
アニメ『ざつ旅-That’s Journey-』第10旅は宮沢賢治ゆかりの岩手県へ行くお話【岩手県】
目次
2025年4月から6月まで『ざつ旅-That’s Journey-』というテレビアニメが放送されていました。
漫画家になりたい女子大生の主人公・鈴ヶ森(すずがもり)ちかが、行き当たりばったりの旅(雑な旅)をしながら見聞を深めていく物語です。
第10旅(話)「ココロのふるさと」の後ろ3分の2くらいの旅先は岩手県の、主に花巻市となっています。
本記事では、旅の内容と、登場する交通機関等を紹介します。
第1旅「はじめの1225段」(福島県会津若松市)に関する記事はこちらです。
第2旅「伊達じゃない! きときとふたり旅」の前半(宮城県松島町)に関する記事はこちらです。
第9旅「温泉で完成して、初日の出」の前半(青森県)に関する記事はこちらです。
アニメの公式サイトはこちら。
まずは東北新幹線で新花巻駅へ
ダベッター(作中のSNS)のアンケートで北への旅をリクエストされたちかは、親友の蓮沼暦(はすぬま こよみ)を連れて、岩手県花巻市にある新花巻駅に降り立ちます。
日付は1月31日、首都圏民には寒そうです。
というわけで、まずは新花巻駅まで、東北新幹線で「約2時間半」かけて移動します。
作中ではどの駅から新幹線に乗ったのかが示されていませんが、これまでの実績や、所要時間から、東京駅で乗車したものと推測できます。
原作の漫画では、東京駅からと明示されています。

東京駅から新花巻駅まで直通する新幹線の列車は「はやぶさ」と「やまびこ」があります。
ただし「やまびこ」は大半の列車が東京駅~仙台駅間での運転で、岩手県の盛岡駅まで行く列車は本数が少ないです。
「はやぶさ」は、停車駅の少ないタイプの列車で、新花巻駅に停車する列車の本数が少ないです。
両者を合わせて、東京駅から新花巻駅まで1本で移動できる列車は、1時間に1本程度の運行です。
そして約2時間半での移動は「はやぶさ」でなければ不可能です。
2025年3月のJR時刻表によると、7時16分東京発・9時50分新花巻着の「はやぶさ101号」盛岡行きや、7時56分東京発・10時38分新花巻着の「はやぶさ103号」盛岡行きがあります。
この後はしばらく、新花巻駅に停まる列車は「やまびこ」ばかりなので「はやぶさ」の101号か103号のいずれかに乗ったのでしょう。
新幹線に乗車するために必要なきっぷの購入方法については第1旅の記事で簡単に紹介しているので、参考にしてみてください。
なお「はやぶさ」を選ぶ場合は、全車指定席で自由席がないのでご注意ください。
「はやぶさ」は、東京駅から最も遠くまで行く列車だと、北海道新幹線に乗り入れて、新函館北斗駅まで運行されています。
しかし、新花巻駅に停車する「はやぶさ」はほとんどが東京駅~盛岡駅間での運行です
(1日上下1本ずつだけ、仙台駅~新函館北斗駅間で運行されて、新花巻駅に停車する「はやぶさ」があります)。
新函館北斗、新青森といった駅から新花巻駅へアクセスするには、ほぼすべてのケースで盛岡駅での乗換が必要です。
花巻市へのアクセス
新花巻駅は、1982年の東北新幹線開業当初から存在した駅ではありません。
地元の要望をうけて1985年に設置された駅で「請願駅」と呼ばれます。
花巻市の中心市街地にあるのは花巻駅で、新花巻駅からは西へ5km程の場所にあります。
鉄道で移動するならば、新花巻駅から釜石線という路線に乗れば、8分程で花巻駅に到着します。
ただ、乗車時間よりも、釜石線の列車を待つ時間の長さの方が問題かもしれません。
日中には2時間も列車の運行がない時間帯があります。
花巻駅が目的地なのであれば、東北新幹線は新花巻駅の隣の北上駅や盛岡駅で降りて、東北本線に乗り換えて花巻駅を目指した方がよいでしょう。
東北本線の列車は、30分に1本程度は運行されていて、北上駅から花巻駅までなら所要時間は10分程度です
(実のところ「はやぶさ」は、新花巻駅に停車する列車よりも北上駅に停車する列車の方がはるかに多かったりします)。
花巻駅には市を南北に貫く東北本線と、花巻駅と太平洋沿岸にある釜石駅を結ぶ釜石線が共に乗り入れています。
東北本線の盛岡駅から花巻駅を通って釜石駅へ直通する快速「はまゆり」という列車も運行されているように、花巻駅は花巻市の中心的な位置づけの駅であるのみならず、列車の運行上でも重要度の高い駅なのです。
新幹線以外で遠方から花巻市までアクセスするのなら、高速バスや飛行機を使うことになるでしょう。
