東北六県の酒蔵を訪問!日本に笑顔を、日本に華を「桜顔酒造」【岩手県盛岡市】

「桜顔(さくらがお)酒造」は、盛岡市中心部から国道106号を東に進んだ、「たたら山」ふもとの梁川(やながわ)沿いにあります。

南部杜氏の伝統的技法による酒造りに努め、爽快な飲み口と果実香にしっかりとした旨味を感じる、バランスの良い味わいが特徴です。

岩⼿産酒造好適⽶「結の⾹」「吟ぎんが」「ぎんおとめ」などを中⼼に使⽤し、岩⼿県で開発された酵⺟で酒造りを行っています。


桜顔酒造の歴史

桜顔酒造本社
桜顔酒造本社と工場、三角屋根の入り口には新しい杉玉がかけられている

「桜顔酒造」は、戦前の1912年(大正元年)12月創業の「近三酒造店」がその前身です。

戦後になって、1973年(昭和48年)10月に現在の名前の由来となる、岩手県内の酒造会社10社と「協業組合桜顔酒造」を設立します。

その後「みちのく・コカコーラボトリング」の子会社を経て、1998年(平成10年)3月に協業組合から清酒製造販売事業を全面継承しました。

そして、「近三酒造店」から「株式会社桜顔酒造」へ社名が変更され、現在は東京の「ヨシムラ・フード・ホールディングス」の子会社です。


桜顔という蔵名の由来について

桜顔酒造本社
階段の踊り場に置かれていた酒樽

ほろ酔いの顔色を「盃を重ねてほんのり桜色に赤らむ顔」と表現しますが、その心地さをもたらすお酒でありたいとの願いからこの名が付けられました。

南部杜氏の技によって、岩⼿の恵みのお米を岩⼿の⾵⼟を活かした⽇本酒に醸し、たくさんの人が「桜顔」になることを願う気持ちが伝わります。


現場の造りにかける情熱が肌で感じられる酒蔵見学

敷地の奥からみた社屋

公式サイトには「新型コロナ以降は見学を中止している」と記されていましたが、問い合わせたところ見学を再開しているとのご返事をいただきました。

そこでさっそく酒蔵見学を申し込み、「桜顔酒造」の酒造りを見学してきました。


見学は、杉玉がつるされた飾り気のない工場の1階からスタート

桜顔酒造
最初に案内されたタンク群
桜顔酒造
かつて三増酒を大量に製造していた名残りで、今は緊急時以外には使用していないとのこと

予約した時間に、盛岡市川目町にある「桜顔酒造」本社に到着すると、案内をしていただける年配の男性に迎え入れられました。

その方の風貌から「杜氏さんかな?」と思っていたのですが、見学途中で伺うと、その方は「桜顔酒蔵」の代表取締役社長の工藤明さんだったのです!

桜顔酒造
酒母を造る部屋ではタンクの中に酵母菌、蒸米、麹、水に乳酸を加えて酵母以外の雑菌を死滅させて、優良な酵母を増やす

私たちは何と、社長さんに約20分間、酒蔵内をご案内いただいたのでした。


古き酒蔵と近代的な施設のコラボによる酒造り

桜顔酒造
積み重ねられた麹蓋

「桜顔酒造」の内部は、同じ盛岡市内にある「あさ開」と違い、見学用の順路や説明表示などは整備されておりません。

麹室などのの部屋には名が示されていましたが、「あさ開」のように詳しい解説が部屋前に貼られておらず、社長さんからのご説明だけが頼りです。

桜顔酒造
内側が木張りの麹室、今は道具がきれいに片付けられていた

麹室などデリケートな管理が必要な部屋は内装が木張りになっていて、きれいに洗われた昔ながらの麹蓋(こうじぶた)が重ねられていました。

自動圧搾濾過機
ヤブタと呼ばれる自動圧搾濾過機は醪を布の袋に入れて空気圧で搾る、昔の木造りの槽(ふね)と違い効率的にたくさん搾ることができる
 

またタンクや各種の機械が立ち並ぶ様子は近代的な工場のようでもあり、それらの設備が同居している様子はとても興味深いものがあります。

芳香を放ちながらふつふつと泡を出す醪(もろみ)

桜顔酒造
仕込みタンクは口の高さに床が設置されている(従業員の方が作業中)

