「斜陽館」。太宰治の生家。国指定重要文化財 ©青森県

中尊寺金色堂、弘前城、斜陽館-青森ヒバの歴史的建造物【青森県】

青森ヒバは、日本特有の樹木で日本学名をヒノキアスナロといいます。このヒノキアスナロは能登半島や栃木県日光地方から北の地域、北海道渡島半島を北限として生育していますが、その80%以上が青森県に集中しています。ヒノキアスナロは一般的には“ヒバ”と呼ばれていて、青森県のものは特別に“青森ヒバ”という名称が使われています。

ヒノキアスナロは、単にアスナロと呼ばれる樹木の変種で、アスナロは主に関東以南の地域に生育しています。アスナロもヒバと呼ばれていて、樹形や樹質はほとんど同じなので、混同されることも多々あるのですが、ここではヒノキアスナロ(青森ヒバ)に限定してとりあげます。


特に防虫、防カビ、防腐に優れた青森ヒバ。900年も前に建てられた中尊寺金色堂は今も健在

中尊寺金色堂
国宝「中尊寺金色堂」の青森ヒバで建てられた建材部分は900年経ってもほとんど損傷がなかった ©文化庁

青森ヒバ(ヒノキアスナロ)は、他の樹種に比べ“虫をよせない”“カビを生やさない”“腐りにくい”などの性質があり、はるか昔から建物の土台や柱、梁などに使われてきました。

その代表的な建物が、900年以上前の1124年に建立されたといわれる中尊寺金色堂(ちゅうそんじこんじきどう/岩手県平泉町/国宝/世界文化遺産)です。建立以来、中世の本体を守る囲い(覆堂/さやどう/茅葺き屋根で造られたもので、現在のものは2代目)が建てられ、江戸時代の元禄・元文年間に行われた堂の傾きを修正する工事(この時新たな木製の支柱が入れられています)、それに明治期の内部の一部修理や屋根の葺き替え、支柱を木製から鉄パイプに変えるなどの工事が行われた以外、ほとんど躯体を修理することはありませんでした。


1962年(昭和37年)にはじめて解体修理された金色堂

昭和に入ってからは、昭和5年に金色堂の傾きを直すための礎石(そせき)の取り替え、腐朽(ふきゅう)や破損が多くなった覆堂の解体修理が行われるなどしました。その後1960年代に入り、金色堂内部の詳しい検査の結果、国宝や重要文化財に指定されている蒔絵(まきえ/うるしを塗った上に金粉や銀粉をまいて文様を出す日本独自の高度な工芸技法)などの装飾品に虫害やカビが多く見られるようになり、1962年(昭和37年)にはじめての金色堂解体修理が開始されました。

昭和に入ってからは、昭和5年に金色堂の傾きを直すための礎石(そせき)の取り替え、腐朽や破損が多くなった覆堂の解体修理が行われるなどしました。その後1960年代に入り、金色堂内部の詳しい検査の結果、国宝や重要文化財に指定されている蒔絵(まきえ/うるしを塗った上に金粉や銀粉をまいて文様を出す日本独自の高度な工芸技法)などの装飾品に虫害やカビが多く見られるようになり、1962年(昭和37年)にはじめての金色堂解体修理が開始されました。

この工事は1968年(昭和43年)まで続き、ほぼ建立当時の輝きを取り戻すことができたのです。その際には、建立当時の青森ヒバ材のうち70%以上をそのまま使用したといわれています。覆堂は鉄筋コンクリート造りに建て替えられています。

※中尊寺金色堂の解体修理の詳細に関しては、独立行政法人 国立文化財機構「東京文化財研究所」の金色堂解体修理に関するレポート『国宝中尊寺金色堂に発生した黴(かび)と建築用材』(江本義数・微生物学者・学習院大学名誉教授)を参照しています