花巻市内には岩手県内唯一の空港である花巻空港(いわて花巻空港)があります。
日本航空(JAL)は札幌(新千歳)、大阪(伊丹)、福岡からの直行便を運航しています。
また、フジドリームエアラインズ(FDA)が、名古屋(小牧)、神戸からの直行便を運航。
2025年10月26日からは、FDAも福岡~花巻便を運航予定です。
余談ですが、台湾の台北(桃園)からの国際線も就航しています。
中国の上海(浦東)からの国際線は運休中です。
花巻空港からは、花巻空港駅・盛岡駅、北上駅、花巻駅、新花巻駅などへのアクセスバスが運行されています。
目的地に応じてバスを選びましょう。
なお、JRの東北本線に「花巻空港駅」という駅があるものの、駅から空港のターミナルビルまでは約4km離れているので、徒歩で移動するのは推奨できません。
花巻市に乗り入れる高速バスについては、かつては東京都の池袋駅から直通する夜行バス「イーハトーブ号」などが運行されていました。
しかし現在は、先ほど述べた盛岡駅と花巻空港を結ぶリムジンバスに加えて、仙台駅と花巻駅を結ぶ「けんじライナー」が残る程度です。
花巻市内には、東北自動車道と釜石自動車道が通っています。
東北自動車道は首都圏と青森県を結ぶ道路で、釜石自動車道は花巻市と釜石市を結ぶ道路です。
東北本線と釜石線の道路版のような道ということになります。
2本の高速道路が、広い範囲の地域からの花巻市への自動車でのアクセスを容易にしています。
銀河鉄道?

新花巻駅の西口から外に出た暦は、駅前でSL列車のモニュメントを発見します。
花巻出身の詩人・童話作家である宮沢賢治が記した『銀河鉄道の夜』をモチーフにしたモニュメントです。
宮沢賢治の銀河鉄道は、釜石線のルーツのような鉄道であった岩手軽便鉄道がモデルだと考えられています。
そして釜石線では、2023年6月までは銀河鉄道の夜をイメージしたSL列車の「SL銀河」が運行されていました。
駅前には『セロ弾きのゴーシュ』の碑も設置されています。
徒歩で宮沢賢治記念館へ
ちかと暦は、新花巻駅から釜石線の線路沿いを西に歩き、続いて国道456号を南に進み、釜石線の踏切を渡ります。
目的地は宮沢賢治記念館。
新花巻駅から記念館のある山のふもとまでは1.4km程なので、徒歩でも十分移動できます。
ただし、記念館に上がるための階段が367段もあり、駅から記念館までの道のりにすると1.7km程です。
「賢治記念館口」という停留所が近く(山のふもと)にあり、花巻市コミュニティバスの土沢線でのアクセスも可能ですが、バスは1日6便しかないので過度に頼ることはできません。
とはいっても、10時38分新花巻着の「はやぶさ103号」で来たのであれば、10時55分に新花巻駅前を出発するバスがあるので利用したいところです。
ということは、2人が乗ったのは9時50分新花巻着の「はやぶさ101号」だったのでしょうか。
記念館では、宮沢賢治の生涯と作品が紹介されています。
賢治本人の愛用品や直筆原稿なども。
記念館の駐車場内には『注文の多い料理店』にちなんだレストラン「Wildcat House 山猫軒」があります。
記念館の近くにある胡四王(こしおう)神社からは、良い景色が拝めます。

Information<宮沢賢治記念館>
- 名称 宮沢賢治記念館
- 所在地 岩手県花巻市矢沢第1地割1番地36
- 開館時刻 8:30~17:00
- 休館日 12月28日から1月1日まで
- TEL 0198-31-2319
- URL 宮沢賢治記念館|花巻市
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徒歩で農産物直売所の案山子へ
宮沢賢治記念館を後にした2人は、県道286号 東和花巻温泉線を西へと歩いていきます。
そして「生鮮野菜と焼プリン大福 案山子 600m先」と書かれた幕を見つけて「案山子」(かかし)を訪れます。
この案山子は農産物直売所で、幕にも書かれていた焼プリン大福が人気商品とのことです。
それにしても、幕から案山子までだけでも600m歩いていることになりますけれども、宮沢賢治記念館から案山子までだと実に3.6kmもあります。
もし案山子を見つけて一休みしないのであれば、いったいこの2人はどれだけぶっ続けで歩くつもりだったのでしょうか。
Google Map<案山子>
徒歩とバスでマルカンビル大食堂へ
その後、2人は「徒歩とバス」で花巻の市街地にあるマルカンビルを訪れます。
