【秋田県仙北市】「人が作り出した角館の紅葉」と「自然が織りなす抱返り渓谷の紅葉」両方見るのがベストです。

仙北市は、春には秋田県を訪れる観光客が1、2を争う[角館の桜祭り](4月初旬からGWまで)、夏から初秋にかけては、[田沢湖の竜神まつり](7月の最終土曜日)、仙北市各地での[ささら踊り](8月のお盆頃)、[角館祭りのやま行事](9月7日~9日)などの行事、イベントが数多く開催されていますが、秋はまた仙北市、角館を訪れるには絶好の季節です。


桜に勝るとも劣らない武家屋敷通りの紅葉

武家屋敷通りや桧木内川堤は桜の名所として多くの観光客が訪れます。武家屋敷通りのしだれ桜(枝垂桜)は、江戸時代に角館の佐竹北家2代目佐竹義明(さたけよしあき/1643–1699年)の奥方が、京都からの嫁入り道具として3本の桜の苗木を持参したことから始まると伝えられています。1656年頃に植えられたしだれ桜が以降枯れたり、追加されたりしながら、162本(2025年現在、国指定天然記念物)あり、その咲き競う姿は見事です。

石黒家
門や通りに面した黒板塀など江戸時代の建物が残る石黒家。建物は公開中 ©仙北市

しかし、秋だって負けてはいません。文化財に指定されている樹木は残念ながらありませんが、旧青柳家や旧石黒家などの黒い板塀とカエデやイチョウ、ケヤキそれに秋色に染まるしだれ桜が競い合う紅葉のコントラストは、訪れる人を魅了します。

青柳家
美しい庭園も公開されている青柳家の紅葉(右)。

毎年10月1日から11月30日まではライトアップされ、昼間とは違う幻想的な風景を楽しめます。

角館 武家屋敷通りの紅葉 Information

  • 施設名称:武家屋敷通り
  • 文化財指定:「角館町角館」として重要伝統的建造物群保存地区に指定
  • 所在地:秋田県仙北市角館町表町下丁・表町上丁・東勝楽丁・裏町
  • 問い合わせ先:仙北市角館観光情報センター「角館駅前蔵」 
  • 電話番号:0187-54-2700
  • URL:武家屋敷通り
  • アクセス:
    • 公共交通機関/秋田新幹線・JR田沢湖線・秋田内陸縦貫鉄道角館駅から徒歩で約20分
    • 車/秋田自動車道協和ICから国道341号・46号経由で約40分

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武家屋敷通りに負けていない東北有数の紅葉の名所「抱返り渓谷」

抱返り渓谷
紅葉が目に鮮やかな「抱返り渓谷」。1.5kmほどの遊歩道は家族連れにもおすすめ ©アキタファン

抱返り渓谷(だきがえりけいこく)」は、数ある紅葉が美しい渓谷の中で、“東北の耶馬溪”と称されるほどの渓谷美が人気の仙北市が誇る紅葉スポットです。

田沢湖抱返り県立自然公園>に指定されている「抱返り渓谷」は、八幡平(はちまんたい)に源を発する玉川が長い年月をかけて削ったもので、深い渓谷が10kmほど続いています。渓谷の間には大小の滝、それを覆い尽くすように競い合う赤や黄色のカエデやブナの原生林。その見事なコントラストはひときわ目に鮮やかです。最下流部の渓谷入り口から1.5kmほどの間は、整備されたアップダウンの少ない遊歩道が整備され、往復で30分くらい。誰でも美しい渓谷を満喫できるのも「抱返り渓谷」の魅力のひとつです。10月中旬から11月中旬までは“抱返り渓谷紅葉祭”が開催され、さまざまなイベントが開催されます。

※<耶馬溪(やばけい/大分県)>は、その奇岩・渓谷・紅葉が織りなす壮大な自然美が日本一と称されている渓谷です。


見所は遊歩道添いにある、[神の岩橋]からの風景と[回顧の滝]

