青森の正月は鱈正月!県民にとってかかせない鱈料理とは?

青森の正月といえば鱈。じゃっぱ汁の湯気や白子の濃厚な旨みが、青森の冬の食卓を思い出させます。県外ではあまり見ない“鱈づくし”ですが、青森では昔から欠かせない存在。今回は、鱈が正月に食べられてきた理由と定番料理を紹介します。


青森の正月は“鱈づくし”が当たり前?

真タラ
青森県産真タラ

青森の正月料理といえば、「(たら)」が食卓の主役。

年越し前から買っておいた鱈を鍋に入れたり、白子を食べたり、子和えを作ったり…おせち料理の影が薄くなるほど、“鱈づくし”の食卓になる家庭も少なくありません。これは単なる好みではなく、昔から続く食文化だったんです。ここからは、青森の正月が”鱈正月”と呼ばれる理由や、青森の鱈の定番料理に迫りたいと思います。


なぜ青森では正月に“鱈”を食べるの?

青森の冬といえば鱈。昔から「鱈一本あれば正月が越せる」と言われるほど、鱈は欠かせない食材でした。では、なぜそこまで愛されてきたのでしょうか?

鱈は冬に旬を迎える

真鱈(まだら)は“魚へんに雪”と書くほど、冬が旬の魚。青森では12月〜1月にかけて最盛期を迎え、昔は大量に水揚げされました。年末の市場には縄でくくられた大きな鱈がずらりと並び、雪道を引きずりながら持ち帰る風景も珍しくなかったとか。寒い時期に脂がのって旨みが増すため、「正月といえば鱈」という文化が根づいたんです。

栄養価が高く冬のご馳走だった

冬は野菜も魚も少なくなる時期。その中でたっぷり取れる鱈は、昔の人にとって貴重なタンパク源でした。身は淡白なのに旨みがあり、白子には濃厚な栄養が詰まっています。寒い青森の冬を乗り切るための“ご馳走”であり、身体を温める鍋料理の具材として本当にありがたい存在でした。

保存・活用しやすく、無駄が少ない魚だった

鱈が重宝された理由は、身だけじゃありません。白子、肝、胃袋、皮、骨、頭(じゃっぱ)……すべて料理に使える“捨てるところがない魚”。じゃっぱ汁、子和え、ともあえ、煮物、焼き物、鍋物と正月料理の選択肢が一気に広がります。「鱈一本あれば正月を越せる」と言われたのは、栄養面だけでなく実用面でも優れた魚だったからです。


正月に欠かせない代表的な鱈料理

冬の青森では、正月の食卓に鱈料理が並ぶのが当たり前。南部でも津軽でも家庭ごとに味は少し違うけれど、この三つは「冬になると必ず食べたくなる定番」です。どれも手の込んだ料理というより、素材の良さを活かした家庭の味。ここではその魅力を紹介します。

じゃっぱ汁

じゃっぱ汁
じゃっぱ汁

じゃっぱ汁は、鱈の“じゃっぱ(あら)”を丸ごと使った汁物。骨や頭からとれる濃いだしが特徴で、一口食べると体の芯から温まります。作り方はいたってシンプルで、まず頭や骨をさっと湯通しして臭みを取ります。そこに大根、人参、白菜、ねぎなど家にある根菜や野菜を入れて煮込み、味付けはみそが主流(醤油派もいます)。具材を細かくしすぎず、噛みごたえを残すと、より“冬のご馳走感”が出ます。

鱈の子和え(人参の子和え)

鱈の子和え(人参の子和え)

津軽地方では“鱈の子”も正月料理に欠かせません。魚卵の旨味と醤油の香りがおかずとして成立する一品で、ごはんとの相性が抜群。作り方は素朴で、鱈の子を小口切りにし、人参の千切りといっしょに醤油で炒めるだけ。家によっては高野豆腐やこんにゃく、ねぎを加えますが、どれを使っても素材の味が引き立ちます。冷めても美味しく少ない材料で作れるので、作り置きとしても重宝します。

たづ(きく)料理

鱈の白子

青森では“白子”のことを「たづ(きく)」と呼び、冬だけ味わえる特別食材として愛されています。ぷるっとした食感と濃厚な旨味が特徴で、鍋でさっと火を通して食べたり、湯通ししてポン酢でいただいたりします。とくに寒い夜に食べる白子鍋は格別で、「これを食べると冬が始まったな」と感じる人も多い一品です。


【番外編】津軽と南部で白子の呼び方が違う?

青森で“鱈の白子”といえば、津軽では「タヅ」、南部地方では「キク」と呼ばれることが多いです。県内で共通の食文化なのに、呼び名が違うって面白いですよね。南部地方で“キク”と呼ばれるのは、白子の形が「菊の花」に似ているなんだとか。同じ青森でも津軽、南部、下北で文化が異なるのがおもしろいですよね。


まとめ

鱈が青森の正月に愛され続ける理由は、旬の旨みと栄養、そして無駄なく使える万能さにあります。じゃっぱ汁や子和え、白子料理は、派手ではないけれど、家族の健康を願う気持ちが詰まった青森らしいごちそうです。もし冬に青森を訪れる機会があったら、ぜひ鱈料理を味わってみてください。


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