中尊寺金色堂 Information

  • 施設名称:中尊寺
  • 所在地:岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
  • 文化財指定:国宝
  • 電話番号:0191-46-2211
  • 拝観時間:
    • 3月1日〜11月3日/8:30~17:00
    • 11月4日〜2月末日/8:30~16:30
  • 拝観料:おとな 1000円、高校生 700円、中学生 500円、小学生 300円
  • 休館日:年中無休
  • URL:中尊寺
  • アクセス:
    • 公共交通機関/東北新幹線一ノ関駅乗り換えJR東北本線平泉駅下車、平泉町巡回バス「るんるん」で約10分(土日祝休日のみ運行・冬季運休・要確認)または徒歩で約20分
    • 車/東北自動車道平泉前沢ICから約5分

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築城当時の建物だけでなく、再建された天守にも青森ヒバを使用した弘前城

弘前城天守
石垣などの修復を終え、2026年には元の位置(この写真の位置)に再び曳家される弘前城天守。国指定重要文化財 ©弘前公園総合情報サイト

時代は金色堂ほど古くはありませんが、青森県内には青森ヒバを使用した歴史的建造物が多く残っています。

弘前城は津軽為信(つがるためのぶ/1550年頃~1608年)/弘前藩初代藩主)が計画し、2代目藩主の信枚(のぶひら/1586年~1631年)が1611年に完成したもので、躯体はほとんど青森ヒバで造られています。天守は1627年に落雷により炎上してしまったのですが、1810年に現在の五三階櫓(ごさんかいやぐら)と呼ばれる現在の三層天守が完成しました。

本来の天守は五層だったのですが、徳川将軍家の武家諸法度(ぶけしょはっと/各地の大名を厳しく統制する規則で、高い天守も建てられなかった)のため、焼失してから200年もの間再建できませんでした。1805年に第九代藩主寧親(やすちか/1765年~1833年)は、蝦夷(えぞ)警備の職に任命され、その功から4万7000石から10万石に石上げされました。このことを契機に幕府に頼み込み、特別に天守(幕府からの許可は櫓の建て替え)を建てることを許可されたのです。しかし、もともとの五層建ては認められず、三層にして建てたといわれています。

弘前公園
桜満開!多くの観光客が訪れ雪国の春の訪れを堪能。弘前公園のライトアップ ©弘前公園総合情報センター

弘前城は、東西約600m、南北約1,000mの中に、三重の濠(ほり)と土塁(どるい)に囲まれた6つの郭(くるわ/城内の防御、生活のためのエリア)から構成されていて、天守、櫓(やぐら)3棟、城門5棟が現在も残されています。これらはいずれも国指定重要文化財です。また、石垣のみが残されている初代天守跡などの、城跡は築城当初の形態が良く残されていて、国の史跡になっています。


亀甲門の解体修理ではほとんど腐朽などの損傷が見つからず

亀甲門
江戸時代以前に造られた「亀甲門」。国指定重要文化財 ©弘前公園総合情報センター

1955年(昭和30年)には5つある城門のひとつ「亀甲門(かめのうもん)」(北門)が解体修理されました。使用された木材は青森ヒバで、柱には無数の矢傷が発見されたのですが、門自体にはほとんど自然由来の損傷はなかったのです。実はこの門、江戸時代にはこの弘前城が攻められたことがないため、研究の結果、江戸時代以前に津軽為信が攻め落とした、津軽氏に対抗する豪族の城門を移築したものだったと推定されたのです。


弘前城は2026年には元の位置に。しかし、内部公開は保存改修工事のため2034年以降

弘前城は、土台となる石垣の解体修理が2016年(平成28年)から行われるため、天守は2014年(平成26年)に本丸中央部に77.62mほど曳家(ひきや)方式(建物を解体しないでそのままジャッキで持ち上げ、レールやローラーを使って平行移動)で移動されました。石垣の修理は2024年(令和6年)12月8日に終了し、2026年7月からいよいよ天守の引き戻し(元の位置に戻す)が開始されます。

曳家後も天守内部の公開は行われていたのですが、2026年からは、引き戻しとその後に行われる耐震補強工事や内部の保存改修が行われるため約7年間は公開中止になります。

