青森の秋の味覚「毛豆」とは?だだちゃ豆より知名度が低いのはなぜ?

青森の秋になると、スーパーや直売所に山積みになるのが「毛豆」。枝豆の一種ですが、名前の通りさやに細かい毛がびっしりと生えた独特の姿をしています。だだちゃ豆ほど全国的には知られていませんが、地元では「一度食べたら忘れられない味」と言われるほど熱狂的な人気を博しているのです。なぜ毛豆がここまで愛され、そして県外ではあまり知られていないのか、その魅力に迫ります。


青森の秋の味覚「毛豆」とは?

毛豆
毛豆。毛がびっしりであればあるほどうまいと言われている

青森の秋に欠かせない食材・毛豆。聞きなれない名前ですが、いったいどんな豆なのでしょうか?まずは毛豆の見た目や味わいについて紹介します。


毛がびっしり生えた毛深い豆

毛豆は枝豆の一種ですが、一般的な枝豆より粒が大きく、力強い味が特徴です。さやには産毛のような毛が密集していて、初めて見る人は驚くほど。けれど、この毛があることで豆の鮮度が守られ、甘みや旨味がしっかり残るといわれています。

圧倒的な旨味と甘みが特徴

毛豆は甘みとコクが強く、濃厚な旨味が特徴です。一般的な枝豆よりも味わいが深く、「枝豆を食べたら毛豆に戻れない」という声も聞かれるほど。青森の人々が秋を待ちわびる理由のひとつが、この毛豆の味わいにあります。


毛豆の産地はどこ?収穫時期も紹介

毛豆は青森の中でも津軽地方を中心に親しまれてきました。そして旬の時期が限られているため、食べられるタイミングは短いのが特徴です。

主な産地は津軽地方

毛豆は青森県津軽地方で受け継がれてきた在来種の大粒青大豆。弘前市や黒石市を中心に栽培され、秋になると直売所や家庭の食卓を彩ります。県外にはほとんど出回らず、「地元でしか食べられない豆」として残ってきました。

収穫は秋だけ!短い旬の時期

毛豆の旬は9月中旬から10月上旬のわずか数週間。短いからこそ、その甘みと旨味が際立ちます。青森の人々は「毛豆が出ると秋が来た」と口にし、この時期を心待ちにしています。


毛豆とだだちゃ豆の違いは?

だだちゃ豆
山形で食べられる「だだちゃ豆」

毛豆とよく比べられるのが山形のだだちゃ豆。どちらも地域の在来種ですが、違いがいくつかあります。

毛豆は甘みが強く、だだちゃ豆は香りや風味が豊か

毛豆は甘みと旨味が濃く、食べ応えのある味。だだちゃ豆は香りや風味に個性があり、こちらも根強い人気があります。どちらが好みかは分かれるものの、毛豆の力強い味わいに惹かれる人も多いです。

全国的に有名なのはだだちゃ豆

だだちゃ豆はブランド化が進み、全国的に知られる存在になりました。一方の毛豆は長く家庭で食べられる豆として守られてきたため、知名度が低いまま。味では引けを取らないのに、このブランド力の差が広がりを阻んでいます。


毛豆のおいしいゆで方

毛豆はゆで方で味が大きく変わります。毛豆をおいしく食べる基本のゆで方を紹介します。

  1. 下ごしらえ
    毛豆をよく洗い、塩でもんで毛や汚れを落とします。そのまま5〜10分置いてアクを抜き、さっと流すと仕上がりがよくなります。
  2. ゆでる
    鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩を加えて毛豆を一気に入れます。再沸騰したら弱めの火で6分ほど。さやが少し開いたら茹で上がりです。柔らかめが好きな人は8分ほど茹でるとちょうどよくなります。
  3. 冷ます
    ざるにあげて、うちわなどで素早く冷まします。余熱で火が入りすぎないようにするのがコツですが、水にさらすのはやめてください。せっかくのうまみが逃げてしまいます。熱々のまま食べるのもおいしいですが、冷めた毛豆はより甘みが感じられますよ。

なぜ毛豆は全国流通しない?理由を解説

こんなに魅力あふれる毛豆ですが、なぜ全国には流通しないのでしょうか?

門外不出の在来種

岩木山
岩木山と田んぼ

毛豆は津軽地方に伝わる在来種で、農家に代々守られてきた豆です。畑の隅や苗代に植えられ、家庭で食べることを前提に育てられてきました。外に出回ることが少なかったのは、その伝統的な位置づけが大きな理由です。

ブランド化の遅れ

だだちゃ豆が早くからブランド化して全国的に広まった一方、毛豆は「家で食べる豆」として受け継がれてきました。農家や地域の文化の中で完結してしまい、知名度を広げる動きが生まれにくかったのです。

流通に不向きな鮮度

毛豆は収穫から1日でも味が落ちやすい繊細な豆です。鮮度が命だからこそ長距離輸送には不向きで、県外で目にすることがほとんどありません。青森で旬を迎える時期にしか味わえないのは、この性質によるものです。


まとめ

毛豆は津軽の秋に欠かせない在来種の枝豆。毛深い見た目とは裏腹に、甘みと旨味の濃さで多くの人を魅了してきました。だだちゃ豆ほど知られてはいませんが、鮮度が命のため地元で食べるからこそ味わえる特別な豆。秋に青森を訪れる機会があれば、ぜひ旬の毛豆を味わってみてください。


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