鉄道版EV?男鹿半島を走る蓄電池電車ACCUM【秋田県】

現在の日本の鉄道では多くの「電車」が走っていますが、電車は基本的に外部から電力を取り込み続けながら走る車両なので、電力設備がない路線では走行することはできません。
しかしそのような路線で、電気自動車のように車両に搭載された蓄電池の電力で走行する車両が、数は少ないものの運行されています。
蓄電池電車が走っている路線の1つが、秋田県の男鹿(おが)線です。


男鹿線とは?

男鹿線は、秋田県秋田市の追分(おいわけ)駅から、男鹿市の男鹿駅までを結ぶJR東日本の鉄道路線です。
その全長は26.4kmで、9つの駅があります。
その路線名が表す通り、男鹿半島を走っている路線です。

終点の男鹿駅は男鹿市の中心街にあります。
男鹿駅からは事前予約制のあいのりタクシー「なまはげシャトル」で、なまはげ館・男鹿真山伝承館・真山神社、男鹿温泉郷、男鹿水族館GAOといった、男鹿のスポットを巡ることが可能です。

2025年3月の改正時点のダイヤでは、平日・休日共に1日15往復の普通列車(全部の駅に停まる列車)が運行されています。
男鹿線の起点である追分駅を始発・終点とする列車は1本も設定されておらず、全ての列車が奥羽本線の秋田駅~追分駅の区間に乗り入れて運行されています。
奥羽本線も含めた、秋田駅~男鹿駅の区間には「男鹿なまはげライン」という愛称がつけられています。

男鹿なまはげラインを走る列車

かつては首都圏から走ってきた、夜行急行「おが」という列車が、男鹿線に乗り入れて男鹿駅まで運行されていたこともありました。
詳しくは「おが」の解説記事をご覧ください。

男鹿線は、電車が走るために必要な電力設備(線路の上空に張られる電線など)が存在しない、非電化の路線です。
そのため、一般的な電車が走行することはできず、軽油を燃料として走る気動車などを使用する必要があります。
男鹿線でも2021年3月のダイヤ改正までは、キハ40系という気動車が運行されていました。

男鹿線を走っていたキハ40系気動車
MaedaAkihiko – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=94007728による

蓄電池電車EV-E801系 ACCUMとは?

キハ40系気動車は製造から40年程度が経過して老朽化が進行していたので、男鹿線では2017年から新車の投入が開始されました。
その新車が蓄電池電車のEV-E801系です。
ACCUM(アキュム)という愛称があります。

蓄電池電車 EV-E801系 ACCUM

2両1組の車両で、2両編成または4両編成で運行されます。
現在のところ、男鹿線・奥羽本線のみで運行されているレアな車両です
(別の種類の蓄電池電車が運行されている路線はありますが、これらの蓄電池電車も運行されている路線が限られていることには違いありません)。

デザインは男鹿地方の重要無形民俗文化財であるなまはげのイメージで、乗降口の脇にもなまはげが描かれています。

ドアの脇に描かれたなまはげ

ACCUMは、電化されている奥羽本線(秋田駅~追分駅間)では屋根上のパンタグラフ(集電装置)を上げて、普通の電車と同じように走ります。
一方、非電化の男鹿線では電車としては走行できないので、車載の蓄電池に充電した電力を使用して走ります。
電気自動車と同じです。

終点の男鹿駅に着くと、プラットホームの部分にだけ設けられた架線(電線)にパンタグラフを上げて、停車時間中に充電を行います。
そして再び蓄電池による走行で、追分駅の方へ戻っていくのです。
なお、男鹿駅で充電に使用する電力は、JR東日本の運営する風力発電所で作られています。

充電用設備がある男鹿駅に停車中のACCUM

ACCUMは2017年に2両編成1本が導入され、2021年3月には5本が追加で導入されました。
これにより、キハ40系は引退して、男鹿線を走る車両はACCUMのみになりました。
引退したキハ40系の内、一部の車両は千葉県の私鉄の小湊鉄道に譲渡されています。


男鹿線や「なまはげシャトル」で行く観光スポット

一般的に、地方での移動は車(自家用車やレンタカー)がないと不便なものですが、運転免許がなければ自分で運転することはできないし、自分で運転できてもレンタカーなどは費用の負担を大きいと感じる方はいるかと思います。

しかし、男鹿線と、既にご紹介した事前予約制の「なまはげシャトル」を利用すれば、自分で車を運転しなくても、男鹿観光が可能です
(前日21時までの予約が必要なこと、他に利用者がいれば相乗りになることなどにご留意ください)。
ここでは、男鹿線やなまはげシャトルで行けるスポットを紹介します。

道の駅おが なまはげの里オガーレ

道の駅おが なまはげの里オガーレは、男鹿線の終点である男鹿駅から南に徒歩3分で行ける道の駅です。
男鹿市の海産物や農産物の販売や、秋田犬とのふれあい(主に休日)が行われています。

Information<道の駅おが>

  • 名称 道の駅おが なまはげの里オガーレ
  • 所在地 秋田県男鹿市船川港船川字新浜町1-19
  • 電話番号 0185-47-7515
  • 休館日 1月1日、1月2日 冬期は臨時休館日あり
  • URL 道の駅おが|なまはげの里オガーレ

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真山エリア

真山エリアには、なまはげ館、男鹿真山伝承館、真山神社が立ち並んでいます。
なまはげ館では、150枚を超えるなまはげ面や衣装の展示、大型スクリーンでの映画『なまはげの一夜』の上映などを行っています。
また、古来の曲家(まがりや)民家を利用している男鹿真山伝承館では、実演を交えてなまはげを体感できる学習講座を行っています。

Information<なまはげ館>

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男鹿温泉郷

男鹿温泉郷は、伝説によると征夷大将軍坂上田村麻呂が東征の際に、温泉を発見して兵を休ませた場所だとされています。
江戸時代には秋田藩主を務めた佐竹家の当主も好んで入浴したと言われています。

男鹿温泉のお湯は塩分を含んでいて、入浴後に肌についた塩分が汗の蒸発を防ぐので、保湿効果が高い美肌の湯として人気です。
2025年4月現在、6軒の宿が営業しています。

Information<男鹿温泉郷>

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男鹿水族館GAO

男鹿水族館GAOでは、秋田県の県魚であるハタハタや、ホッキョクグマ、ペンギンをはじめ、約400種の生物が展示されています。
春から夏にかけての男鹿の海を再現した大水槽は見ごたえ抜群。
ハタハタに特化した展示エリアや、秋田の森の川・田畑に住む魚といった特徴的な展示もある、秋田県の代表的な水族館です。

Information<男鹿水族館GAO>

  • 名称 男鹿水族館GAO
  • 所在地 秋田県男鹿市戸賀塩浜
  • 開館時刻 9:00~17:00(最終入館16:00) 11月から翌年2月までは9:00~16:00(最終入館15:00)
  • 定休日 第3木曜日、等(要確認)
  • 電話番号 0185-32-2221
  • 公式URL 男鹿水族館GAO

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その他

なまはげシャトルを利用すると、季節によっては景勝地である入道崎、アジサイの名所である雲昌寺、寒風山回転展望台などを訪れることもできます。
これらのスポットについては、なまはげシャトルが運行される時期が限られているので、事前によくご確認の上、訪問の計画を立ててください。


おわりに

男鹿線は地域の住民の足としての役割を果たしているのみならず、ここでしか走っていない車両で、観光に訪れる人たちを男鹿に誘ってくれます。
男鹿線に乗って、そして観光スポットで、男鹿でしかできない体験をぜひしてみてください。


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