神の岩橋
もともと森林軌道のために架けられたつり橋「神の岩橋」。この橋が抱返り渓谷遊歩道の出発点 ©仙北市

神の岩橋]は、山奥から切り出した秋田スギを現在のJR田沢湖線神代(じんだい)駅に運ぶ森林軌道(しんりんきどう)<生保内林用軌道(おぼないりんようきどう)>のために、1926年(大正15年)に架けられたもので、秋田県では最も古いつり橋です。森林軌道とは、木材を大量に載せた手押し台車を鋼鉄製のレールの上を走らせる林業用の施設で、人がブレーキ操作をしながら下り坂を利用して目的地まで下っていきます。上りは空になった台車を人力か、馬、犬などの力で引き上げるのですが、<生保内林用軌道>は牛だったようです。

それにしても、スギの大木を大量に積んだトロッコがつり橋を渡るなんてすごいですね。常に生死をかけた林業作業の過酷さが伝わってきます。現在の[神の岩橋]は、1975年(昭和50年)に新しくされたもので、今は人だけが通れる遊歩道として使われています。

<生保内林用軌道>は1963年(昭和38年)に廃止されましたが、その後廃線跡は「抱返り渓谷」の遊歩道として整備されました。


何度も見返すほど美しいと名付けられた[回顧の滝]

回顧の滝
遊歩道の終点近くにある[回顧の滝] ©北市

回顧(みかえり)の滝]は、渓谷入り口から約1.5km、整備されている遊歩道の終点近くにあり、水量の少ないときは滝壺まで近づけます。落差は約30mで、何度も振り返るほど美しいということで“みかえり”と名付けられています。

渓流入り口の抱返神社を出発するとすぐに赤く塗られた[神の岩橋]に到着です。渓流沿いの遊歩道を上流に向かう途中[巫女(みこ)石][茣蓙(ござ)の石][帝釈(たいしゃく)の岩屋]など大小の奇岩が川の中に点在し、その先に撮影スポット[誓願橋(せいがんばし)]があります。急峻な崖が赤や黄色に染まり、その中心にはあくまでも透明な流れ。秋が目の前に広がります。そこから森林軌道時代に造られた素掘りのトンネルを3つ抜けると「回顧の滝」です。

抱返り渓谷
森林軌道時代に造られた手掘りのトンネル ©アキタファン

抱返り渓谷」の整備された遊歩道は[回顧の滝]の先、1935年(昭和10年)に起きた崖から過って谷に落ちた妹を助けるため、兄が谷に飛び込み命を失ったという悲しい事故の慰霊碑[飯村少年殉難の地]まで折り返しです。その先も整備されていない遊歩道は続くのですが、2025年現在大雨被害のため通行止めになっています。その先にある[夏瀬温泉]までは車道を使って行くことはできますが、その先の渓谷沿いの遊歩道も通行止めです。開通の見込みに関しては仙北市田沢湖観光情報センター「フォレイク」(電話番号:0187-43-2111)まで問い合わせてください。


森の中で見つけた日本一

「抱返り渓谷」周辺の森は、かつて秋田スギとブナ、カエデなどの落葉広葉樹の混成林だったのですが、現在は秋田スギの多くは伐採され、落葉広葉樹の天然林が広がる地域になっています。そのなかに日本一という天然のクリブナの巨木があります。残念ながら登山道とかがないので簡単には見に行けませんが、いずれは遊歩道が整備されることが期待されます。

[日本一のクリ]

日本一のクリ
幹周りが約8.1mもある日本一といわれるクリ ©東北森林管理局

日本一のクリ]は、「抱返り渓谷」の急峻な崖に立っており、天然の巨木が多い森の中でひときわ目立っています。根元の幹周りは8.1mほどあり、地上2mあたりから二股に分かれています。クリの巨木は珍しく、推定樹齢は200年~300年、樹高は約22mです。

