【秋田県美郷町】120ヶ所もの湧き水が人々の生活を潤してきた「六郷湧水群」

秋田県美郷町(みさとちょう)の六郷地区は『六郷湧水群』といわれる日本有数の名水の里です。

120カ所(私有地を含む)以上湧き水がある美郷町。「御台所清水」 ©秋田県

美郷町は、湯沢市から仙北市まで続く南北に長い横手盆地の中央に位置し、西側は秋田県大仙市、東側は岩手県西和賀町に接しています。

『六郷湧水群』は、奥羽山脈の西端から流れ出る丸子川(まるこがわ)の扇状地に、その伏流水が120ヶ所あまり湧き出す一帯です。


江戸時代、六郷湧水を歩いて色彩画を残した菅江真澄

六郷は戦国時代までは六郷氏、江戸時代は秋田藩佐竹氏の領地でした。特に江戸時代は青森・秋田・山形を通って奥州街道へ合流する羽州街道(うしゅうかいどう)の宿場町として発展していました。

菅江真澄 ©秋田県立博物館

『六郷湧水群』は、江戸時代後期の秋田藩内をくまなく歩いた紀行家菅江真澄(すがえますみ)が、『菅江真澄遊覧記(全77冊12帖)』の中で、彩色された風景画をいくつか残しています。この遊覧記は、江戸時代の湧水池や六郷の様子が文章とともに詳細に描かれており、大変貴重な資料です。

『菅江真澄遊覧記(明徳館献納自筆本)77冊12帖』は国の重要文化財です。


秋田藩主の台所に使われていた「御台所清水」

今でも野菜などの洗い物に使われている「御台所清水」 ©美郷町

御台所清水(おだいどころしみず)は、秋田藩第2代藩主佐竹義隆(さたけよしたか)の別邸(御旅所/おたびしょ/狩りなどに来たときの休憩所)があったとされる場所に湧く泉です。

菅江真澄は「この水を屋敷の炊事用にくんだことから『御台所清水』と呼ばれるようになった」と記しています。『六郷湧水群』の中では比較的広く、自然のままに保たれ整備されている湧き水です。

江戸時代の「御台所清水」。藩主用の清水なので湧出口に柵がしてあり、厳重に管理されていた。『菅江真澄遊覧記 月の出羽路』の写本から ©秋田県立博物館

御台所清水<Information>

  • 名  称:御台所清水(おだいどころしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷宝門清水3−8
  • 公式URL:御台所清水

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秋田藩主の鷹狩り用に使われていた「鷹匠清水」

「鷹匠清水」は、殿様のお狩り場にあった小さな湧水 ©美郷町

鷹匠清水(たかしょうしみず)は、佐竹義隆の御旅所近くにある太桂寺(たいけいじ)境内に湧く湧水です。義隆が狩りに来た折、鷹匠が鷹のえさをひたしておいた泉といわれています。

江戸時代の「鷹匠清水」一帯。「鷹匠清水」は右上の小さい池。その下の建物が太桂寺で、右ページ左下の大きな清水(丙)は「御台所清水」。一帯に多くの湧き水があることが分かる。『菅江真澄遊覧記 月の出羽路』の写本から ©秋田県立博物館

鷹匠清水<Information>

  • 名  称:鷹匠清水(たかしょうしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷宝門清水3−8
  • 公式URL:鷹匠清水

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ニテコサイダーがこの湧水で製造された「ニテコ清水」

古代にこの地域に居住していたアイヌの人たちが呼んでいた名前がそのまま付いている「ニテコ清水」 ©美郷町

ニテコ清水(にてこしみず)は、『六郷湧水群』を代表する名水のひとつです。“ニテコ”とはアイヌ語で水たまりの低地という意味の“ニタイコツ”という言葉が転化したものといわれています。漢字では“似手古”と書かれていて、泉の奥には『似手古神社』があります。明治時代にこの湧き水を利用した「ニテコサイダー」が売り出され有名になりました。

左ページ下の湧水が「似手兒(似手古)清水」。周囲はかなり大きな集落だったことがうかがえる。『菅江真澄遊覧記 月の出羽路』の写本から ©秋田県立博物館

ニテコ清水<Information>

  • 名  称:ニテコ清水(にてこしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷大町59
  • 公式URL:ニテコ清水

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明治時代から作り続けられている「ニテコサイダー」

「ニテコ清水」を使った美郷町名産の「ニテコサイダー」 ©美郷町

「ニテコサイダー」は、「ニテコ清水」の湧き水を使って明治35年に製造を開始した秋田県初のサイダーです。

現在は「手作り工房 湧子ちゃん」が操業を停止してしまった創業会社から受け継いで製造しています。製品ラインナップは昔懐かしい「ニテコサイダー」のほか「ニテコりんごサイダー」「ニテコはちみつサイダー」「ニテコ巨峰サイダー」「ニテコ炭酸水」の5種類です。

