歴史

【岩手県盛岡市】時代に翻弄されながら今もなお盛岡に残る明治の邸宅、「南昌荘」

皆様は岩手県盛岡市に残る、明治の邸宅「南昌荘」はご存知でしょうか?

その邸宅は明治から幾度となく所有者が変わり、増改築がなされ、時代に翻弄されながらも岩手県盛岡市を4世紀に渡り見守ってきた邸宅です。

現在は「いわて生活共同組合」が所有の元、夏季・冬季期間に有料で庭園を眺めながら喫茶を楽しむことができ、お茶会、コンサート、俳句会なども行われる景観の素晴らしい施設になっています。

今回はそんな盛岡市を代表する明治の邸宅「南昌荘」へ訪問したお話です。


盛岡市街地、南に位置する「南昌荘」

「南昌荘」は盛岡駅より南へ徒歩25分、北上川左岸の河岸段丘上に建設されました。

現在の住所は「岩手県盛岡市清水町」になりますが竣工された明治18年頃までは「上衆小路」と呼ばれた地域で六日町の南西に位置する侍町であり、奥州街道につづく二町半ほどの両側町でした。


1885年竣工「南昌荘」

現南昌荘は1885(明治18)年、荒川鉱山の経営者である瀬川安五郎が1884年の盛岡河南大火で餌差小路(現肴町)の自宅を焼失した翌年に上衆小路(清水町)に自宅として新築しました。

瀬川安五郎は盛岡肴町にて両替屋を営む4代目油屋惣助、ミツの子として生まれ明治の実業家として手腕を発揮し、県下長者番付4位の財を成し、「みちのくの鉱山王」として中央財界で著名な方です。

瀬川安五郎は日本画家の平福穂庵・百穂親子への援助などを行い、文化的な側面で活躍したことでも知られています。


今年で138年、5代にわたり愛された「南昌荘」

新渡戸仙岳による看板の書

南昌荘は瀬川安五郎の自邸として建てられたあと、幾度となく所有者が変わっています。

1885~1907年 所有者:瀬川安五郎

1884年の盛岡河南大火で餌差小路(現肴町)の自宅を焼失した翌年に上衆小路(清水町)に自宅として新築。

1907~1910年 所有者:大矢馬太郎

第五代盛岡市長に就任した大矢馬太郎が瀬川安五郎から南昌荘を取得しています。

大矢馬太郎はこの邸宅を別荘として使用し、1908年には原敬(第19代内閣総理大臣)夫妻が1カ月滞在、翌年には伊藤博文(初代、5代・7代、10代内閣総理大臣)が韓国皇太子李垠殿下とともに盛岡を来訪し、南昌荘では歓迎の園遊会を開催しています。

1910~1932年 所有者:金田一勝定

その後、盛岡銀行(現岩手銀行)の実質経営者だった金田一勝定が邸宅を入手し、大掛かりな増築(玄関右側和室、2階大広間に隣接した3間増築)をしています。

1932~1987年 所有者:赤澤多兵衛

増築後、盛岡・穀町の呉服卸商(現赤澤繊商)赤澤多兵衛が別邸として購入、「南昌荘」の名は赤澤多兵衛所有時に教育者・郷土史家・書家の新渡戸仙岳に依頼して名づけられ、正面玄関入り口や各部屋の看板は新渡戸仙岳の書によるものになります。

1987年~ 所有者:いわて生活協同組合

赤澤多兵衛所有後は大手マンション業者により買収され、現在の南昌荘が無くなりかけましたが「いわて生活共同組合」の組合員の共有財産・共同所有として購入する事を決め、「いわて生活共同組合」の所有となり一般公開されるようになりました。

その後、2000年5月に盛岡市保護庭園に指定、2005年11月に盛岡市保存建造物となり、2015年1月に国登録記念物に登録されることとなりました。


一般公開される「南昌荘」

現在の「いわて生活協同組合」所有前は個人の所有で別邸、自邸として扱われていましたので一般での公開はなく、近隣の方たちも豪華絢爛な邸宅、という認識であったのでは?と思います。

2000年に「南昌荘」の庭園が盛岡市保護庭園となってから同年、4月29日に一般公開されるようになり、その息をのむ絶景が一般に広く知れ渡るようになったのではないでしょうか。

庭園は桂離宮・修学院離宮・六義園・後楽園などにみられる「池泉回遊式庭園」を取り入れ、主屋内の中二階に庭園全体を見渡せる30畳の「南昌の間」を配置し着座観賞を重視した設計となっているのが特徴で、紅葉時期には多くの観光客が訪れます。

今年、2023年の紅葉シーズンの公開は11月8日(水)~12日(日)を予定しており、期間中は開館時間も10:00~19:30となります。

※ライトアップは16:30開始、入館受付は19:00までとなります。


南昌荘内ではゆっくり食事を楽しむ事も可能。

南昌荘内では入場に別途料金がかかりますがコーヒーやお茶に季節に合った和菓子、それと明治40年創業、わんこそばで有名な「東屋」のお弁当が食べられます。※お弁当の利用は2個~ 前日午後3時までの予約が必須。

私は初夏の昼過ぎ、14時頃に伺いましたがコーヒーとサービスの茶菓子を贅沢に楽しみました。

他にお客さんと時間が被ることなく、風の音しか聞こえない庭園を眺めながらの一人貸し切りの一休みは本当に贅沢な時間でした。

友人やカップルとの来店ももちろん良いですが一人での来店が個人的には本当におススメです。

時間を忘れて庭園を眺めていると日々の忙しさも忘れ、他とは違う時間軸にいるような感覚になることができます。


まとめ

南昌荘は今年で竣工から138年経過し幾度となく所有者が変わり、時代に翻弄されたようにも思えますが全ての所有者が南昌荘に憧れ、所有してきたことと思います。

そして丁寧に大切に使用されてきたことが伺えます。

その気持ちは行けば分かりますし、東北でも稀に見る素晴らしき建造物です。

これからも時代とともに盛岡の華やかな文化の一つとして残るよう大事に、そして叶うことなら季節ごとに足を運ぼうかと思います。


南昌荘:INFORMATION

  • 所在地 : 岩手県盛岡市清水町13-46
  • 開館時間 : 夏期(4/1~11/30)午前10時から午後5時・冬期(12/1~3/31)午前10時から午後4時
  • 休館日 : 毎週月曜日・火曜日と年末・年始(12/26~1/10頃)※月曜日が祝日の場合は、開館。
  • 入園料 : 大人300円 10人以上団体割引(270円)子ども(小・中学生)150円 10人以上団体割引(135円)

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