漫画『ざつ旅-That’s Journey-』第31旅で描かれた秋田県・泥湯温泉への旅【秋田県】

2025年4月から6月まで『ざつ旅-That’s Journey-』というテレビアニメが放送されていました。
漫画家になりたい女子大生の主人公・鈴ヶ森(すずがもり)ちかが、行き当たりばったりの旅(雑な旅)をしながら見聞を深めていく物語です。

アニメの放送は既に終了していますが、原作の漫画はまだまだ続いています。
今回は、漫画の第31旅(第31話)「こうして2人は進んで行く」で描かれている、秋田県内の旅を紹介します。

※漫画本編のネタバレになるので、未読の方はご注意ください。

テレビアニメの第1旅「はじめの1225段」(福島県会津若松市)に関する記事はこちらです。

第2旅「伊達じゃない! きときとふたり旅」の前半(宮城県松島町)に関する記事はこちらです。

第9旅「温泉で完成して、初日の出」の前半(青森県)に関する記事はこちらです。

第10旅「ココロのふるさと」の前半(岩手県)に関する記事はこちらです。

テレビアニメの公式サイトです。


まずは秋田新幹線と奥羽本線で後三年駅へ

もはや恒例となったSNSのアンケートを実施して、その結果に基づき、東北地方の温泉を訪れることにした”ちか”(既に大学を卒業して、漫画で生活しています)は、自身の漫画の編集担当者である梅屋敷彩(うめやしき あや)を連れて、秋田県仙北郡(せんぼくぐん)美郷町(みさとちょう)にある後三年駅を訪れます。
ちかは「あと三年」と言っていますが「ごさんねん」駅です。

後三年駅という変わった名前の由来は、日本史に詳しい方ならすぐにわかることでしょう。
周辺一帯が、永保3年(1083年)から寛治元年(1087年)にかけて陸奥・出羽(東北地方)で戦われた「後三年合戦(後三年の役)」の古戦場であることに由来する駅名です。

後三年駅への行き方を紹介します。
東京駅から秋田新幹線・秋田行きの「こまち」に乗車すると、3時間15分ほどで秋田県大仙市にある「大曲(おおまがり)駅」にたどり着けます。

こまち
秋田新幹線「こまち」

新幹線に乗車するために必要なきっぷの購入方法についてはアニメ第1旅の記事で簡単に紹介しているので、参考にしてみてください。
なお「こまち」は全車指定席で自由席がないのでご注意ください。

また、漫画の旅を再現する場合は、新幹線に乗車するための「特急券」は大曲駅まで購入すればよいのですが、一緒に使用する「乗車券」は、後三年駅または最終的な目的地の湯沢駅まで購入する必要があります
(東京駅などから湯沢駅までの乗車券を購入した場合に、後三年駅で途中下車することは可能です)。

大曲駅で「こまち」を降りたら、奥羽本線の普通列車に乗り換えます。
後三年駅までは2駅、11分~12分で到着します。
ただし、列車の本数が朝の時間帯以外は1時間に1本程度しかありません。
「こまち」からの乗り継ぎが比較的しやすいダイヤが組まれているものの、大曲駅で列車を待つ時間が長くなるケースもあります。

さて、単行本10巻66ページを見ると、後三年駅に降り立った”ちか”のスマートフォンの時計が11時30分を示しています。
筆者が当時(2023年3月下旬)の時刻表を持っていないので、2025年11月現在のダイヤでの考察になりますが、7時32分に東京駅を出発する「こまち3号」に乗車すると10時50分に大曲駅に到着します。
そして24分後の11時14分に大曲駅を出発する奥羽本線の院内行きの列車に乗れば、11時25分に後三年駅に到着します。
2人はこのようなスケジュールで移動したのではないでしょうか。


雨の中を歩く2人

後三年駅に降り立った2人は、雨の中を歩いて南下していきます。
なお、駅から南に歩くとすぐに美郷町から横手(よこて)市に入ります。

途中、2人は「防御力の高そうな神社」に遭遇します。
菅原(すがはら)神社といって、文政13年(1830年)6月創立の、神社としては割と新しい神社です。
防御力が高そうな状態なのは雪の降る季節限定のようなので、雪対策だと思われます。

そして横手川を渡った2人でしたが、後三年駅から30分ほど歩いたところで、既に靴が雨でビショビショな状態ということもあり、南隣の横手駅まで歩くことを断念し、後三年駅に引き返します。
隣の駅といっても、後三年駅から横手駅までは6.4kmもあります。
筆者はとても歩こうとは思わない道のりです
(旅の最後でちかは彩から「歩きすぎ」とツっこまれます)。

