歴史

【山形県長井市】最上川の舟運で繁栄した旧米沢藩舟運の町・長井

山形県南部に位置する長井市(ながいし)は、江戸時代に最上川の舟運によって発展した旧長井町を中心に、長井村、西根村、平野村、伊佐沢村、豊田村の1町5村が合併して1954年(昭和29年)に誕生しました。


一時伊達政宗が領主となった長井

「長井」という地名は”水の集まるところ”を表していて、最上川をはじめ3つの河川が町を囲むように流れていて大地を潤しています。

最上川が流れる長井盆地には、縄文時代から人の営みがありました。中世には置賜(おきたま)の郡が置かれ、鎌倉時代には長井氏が領主となり置賜が長井の庄と改められます。南北朝時代には伊達氏の領土となり、伊達政宗も一時領主となりました。伊達氏が豊臣秀吉の命に背いたとして、岩出山(宮城県大崎市)に追いやられたあと、江戸時代には米沢藩の領地となり、明治維新まで続きます。


江戸時代に難所だらけの最上川を整備し船着場を設置

江戸時代には長井に最上川の船着場が設置され、米沢藩の最上舟運の中心地となります。最上川は中流部の大石田(大石田町)までは流れがゆるやかで、大石田が最大の船着場として繁栄していました。米沢藩のある上流部までは難所をいくつも越えなくてはならず、船の運航は困難を極めていたのです。

最上川を改修して船着場が設けられ発展 ©山形県

なんとかならないかと考えた米沢藩の御用商人西村久左衛門は、幕府と藩の許可を取り、自費を投入して流れの整備をはじめます。1863年(元禄6年)6月に工事をスタートし、佐沢(寒河江市)から長井までの岩盤を掘削し、翌年9月に工事は完成。宮と小出(長井市)に船着場ができました。それ以来長井は最上川舟運の町として発展していきます。それは、明治維新以降も続き、1914年(大正3年)に旧国鉄長井線(現山形鉄道フラワー長井線)が開通するまで続きます。


水とのつながりが生んだ景観が文化的景観として登録

昔ながらの建物が多く残る長井(やませ蔵) ©長井市

長井線が開通したことにより、舟運の町長井は、鉄道を中心とした西置賜における物資輸送の中心地となり、農産物や絹織物などの特産品が長井から全国へと積み出されるようになります。

長井の中心部には、その時代の建物や構造物が多く残り、当時の賑わいを忍ばせてくれます。最上川のその支流が多く集まる長井は、舟運をはじめとする水とのつながりが人々の営みを生み、その痕跡が今でも船着場のあった宮と小出の両区域にはあります。その独特な景観は『最上川上流域における長井の町場景観』として国の重要文化的景観に選定されました。


歴史的建物が資料館・美術館として活用される「文教の杜長井」

最上川舟運で財をなした「旧丸大扇屋」

丸大扇屋は、江戸時代から昭和にかけて最上川舟運で栄えた呉服商です。約700坪の敷地内には、1832年(天保3年)に建てられた味噌蔵や1912年(大正元年)築の新座敷など7棟の歴史的建物が保存されています。そのうち主屋、店、店蔵、内蔵、座敷蔵、新座敷の6棟が山形県指定有形文化財です。旧丸大扇屋の敷地内には、当主だった彫刻家長沼孝三の作品を展示した「長沼孝三彫塑館」が建てられています。

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  • 施設名称:旧丸大扇屋
  • 所在地:山形県長井市十日町1-11-7
  • 電話番号:0238-88-4151
  • 開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
  • 休館日:月曜日・月末日(月曜日が祝日の場合は翌日)、冬季(12月29日~3月31日)
  • 見学料:「旧丸大扇屋」は見学無料
  • 長沼家当主の彫刻を展示「長沼孝三彫塑館」
  • 見学料:おとな 300円、高校生 200円、小中学生 100円

山形で最も古い役所建物「旧西置賜郡役所」(小桜館)

洋館をまねた疑似洋風建築の旧西置賜郡役所 ©長井市

旧西置賜郡役所(長井市指定有形文化財)は、明治になって郡制が敷かれた際に長井のある西置賜郡の役所として1878年(明治11年)に建てられたもので、郡役所としては山形県で最も古い建物(全国では2番目)です。現在は地域住民の文化活動の場『小桜館』として利用されています。

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  • 施設名称:旧西置賜郡役所(小桜館)
  • 開館時間:9:00~17:00(活動・展覧会など開催時は21:00まで)
  • 休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
  • 見学料:無料(施設利用は有料)
  • 施設名称:文教の杜長井
  • 所在地:山形県長井市十日町1-11-7
  • 電話番号:0238-88-4151
  • URL:文教の杜長井

