には、東北新幹線や東北本線仙石東北ラインや、この後登場する仙石線の他にも、仙台駅と山形方面とを結ぶ仙山線、福島県の浜通り方面とを結ぶ常磐線などといった路線の列車が乗り入れています。

また、仙台駅の近くにある高速バスターミナルからは、東北地方の各県や、首都圏、東海地方、北陸地方、関西圏などとの間を結ぶ高速バスが発着しています。

仙台空港には、札幌、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡、那覇といった都市からの直行便が就航しています。
空港からは仙台空港アクセス線の列車に乗ることができ、仙台駅までの所要時間は25分程。

仙台は東北地方最大の都市というだけのことはあり、全国各地からの豊富なアクセス手段が存在するのです。


ちかはどの新幹線に乗ったのか?

ところで、ちかはいったい東北新幹線のどの列車に乗ったのでしょうか?
作中の列車そのものの描写からは「やまびこ」「はやぶさ」などに使用されているE5系電車が単独で走行している(山形新幹線の「つばさ」や、秋田新幹線の「こまち」との連結はしていない)ことしかうかがい知ることができません。

しかし、ちかが仙台駅に降りたシーンでは、仙台駅を出発する列車の時刻が列挙されています。
表示の内容から、この時点での時刻が10時08分よりも前だったと考えられます(列車の運行に一切の遅延が発生していないことが前提)。

また、次のカットでは、背景の時計が「10:13」となっています。
つまり、ちかの乗った新幹線は10時13分よりも前に仙台駅に到着したことは確定で、10時08分よりも前である可能性が高いということになります
(実際には、アニメを制作しているスタッフが取材した時点での掲示内容がそのまま作画されただけだと思いますが、それで話を終わりにするのでは面白くないです)。

2025年3月の時刻表に基づき推理してみます。
10時08分の直前に仙台駅に到着する東北新幹線の下り列車は、10時05分に到着する「やまびこ205号」仙台行きです。
しかしこの列車は、東京駅を7時44分に出発し、仙台駅までの各駅に停車するので、仙台駅までの所要時間が2時間21分と長めです。
その一方で、東京駅を7時40分に出発する「やまびこ125号」は、仙台駅へ9時38分に到着します。
都内から仙台へ行く人が「やまびこ205号」を選ぶ合理的な理由はありません

また、後の松島海岸駅に到着した場面で、ちかは「(第1話で訪れた)会津より遠いのに、すんなり着いた気がする」と発言しています。
各駅に停車する「やまびこ205号」に乗車していたならば、この発言は出ないと判断せざるをえません。

次の候補は、8時18分に東京駅を出発し、1時間半後の9時48分に仙台駅へ到着する「はやぶさ5号」新函館北斗行きです。
この場合は「9時48分に仙台駅に到着して10時13分までの25分もの間、ちかは何をしていたの?」というツッコミどころが生じてしまいます。
作中でも、そのような長い待ち時間などなかったかのように描かれています。
とはいえ、各駅に停車する「やまびこ205号」に乗ったと考えるよりは「はやぶさ5号」の方がまだ自然だといえるので、筆者は「はやぶさ5号説」をとります。

なお原作の漫画では、埼玉県の大宮駅を出発したら、次は仙台駅まで停車しない「はやぶさ」に乗車したことのみ明示されています。
「会津よりすんなり着いた気がする」という発言は「はやぶさ」が「やまびこ」よりも停車駅が少ない列車であることが要因となって出てきたと考えられます。


仙台駅と石巻駅を結ぶ仙石線

先ほど記した通り、松島町には東北本線と仙石線が通っています。
松島観光に便利なのは仙石線の「松島海岸駅」です。
東北本線や、仙石東北ラインの列車は松島海岸駅を経由しないので、仙石線を利用しましょう。
仙台駅の仙石線の乗り場は、新幹線やその他のJR線と異なり、駅の地下にあります。

仙石線の列車

仙石線は、仙台市青葉区のあおば通駅から、仙台駅を経由して、石巻市の石巻駅までを結ぶ路線です。
「仙」台と「石」巻を結ぶ路線であることから仙石線と名付けられています。
松島への観光輸送のみならず、仙台市への通勤通学輸送や、松島湾沿岸部の都市間輸送などの役割も担っていて、東北地方のJR線の中では利用者が多いことが特徴の路線です。
仙石線に関する解説は下記の記事をご覧ください。