ニテコサイダー<Information>

  • 名  称:ニテコサイダー/あきた美郷づくり株式会社
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷馬町83 名水市場湧太郎内
  • 公式URL:あきた美郷づくり株式会社

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今も日本酒の仕込み水として利用されている「笑顔清水」

高橋酒造店の日本酒に仕込み水として利用されている「笑顔清水」。一般の利用はできない ©秋田県

笑顔清水(えがおしみず)は、1891年(明治24年)に六郷町(現美郷町六郷)の初代町長だった畠山久左衛門の屋敷内に湧いていました。

現在は日本酒製造高橋酒造店の工場が建っていて、酒の仕込み水として使用されています。「笑顔清水」と名付けたのは久左衛門で、「清水のに映る自分の影を見て、微笑を浮かべ居られたことを聞き、この清水を笑顔清水」(原文まま/高橋酒造店記)と名づけたのだといわれています。

笑顔清水<Information>

  • 名  称:笑顔清水(えがおしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷宝門清水72−13(株式会社高橋酒造)
  • 公式URL:笑顔清水

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閑静な住宅地にある「宝門清水」

昔近くに“又何々(またこ)”という人が住んでいたことから「マタコ清水」ともいわれている ©美郷町

宝門清水(ほうもんしみず)は、昔あった宝門山昭楽寺というお寺の中にあった湧水で、今は閑静な住宅街にあります。「鷹匠清水」のある太桂寺や「御台所清水」など多くの泉が湧いている一角にあり、湧水散策に最適なエリアです。

宝門清水<Information>

  • 名  称:宝門清水(ほうもんしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷西高方町103
  • 公式URL:宝門清水

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見事な藤棚が名前の由来「藤清水」

現在の「藤清水」 ©美郷町
今も昔も藤がきれいな「藤清水」。現在(上)と江戸時代。『菅江真澄遊覧記 月の出羽路』の写本から ©秋田県立博物館

藤清水(ふじしみず)は、「ニテコ清水」や「笑顔清水」 に近いエリアにあり、周辺に藤棚が作られ、見事な花を咲かせることから「藤清水」と名付けられています。

藤清水<Information>

  • 名  称:藤清水(ふじしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷字本道町10
  • 公式URL:藤清水

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紙幣用の和紙を漉いていた「紙漉座清水」

この湧き水で秋田藩が紙幣を漉いていた ©美郷町

紙漉座清水(かみすきざしみず)は、大正時代初め頃までこの水を使って和紙が漉かれていました。周辺には紙の原料となるコウゾの木が植えられていて、江戸時代には秋田藩のお札の紙を漉く役所“紙漉座”があったことからこの名が付きました。

紙漉座清水<Information>

  • 名  称:紙漉座清水(かみすきざしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷白山25
  • 公式URL:紙漉座清水

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ハタチや酒店が酒を冷やしていた「ハタチや清水」

冷たい湧水は夏の間酒やサイダーが適温に冷える「ハタチや清水」 ©美郷町

ハタチや清水(はたちやしみず)は、ハタチや酒店の敷地内にある湧水で、第2次大戦後ハタチやが、夏の間酒やサイダーなどの飲料を冷やしていたことでも知られていました。

ハタチや清水<Information>

  • 名  称:ハタチや清水(はたちやしみず)
  • 住  所:〒019-1404 秋田県仙北郡美郷町六郷本道町52−1
  • 公式URL:ハタチや清水

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湧水が美しいラベンダーを育む「美郷町ラベンダー園」

美郷雪華の白と紫のラベンダーが美しいコントラストを描き出す「美里町ラベンダー園」 ©美郷町

美郷町ラベンダー園は、『六郷湧水群』ではありませんが、清涼な湧き水をふんだんに使える美郷町ならではの施設です。約2ヘクタール(6,000坪)の広さに2万株ものラベンダーが植えられています。

6月上旬から7月上旬が見頃で、「美郷町ラベンダー園」発見されたホワイトラベンダー美郷雪華(みさとせっか)が咲き誇り、白と紫のコントラストが見事です。

美里町ラベンダー園<Information>

  • 名  称:美里町ラベンダー園
  • 住  所:〒019-1502 秋田県仙北郡美郷町千屋大台野1
  • 電話番号:0187-84-4909
  • 開園期間:6月中旬~7月上旬(ラベンダー祭り)
  • 開園時間:9:00~17:00
  • 入園料金:無料
  • 公式URL:美郷ラベンダー園

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