東北は地方ローカル線の宝庫ですが、岩手県にはとくに乗っておきたい路線が多くあります。
大震災から復興した海沿いの路線や、人里離れた山間を走る路線など、魅力的なローカル線の宝庫です。
目次
ローカル線の定義とは?
広い意味では乗客が少ない地方の鉄道路線を指しますが、ここでは次の基準で選びました。
- 単線で乗客が少なく、廃線の可能性大
- SLや観光列車があり、映え写真の撮影スポットが多い
なお、2県にまたがる路線は起点がある県のローカル線としました。
三陸鉄道リアス線(盛駅~久慈駅:41駅163.0Km)
2013年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で「北鉄(きたてつ)」として登場した「三鉄(さんてつ)」は、日本最長の第三セクター鉄道です。

かつては宮古~久慈の北リアス線と、釜石~盛(さかり)間の南リアス線に分かれていましたが、2019年にJRから山田線の宮古~釜石が移管され、現在のリアス線となりました。
三陸海岸の絶景ポイントを活かした観光列車を企画するなど、大震災などの災害に負けずに頑張っています。
三陸鉄道リアス線のおすすめポイント!
リアス式海岸ゆえにトンネルが多く、内陸部を走る区間もあり変化に飛んだ車窓を楽しめます。
大沢橋梁と安家(あっか)川橋梁
堀内~白井海岸間の大沢橋梁と、野田玉川~堀内間の安家川橋梁は、どちらも高所から太平洋の水平線を遠望できる絶景ポイントで、日中時間帯では橋上で停止して絶景を楽しませてくれます。

お座敷列車「北三陸号」
三鉄ではさまざまな趣向を凝らしたイベント列車が人気を呼んでいます。
週末や祝日に運行されるお座敷列車は、4人掛けテーブルがある畳敷きの列車で、冬は暖かな「こたつ列車」に変身します。
そのほかにもランチやスイーツを楽しむ列車や、太平洋の日の出を楽しむ夜行列車など、さまざまな観光列車が企画されます。
JR山田線(盛岡駅~宮古駅:16駅102.1km)
元々は釜石駅までの路線でしたが、大震災で破壊された宮古~釜石間を三陸鉄道に移管して、全長約102kmの路線となりました。
長距離の乗車客が少なく、毎年のように廃止案が上がる赤字路線です。
路線名は宮古の先の山田駅由来ですが、三鉄に譲渡された後は名前だけが残りました。
山田線のおすすめポイント!
人の営みが感じられない深い山中をひた走る、東北屈指の秘境路線です。
車窓から野生の動物をよく見かけ、岩手の手つかずの自然を車窓から楽しめます。
快速リアス号
盛岡~宮古を1日2往復、キハ110系の車両にはテーブル付ボックス席のものもあります。
盛岡駅を出て上米内(かみよない)駅までは住宅街のなかを走りますが、やがて秘境のような山の奥へと進んで行きます。
おすすめの季節は紅葉シーズンで、山の鮮やかな赤や黄色が川面に映えるなかを走ります。
米内のしだれ桜群(上米内駅)
上米内駅からすぐ、1934年完成の盛岡市内で最も古い上米内浄水場があります。
ここでは4月下旬から5月にかけて、ヤエベニシダレヒガンザクラが満開となり、しだれ桜群を見物にたくさんの花見客が訪れます。
岩泉線廃線跡(茂内駅)
宮古市の茂内(もない)駅のホーム向かい側に、さびれたホーム跡と廃線跡があります。
これは2014年に廃止された、茂市駅と岩泉駅を結んでいた岩泉線跡です。
1日3往復の運行で20人程度の乗客を運ぶ超赤字路線で、土砂崩れによる脱線事故をきっかけに廃線となりました。
「秘境駅」の宝庫で、とくに押角(おしかど)駅が秘境駅マニアに愛されていました。
JR釜石線(花巻駅~釜石駅:24駅90.2km)

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモデルで「銀河ドリームライン釜石線」とも呼ばれ、賢治ゆかりの花巻から民話とカッパの遠野を経て、鉄の街釜石を結んでいます。
ローカル線ですが、東北新幹線の新花巻駅と直結して花巻市街とを結ぶ、地元で重要な路線です。
釜石線のおすすめポイント!
全駅に宮沢賢治が使っていたエスペラント語の愛称が付けられ、駅名標にそれが書かれています。
花巻駅は「Ĉielarko(チェールアルコ:虹)」、遠野駅が「Folkloro(フォルクローロ:民話)」、釜石駅には「La Oceano(ラ・オツェアーノ:大洋)」など、見て回るのも楽しいですね。
SL銀河

盛岡市内の公園に保存されていた蒸気機関車「C58 239」が動態復元され、2日で1往復運行されている4両編成の人気の観光SL列車です。

ただ、客車の老朽化によって2023年運行終了予定とのことです。
宮守川橋梁(宮守駅)

めがね橋とも呼ばれ、1943年完成の長さ約107m、高さ約17mの、5連アーチの美しい橋梁です。
SL銀河が渡っていく姿を道の駅「みやもり」から眺められ、「銀河鉄道」の雰囲気を味わえますよ。
そのほか岩手のローカル線

JRに2つの地方路線があります。東北本線と第3セクターのIGR岩手銀河鉄道は複線のため、今回の基準により外しました。
JR花輪線(好摩駅~大舘駅:27駅106.9km)
列車は盛岡駅からの運行ですが、好摩(こうま)駅まではIGR岩手銀河鉄道の路線です。
県境を越え秋田県の大舘駅まで、「十和田八幡平四季彩ライン」の愛称通りに四季折々の山中風景を楽しめます。
JR北上線(北上駅~横手駅:15駅61.1km)
こちらも秋田県境を越え、雪の「かまくら」で有名な横手までののどかな車窓の路線です。
紅葉が映える美しい錦秋湖で目を癒し、ほっとゆだ駅で温泉に浸かって身体を癒せますよ。
まとめ
岩手県のローカル線のほとんどが赤字路線で、岩泉線に続いて廃止、あるいは大船渡線のようにBRTとしてバス転換される可能性が大です。
地元の大切な足であり、バスにはない旅情を味わえる鉄道を、なるべく未来に残したいですね。