Information<菅原神社>

  • 名称 菅原神社
  • 所在地 〒013-0813 秋田県横手市金沢安本字中谷地7
  • 電話番号 0187‐83‐2496
  • サイトURL 菅原神社

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奥羽本線の電車に乗って湯沢駅へ

後三年駅に戻った2人は、再び電車に乗ります。
後三年駅に11時25分に到着してから1時間ほど歩いたはずなので、乗車した列車は13時02分発の湯沢行きでしょうか。
ちょうど30分後の13時32分に、湯沢市の中心街にある湯沢駅に到着します。

湯沢駅
湯沢駅

駅の周りを歩いていた2人は、駅の東口から100mほどの場所にある「高市青果店」というお店で「オランダ焼」という、湯沢発祥のソウルフードを食します。
見た目は大判焼や今川焼のようなおやつですが、中身のハムとマヨネーズのしょっぱさが生地の甘さと合わさった、絶妙な味が特徴です。

なお、オランダ焼と国のオランダに、直接の関係はありません。
焼くときにハムを風車の羽のように並べて焼くことが、オランダの風車を連想させるということから、オランダ焼という名前がついています。

オランダ焼

Information<高市青果店>

  • 名称 高市青果店
  • 所在地 〒012-0827 秋田県湯沢市表町1丁目1-28
  • 電話番号 0183-73-2623
  • 営業時刻 9:00~17:00
  • サイトURL 秋田県湯沢市 高市青果店

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湯沢市へのアクセス手段

ちか達は秋田新幹線と奥羽本線を乗り継いで湯沢駅に到着していましたが、他の交通手段での湯沢市へのアクセス手段も紹介します。
2025年11月現在の情報です。その後変わっている可能性があります)。

青森県の津軽地域から鉄道でアクセスするならば、奥羽本線や五能線に乗車して、まずは秋田駅へ移動することになります。
そして、秋田駅からは湯沢駅方面への直通列車が出ているので、これに乗ればよいです。
秋田駅を出発してから1時間40分前後で湯沢駅に到着します。

山形県や新潟県の日本海沿岸部などからの場合は、羽越本線の列車で秋田駅に出たら、あとは奥羽本線の列車に乗ればOK。

仙台市からは、高速バスの「グリーンライナー号」が出ています。
仙台駅と湯沢駅前の間の所要時間は3時間20分ほどです。
(以前は秋田市と湯沢市を結ぶ高速バスの「湯沢秋田線」もありましたが、2024年4月より乗務員不足のため運休しています)。

また、湯沢市を発着する夜行バスはありませんが、北隣の横手市にある横手駅には、関東の東京駅・バスタ新宿・大宮駅・横浜駅YCATなどから直行の夜行バスが出ています。
横手駅からは奥羽本線の湯沢方面行き列車に乗れば、湯沢駅に20分ほどで到着します。
寝ている間に移動したいという人にとっては有力な選択肢です。

関西地方などの遠方から湯沢市へアクセスする場合は、まずは飛行機で秋田市内にある秋田空港に降りることになるでしょう。
札幌(丘珠および新千歳)、東京(羽田)、名古屋(中部国際)、大阪(伊丹)から、秋田空港への直行便が出ています
(余談ですが、木曜日と日曜日に限り、台湾桃園国際空港との間の国際線も運航)。

秋田空港からは秋田駅までリムジンバスで40分ほどですが、秋田駅は湯沢市とは反対の方向にあるので、移動時間がもったいないです。

秋田空港から一番近い駅は、奥羽本線の和田駅で、タクシーを使って和田駅に移動するのは1つの手です。

また、秋田空港発着の航空便搭乗者に限って利用できる予約制(4日前まで)の乗り合いサービス「秋田空港-横手ウェルカムシャトル」を利用すると横手駅に移動できます(所要時間70分)。
ウェルカムシャトルは1日2便しかありませんが、横手駅までの料金は1人300円と格安なのでお勧めです(普通のタクシーで横手駅まで移動すると2万円以上かかります)。


乗合いタクシーの「こまちシャトル」に乗って泥湯温泉奥山旅館へ

オランダ焼を楽しんだ2人は、乗り合いタクシーの「こまちシャトル」に乗って、泥湯温泉奥山旅館に向かいます
旅館による送迎は行われていません)。
湯沢駅を14時50分発の便と、15時35分発の便があり、ここまでの流れから推測すると14時50分の便に乗ったのでしょうか。
泥湯温泉には45分後の15時35分に到着します。

