中尊寺

【岩手県】奥州藤原氏三代の寺院として有名な世界遺産「中尊寺」

岩手県西磐井郡平泉町にある中尊寺(ちゅうそんじ)は天台宗東北大本山の寺院です。奥州三十三観音番外札所になっており、山号は関山(かんざん)、本尊は釈迦如来。


慈覚大師円仁による開山といわれる中尊寺

中尊寺に伝わる歴史によると850年に慈覚大師円仁が関山弘台寿院を開創したのが始まりとされています。

しかし、慈覚大師円仁の開山を裏付ける確かな史料や発掘調査結果は現在のところ発見されておらず、実質的には12世紀初頭、奥州藤原氏の初代・藤原清衡(ふじわらのきよひら)が釈迦如来と多宝如来を安置するために大規模な堂塔の造営が行ったことを「中尊寺の創建」と見るのが大方の見解となっています。

現在では寺史に沿い、同様に慈覚大師円仁によって開山された同平泉の毛越寺、山形県の立石寺、宮城県の瑞巌寺を巡る「四寺廻廊(しじかいろう)」を構成する一寺とされています。

リンク:みちのく古寺巡礼「四寺廻廊」


中尊寺の名称について

様々な説がある部分ですが「中尊寺」の寺号(仏教の寺院の名称)は、歌人・西行が康治年間 (1142年 – 1144年)にこの地を訪れて詠んだ歌の詞書に「中尊と申所」云々とあるのが初出だとされています。

中尊寺(本坊表門)
中尊寺(本坊表門)

「中尊」は「奥州の中心に位置する」の意味であると解釈されています。


奥州藤原氏三代の寺院

寺院の始まりは前述の通り9世紀中頃ですが、奥州藤原氏三代の寺院として有名であり、金色堂や平安時代の美術品、工芸品など多くの文化財を有しています。

中尊寺(参道からの眺め)
参道からの眺め

奥州藤原氏は12世紀、東北地方に大きな勢力を築き、西暦1105年、藤原清衡が平泉で中尊寺の中興に着手しました。その目的は11世紀後半に東北地方で起こった前九年の役・後三年の役で亡くなった人々の霊を慰め、「みちのく」と言われ辺境の地とされた東北地方に仏国土を建設することでした。そのため実質的な創建はこの時代になります。

金色堂については1124年に上棟されました。この堂は清衡が自身の廟として建立したもので、藤原三代の遺体と四代基衡の首級が安置されています。


奥州藤原氏滅亡後は源頼朝の庇護を受けて存続

1189年に奥州藤原氏が滅亡。その後は源頼朝(みなもとのよりとも)の庇護を得て「鳥羽法皇御願」の寺とされて存続しました。

当時の中尊寺には金色堂のほかに、釈迦如来・多宝如来を安置した「多宝寺」、釈迦如来百体を安置した「釈迦堂」、両界曼荼羅の諸仏の木像を安置した「両界堂」、高さ約9mの阿弥陀仏と約5mの九体阿弥陀仏を安置した「二階大堂」(大長寿院)などがあったといわれています。

時代の移り変わりを乗り越えてきた中尊寺でしたが、1337年に大火災があり、金色堂を除く建築物がほぼ全焼してしまったという記録が残っています。


江戸時代には仙台藩領となり伊達氏の庇護を受ける

江戸時代には仙台藩領内となったことで伊達氏の庇護を受け、堂宇の補修・建立が行われました。

その後1654年からは神仏習合(日本の土着神と仏教神の融合・再構成等の動き)の流れから仙台・仙岳院が別当寺となりその管理下に。1665年には江戸・寛永寺の末寺となりました。

しかし、1689年に「奥の細道」の道中だった松尾芭蕉が訪れた際「中尊寺の荒廃ぶりを見て嘆いた」といわれていることから「管理」とは名ばかりで「放置」に近い状況だったのかもしれません。


近代になりその輝きを取り戻した中尊寺

その後近代になり1909年に本堂が再建。1950年に金色堂に800年間安置されていた藤原四代の遺体の学術調査が行われ、安置されている首級が本当に奥州藤原氏4代(初代清衡・2代基衡・3代秀衡・4代泰衡)のものであることが判明しました。

中尊寺(案内板)

1962年には金色堂の解体修理が行われ6年後の1968年に完成。過去の栄華が現在によみがえりました。


浄土宗建築の代表例として国宝に指定される金色堂

平泉ではおよそ100年にわたり王朝風の華やかな文化が栄えました。2011年には中尊寺を含む平泉の文化が「平泉ー仏国土(浄土)を表わす建築・庭園及び考古学的遺跡群」として世界遺産と無形文化遺産に登録されています。

中尊寺金色堂
中尊寺金色堂

中尊寺を訪れる観光客に人気で、高い知名度を誇るのは金色堂です。堂の内外に金箔が押された阿弥陀堂である金色堂は平等院鳳凰堂と共に平安時代の浄土宗建築の代表例であり、国宝に指定されています。堂内には遺体と首級の他にも副葬品や計31体に及ぶ仏像群が安置され、いずれも国宝や重要文化財に指定されています。平安時代の芸術や文化的背景を知る資料としても貴重な存在です。

また、金色堂以外にも中尊寺に至るまでの参詣道である月見坂では山の空気が荘厳な景色を作っています。建物も本堂や1977年に建立された祈祷堂である不動堂、3000点余りの文化財を収蔵する讃衡蔵など多くの見どころがあります。本堂は現在でも多くの儀式や法要が行われ、拝観は朝8時半から午後5時まで(11月~2月は4時30分)可能です。

平泉へは東北新幹線を利用するのが便利で、東京から2時間20分で一ノ関駅に到着します。東北本線に乗り換え、10分ほどで最寄り駅である平泉駅に着きます。月見坂までは1.6キロほどあり、場合によってはタクシーを利用するのも良いでしょう。

中尊寺<Information>

  • 名  称:中尊寺
  • 住  所:〒029-4102 岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
  • 電話番号:0191-46-2211
  • 公式URL:https://www.chusonji.or.jp/

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