花巻空港の近くでバスに乗ったことと、大雑把な経路しか示されていないので、少々バスの情報を得るのが大変でしたが、岩手県交通が運行する石鳥谷(いしどりや)線という路線(花北1,3,4系統)のようです。
花巻市石鳥谷町にある志和口という停留所から、石鳥谷駅口、花巻空港の西側、花巻駅前、市役所前、総合花巻病院前、富士大学入口、県立中部病院前などを経由して北上駅前に至る路線です。
2人は、花巻空港の南西にある石持停留所から、マルカンビル前の上町停留所までバスに乗車したものと思われます。
ちなみに、案山子から石持停留所までは徒歩ということになりますけども、1.5kmもあります。
新花巻駅~宮沢賢治記念館~案山子~石持停留所では、合計6.8kmです。
健脚ですね。
マルカンビルの6階には、昭和時代を感じさせるようなレトロな大衆食堂があり、30cmくらいの高さがある10段ソフトクリームが名物となっています。
作中でも描かれているように、箸で食べるのがおすすめとのことです。

マルカンビルの少し南東の場所に、宮沢賢治の生家があります。
Information<マルカンビル大食堂>
- 名称 マルカンビル大食堂
- 所在地 岩手県花巻市上町6-2 マルカンビル6階
- 営業時刻(平日) 11:00~15:00ラストオーダー(15:30閉店)
- 営業時刻(休日) 11:00~18:00ラストオーダー(18:30閉店)
- 定休日 水曜日
- TEL 0198-29-5588
- URL 花巻 マルカンビル大食堂 | 昭和レトロな大食堂 宴会
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バスで大沢温泉へ
10段ソフトを堪能した2人は、徒歩で花巻駅まで移動して(1.2kmあります)、バスに約30分揺られて大沢温泉の湯治屋へ向かいます。
バスが温泉の送迎バスなのか、一般の路線バスなのかは断定できませんが、バスの絵柄からは、前者の可能性が高いように思います。
無料シャトルバスは新花巻駅・花巻駅から夕方に3便が運行されていて、花巻駅からの所要時間は30分となっています。
予約制なのでご注意ください。
路線バスは、岩手県交通の湯口線(鉛1系統、または鉛2系統)が通っています。
花巻駅前から、大沢温泉を経由して、新鉛温泉停留所までを結んでいます。
便数は決して多くはありませんが、14時から19時台にかけては1時間に1便程度。
時刻表上の所要時間はどの便も25分です。
大沢温泉は、約1200年の歴史を持ちます。
征夷大将軍の坂上田村麻呂が、毒矢で負傷したものの、大沢の湯に入浴して傷を癒したという伝説があるほどです。
大沢温泉の湯治場は、宮沢賢治も利用していたことが知られています。
建物は築200年で、本当に歴史が長いことをうかがわせます。
素泊まりが基本で、食事処で食事をする以外にも、食材を持ち込んで共同炊事場で自炊することが可能です。
Information<大沢温泉 湯治屋>
- 名称 大沢温泉 湯治屋
- 所在地 岩手県花巻市湯口字大沢181
- TEL 0198-25-2315
- URL 湯治屋 | 岩手県花巻市 大沢温泉
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花巻電鉄鉛線
翌朝、大沢温泉の前を通る県道12号を歩きながら、ちかは暦にこの道路を昔電車が走っていたという話をします。
大沢温泉の前を通っていたのは、花巻電鉄という会社が運営していた、鉛線と呼ばれる路線です。
鉛線は、花巻の市街地から、大沢温泉駅、鉛温泉駅などの温泉地の駅を経て、西鉛温泉駅までを結んでいました。
現在の路線バスの湯口線は、鉛線の代わりといえますけれども、そもそもバスを運行している岩手県交通というのが、花巻電鉄の後身の会社だったりします。
花巻電鉄の路線はもう1つあり、花巻温泉線と呼ばれています。
名前の通り、花巻の市街地と、大沢温泉よりも東の方にある花巻温泉の駅を結んでいる路線でした。
鉛線は1969年に廃止されて、花巻温泉線も1972年に廃止されました。
花巻電鉄が使用していた「デハ3」という電車が、花巻市街の材木町公園で保存されています。
電車の前面はずいぶんと縦に長い(というより幅が狭い)形状をしていて、馬面電車と呼ばれているようです。
県道12号をしばらく南下した2人は「渡り」という停留所からバスに乗ります。
バスの絵柄からは、今度は岩手県交通の路線バス(湯口線)に乗ったことが推測されます。