弘前城 Information

  • 施設名称:弘前城(弘前公園)
  • 所在地:青森県弘前市下白銀町1-1 (弘前公園内)
  • 文化財指定:弘前城は国指定重要文化財、遺構は国史跡
  • 問い合わせ先:弘前市役所 公園緑地課(開花状況についてもこちら)
  • 電話番号:0172-33-8739
  • 入園料(弘前城本丸・北の郭):
  • 弘前さくらまつり期間(日付に関しては桜満開期間によって変わります)および有料期間(4月1日~11月23日/おとな 320円 こども 250円)
  • ※弘前さくらまつり期間および有料期間以外無料
  • ※弘前さくらまつり期間は公式ホームページか電話で問い合わせてください
  • ※併設の「弘前城植物園」は別料金(おとな320円、こども100円)
  • 開園時間:
    • 弘前さくらまつり期間/9:00~21:00(2025年より開園時間が変更になっています)
    • 無料期間/9:00~17:00(弘前城植物園も含む)
  • 休園日/
    • 11月24日~3月31日
  • ※弘前城さくらまつりが4月1日より早く始まった場合は、弘前城さくらまつり開始前日まで)
  • ※「弘前城植物園」は11月24日~4月中旬(開園期間中は無休)
  • URL:弘前公園
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR奥羽本線弘前駅下車または青森空港から弘前駅行方面行き路線バスで約55分、弘前駅下車徒歩で30分前後、あるいは弘前駅から土手町循環バスで約15分、市役所前バス停下車徒歩約4分
    • 車/東北自動車道大鰐ICから国道7号で約25分

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大地主だった文豪太宰治の生家。米蔵まで青森ヒバを使用した「斜陽館」

斜陽館
大富豪の邸宅として堂々とした佇まいを見せる「斜陽館」。太宰治はここで育った 

「斜陽館」(しゃようかん/五所川原市金木町/ごしょがわらしかなぎまち)は、太宰治(だざいおさむ/1909年~1948年/本名津島修治=つしましゅうじ)の生家を保存し、公開している建物です。太宰の父津島源右衛門は、当地の大地主で衆議院議員や貴族院議員を務め、現在の青森みちのく銀行の前身金木銀行を設立し、JR五能線の一部となった旧陸奥鉄道(むつてつどう)の役員をするなど、津軽地方の大富豪でした。

斜陽館
「斜陽館」は、明治40年に建てられたが、柱や梁などの躯体は殆ど当時のまま ©青森県

「斜陽館」は津島家の居宅として1907年(明治40年)に源右衛門によって建てられたもので、木造2階建て、総建坪116坪(約383㎡)、1階11室・2階8室の大豪邸です。建材はほとんどが青森ヒバを使用していて、その優れた耐久性、防腐性によって現在でもほとんど損傷がありません「斜陽館」は国指定重要文化財です。

斜陽館 Information

  • 施設名称:太宰治記念館「斜陽館」
  • 所在地:青森県五所川原市金木町朝日山412-1
  • 文化財指定:国指定重要文化財
  • 問い合わせ先:太宰治記念館「斜陽館」
  • 電話番号:0173-53-2020
  • 開館時間:9:00~17:00(最終入館は16:30まで)
  • 休館日:12月29日
  • 入館料:一般 600円、高・大学生 400円、小・中学生 250円
  • URL:斜陽館
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR五能線五所川原駅下車後徒歩(数分)で津軽鉄道津軽五所川原駅へ。津軽鉄道に乗車し金木駅下車、徒歩で約7分。または青森空港から車で約1時間、バス・列車使用だと、青森空港からリムジンバスを利用し青森駅へ、青森駅からJR奥羽本線、五能線・津軽鉄道を乗り継ぎ金木駅下車徒歩約7分
    • 車/津軽自動車道五所川原北ICから約15分

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明治後期に青森ヒバで建てられたルネッサンス様式木造2階建ての「青森市森林博物館」

青森市森林博物館
明治後期に東北では珍しかったルネッサンス様式で建てられた「青森市森林博物館」 ©青森県

「青森市森林博物館」は、1908年(明治41年)に当時の青森大林区署(青森営林局→青森事務所と改称)庁舎として建てられました。当時東北地方では珍しかったルネッサンス様式(左右対称など)の木造2階建ての建物で、建材には主に青森ヒバが使われています。