[日本一のブナ]

日本一のブナ
こちらも幹周りは約8.6m。どっしりと根を生やした日本一といわれるブナ ©東北森林管理局

日本一のブナ]は、<田沢湖抱返り県立自然公園>内の森林地帯にあり、最大の幹周りは8.6mで、地上4~5mのところから二股に分かれて伸びています。大きなコブのある堂々としたその佇まいは、日本一と呼ばれるのにふさわしい天然のブナです。樹齢は200~300年といわれていて、樹高は約24mあります。

※クマやシカなどの動物の出没が大変多くなっています。渓谷や森に入る際は、鈴やクマ撃退スプレーなどクマ対策グッズを持参するなどして十分に気をつけてください。むやみにキノコ狩りなどをしないようにお願いします。

抱返り渓谷 Information

  • 場所:抱返り渓谷
  • 所在地:秋田県仙北市田沢湖卒田ほか
  • 問い合わせ先:仙北市角館観光情報センター「角館駅前蔵」 
  • 電話番号:0187-54-2700
  • URL:抱返り渓谷
  • アクセス:
    • 公共交通機関/秋田新幹線・JR田沢湖線田沢湖駅から車で約20分、角館駅より車、または予約制オンデマンドタクシー「よぶのる角館」で約15分 
    • 「よぶのる角館」予約URL:Tabi-CONNECT
    • 車/秋田自動車道協和ICから国道・46号経由で約50分

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角館より古い城下町「白岩」。秋田スギの古木と紅葉が美しい「雲巌寺」

雲巌寺
境内の紅葉が美しく「雲巌寺」の山門は秋田県の有形文化財に指定されている ©仙北市

雲巌寺(うんがんじ)」は、角館から西へ3kmほど、「白岩焼」で知られる角館町白岩にある、1450年建立といわれる古刹です。秋田スギの古木が立ち並ぶ参道の先には、300年以上前に建てられた山門(秋田県指定有形文化財)があります。境内の紅葉が美しく、江戸末期の「白岩焼千体仏」は、“持っているとお金持ちになる”などの噂から、江戸時代に半数以上が盗まれてしまいましたが、現在では「白岩焼」の窯元が2度にわたって寄贈し、1000体揃って公開されています。


江戸時代から続く秋田県ではじめての窯元「白岩焼」

白岩焼
秋田の焼き物は、白岩から始まった ©旅東北

白岩焼(しらいわやき)」は、江戸時代の1770年代初め、久保田藩は藩の財源だった阿仁鉱山(あにこうざん)/北秋田市)の近代化のために、当時鉱山士としても活動していた江戸の発明家平賀源内(ひらがげんない/1728年~1780年)を呼びました。平賀源内は当時の最新式製錬所、加護山精錬所(かごやませいれんじょ/跡地:能代市二ツ井)を造り、藩の財政回復に貢献したのですが、そのとき精錬用の陶器製の容器を造るために同行していた福島県大堀相馬焼の陶工だった松本運七(まつもとうんしち)という人が白岩で陶器を焼き始めました。「白岩焼」は秋田県では最初の窯元だそうです。

「白岩焼」は、1896年(明治29年)に起きた陸羽地震で壊滅的な被害を受け、存続不能となってしまいましたが、地元の人々の努力でなんとか復活し、今でも秋田県を代表する焼き物として人気があります。

雲巌寺・白岩焼 Information

  • 施設名称:雲巌寺・白岩焼
  • 所在地:秋田県仙北市角館町白岩
  • 問い合わせ先:仙北市角館観光情報センター「角館駅前蔵」 
  • 電話番号:0187-54-2700
  • URL:雲巌寺・白岩焼
  • アクセス:
    • 公共交通機関/秋田新幹線・JR田沢湖線・秋田内陸縦貫鉄道角館駅から車で約10分
    • 車/秋田自動車道協和ICから国道46号経由で約45分

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