こまちシャトルの利用は予約制で、Webでは3日前まで、電話では前日16時00分までの予約が必要です。

また、こまちシャトル以外にも、仙秋タクシーの乗り合いタクシーが運行されていて、こちらは1時間あまりの所要時間ですが仙秋タクシーへの予約が必要となります。

泥湯温泉はこのように湯沢駅からなかなか遠くにあります。
高速道路のICもそれほど近くにはありません。
かなりの秘境感がある場所に位置しているのです。


泥湯温泉

泥湯温泉の開湯は1,200年ほど前と言われています。
名前の通り、色が泥のように濁った色の温泉なので、泥湯という名前になったとされます。

ちか達が宿泊した奥山旅館は、明治時代の創業です。
源泉は3種類あり、源泉の種別ごとに「天狗の湯」「川の湯」「新湯」と名づけられています
(ただし「川の湯」は女性専用露店風呂にしか使われていないようです)。

泥湯温泉の噴煙

温泉地周辺には複数の温泉があり、火山ガスという形で硫化水素が噴き出ている区域もあります。
硫化水素によって観光客が命を落とすという事故が過去に起きています
特に雪の積もっている時期は、雪の下に硫化水素ガスがたまっていることがあって、これが大変危険です。
積もった雪の上には絶対に上がらないようにと、旅館が注意喚起をしています。

川原毛地獄

漫画には登場しませんが、奥山旅館から徒歩30分ほどの場所には、日本三大霊地の1つである川原毛地獄(かわらげじごく)が位置しています。
硫黄や水蒸気を噴出する岩により形成された、木の1本も生えていない山肌は、まさに「地獄」の名にふさわしい様相です。

なお、三大霊地の残る2つは、富山県の立山と青森県の恐山です。
恐山については、アニメ第9旅の記事で触れているので、ぜひご覧ください。

川原毛地獄からさらに遊歩道を20分ほど歩くと、川原毛大湯滝にたどり着きます。
約50度の温泉が滝となって流れ落ちているスポットで、滝壺が天然の露天風呂となっています。

川原毛大湯滝

入浴には水着の着用が必要です。
湯温が最適な時期は7月上旬から9月中旬です。
それ以外のシーズンでも入浴は可能ですが、冬季は積雪によって道が通行止めになるので、行くこと自体ができなくなります。
閉鎖期間は通常、11月上旬から翌年5月上旬までとのことです。

Information<泥湯温泉奥山旅館>

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湯沢駅へ戻って市街地観光

翌朝、こまちシャトル(現在の時刻表では、11時00分泥湯温泉発、11時45分湯沢駅着)で湯沢駅に戻った2人は、湯沢の市街地を散策します。
まずは湯沢駅の東を通っている国道13号を北上していきます。

湯沢駅の北隣の駅である、下湯沢駅からさらに北東の方にある「かたの」というお店で「醤油かすてら」を食べていきます。
地元の醤油を使ったカステラで、醤油が入っていることによる、少し茶色い色合いやしょっぱさが特徴。
2人の感想によると「シューロールもよさそう」とのこと。
ちなみに隣の駅とはいえ、湯沢駅から下湯沢駅までは4.1kmもあります。

続いて2人は神社を訪れます。
おそらく「かたの」からさらに北東へ500mほど歩くとたどり着く、岩崎八幡神社という神社だと思われます。
神社にまつられている「鹿島様(かしまさま)」という、わらで作られた大きな人形道祖神の前で、今回の旅は終わるのでした。

鹿島様の詳細は、下記の記事をご覧ください。

鹿島様
鹿島様

Information<かたの>

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Information<岩崎八幡神社>

  • 名称 岩崎八幡神社
  • 所在地 〒012-0801 秋田県湯沢市岩崎字千年283
  • 電話番号 0183-62-4825
  • サイトURL 八幡神社

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おわりに

秋田県がとっている統計によると、秋田県を訪れる観光客の主要な訪問目的は、秋田市の竿燈まつりや、仙北市にある田沢湖や角館武家屋敷とか、なまはげで知られる男鹿半島、横手市にある秋田ふるさと村などのようです。
湯沢市や泥湯温泉を訪れる人は、県内の他の観光地と比べれば少ないと言わざるを得ません。
おそらく主要な観光地とは知名度に差があることとか、記事の前半で解説したように、遠方からはやや行きづらい場所であることがその要因だと考えます。
そんな湯沢市の、それも秘境にある温泉宿で1泊していくというこの旅は、実に『ざつ旅』らしい旅だったといえるのではないでしょうか。


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