館内は第1展示室(森と仲間たち)、大第2展示室(木と暮らし)、第3展示室(雪とスキー)、第4展示室(青森とヒバ)、第5展示室(よみがえる津軽森林鉄道)、第6展示室(森を育てる)および別館(第7展示室:森林鉄道機関車)で構成されていて、青森ヒバに関しても詳しく解説されています。

青森市森林博物館
昭和20年代から40年代まで実際の森林鉄道で使用されていた車両 ©青森市森林博物館

第5展示室および第7展示に展示されている津軽森林鉄道は、日本初の動力車で牽引される森林鉄道で、その遺構や資料、車両などが「林業遺産」として登録されています。「青森市森林博物館」で展示されている機関車等は、津軽森林鉄道ではないのですが、下北半島の森林鉄道で実際に使われていたディーゼル機関車(協三工業4.8t内燃機関車)や津軽森林鉄道の客車(幹部視察用客車あすなろ号)、貨車(モノコック鋼製運材台車)です。

青森市森林博物館 Information

  • 青森市森林博物館
  • 施設名称:青森市森林博物館(旧青森営林局庁舎)
  • 文化財指定:青森市指定有形文化財
  • 問い合わせ先:青森市森林博物館
  • 電話番号:017-766-7800
  • 開館時間:
    • 4月1日~10月31日/9:00~17:00
    • 11月1日~3月31日/9:00~16:30
  • 休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)、12月28日~1月4日
  • 入館料:一般 250円、高・大学生 130円、中学生以下・70歳以上 無料
  • URL:青森市森林博物館
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR青森駅から徒歩約10分
    • 車/青森自動車道青森中央ICから約25分、青森空港からリムジンバスで青森駅下車、徒歩で約10分

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風景に溶け込む息をのむような美しさ。「鶴の舞橋」は橋脚などに青森ヒバを使用

鶴の舞橋
岩木山を望む「鶴の舞橋」。江戸時代の農業用ため池に、橋脚など青森ヒバを使用して造られた観光用の木造橋 ©青森県

「鶴の舞橋(つるのまいはし)」(北津軽郡鶴田町)は、岩手山を眺望する津軽富士見湖(江戸時代に造られた「廻堰大溜池/まわりいけおおためいけ」=農業用の大きなため池)に架かる日本一長い木造の三連太鼓橋です。この橋は1994年(平成6年)に完成したもので、歴史的建造物ではありませんが、100年後には歴史的建造物として文化財指定を受けるであろうと思われるため紹介します。

「鶴の舞橋」の長さは約300mで、流れのない湖に架かるため、流出することはまずありません。ただコンクリートや金属に比べ水に弱いため、腐朽する可能性はあります。しかし、それを防ぐために水に直接つかる橋脚をはじめとする建材には、木材としては耐水性に優れる青森ヒバを使用しています。

しかし、木材ですから限界もあり、橋の共用から30年経った2023年(令和5年)から橋脚の補強や目立つ人が歩く床板(しょうばん)の取り替え工事に入りました。今回の工事では、床板に関しては大量入手が難しい青森ヒバでなく、入手や補修が容易なスギ材を使用することになりました。リニューアルされた「鶴の舞橋」は2026年(令和8年)4月に通行可能になる予定です(詳しくはオフィシャルホームページで検索するか、鶴田町役場に問い合わせてください。

鶴の舞橋 Information

  • 施設名称:鶴の舞橋
  • 所在地:青森県北津軽郡鶴田町廻堰大沢81-150
  • 問い合わせ先:鶴田町役場 商工観光課
  • 電話番号:0173-22-2111
  • リニューアルオープン:2026年4月予定(要確認)
  • 通行料金:無料
  • URL:鶴の舞橋
  • アクセス:
    • 公共交通機関/JR五能線陸奥鶴田駅下車、タクシーで約15分
    • 車/東北自動車道浪岡IC から約40分

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