【山形県】ケサランパサランとは?福をもたらす不思議な物体を詳しく解説
ケサランパサランは手にした人に幸せをもたらすらしいということは知っているけれど、そもそも生き物なのか植物なのかもよく知らないという人は意外と多いのではないでしょうか。
この記事では山形にゆかりの深いケサランパサランについて詳しく解説します。
ケサランパサランとは?
ケサランパサランは2月~3月にかけて神社や木のたもとに天から降ってくるUMA(未確認生物)の1つで、西洋でゴッサマー(gossamer)やエンゼル・ヘア(angel hair)と呼ばれているものと同類のものと考えられています。
植物、動物、鉱物、昆虫いずれかが正体とされ、山形県鶴岡市では38個確認されています。
2015年に山形県立博物館において8月20日までの期間限定公開され、鶴岡市立加茂水族館では淡水魚・海水魚コーナーにて常設展示されているのです。
ケサランパサランは持っている人に次のようなことをもたらすとされています。
- 着るものに困らない
- 病気にかからない
- お金持ちになる
桐箱に食べ物とされるおしろいとともに納めて神棚に祭り、福が逃げてしまうため1年に1度しか見てはならないと言い伝えられているのです。
参考:山形県立博物館「テンサラバサラ(ケサランパサラン)を期間限定で展示しています」
ケサランパサランの名前の由来
ケサランパサランは日本語のようにはあまり感じない不思議な語感の名前ですが、どのような由来で名付けられたのでしょうか。
諸説あるためいくつかご紹介します。
- スペイン語で「なるようになる」を意味する「Que Será, Será(ケ・セラ・セラ)」が由来
- 天から降ってくるという意味の「てんさらばさら」が由来
- サンスクリット語の「袈裟羅・婆裟羅(けさら・ばさら)」が由来
- 東北地方の方言で「何が何だかさっぱりわからない」を意味する言葉が由来
- 羽毛のようにパサパサした見た目が由来
どの説ももっともらしい部分はありますが、どれが正しいのかははっきりとはわかっていません。
ケサランパサランの研究
ケサランパサランは正体や名前の由来もはっきりしないためか、民俗学者にとっては古くから研究対象とされてきました。
1952年発行の日本民俗学会の学会誌である「民間伝承」に佐藤光民氏が発表した「テンサラバサラ」という論文には、山形に伝わる3つの話が掲載されているため表にまとめてみました。
話を聴けた場所 | 話し手 | 話の概要 |
山形県西田川郡念珠関村 | 彌惣兵衛 | ・テンサラバサラは天から授かり飼っているとその家が幸せになる ・1903年に地上1mの場所を飛んでいたのを拾った ・土蔵の改築時に紛失に不幸が続いた |
山形県西田川郡念珠関村 | 太郎七 | ・1930年ごろ大雷が鳴った翌日自宅前で拾った ・2つあり直径1.8cm程度の大きさ |
山形県西田川郡念珠関村 | 佐藤 | ・雷とともに降ってきた天からの授かり物 ・真っ白で丸く、兎の尾の先を切ったような形、小豆大の大きさで毛は密生している ・白粉を食べて大きくなる ・子供を産んで増え持っていると良いことがある |
この報告を受けて「民間伝承」で柳田国男氏を始めとする民俗学者が議論を始めますが、前項目で紹介した由来についてが主となり、あまりケサランパサラン自体が何なのかということについてはわからなかったのです。
その後1970年~1980年代に朝日新聞、NHK、TBSなどのメディアに取り上げられ、いわゆる「ケサランパサランブーム」が巻き起こります。
しかし1990年代になるとブームは落ち着き、ケサランパサランの分類が次のように提唱されます。
①阿蘇和夫氏の分類
- Ⅰ型「ケサランパサラン」植物の冠毛
- Ⅱ型「テンサラバサラ」動物の毛のついた皮が乾燥したもの
- Ⅲ型「ヘイサラバサラ」動物の結石
- Ⅳ型「ケシ真珠」変性真珠や変性鉱物
②けさらんぱさらん・どっと・こむの分類
- 植物タイプ
- 動物タイプ
- 鉱物タイプ
- 昆虫タイプ
- 新タイプ(天使の羽など)
現在ではこのように科学的な分類ができるようになったことで、ケサランパサランの正体についてはある程度はっきりしてきていると言えます。
しかし、國學院大學准教授の飯倉義之氏は、「『名づけ』と『知識』の妖怪現象」という論文において人間の「科学では割り切れない何か」を信じたい気持ちがケサランパサランに人が惹きつけられる理由なのではないかと解説されているのです。
この気持ちがある限り、ケサランパサランは「未確認生物」として私たちを楽しませてくれるのではないでしょうか。
参考:国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース「テンサラバサラ」
まとめ
ケサランパサランは2月~3月にかけて神社や木のたもとに天から降ってくる未確認生物の1つで、持っていると幸運がもたらされると言い伝えられていることがわかりました。
実物を見たい人は、ぜひ鶴岡市立加茂水族館に足を運んでみてください。