なお、大沢温泉から渡り停留所までは1.2kmほど。
本当によく歩く人たちです。
Google Map<材木町公園>
花巻市街地を散策
バスで花巻市街地に戻ってきた2人は街を散策します。
地図の描写からは「文化会館前」か「若葉町」という停留所でバスから降りたものと推測されます。
散策では、いったいどこなのか特定しがたい路地を歩いた後「鼬幣稲荷神社(いたちべい いなり じんじゃ)」や、豊沢川の北岸を通る「賢治さんと歩く心象ロード」を訪れています。
その後、南3km程のところにある「元祖満州にらラーメン さかえや本店」を訪問。
1960年創業の老舗ラーメン店です。
満州とは、もちろん中国東北部の満州(満洲)のことです。
創業者が満州で食べたラーメンのスープに感銘を受けたことが始まりとのことです。
ラーメンにはニラ、ニンニクの芽の醬油漬け、豚バラ肉、紅生姜、そしてスープの表面を覆い尽くす程のたっぷりのラー油が入っています。
とはいえ、子どもなども食べられるように辛さの調整はしてくれるようです。
Information<元祖満州にらラーメン さかえや本店>
- 名称 元祖満州にらラーメン さかえや本店
- 所在地 岩手県花巻市山の神1000-1
- 営業時刻 11:00~15:00
- 定休日 年末年始
- TEL 0198-23-7775
- URL 元祖満州にらラーメン さかえや本店 | 旨い!早い!安い! 元祖満州にらラーメン
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徒歩と電車とバスで中尊寺へ
その後、ちかはさらに、平泉町にある中尊寺(ちゅうそんじ)の金色堂に行きたいと言い出します。
さかえや本店は、花巻駅からも、南隣の村崎野駅からも5km程離れていて、2人は南側の村崎野駅に向かいます。
いったい2日間で何キロ歩いたのでしょうか!?
15kmは超えているはずです。
こんなに歩いたら、筆者は確実に筋肉痛になります。

既に時刻は14時過ぎなので、村崎野駅に着くのは16時頃となります。
村崎野駅では、16時40分発の一ノ関行きの列車に乗車できて、平泉駅に着くのは17時17分です。
中尊寺にアクセスできるバス路線はいくつかあるものの、ここで使うのはまたまた岩手県交通のバスで、一関平泉線(22系統)です。
17時45分に平泉駅前を出発する瀬原行きの最終バスに乗って、作中では17時50分(この記事を書いている時点での時刻表では17時49分となっています)に中尊寺に着きます。
そして、ちかと暦の前に現れたのは、既に閉門して真っ暗になっている中尊寺(ただし金色堂のあたりがぼんやりと光っている)だったのでした。
中尊寺の参拝時刻は、春から秋までは17時まで、冬は16時30分までです。
作中では平泉駅に着いた時点でアウトと説明されていましたけれども、この日(2月1日)は思いっきり冬なので、村崎野駅で電車に乗る前の時点で既にアウトだったことになります。
中尊寺に入れなかったところで、第10旅は終了です。
なお、18時04分発の反対方向のバスに乗らないと、帰れなくなります。
帰りのバスは一ノ関駅行きで、終点まで乗れば一ノ関駅から東北新幹線に乗車できます。
中尊寺は天台宗の寺院で、西暦850年の創建と伝わり、ユネスコ世界遺産に登録されています。
奥州藤原氏にゆかりがあることで知られます。
有名な「金色堂」は、名前が示す通り金箔で覆われた豪華な建築です。
Information<中尊寺>
- 名称 中尊寺
- 所在地 岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
- 拝観時刻 3月1日~11月3日/8:30~17:00 11月4日~2月末日/8:30~16:30
- TEL 0191-46-2211
- URL 【公式】関山 中尊寺[岩手県平泉 天台宗東北大本山]
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おわりに
これでアニメ「ざつ旅」の東北地方回に関する記事は終了です。
今回は、バスに乗る場面もあったものの、全体的に徒歩での移動が多かったようです。
実際にこの旅を再現する場合には、あまり無理をしないように、季節によっては熱中症などにも注意しましょう。
原作の漫画では、秋田県や山形県の旅もしているので、機会があれば記事にしたいと思います。





























