【山形県】猿地蔵とは?お地蔵さまのふりをして幸運を手に入れた昔話をご紹介

山形に伝わり、1976年1月にまんが日本昔ばなしでも放送された「猿地蔵」は、山口県、埼玉県、新潟県などでも広く語り継がれている昔話です。

この記事では山形における「猿地蔵」の昔話について詳しく解説します。

山形における猿地蔵のストーリーとは?

山形に伝わる猿地蔵のストーリーは次のようなものです。

山に住む猿たちが田や畑を荒らすのに困っていたおじいさんとおばあさんは、おじいさんがお地蔵さまの恰好をして畑に立てば、猿たちの乱暴が止むのではないかと考えました。

猿はお地蔵さまの恰好をしたおじいさんを見て山のお堂に祀ろうと担いで運び出しますが、川を渡る時「猿のおしりさ、濡らすとも、地蔵のしりは濡らすなよ」と掛け声を掛けます。

おじいさんはその掛け声を聴いておかしくて仕方ありませんでしたが、じっと我慢しているとやがて山のお堂へと着き、猿たちはおじいさんをそのまま置くのはもったいないと言い、千両箱を2つ横に並べた上に置きました。

猿たちはおじいさんを拝むとやがてどこかへ行ってしまったので、おじいさんは並べられた千両箱を2つ抱えて喜んで家へと帰ってきたのです。

その話を聴いた隣のものぐさじいさんとばあさんは、真似をしてものぐさじいさんがお地蔵さまの恰好をし、畑へと立ちます。

同じように猿がやってきてものぐさじいさんを山へと運び出しますが、ものぐさじいさんは川で猿たちの掛け声を聴いて、うっかり笑い出してしまいました。

猿たちはお地蔵さまが人間だと気づいて怒り、ものぐさじいさんをみんなでひっかいて川へと放り投げてしまったのです。

猿たちがお地蔵さまへの信仰心を裏切られてしまい、その怒りの気持ちをものぐさじいさんへとぶつけているのが印象的なストーリーであると言えるでしょう。

猿地蔵の話型について

昔話を整理する際、基準として用いられる昔話分類の単位を「話型」と呼びますが、猿地蔵は「隣の爺型」に分類されます。

隣の爺型とは幸運を得たおじいさんの隣に住むおじいさんが真似をして失敗するというストーリーを指し、日本の有名な昔話の中では次の話も含まれます。

  • こぶとりじいさん
  • はなさかじいさん
  • 雁取りじいさん

隣の爺型の昔話は猿地蔵を始めとして日本にはたくさん伝わっているのですが、海外では朝鮮半島と中国に少し残っているだけです。

なぜなのでしょうか。

これは日本人が近所づきあいや隣人との関係を大切にする国民性を持っているからではないかと言われています。

内閣府が2020年1月に行った「社会意識に関する世論調査」の結果では地域での付き合いについて「付き合っている」と回答した人が65.4%、望ましい地域での付き合いを「地域の行事や会合に参加したり、困ったときに助け合う」と答えた人の割合が35.9%だったことから、現在においても日本人は近所づきあいを大切にしていることがわかるでしょう。

また猿地蔵から得られる教訓は人の真似をしてはいけないことや、人をうらやましがってはいけないことですが、昔話を聴いて子供のころからこのような意識を持つことが、日本人近所づきあいを大切に考える気持ちへとつながっているとも言えるのではないでしょうか。

参考:内閣府「社会意識に関する世論調査」

まとめ

猿地蔵は山形に伝わる「隣の爺型」に分類される昔話ですが、幸運を手に入れた人をうらやんだり、真似をしたりしてはいけないという戒めの含まれた印象的なお話だとわかりました。

猿たちと老夫婦、それをうらやむ隣の老夫婦が織りなす生き生きとしたどこか人間らしいストーリーを楽しんでみてください。

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