松島海岸駅まで行く仙石線の列車は、ほとんどの時間帯で1時間あたり2~3本は運行されています
仙台駅でそれほど長時間待たされることはないでしょう。

ちかは10時29分仙台駅発の、高城町行きの仙石線の列車に乗車したようです。
アニメでは仙石線に乗車している描写はほとんど一瞬で終わりますが、実際には松島海岸駅に到着するのは11時08分で、乗車時間は39分です。
途中の本塩釜駅辺りから、松島湾が見えてくるようになります。

JR仙石線の松島海岸駅

ちかが巡ったスポットはいずれも松島海岸駅から徒歩圏内

ここでは、作中でちかが巡ったスポットを概要だけ紹介します。
詳しい解説は、各公式サイトにお譲りします。

雄島

雄島と渡月橋

松島海岸駅で列車から降りたちかは、まず松島湾内にある雄島(おしま)を眺めます。
平安時代末期にこの島で瞑想を行った上人(しょうにん)に、当時の天皇が松の苗木を贈ったことから、この地域が「松島」と呼ばれるようになった説があるようです。
橋が架かっているので、雄島へは歩いて渡れます。

小倉百人一首の90番は、殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)が詠んだ
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変わらず
という歌で、歌の中に雄島のあま(漁師)が登場しています。

瑞巌寺

続いて瑞巌寺(ずいがんじ)。
平安時代の828年頃に創建と考えられていて、1609年に伊達政宗が再建した寺です。
松尾芭蕉も参詣しています。
作中では台所にあたる国宝の「庫裏(くり)」を見学していきます。

ちかが雄島を眺めた場所と、瑞巌寺のいずれも、松島海岸駅から徒歩でアクセス可能です。

松島ホテル和楽

ちかが宿泊したホテルは「松島ホテル和楽」のようです。
松島海岸駅からは若干離れており、最寄り駅は東北本線の松島駅となっていますが、松島海岸駅からは1.5km程度で、十分歩ける距離ではあります。

なお、公式サイトによると、残念ながら2023年5月末以来、休館しているとのことです。

遊覧船

松島湾では大小さまざまの遊覧船が運航されています。
ちかが乗船した遊覧船には「仁王丸」と書かれているので、仁王丸コースの遊覧船に乗船したものと思われます。
千貫島、鐘島、仁王島といった特徴的な島々を50分程かけて巡ります

遊覧船「仁王丸」

2025年7月時点では、仁王丸コースの遊覧船は9時から16時までの毎時0分に出発することとなっています。
料金は大人1,500円、小学生は750円、未就学児は無料です。Webから事前予約をすると割引があります
船内で追加料金(大人600円、小学生300円)を支払うと、2階の展望デッキ(グリーン)席が利用できるようになっています。

松島さかな市場

そして旅の最後に立ち寄ったスポットが、松島さかな市場です。
カキやホタテといった新鮮な海産物が集まる、松島のグルメスポットです。
ここでちかは、カキの串焼きを堪能し、食わず嫌いを克服します。
なお、筆者はカキが大好物です。

Google Map – (松島さかな市場)

松島湾のカキの養殖

松島、天橋立、宮島の日本三景と呼ばれるスポットは、全てカキが名物になっています。
カキが好物という方は、日本三景の景色だけではなく、日本三景のカキも文字通りの意味で味わってみるのもよいでしょう。

遊覧船乗り場と松島さかな市場も、松島海岸駅からは徒歩圏内となっています。


おわりに

地方を旅は、車が必要になるのではないかとか、公共交通機関の列車の本数やバスの便数が少なくて困るのではないかという先入観を抱きがちだと思います。
しかし、松島は東北地方最大都市の仙台から40分程度でアクセスできる場所にあり、松島海岸駅からそれぞれの観光スポットにも徒歩で容易にアクセス可能です。
アニメで描かれているように、公共交通機関で十分に観光が楽しめます。
旅先の候補に日本三景の1つ、松島はいかがでしょうか?


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