醸造用タンクがある部屋では、タンクの口の高さに床が張られており、タンクの中を上から覗き込めるようになっています。

社長さんに案内された私たちが仕込み中のタンクに近づくと、若い社員さんが駆け寄ってきて「中をお見せしましょうか?」と言ってくださいました。

桜顔酒造
仕込みタンクの蓋を開けると何とも言えない芳香が漂う、左側にチョークで書かれた数字はタンク内の温度の記録

蓋が開けられると芳香が漂い、中の白い醪(もろみ)の表面にはたくさんの大きな泡があり、よく見ると底の方からプツプツと泡が湧き上がっています。

桜顔酒造
プツプツと音立てて次々に泡が上ってきて、酵母が一生懸命働いているのがわかる

まさに今、酵母が糖を食べてアルコールを産み出しているその現場に立ち合い、小さな酵母の偉大な力に感動して思わず手を合わせて感謝しました。


筆者がおすすめしたい「桜顔」の銘柄3選!

桜顔酒造
桜顔の最高峰、純米大吟醸の「飛天抄」と「結の香」は岩手県外では入手困難とされている

フラッグシップともいうべき純米大吟醸「飛天抄」など、「桜顔酒造」にはたくさんの銘柄があり、いずれも美味しいお酒です。

ここでは「桜顔」の中でも、とくに筆者好みの3つのブランドをご紹介します。

純米大吟醸「南部の雫」

南部の雫
桜顔の純米大吟醸の中でも、一番辛口のキレ味

50%まで磨かれた岩手県産の酒造好適米「吟ぎんが」を、岩手県産酵母の「ゆうこの想い」が醸した純米大吟醸です。

キレの良いスッキリした口当たりで、口に含むとリンゴのようなフルーティーな香りと控えめな甘さの後に、ガツンと辛口の味わいが感じられます。

桜顔 特別純米酒 五割五分磨き

吟ぎんが
おすすめの3本、一番右側が特別純米酒 五割五分磨き

こちらも岩手県産の酒米「吟ぎんが」が55%まで磨かれ、吟醸酒と同じ低温発酵で醸されたやや辛口の純米酒です。

穏やかな熟成香のような香りがあって米の旨味が感じられ、食中酒として冷やでもぬる燗でも美味しい食中酒です。

桜顔 特別純米 生貯蔵酒

桜顔
おすすめ3種の中で、コストパフォーマンスが一番良い

岩手県産の酒米で造られた純米酒が生で貯蔵されていて、瓶詰する時に一度だけ加熱殺菌されます。

フレッシュな香りとさわやかな酸味が感じられ、冷やして飲むのが一番美味しいちょっと辛口な純米酒です。


南部杜氏が醸し出す地産地消の清酒「GI岩手」

桜顔
ラベルには誇らしげに「GI岩手」が刻まれている

「GI岩手」は、岩手産の米や水で造る清酒に与えられる地理的表示で、品質が保たれていることを国が保証する「お墨付き」のようなものです。

認定基準はこれらを原料に南部杜氏が醸すことが要件で、そのうえさらに酵母も岩手産の場合はとくに「GIオールいわて」として認定されます。

「GI岩手」に認定された日本酒は、口当たりがやわらかく米の芳醇な旨味が感じられる美味しいお酒として好評です。

「桜顔酒造」の銘柄の中には、おすすめした「桜顔 特別純米酒(五割五分磨き)」と「桜顔 特別純米 生貯蔵酒」など、GI認定酒が多数あります。

桜顔酒造 <Information>

  • 施設名称:株式会社 桜顔酒造
  • 所在地:岩手県盛岡市川目町23-18
  • 電話番号:019-622-6800
  • 営業時間:8:30~18:00(工場見学は月~金9:00~15:00、要事前予約)
  • 定休日:土曜、日曜
  • URL:桜顔酒造 公式サイト

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まとめ

生産量が多くない「桜顔酒造」のお酒は盛岡市内でも入手困難なものが多いとされています。

また、「桜顔酒造」では、酒蔵見学のために施設内の順路を整備したり専門ガイドを配置したりする取り組みはしておりません。

蔵の外観は近隣にある食品製造工場と変わらない飾りっ気のない建物で、入口に杉玉が吊るされていなければ酒蔵だとは思われないでしょう。

それでも、見学によって働いている若い社員さんや社長さんの酒造りへの情熱を感じることができ、良いお酒を造っているとの自負が感じられました。


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