長井紬で財をなした豪商の蔵「やませ蔵(やませ蔵美術館)」

大きな蔵が建ち並ぶ「やませ蔵」 ©長井市

やませ蔵は、元禄の頃から古着やたび、のちに長井紬などの衣料品を扱う舟運で儲けた最上屋の蔵です。当主は長井紬の改良に努め、明治時代に最盛期を迎えました。明治時代に建てられた5棟の蔵が残っていて、その豪商ぶりがうかがえます。

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  • 施設名称:やませ蔵(やませ蔵美術館)
  • 所在地:山形県長井市あら町6-61
  • 電話番号:0238-88-9988
  • 開館時間:10:00~17:00
  • 開館日:金曜日、土曜日、日曜日
  • 休館日:月曜日~木曜日、冬季期間(11月下旬~4月上旬)
  • 入館料:一般 500円、高・大学生 300円、小・中学生 100円

明治の建物が店舗「鍋屋本店」

現役の金物店「鍋屋本店」。建物は明治時代のもの ©長井市

鍋屋本店(なべやほんてん)は江戸時代後期に創業された金物屋で、現在も営業しています。建物は明治30年代に建て替えられたものをそのまま使用していて、明治期の店と暮らしを知る上でも大変貴重な建物です。国の登録有形文化財に指定されています。

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  • 施設名称:鍋屋本店
  • 所在地:山形県長井市十日町1-10-15
  • 電話番号:0238-88-5279(長井市観光協会)

江戸期の建物が現役。日本酒蔵「長沼合名会社」

現在も日本酒を仕込んでいる長沼合名会社のレトロな建物 ©長井市

長沼合名会社は、1916年(大正5年)創業の酒蔵です。酒蔵になる前は呉服店や養蚕業を営んでいて、建物は江戸時代後期の主屋や明治期の蔵、大正時代に建てられた仕込み蔵など、6棟が国の登録有形文化財に指定されています。日本酒の銘柄は惣邑(そうむら)です。

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  • 施設名称:長沼合名会社
  • 所在地:山形県長井市十日町1-1-39
  • 電話番号:0238-88-2007

数年前まで現役校舎「旧長井小学校第一校舎」

市民の学びと交流の拠点「旧長井小学校第一校舎」 ©長井市

旧長井小学校第一校舎は1914年(大正3年)に建てられた2階建て木造校舎で、2015年(平成27年)まで現役の小学校として使われていました。鮮やかな赤味の外壁や中央にある大階段、舟底天井の長い廊下など非常に特徴的な建物で、国の登録有形文化財に指定されています。現在はリニューアルされ、長井市の「学び」と「交流」の拠点として活用されています。

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  • 施設名称:旧長井小学校第一校舎
  • 所在地:山形県長井市ままの上5-3
  • 電話番号:.0238-87-1802(旧長井小学校第一校舎)
  • 営業時間:9:30~21:30
  • 休業日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
  • ※利用方法など詳細は要問い合わせ
  • URL:旧長井小学校第一校舎

100mにわたって連なる古い建物「山一醤油店」

店舗に続いて若衆の間、醤油蔵、仕込み場、味噌蔵が並ぶ ©長井市

山一醤油店は、1846年(弘化3年)の醤油蔵・味噌蔵で、現在の建物は1920年(大正9年)頃に再建されたものです。店に隣接して若衆の間、醤油蔵、仕込み場、味噌蔵が並び、その長さは約100mにもなります。仕込み方法など昔ながらの手法で手造りされる味噌や醤油は地元だけでなく遠方からのリピータも多く愛され続けています(国の登録有形文化財)。

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  • 施設名称: 山一醤油店
  • 所在地:山形県長井市あら町6-57
  • 電話番号:0238-88-2068
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 休業日:日曜日・祝日
  • 蔵見学:要問い合わせ
  • URL:山一醤油店

大正時代の駅舎が今も使われている「羽前成田駅」

鉄道ファンなら誰でも知っているという大正11年築の現役駅舎 ©長井市

羽前成田駅は、現在の山形鉄道フラワー長井線の前身、旧国鉄長井線時代の1922年(大正11年)に開業した駅です。駅舎は開業当時のまま使用されていて、国の登録有形文化財に指定されています。

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  • 施設名称:羽前成田駅
  • 所在地:山形県長井市成田1882-2
  • 電話番号:0238-88-2002(山形鉄道)
  • URL:フラワー長井線

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  • 長井市
  • 所在地:山形県長井市
  • 電話番号:0238-88-5279(長井市観光協会)
  • URL:長井市観光協会

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NORIJUN

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旅が好きが高じて一昔前は旅行誌、今はWEBの旅行ライターをしています。取材では東北地方を中心に全国47都道府県すべて訪れていますが、楽しみは温泉に入り、古い町並みや暮らし、芸能工芸など日本の伝統文化にふれることです。

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